プロジェクト管理ツールの導入により、プロジェクト進捗の可視化と厳密なスケジュール管理を実現し、 12 年間にわたる基幹業務システム構築と運用のプロジェクトをスタート
|
甲府市は山梨県のほぼ中央に位置する人口約 20 万人の都市です。戦国武将として名高い武田信玄をはじめとする武田三代の統治以来、甲斐地域の中心として栄えてきました。
同市では 2007 年度から、12 年間にわたって段階的に稼働する基幹業務システムなどの構築と運用を行う「こうふDO (ダウンサイジング・アウトソーシング) 計画」を開始。そのプロジェクトの進捗管理に Microsoft Office Project 2007 を採用しました。46 の業務システムを限られた期間でいっせいに構築するプロジェクトの進捗を 1 日単位で綿密に管理し、その状況をプロジェクト関係者全員で共有することで、冒頭 2 年間の計画および構築を無事完了。予定どおり、2009 年度からの運用開始を実現しています。
<導入背景と狙い>
12 年間にわたる大プロジェクトの計画および構築の
進捗管理を可視化するしくみが必要   甲府市役所 企画部 企画総室 情報政策課 係長 土屋 光秋 氏
|  |
「『こうふDO計画』のそもそもの始まりは、2002 年のことでした。それまで使ってきた基幹システムが 2004 年 1 月に更新期を迎えるにあたって、抜本的な BPR (Business Process Reengineering) やコスト削減を図る取り組みを進めることは、検討、準備期間の不足から、実現できませんでした。このため、その次の 2009 年の更新期には、ダウンサイジングによるコストと運用負荷の軽減をねらった更新計画を立てようというのが発端だったのです」と語るのは、今回のプロジェクト進捗管理のまとめ役を担ってきた、甲府市役所 企画部 企画総室 情報政策課 係長の土屋光秋氏です。
1988 年に導入された同市の基幹システムは、アーキテクチャはもちろんのこと、さまざまな面で既に老朽化が進んでいました。このことは特に運用面での大きな負担となって、情報政策課をはじめとした関係者を悩ませていたといいます。
「とりわけ大きな問題は、たび重なるプログラム修正が生んだシステム運用の負荷の増大でした。役所のシステムでは、法令等に基づく制度改正のつどプログラムを修正するという作業が発生します。こうした作業を毎年部署ごとに積み重ねてきた結果、局所的な機能の実装ばかりが進みプログラムのスパゲティ化が進行して、ますますその後の修正作業を複雑にしていました。またこれらの部分修正に起因するトラブルも多く、手間やコスト、そしてシステムのリスク管理という点でも、実用ツールとしてふさわしくない状態に陥っていました。そこでこの機会に抜本的なシステム更新を行おうという声があがり、改めて長期的展望に立った『こうふDO計画』がスタートしたのです」と土屋氏はふり返ります。
「こうふDO計画」の大きな特徴は、プロジェクトの運用形態とその期間の長さにあります。構想や計画、実現に向けた技術トレンドや自治体システム市場の調査、情報システムをサービスとして捉える調達方式の検討、SLA (Service Level Agreement) によるシステム品質の担保、システムの品質とコスト削減を両立させるべく、あらゆる面での検討を加え、弁護士等のサポートを得る中でこれらを計画書と法的検証を経た契約書案としてとりまとめ、2005 年 10 月に公表。それから、2006 年度末までに事業者選定を実施し、2007年度からの 2 年間を要件定義、設計、構築期間とし、2009 年度からの 10 年間を運用期間として、計 12 年間という長期事業です。業務アプリケーションからハードウェアに至るまでの導入と運用管理全体を、日本電気株式会社 (以下、NEC) に委託するという形態は、情報システムによるサービスそのものを調達するという、IT-PFI (Private Finance Initiative) 手法による全国の自治体でも例のない包括的アウトソーシング事例として注目を集めています。
「これだけの規模と期間のプロジェクトを予定どおりに進めていくのは、並大抵のことではありません。市役所と NEC 双方にわたって非常に多くの人数や部署が動くわけですから、普通に進めていたらスケジュールがうまく運ばない、コストが見えないといった問題がたちまち発生してしまうでしょう。プロジェクトを成功させるには、12 年間という長い期間、常にどんな作業をいつ誰がどんな手順で行わなくてはならないのかを、リアルに可視化できるしくみが必要です。それを Project 2007 で実現しようと考えたのです」。
<導入の経緯>
製品の将来性や記録性、
プロジェクト マネジメント標準準拠などを評価して採用を決定土屋氏は、「Project 2007 は、進捗管理のツールとしてほぼ唯一の選択肢だった」と語ります。その理由としては、まず製品としての将来性がありました。
「12 年間にわたる事業進捗のベース ラインを見ていくツールなので、5 年、10 年たっても製品がちゃんと存続していることが必要でした。そこで既存の導入ユーザー数などを参考に、2018 年のプロジェクト終了までずっと使える見通しの立つ製品だったことが大きな決め手でした。
もう 1 つは、『こうふDO計画』のフェーズごとに、その実績をエビデンスとして残しておくことが必要でした。長期間のプロジェクトですから当然メンバーの交代は想定しなければなりません、可視化され体系化されたさまざまな記録を後任者に引き継げるようにする必要がありました。その点でも Project 2007 は各業務システムと進捗記録を密接にひも付けて記録しておくことができるので、最適だったのです」。
さらに土屋氏は、Project 2007 がプロジェクト マネジメントの標準に準拠している点を評価したと言います。
「Project 2007 をソリューションとして見た場合、PMBOK (Project Management Body of Knowledge) などに準拠した意味合いを持っていることがわかります。ソフトウェアの機能の中に、プロジェクト マネジメントの観点から必要とされる標準的かつ普遍的な意味を持たせてあるので、これをもとにプロジェクトの問題解決を図れるのではないかという期待もありました」。
  日本電気株式会社 公共ソリューション事業部 第四ソリューション部 マネージャー 若山 聡 氏
|  |
一方で、今回のプロジェクトを受託している NEC の担当者からも、Project 2007 には高い評価が寄せられています。日本電気株式会社 公共ソリューション事業部 第四ソリューション部 マネージャー 若山聡氏は、「アウトソーシングにおける運用を効率的に行ううえで、Project 2007 によってもたらされるメリットとして、3 つが挙げられます。まず基本的なことですが、システムの日常の業務運用を計画的に進めるうえで有効であること。今回のプロジェクトでは、開発期間を含め 40 以上の業務のスケジュールを Project 2007 で作成しました。2 つ目は、法改正ごとに発生するシステム修正をはじめとした業務をいつまでにどれだけ進めるかといった、システム メンテナンスのスケジュール管理が容易な点。そして 3 つ目は、今後 10 年間にわたってサービス レベルを SLA 契約に基づいて厳格に管理するための、改善計画の管理やセルフチェックに使える点が挙げられます」。
こうした甲府市、NEC 双方の評価により、Project 2007 は NEC による包括アウトソーシング契約が成立した 2007 年 3 月末時には既に導入が決まっており、6 月には甲府市、NEC、マイクロソフトの三者による具体的展開などのディスカッション、そして 8 月には全面展開を完了しました。
「導入にあたっては、せっかくチャートがあっても読めないと意味がないので、コンサルティング ファームに依頼して、『こうふDO計画』に携わる人全員に PMBOK や ITSS (IT スキル標準) の研修を実施しました。2 年間を通じて行ったマネジメントやガバナンス力向上のため人材育成は、後にメンバーのスキルを評価するところまで徹底して、シビアに勉強してもらいました」 (土屋氏) 。
<システムの概要>
プロジェクト進捗状況の可視化、共有化はもちろん、
第三者への具体的数値の提示説明にもProject 2007 がもたらした最も大きな成果は、やはりプロジェクト進捗の最適なスケジュール管理とプロジェクト成果の品質管理が実現したことだと土屋氏は強調します。
「一般に、公共事業ではスケジュールの幅が非常にゆるいのが、残念ながら実態です。ものの考え方が 1 週間単位であるとか、期限を切る場合も『来週まで』、『来月まで』とおおざっぱです。進捗や成果の管理も同様で、やってみてダメだとそこで初めて『できなかった』となる。プロジェクト マネージメントの方法論は PMBOK をはじめとして既に出来上がっているのに、なぜ公共分野では一般化していないのか、という疑問を感じました。民間事業者と本当の意味でパートナーとして、適切な役割やリスクの分担をすることが、この計画の成功要因です。このためには、我々のベース ラインを変えなければならないと考えました。今回の『こうふDO計画』のプロジェクト マネジメントでは、こうした良くない習慣を断ち切り、正しいバランスの上で事業が推進できるようにするため、Project 2007 を導入しプロジェクト参加者が「見通しの良い」環境でそれぞれの役割を果たす事を目指しました。このプロジェクトを統括した私のミッションを一言で言うと、『十分に練り上げた計画を、予定どおりのコストで、予定どおりの期間に、予定どおりの品質で、無理なく具現化する』というものです。このため、いわゆる "カン" や経験則などの感覚的なマネジメントでは、実現は難しいことは明らかでした。Project 2007 によってスケジュールやリソース、変更管理まで一元的に管理することで、結果として私のミッションを達成することができたのです」。
開発段階では、毎回の打ち合わせごとに各関係者に Project 2007 から出力した 150 枚以上のガント チャートを配布して、進捗状況の共有に努めたと言います。
「最近では、市職員の認識もこうしたツールを用いてスケジュールを共有するのが当たり前のこととして、ある程度浸透してきました。普通に「WBS (Work Breakdown Structure)」とか「イナズマ線」といった用語が使われています。今後はこの方法を運用面で根付かせることで、職員の意識改革につなげていければと考えています」。
また Project 2007 は、プロジェクトの責任所在とコスト配分の管理にも活用できます。
「幸い、まだ 1 件も発生していませんが、『こうふDO計画』では、SIer 側に起因する重大なプロジェクト遅れの場合、SLA に基づいてペナルティを科する契約があります。誰がいつ何をしてどれだけのコストを要したかがひと目でわかるので、問題が発生した場合の責任やコスト負担をきっちりと配分するといった作業にも、Project 2007 は使えるのではないでしょうか」。
今動いている案件の管理だけでなく、中長期的な展望に立った作業の準備にも Project 2007 は活用できます。
「チャートで先々発生する作業の見通しをつけておくことで、人手を早めに押さえられます。また反対に、要員の手空きの時期をねらって作業予定を立てるのも可能です。たとえばシステム エンジニアは年度末が忙しいので、システム修正の作業は業務の閑散期に設定し、なおかつ前の年から声をかけておくことで、計画的に開発要員を確保できるのです」。
<今後の展望>
今回つちかったノウハウを活かして、
庁内のさまざまな行政サービスなどへの横展開を土屋氏は、今後はこの Project 2007 によるプロジェクト管理のしくみをさらに確実に根付かせ、庁内の他の業務にも使われるようにしていきたいと理想を語ります。
「今現在進んでいるプロジェクトだけ見ても、新庁舎建設や市立学校の耐震化など、『こうふDO計画』でつちかったプロジェクト管理のノウハウを応用できそうな案件はいくつもあります。また、たとえば健康診断やケア プランといった行政サービスの実施スケジュールを効率よく管理するといった作業にも、Project 2007 は効果を発揮するのではないかと感じています。こうした各政策担当部署からの要望があれば、いつでも必要なノウハウを提供できるように、情報政策課として準備を怠らないように努めていきたいと思っています」。
こうした将来の展望に、若山氏は SIer の立場から「今回の『こうふDO計画』の成功は、情報政策課のプロジェクト マネジメント力の高さによるものだと感じています。従来慣れ親しんだ方法に安住するのでなく、あえて新しいプロジェクト管理の方法を試み、また当局者が率先して現場を説得するなど、私たち外部の SIer だけでは不可能だった進め方をされました。また何よりも、プロジェクトを進めるうえでのパートナーとして、当社を信頼していただけたことが、成果に結びついたと思っています。今後 10 年間続いていく『こうふDO計画』ですが、今後もいろいろなアドバイスをいただきながら、さらに優れたソリューションとサービスをご提供できるよう努力していきたいと願っています」と抱負を語ります。
「これからのテーマは、長い期間にわたる運用の中で、いかに上手に Project 2007 を使っていくか。導入での経験を活かしながら、さらに効率的なプロジェクト管理を実現して、行政サービスの向上と庁内の負荷軽減の道を探っていきたい」と語る土屋氏。全国の自治体に先がけて新たなプロジェクト マネジメントのあり方を示した甲府市は、早くも次のステップに向けて動き出しています。
本ケーススタディに記載された情報は初掲載時のものであり、閲覧される時点では変更されている可能性があることをご了承ください。 本ケーススタディは情報提供のみを目的としています。Microsoft は、明示的または暗示的を問わず、本書にいかなる保証も与えるものではありません。 | |
