
通常の「ローソン」に加え、美と健康を考えたライフスタイルを身近でサポートする「ナチュラルローソン」や、新鮮な野菜や果物を 100 円均一で提供する「ローソンストア100」など、お客様の多様なニーズに応えるマルチな店舗展開を図り、「"みんなと暮らすマチ" を幸せに」するという企業理念を実践する株式会社ローソン。
同社では、こうした取り組みをさらに深め、お客様に選ばれ続ける存在であるために、社内のコミュニケーション環境を刷新し、社内の活力を高めるための「次世代 IT システム」の礎を構築しました。また、このシステムで得られる情報を活かし、「店舗の業務改革」を並行して実施中。社内を活性化させるための、横断型プロジェクト「元気になろーソン!」との協調など、「使いやすい」システムを、業務に確実に「定着」させることで、社員 1 人 1 人が、電子メールのやりとりや、社内情報の検索に費やしていた時間を大幅に削減しています。


コンビニエンスストア業界のイノベーション リーダーである株式会社ローソン (以下、ローソン)。
同社では、店頭にあるキオスク端末「Loppi」を活用し、ローソンチケットやグッズ販売、支払い代行など、さまざまな利便性を提供するだけではなく、顧客層の年齢や嗜好の変化に合わせて、「ナチュラルローソン」や「ローソンストア100」、そしてグループ店である「SHOP99」など、マルチな店舗展開を行うことで、多彩なニーズに応えています。
しかし、マルチフォーマットにビジネスを展開し、サービスが充実するのと並行して、フランチャイズ店舗へアドバイスとノウハウの提供を行う SV (スーパーバイザー) をはじめとする全国のローソン社員への各種情報の周知徹底が難しくなっていたと、ローソン 常務執行役員 CIO ITステーション ディレクター 横溝陽一氏は言います。
「社長からのメッセージや、各種営業情報など、全社に周知徹底すべき情報は、数多くあります。しかし、全国の営業所に散っていて、なおかつ忙しく移動を繰り返す彼らに、それらの情報をあまねく伝えるには、システムが不足していました。この 10 年間、ローソンでは Notes を使ってきたのですが、情報検索ができないため、情報がサイロになっていたのです」。
現場の社員からも、「マルチフォーマットでのビジネスが盛んになってきた 2007 年の下期から『もっと良いコミュニケーション環境にできないか』という声が聞こえるようになってきました」と説明するのは、ローソン ITステーション IT基盤 部長 小畑康治氏です。そうした状況の中、2008 年 3 月に行われた役員合宿を経て、ダイレクトにコミュニケーションできるしくみを導入し、より効率的なポータルサイトや電子メール活用によって効率的に情報を伝達、共有できる情報基盤を求めて、Active Directory を認証基盤として、SharePoint Server と Exchange Sever を活用したユニファイド コミュニケーション環境の構築が決定されました。
ローソンが目指したユニファイド コミュニケーションは、「全社の情報の流れを整理し、情報分析機能とアクションをつなげられる本部発信型のインテリジェンスなコミュニケーション基盤へ昇華する IT 基盤であり、顧客対応能力を高められる各種のシステムを融合することができる IT 基盤への刷新を図ることを目的にしました」と、横溝氏は説明します。
「今回のプロジェクトでは、ローソン独自のユニファイド コミュニケーションを含む『次世代 IT システム』と、顧客起点での品揃え・発注を実現する『業務改革システム』の構築を同時進行で進めました。
システムと業務プロセス改革を連携させることで社内のワークスタイルを変革し、社員のモチベーションと生産性を高められる、"個の創発" を促せるようにしたためです。
社員それぞれが創造性を発揮するためには、やはり『情報がないのでわからない』という状況をなくす必要があります。そもそもイノベーションというのは、人から始まるものだと、私は考えています。進化論でも、変化に対応した種が生き残ってきています。だからこそ、私たちはファースト ペンギンとなるべく、この大規模なシステムの構築を進めました。企業の価値を高めていくためには、社員 1 人 1 人が自分で考え、創造性を発揮し、チームでアイデアを昇華していくプロセスを阻害するようなシステムがあってはならないのです」。


ダイレクトにコミュニケーションできるしくみを導入し、さらにトップメッセージなどの全社情報の伝達を確実にする「全社ポータル」と、営業情報に特化した「運用ポータル」を公開し、電子メールも会議室予約などのスケジュール管理と直結した、利便性の高いユニファイド コミュニケーション環境の導入を決めたローソン。
このプロジェクトを進めていくうえで、2007 年から始められた、ある取り組みが大きな意味を持っていたと、ローソン ITステーション 本部IT マネジャー 石田剛彦氏は言います。
「これまでのコミュニケーション環境を一新して、新しいポータルとメール システムを導入するということを全社に説明する際に、一番気を遣ったのが、現場に『余計な作業が増えるのか?』という誤解を与えないようにすることでした。
実際、ポータルで共有される情報は、これまで各部署が、旧環境で公開してきた情報と変わらないものです。
自分たちから必要な部署に共有したい情報は、今までと同じ手間で、より効率的に共有できる。さらに、経営層から全社に通達される必須情報などは、労せずして閲覧できるようになります。
しかし、10 年間同じグループウェアを利用してきましたから、新しい環境について、言葉だけではなかなかイメージしにくいものがあります。
そこで、私たちとしても大変に助かったのが、『元気になろーソン!』という社内プロジェクトの存在でした」。
「元気になろーソン!」とは、ローソンで働く社員やお店の人たちが元気になって、マチの元気に貢献し、ひいては日本の元気にまで貢献することを目標に掲げた社内プロジェクトであり、事業所や肩書に関係なく、全社横断的に募集されたメンバーにより行われている活動です。店頭でのお客様へのキャンペーンも含めて、さまざまな活動がこの名称の下に展開されています。
そして、ローソン社員のワークスタイルを変える今回のシステム構築に際して、エンドユーザーである社員への概要説明や操作説明会、そして、全社ポータル公開後の運用にも、この「元気になろーソン!」プロジェクトのメンバーが大きな役割を果たしています。
「元気になろーソン!」の中心的存在である児島聡氏は、次のように説明します。
「私たちは、2007 年からこのプロジェクトを行い、全国の営業所に出向いてきました。
その中で感じていたことの 1 つが、本部と各営業所との間に、物理的、心理的な距離があることでした。たとえば、新商品が発売されることは分かっていても、それが『どんな戦略に基づいて発売されるか』というところまでは伝わっていない。そういう印象です。店舗がマルチに展開される中で、余計にそうした情報の温度差が生まれていたように思います。
私たちの主な任務は、社内のコミュニケーションを活性化させて、そうした状況をなくしていくことにあります。ですから、このポータル サイトやメール システムの刷新についても、各所で説明をさせていただきました。
実際に使ってみてもらえば、今までよりも便利なのは明らかですし、説明をしているときでも、特に混乱はなかったですね」。
こうして、「ユニファイド コミュニケーション システム」は、2008 年 3 月から構成要素や全社への成功する展開の進め方など、具体的な検討を経て 2008 年 11 月から本格展開を開始。そして、同年 8 月から構築をスタートし、実質 6 か月後にはサービスインするという非常に早い展開を行いながら、現場に混乱を招くこともなく、スムーズに受け入れられたと言います。
「サービスインの日から、10 人ぐらいメンバーを揃えて、『よろず相談室』というサポートの窓口を開設していたのですが、問い合わせは、少なかったです。もっと爆発的に電話が鳴るかと思っていたのですが、ホワイトボードに貼った付箋の数も、ボード 1 枚で十分に足りました」と石田氏も説明します。
また、これだけの短期構築にも関わらず、安定して稼動していることについて、ローソン ITステーション IT基盤 マネジャー 高原理彦氏は「認証からクライアント管理まで、すべてをマイクロソフト製品で標準化したことが、良かったと思います」と評価しています。


導入の効果
コミュニケーション環境の「不」を解消し、業務効率を 10% 向上
新システムによるユニファイド コミュニケーション実現による効果は、明らかだとメンバーは口を揃えます。
「私が特に印象的だったのは、北海道の営業所で言われたことなのですが、ダイレクトなコミュニケーションのしくみを使うことで『これで雪の中を移動せずに済みます』と。これは、感慨深かったですね」と石田氏が言えば、児島氏も、「この間、情報を発信している部署の人から言われたことなんですが、今までは SV さんとか現場の人から問い合わせが来て、情報の掲載場所を教えても『どうやってそこに到達していいか分からない』と言われることが多かった。けれども、今は『全社ポータルのここにあります』『キーワードを検索してみてください』と伝えるだけで良くなった、と。非常に便利です、と言われました」と、続けます。
さらに石田氏は、現場からの評価として一番に挙げられるのは、「Active Directory で認証基盤を統一したことによるシングルサインオンの実現」であると言います。
「今までは Notes だったり、ローソン独自の業務システムのメニューであったり、パソコンを立ち上げてから何か作業をするために、パスワードと ID を、2 回 3 回と入力しなければならなかったのですが、今では、情報がすべて全社ポータルに集約されていますので、必要な情報にすぐにたどり着けます。しかも、全社ポータルから、既存のローソン独自の業務システムのメニューに移動する際にも、リンクをクリックするだけで、そのまま遷移できます。この便利さを、皆さん実感されています」。
事実、「次世代 IT システム」導入後の効果について試算した結果によると、下記のような数字が出ていると言います。

ポータル サイト導入効果
情報を探しやすいレイアウトや、ドキュメントの全文検索機能により、必要な情報を探す時間が、1 人 1 日当たり平均で 35 分削減。

メール システム刷新効果
操作性や検索機能の向上、会議室予約やスケジュール管理との直結によって電子メール利用に費やす時間を、1 人 1 日あたり平均で 50 分節約。
「このほか、全社の集計業務も、従来は各人が Excel に入力したものを、人力で支社別や全社で集計していましたが、SharePoint Server を活用することにより、自動集計が実現でき、かつ、誰が入力を終わっているかというステータスもガラス張りな状態となり、入力をする催促も自動化が図れました」(小畑氏)。


すでに高い導入効果を示している「ユニファイド コミュニケーション」ですが、ローソンが目指すイノベーションは、これからも途切れることはないと、横溝氏は言います。
「これからは "個" が主体となって情報を発信していく時代です。だからこそ、社員が自発的に考え、創造性を発揮していけるような環境を構築したいと考えました。ある程度は会社でコントロールしながらも、"個" の良さを最大限に引き出し増殖していける環境とし、それぞれの創造性が掛け算で創発できる、イノベーティブなニーズに応えることが理想です。
そのための基盤というのは、やはり今回構築したような Web ベースのしくみだと思っています。
たとえば、ローソン グループとして、全国に店舗があり、オーナーの方々と、その店で働くクルーの方々 ―― こうした方々の声を集合知として、どういう風に取り込んだらいいか。そういうしくみにもチャレンジしていきたいですね」。
横溝氏が語る展望のうち、いくつかはすでに萌芽しています。それが、ポータル内に開設された社内コミュニティであり、「元気になろーソン!」活動の一環として全国のクルーに参加を呼び掛けたイベント「くるばん」(クルー バンド コンテスト : 総勢 183 組が参加) です。また、近日実施予定のイベントも続々と控えています。
「ポータル内に開設できるコミュニティは、管理権限も、コミュニティのリーダーに渡されます。すでに、『働くママのコミュニティ』など 46 のコミュニティが作られています」と石田氏が言えば、「たとえば、新型インフルエンザに関する情報交換のコミュニティでは、盛んに書き込みがありました。これは、他のエリアの社員にとっても、クルーのシフト構成が難しくなるなど、今後の対応を想定するうえで貴重な情報交換になっていると思います」と児島氏も続けます。
システムと業務プロセスが常に連携し、進化していくローソンの情報基盤。
Web 2.0 のその先を目指す同社の取り組みは、今後も進化を続けていくことでしょう。