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オープンガバメントと行政機関のパブリック・クラウド活用

1. 行政機関のニーズ

すぐれた情報機器の急増と各種のインターネットサービスの普及により、多くの市民はは、行政機関のサービスに対して、また市民同士で、「つながる」ための新たな手段を獲得しつつあります。情報とインターネットに常時接続された時代に生まれ育った若い世代は次の時代の担い手であり、彼らは行政機関に対して高い期待を持ち、たとえばソーシャル・メディアやスマート・デバイスから利用できる行政サービスを望むでしょう。行政機関が保有する情報に対するニーズは非常に大きいため、クラウドコンピューティングなどの基盤を利用し、ソーシャル・メディアや公開されたデータを活用したアプリケーションを通じて、高機能で個別のニーズに対応したサービスを市民に提供することがきわめて有効な方法であると考えてられています。これらの結果、市民はより便利なサービスを享受し、行政との連携を深めることができます。

実際に、政府の透明性を高め説明責任を果たすこと、政策の立案過程において市民の参画を促すこと、官官・官民の連携によって政府の効率性を改善することといったオープンガバメントの取組において、これを実現する手段としてのパブリック・クラウドの活用が世界各国で進んでいます。これらの事例を取り上げつつ、マイクロソフトの行政機関におけるパブリック・クラウド活用の取組みについてご紹介していきたいと思います。

パブリック・クラウドは、数万台規模のサーバーを随時拡張しているメガデータセンターの規模の経済を活かした低い利用コストや、地球規模で分散されたデータセンターが互いに連携することによる事業継続性がメリットである反面、多くのユーザーが同一のサーバー群を利用するマルチテナント型のシステムであることや、データが所在するデータセンターの立地によって、特に行政機関においては情報セキュリティやデータの主権に対する懸念が先行している感もあります。しかしながら、パブリック・クラウドのメリットを享受できる適用業務を選択し、実際に使ってみるという段階に徐々に入ってきています。

ではどのような業務にパブリック・クラウドを活用したらいいのでしょうか?一般的にクラウドのメリットを享受しやすいシステム利用パターンとしては図 1 の 4 つが挙げられます。これらはいずれも、必要に応じてシステム資源を迅速かつ柔軟に拡張・縮小することが可能なクラウドサービスの特長を活用できるパターンですが、公共機関の適用業務としては例えば下記のような分野が想定されます。


図 1 : クラウドのメリットを享受しやすいシステムの利用パターン

(1)「On と Off」:様々な分析やシミュレーションを行うための数理・科学技術計算
(2)「急激な成長」:景気対策のための制度運営や年金記録問題など、国民の関心が急激に高まる社会的課題への対応
(3)「予測できない爆発」:災害対応や危機管理といった不測の事態への対応
(4)「予測可能な爆発」:税務、調査統計、選挙管理、予算・決算など定期的に繁忙期が来る業務

但し、これらの業務分野においても、取り扱うデータの特性やサービスレベルによっては、特定の組織内に閉じた利用に限定するプライベート・クラウド、共通の要件をもつ組織間で共同利用を行うコミュニティ・クラウドといった選択肢もあります。そういう意味では、パブリック・クラウドは、政府の持つデータを公開したり、民間との連携をおこなうオープンガバメントの分野からまず活用され始めています。

2. パブリック・クラウドの活用事例

では、実際の活用事例をご紹介しましょう。
米国連邦政府の「Recovery.gov」(図 2) は、2009 年に成立した U.S. Recovery Act (American Recovery and Reinvestment Act) に基づいた景気対策の情報公開を行うために構築された Web サイトです。この法律はリーマンショック後の世界的な景気後退から経済を回復させるため、総額 7870 億ドルに及ぶ景気刺激策を承認すると同時に、どこにどれだけの予算が使われたのかを公開するという、かつてない透明性を要求するものでした。「Recovery.gov」では、景気対策予算がどこでどのような事業に使われ、どれくらいの雇用を生み出したかを、国民が迅速かつ簡単に州、郡、自治体や郵便番号単位で参照でき、国民から予算の無駄遣いや不正行為、悪用などを連邦政府にフィードバックできる仕組みも導入しました。ピーク時には 1 時間当たり数百万のアクセスにも耐えられる拡張性と、サービス提供までの迅速性、時限的な用途のため、クラウドが活用されています。

環境問題は 1 つの国に閉じた課題ではなく地球規模で取り組むべきものですが、欧州連合環境庁 (EEA) は、欧州 32 ヵ国から環境データを収集し、環境政策の立案や実施に活用するともに、一般の市民に対しても広く公開して欧州全域での環境意識向上を図るために「Eye on Earth」(図 3) を構築しました。Eionet と呼ばれる 600 もの協力機関のネットワークを通じて収集されるデータは温室効果ガス排出量や 1,000 の観測地点の大気質、22,000 の観測地点の水質、生物多様性に関する情報等です。環境に対して大きな影響を与える農業、林業、エネルギー、運輸などの分野の調査も行っており、信頼性の高い情報を提供しています。また、一方的な情報の提供だけではなく、住民が近所の環境評価をフィードバックして共有したり、実際に気候変動にどのように対処しているか各地の事例を共有したりすることができるようになっています。特に夏季のバカンスシーズンにはアクセス数が増加する傾向にあり、柔軟に処理能力を拡張できるクラウドのメリットを生かしています。


図 2 : 米国連邦政府の「Recovery.gov(新しいウィンドウで開きます)


図 3 : 欧州連合環境庁の「Eye on Earth(新しいウィンドウで開きます)



図 4 : 米国マイアミ市の「Miami 311(新しいウィンドウで開きます)

米国のマイアミ市は 311 サービスのためのオンライン・アプリケーションをクラウドを利用して提供しています (図 4)。311 とは、市民向けの非緊急行政サービスのためのダイアル番号ですが、道路の欠陥修復、障害物の除去、ごみの収集などのサービスを住民がオンラインで依頼し、その対応状況を随時確認できるようにしました。地図情報を用いる必要がありましたが、それには大量の情報処理能力が必要とされるだけではなく、どれくらい利用されるのか予測が困難であり、加えてハリケーン等の災害に備えた情報システムのサービスの継続や IT 予算の圧縮などの課題も同時に抱えていました。クラウドサービスを採用することにより、予算サイクルの制約を受けずに柔軟にシステムの処理能力を伸縮させることができ、システムの運用や災害対策からも解放され、初期投資や開発期間を大幅に削減しています。これと同様のしくみは、サンフランシスコ市(新しいウィンドウで開きます)やロンドン市などでも採用されており、世界各地の自治体に広がってきています。



図 5 : msnでの文部科学省放射線モニタリング情報の公開

次は国内の事例をご紹介したいと思います。
東日本大震災で起きた福島第一原発の放射能漏れ事故は、周辺各地の農産物や浄水場などに影響を与えていますが、文部科学省は全国都道府県別の放射能水準調査結果をクラウドを利用して公開しています。マイクロソフトはこれを Windows Azure を利用して支援するとともに、msn のサイトでも公開しています。上水と大気の放射能の測定結果は震災直後に急速に情報公開のニーズが高まりました。その要望に応えるためには、様々な形式のデータを集計し、また視覚的に見やすくグラフ化するとともに、外国人への情報提供も合わせて行うため、日本語に加えて英語でも情報公開を行う必要がありました。マイクロソフトはクラウドコンピューティングの特性を活用し、文部科学省からの要請に応じて、わずか 1 日でプロトタイプを完成し、47 都道府県の観測地点のデータを時系列にグラフ化するとともに、地図情報を用いて視覚的にわかりやく情報を加工しています。


民間の NPO 団体や企業からなる震災復興支援ユニバーサルメニュープロジェクトは、東日本大震災の被災者支援のため震災復旧・復興支援に関する行政制度情報を利用者視点でわかりやすく案内する「復旧復興支援ナビ (β版)」を立ち上げました。被災地域や被災者の生活再建のために、復興支援の様々な制度を簡単に探し、便利に使うためのサイトとして設計されています。自治体や政府機関などが提供する震災復興支援に関する各種行政制度の役割はこれまで以上に重要なものになりますが、被災者がこれらの制度を「知らない」「探せない」「わからない」という状況を解決するため、下記のようなサービスを提供しています。


図 6 : 震災復興支援ユニバーサル
メニュープロジェクトの
復旧復興支援ナビ (β版)(新しいウィンドウで開きます)

(1) 検索性の追求
すでに整備されている自然災害の被災者に対する各種の支援制度を統合的に整理分類することによって、利用者視点での制度検索を実現

(2) わかりやすさの追求
これまでの制度情報の提供は法律用語が中心で難解な表現が多いため、法律用語の説明や詳細情報のリンクをつけるとともに、わかりやすい文章表現へ「書きくだし」

(3) オープン性の追求
省庁、自治体間の枠を超え、民間企業による支援も取り込みながら、被災者支援に関する情報を被災された方々に幅広く、速やかに提供できるよう、被災者支援制度に関する情報構造の共通化とオープン化を行い、広く共有化できる「共通メニュー体系」



図 7 : Windows Azure Marketplace DataMarket

最後にマイクロソフトの取組である Windows Azure Marketplace DataMarket をご紹介します。弊社の市場調査では企業の 81% が外部データを活用してアプリケーションを構築しており、平均約 1600 万円以上をこのデータの使用料に費やしています。マイクロソフトは DataMarket というアプリケーションを Windows Azure 上に構築し、大量の情報の中から必要な情報を選択、可視化し、活用することを可能にしています。行政機関の業務における透明性や相互連携への注目度が高まるにしたがって、大量に保有しているデータを構造化された有益な情報資産へと転化させることが重要になってきています。マイクロソフトはこのようなニーズを支援するために、行政機関向けの Data Market を提供しています。これを利用することで、データの公開と市民からの容易なデータアクセスを実現するためのプロセスを効率化することができ、開発者は既存のアプリケーションにデータを統合することができます。既に英国政府 Foreign and Commonwealth Office、国際連合、世界銀行、欧州連合環境庁、米国連邦政府などの公共機関がデータを公開しています。


3. まとめ

技術の進化が新たな可能性を開き、行政機関の役割と行政機関が地域社会に提供するサービスに関する期待が高まっています。

  • クラウドコンピューティングが発展性を持った情報通信技術 (ICT) の供給モデルを提供し、コストを低減し、新たなサービスを提供する。
  • ソーシャルメディアにより、市民との連携が向上し、サービスの満足度が向上する。
  • 行政機関のデータの公開と活用により、広範な情報へのアクセスと流通が可能になる。

新技術の活用によって、行政機関は大きなコストをかけることなく、社会へのより良いサービスを提供することができます。クラウドは、新しいアプリケーションを開発するための有望なプラットフォームであり、地域社会へサービスや情報を提供する新しい方法を提供します。マイクロソフトは、さまざまなレベルの行政機関の公開データの活用に携わってきました。プラットフォームとサービスの幅広い選択肢を提供する一方、行政機関が効率性を向上させるために ICT に何ができるかについて、引き続きこれらの経験に基づいたソリューションを提供してまいります。

<問い合わせ先>
日本マイクロソフト株式会社 パブリックセクター統括本部
Tel. 03-4535-8017 / E-mail: mspsmktg@microsoft.com

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※社団法人 行政情報システム研究所の許可により、行政&情報システム 2011 年 10 月号から抜粋したものです。
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