情報サービスの高度化と ICT 関連予算削減の両立を目指して、学内 ICT サービスをフルクラウド化し、大学を取り巻く環境の変化に対応
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国士舘大学では、18 歳人口の減少が続く現状を見据え、2010 年に「学生サービスの向上」と「ICT コスト削減」の両立を目指した先進的なプランを検討。議論の末、学生カルテなどの教育支援システムから、入学/教務事務、財務会計や人事給与、就職支援、図書館システム (OPAC)、学術リポジトリ サービス、e ラーニング、ポータルサイト、メールサービスなど学内のほぼすべてのシステムを "フルクラウド化" する画期的なプランを策定しました。そしてプラン実現のために選ばれたのが、Windows Azure をはじめとする、マイクロソフトのクラウド ソリューションでした。
<導入の背景とねらい>
従来の ICT 環境と現代の高度情報化ニーズのギャップを解消し、先進的 ICT 環境の実現へ  |   学校法人国士舘 常任理事・教授 瀬野 隆 氏 (中央) 学校法人国士舘 総務部 人事課 課長 福本 正幸 氏 (右) 国士舘大学附属図書館 事務部長 植田 英範 氏 (左)
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1917 年に吉田松陰の精神を範として創立されて以来、約 100 年の長きにわたり、13 万人以上 (2011 年 3 月現在) の人材を各界に輩出してきた国士舘大学。その歴史は進取の気質を以て、さまざまな取り組みを重ねてきた歴史でもあります。
たとえば 2000 年度に 4 年制大学として日本で初めて、救急救命士の国家試験受験資格を取得できる「スポーツ医科学科」という学科を設立。国家試験合格率 85% という実績を誇っています。
また、大学として ICT 化への取り組みも早く、1973 年には、電子計算機センター (現・情報科学センター) を設立。
1979 年には日本で初めて「情報化キャンパス」を実現するシステムとして、ホストコンピューターを利用して教務事務から財務会計、人事給与までの処理を行うトータル システムを発表しています。以来、同学の情報科学センターと情報基盤センターという 2 つの組織によって、積極的な ICT 活用を続けてきました。
そして、2010 年、国士舘大学では、「メディア情報構想検討委員会」を設けて、大胆なシステム刷新プランの検討に入ります。それが、学内の ICT 環境すべてを "クラウド化" する試みでした。
常任理事・教授 瀬野隆氏は、次のように説明します。
「学生へのサービスを手厚くし、入学から卒業まで、そして卒業後も継続してサポートしていくためには、ICT への投資を継続することが必要です。
しかし、一方で 18 歳人口は減少し続けます。つまり、大学経営の観点からは支出を削減するしか方法がありませんので、業務の合理化を考えていくと、結局は『資料を電子媒体化する』、『連絡はネットワークを使って効率化する』など、さまざまな面で情報化が関わってきます。つまり、支出を削減しようとすると、情報システムにかかるコストが増えてしまうことになります。
この相反する 2 つの事柄を両立させるためには、思い切って学内の ICT 環境をクラウド化によって統合し、運用・保守を外部に任せるしかないと考えたのです。」
そして、国士舘大学の ICT 環境クラウド化のプロジェクトがスタート。2011 年 5 月から入試管理・履修管理システム、学術リポジトリ サービスなどがパブリック クラウド上に展開されてサービスインしています。
その後も、図書館システム、人事給与システム、財務会計システム、そして学内のポータルサイトなど複数のシステムが夏から秋にかけてサービスインする予定です。
国士舘大学のクラウド ICT 環境がすべて完成すると、IC カードを使った学生証でアクセスしたデータとも連携して出席管理はもちろん、図書館の利用状況、メールやポータルを利用した教授とのコミュニケーションなど、学生のキャンパスライフに関する情報がすべて連携し、より効果的な教育・学習支援が図れるようになると、総務部 人事課 課長 福本正幸氏は説明します。
「本学の基本方針として、学生サービスをいかに向上させるかということがあります。そこで、学生のキャンパスライフをサポートするために、各学年に学生係という管理者を配し、履修状況から成績まですべてに目をとおしています。今後これをさらに効率化することが大切です。たとえば、従来の履修システムでは、前期の履修科目の登録情報を教員に渡せるのが、夏休み直前になってしまうようなこともありました。
こうした課題を 1 つ 1 つ解決して、さらに未だかつてどこの大学でも実現していなかったような、情報共有環境を築いて活用していくことが、今回のプロジェクトの最大の目的になります。」
そして、この理想的環境を実現するために選ばれたのが、Windows Azure Platform をはじめとするマイクロソフトのクラウド ソリューションでした。
<導入の経緯>
圧倒的なコスト パフォーマンスと開発生産性の高さで Windows Azure を採用国士舘大学の学内システムには、Windows Azure Platform (Windows Azure、SQL Azure) を基盤として、ポータルサイトの構築に Microsoft SharePoint Online、CRM (Customer Relationship Management) システムとして Microsoft Dynamics CRM Online、そして卒業後も一貫して利用できるメールシステムとして Microsoft Live@edu など、さまざまなサービスが活用されています。
しかし、Windows Azure 採用に至るまでの経緯は、「決して平坦ではなかった。」と、国士舘大学附属図書館 事務部長 植田英範氏は振り返ります。検討を開始した当初から、大学にとって最大の資産である "学生"の面倒見を良くするために、CRM システムを重視していました。
そして実はこの方針に沿って 2010 年初夏まで比較検討を行った結果、一旦は salesforce.com の採用を決定していたのです。
「私たちとしては、コストを削減するために組織そのものを変革する考えでいました。今まで、学内のシステムすべてを情報科学センターと情報基盤センターで運用・管理してきたもの、すべてを外部に委託するつもりでした。ですから求めていたのは IaaS (Infrastructure as a Service) ではなく、既存の学内システムに代わるものを SaaS (Software as a Service) と PaaS (Platform as a Service) の組み合わせで、すべて大学の外のサービスに切り替えることを基本に据えました。
そういう意味で Google Apps も Amazon EC2 も選択肢から外しました。Windows Azure については、従量課金だったために、当時はランニングコストを明確に試算することができませんでした。そこで、ユーザー課金でコストが可視化できた salesforce.com の採用に至ったわけです。」
こうして 2010 年 6 月、プロジェクトは進められますが「コストが問題になった。」と植田氏は続けます。
「まず、salesforce での構築に際しては、ストレージを新たに用意する必要がありました。そして Salesforce CRM とは別立てのデータベースも運用しなければならない、さらに既存システム資源がすべて無駄になってしまうということで、開発費の見積金額が非常に高額になってしまっていました。
そうして困っているときに、マイクロソフトさんが、株式会社タイムインターメディア (以下、タイムインターメディア) さんとともに再度 Windows Azure の提案に来られたのです。」
しかし当時はまだ Windows Azure の導入実績が乏しく、大学側としては不安も感じていたと言います。しかし、その「不安」は構築を請負ったタイムインターメディアとの親密なコミュニケーションを通じて解消されていきました。
「2010 年夏の時点では Windows Azure の事例がまだ少なかったとはいえ、ASP.NET の開発ノウハウを活かせる上に、Microsoft Dynamics CRM Online などの SaaS も提供されていたため構築も容易であるとタイムインターメディアさんも自信を持たれていました。そこで、1 ~ 2 週間の検討時間をもらいました。」と植田氏が言うと、福本氏も「最初にお会いした時に、当時抱えていた問題点を次々と問いかけますと、どれも非常に素早く回答が得られました。このスピード感こそ、私たちがクラウドに期待していたものだと感じました。」と、当時を振り返ります。
こうした検討を経て 2010 年 12 月、すでに開発が進んでいた salesforce.com の導入を中止し、 Windows Azureをはじめとするマイクロソフト クラウドソリューション に切り替えることを決定して、開発プロジェクトが再スタート。2011 年 5 月から段階的にサービスインを果たしています。
<システム導入効果>
各システムが連携するメリットを活かし学生を生涯サポートする「学内 SNS」実現へ  |   株式会社タイムインターメディア 最高技術責任者 小宮山 峰史氏
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Windows Azure 採用によるコストメリットは「際立っていた。」と、瀬野氏たちは声を揃えます。
「すでに salesforce による開発が進んでいたところもあったのですが、Windows Azure による詳細な提案を受けてみると、システムの開発費に関して言えば、まず金額の桁が違いました。さらに利用料を試算してみたところ、ランニングコストを約 5 分の 1 にまで抑えられるという試算も出ました。もう、違いが極端すぎて『本当に大丈夫なのか?』と、何度も確認しました。
結果、ここまでコストが違うのであればシステム開発をやり直すことが最善と判断し、理事長に頭を下げてプロジェクトを仕切り直す承諾をいただきました。」(植田氏)
そして、計画途中からの変更にもかかわらず、当初計画に遅れることなく開発が進んだ理由について、タイムインターメディア 最高技術責任者 小宮山峰史氏は次のように説明します。
「当社はソフトウェア開発を専業にしているため、これまでホストからの移行に際しては、お客様と同じハードウェア環境をどうやって確保するかがネックになることが多かったのですが、今回は Windows Azure を採用することで、ハードウェアの問題がいきなり解決されてしまいました。
それから、当社には、ASP.NET の開発で培ってきたノウハウを活かした『DODAI』というフレームワークがありまして、これをほんの少し変更するだけで、Windows Azure Platform での開発に適用することができました。
またホストコンピューターというものは、基本的に複雑な画面はなく、データ構造も単純ですから、データをほぼそのまま移行させることができました。容量やバックアップに関しても一切気にしなくていいですから、自ずと開発スピードも上がります。非常にやりやすかったですね。」
こうして実現した国士舘大学のクラウド ICT 環境の最大のメリットが、「各システムが連携して学生データを管理できることにある。」と瀬野氏が話すと、植田氏は次のように説明を続けます。
「学生サービスを手厚くする上では、各システムが連携することが欠かせません。たとえば今回のシステム刷新では、Microsoft Dynamics CRM Online 上に学生のデータベースを構築して、SharePoint Online による学内の各種サービス システムと連携しています。履修管理システムなど、学内の他のシステムとも連携しています。
やはり、このような『学生の ID を入れれば、学部学科情報から、出席状況、図書館利用、成績まで一連の学修状況が把握できる』という仕組みが、これからは必須になります。学生の側も、こうした情報化にとても反応が早いですし。」
こうした学生たちの変化と、最新の ICT 環境の実現を受けて、国士舘大学では独自の学術リポジトリ システムの活用が進んでいます。
これは、「学生各自が学習した教材や、作成した資料などをすべてクラウド上に保管し、いつでも、それこそ卒業後も自由にアクセスして取り出すことのできるリポジトリ サービスの実現であり、大学と学生を密接につなぐコミュニケーション ツールでもあります。」と、植田氏は説明します。
「学生にとっては授業で使ったドキュメントの数々や、自分で作成したレポートなどを卒業後、社会で働く中で改めて読み直したり、活用したくなる場面もあるでしょう。学生時代に自分が学んだ資料にアクセスして引き出すことのできるリポジトリ サービスは、学生にとって大きな価値があると思います。
学生全員の資料をアーカイブして、生涯にわたって保存・運用するというサービスは、ストレージの容量を気にする必要もないクラウド環境を活用すればこそ、実現できることです。」
また瀬野氏は、最近の学生のコミュニケーションのスタイルについて、次のように指摘します。
「最近の学生とのコミュニケーションは、口頭での質疑応答や電話での連絡よりも、メールの方が多いくらいです。講義の最中に手を挙げる学生はいなくても、メールではさまざまな質問が送られてきますからね。メールを使った指導に関しては、学生たちも非常に積極的です。『このレポートのここがおかしい』と返信すると、すぐに修正して送られてきますから。」
植田氏が続けます。
「そこで学内 SNS ともいえる新しいサービスを提供して、教員と学生、あるいは学生同士のコミュニケーションを活性化させることも計画しています。学内 SNS には、学生証用にデータベースに収められている各自の顔写真も表示されますので、教員にとっては学生の顔と名前を一致させた状態で指導が行えるようになります。SNSを通じたコミュニケーションの履歴を、自動的に蓄積、分析できれば、よりよいサービスの提供や教育内容の充実に役立てることができると思います。」
<今後の展望>
大学間の学術情報ネットワーク構築など「社会貢献」にも向けた、さらなる取り組みを国士舘大学では、今後、Microsoft Office 365 の採用も視野に入れ、学内の PC をすべてシンクライアント化していくことも検討。学内で活用するソフトウェア、システム、そしてデータのすべてを "パブリック" と "プライベート" の 2 種類のクラウド サービスを用途に合わせて使い分けるハイブリッド クラウド環境に預けて、場所と時間を選ばずにアクセスできる、より高度な ICT 活用を目指して、今後ますます進化・発展させていく予定であると言います。
他に先駆けて、先進的なクラウド活用に踏み切った決断について福本氏は、「大学の発展に貢献することを考えれば、『まだ誰もやっていないからやる』というパイオニア精神が必要。」と話します。
「たとえば、スポーツ医科学科を設立して救急救命士の育成を始めたときも反対の声がありました。前例がありませんからね。しかし今、東京消防庁の救急救命士は、本学の卒業生が一番多いのです。ほかの学校が同じような学科を設立する中、国士舘がアドバンテージを保てるのは、やはりパイオニアであったことが大きいでしょう。
学内の ICT 環境も同じです。より高度なサービスを提供することが大学の発展のために大事なことであり、なおかつ ICT にかかるコストを抑えていくことが大学経営に必須である以上、クラウドの可能性に賭けるのは必然でしょう。」
また、クラウドの活用は国士舘大学内だけに留まらず、「世田谷 6 大学コンソーシアム」 (参加校 : 国士舘大学、駒澤大学、昭和女子大学、成城大学、東京農業大学、東京都市大学) において、クラウド上のデータベースを活用して、互いの教材を共有するなど、新しい学術情報のネットワークを構築していこうというプランも検討されていると言います。
最後に、瀬野氏は次のように締めくくります。
「すべての教育機関の『役割』というものは、学生たちが社会に出て以降、それこそ何十年もかかって評価されていくものです。従って、学生たちが卒業後、どのように社会で生きていくのかということが大変重要になります。
情報化が進む現代社会の中で学生たちが活躍し、周りから評価されるためには、教職員や教材などだけではなく、広い意味での教育環境を向上していく必要があると感じています。そのためには、たとえ『実験だ』と言われても最新の技術を積極的に活用することに意義があるでしょう。クラウドを取り入れることで『教育環境の充実』と『経費の削減』、そして『社会貢献』にもつなげていくことができれば、これほどいいことはないと思っています。」
本ケーススタディに記載された情報は初掲載時のものであり、閲覧される時点では変更されている可能性があることをご了承ください。 本ケーススタディは情報提供のみを目的としています。Microsoft は、明示的または暗示的を問わず、本書にいかなる保証も与えるものではありません。 | |