Hyper-V を利用してサーバー数を大幅に圧縮し 「シングルインスタンス・マルチサイト」のコンセプトに基づく 汎用生産管理システムを構築
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精機・映像・インストルメンツの 3 つの事業領域を中心に、メーカーとして「ものづくり力」の絶えざる革新に挑戦している株式会社ニコン。その一環として同社は現在、SAP ERP を核とする新たな汎用生産管理システムの構築に取り組んでいます。そのプラットフォームとして採用したのが Windows Server 2008 と SQL Server 2008 です。さらに、Windows Server 2008 に標準実装されている仮想化テクノロジ Hyper-V により、SAP システムの開発機および品証機を仮想環境で構築。サーバー台数の圧縮により大幅なコスト削減を実現するとともに、将来への拡張性を担保しています。
<導入背景とねらい>   株式会社ニコン システム本部 情報システム部 第二システム課 マネジャー 坂口 洋哉 氏
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グローバルな生産・販売体制の拡充に向けて、将来を見越した事業分社化、海外生産拠点の強化といった経営革新に取り組んでいるニコンでは、さらなるスピード経営と変化対応力の強化を図ることを目的に、2007 年 10 月より新しい生産管理システムの策定を開始しました。ハードウェア、ソフトウェアともに老朽化という課題を抱え、現場の要求に対応して拡張してきた自社開発システムは、データの定義・コード体系などの整合性確保が困難な状況にありました。システムの刷新は、同社が競争優位性を維持していく上できわめて重要な課題でした。
たとえば、同社の主力商品であるデジタルカメラに代表される製品群は、アクセサリーを含めて多種多様なバージョンがあり、商品ライフサイクルも短期化する傾向にあります。製品を市場にタイムリーに投入するためには、製品開発期間の短縮、生産工程の効率化に向けてプロダクト ライフサイクル マネジメント (PLM) のアプローチを徹底する必要があります。しかし受注、出荷、購買管理などのシステムが個別に存在し、複雑に連携する従来の状況では、システム面からのフォローが十分に行えないこともありました。
また、ある子会社で作っていた製品を海外の他の拠点で量産しようという場合にも、データの構造が異なるため準備に時間を要する場合がありました。さらには、グローバルに点在する拠点ごとの状況を確認する場合にも、データの読み替えなどの調整が必要となり、リアルタイムに状況を把握することが困難でした。
こうした課題を解決するシステムの再構築に当たっては、システムならびに業務プロセスの標準化が必要となります。そこで同社では、すでに財務会計や人事システムとして導入していた SAP ERP を基盤に、新たな生産管理システムの構築を決断しました。新システムプロジェクトを発案、推進している株式会社ニコン システム本部 情報システム部 第二システム課 マネジャーの坂口 洋哉 氏は、検討のポイントを次のように説明します。
「システムに求められる要件は、J-SOX など内部統制への対応、業務の連携性・スピードの向上、グローバルでの連携強化および経営の可視化、予算実行管理、近い将来に必須となる国際会計基準への対応など、多岐にわたります。いずれも、その前提にはシステムの標準化が不可欠です。その意味で SAP ERP は、グローバル レベルで標準化された業務プロセスを網羅しており、生産管理においてもそれを活用できます。また、海外子会社には SAP ERP を導入しているところが多く、連携性という観点でもメリットがあると考えました」
<導入の経緯>  |   三井造船システム技研株式会社 基幹ソリューション事業部 IT サービス部 福山 健治 氏
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ニコンは新たな汎用生産管理システム構築に向けて、2008 年 10 月に正式なプロジェクトを発足しました。プラットフォームには、最新のテクノロジを活用し、長期的な視野に立ってライセンスを維持するという理由から、アプリケーション サーバーに Windows Server 2008、データベースに SQL Server 2008 と、いずれも最新バージョンを選定しました。
計画の立案からプロジェクトの実施に至る 3 年間に、社会・経済環境は大きく変化しました。それでも革新に取り組み、時代の変化に屈しない "強いニコン" を定着させるため、継続的な成長に向けた体制づくりの一環としてプロジェクトの位置付けが変わることはありませんでした。しかしグローバル規模の激しい競争の中で、プロジェクトのコスト管理はこれまで以上に重要となります。
最も頭を悩ませたのが、サーバー構成をどうするかということでした。SAP ERP では本番機、品証機、開発機という 3 ランドスケープ構成が必須で、しかもミッション クリティカルな要求に応えていくためには、クラスタ構成で可用性を確保する必要があります。同社の場合、周辺システムを含めて 30 台近いサーバーが必要となり、実際にコストを試算してみると、予算をはるかに超えていました。
そこで、導入パートナーを務める三井造船システム技研株式会社 (MSR) は、新たな解決策を提示しました。それは仮想化により、SAP システムにおけるサーバーの筐体を減らし、大幅なコスト圧縮を行うという提案でした。具体的には、ニコンがサーバー OS として採用を決めていた Windows Server 2008 に標準装備されている仮想化テクノロジ「Hyper-V」を利用して、SAP システムにおける開発環境と品証環境を仮想環境で構築することです。提案を行った MSR 基幹ソリューション事業部 IT サービス部の福山 健治 氏は、当時を次のように振り返ります。
「Hyper-V を利用した SAP システムの構築について、当社は 2008 年 7 月より社内検証を実施していたため、品証機と開発機においては仮想化で十分に対応できると判断しました。同時に今回のプロジェクトでは、アプリケーション サーバーとデータベースにマイクロソフト製品を採用する方針が決まっていました。その意味で、標準装備されている Hyper-V は Windows Server および SQL Server との親和性が高い仮想化テクノロジとしてメリットが大きいと考えました」
仮想化は、全社的にインスタンス統合を推進しているニコンの方針にも合致しました。1 台の物理マシン上に複数の仮想マシンを構築し、異なるサービスを実行できるようになるからです。
この提案を取り入れたニコンは、Hyper-V がもたらしたコスト削減効果に驚きを隠せませんでした。
「まさにテクノロジの進化の恩恵だと実感しました。当初の試算と比較すると、導入コストが 5 分の 1、サーバー台数も 3 分の 1 に削減できたからです。実際にはいくつかのモジュール導入を先送りしたので、その分のコストも削減対象となっていますが、それでも期待以上の効果でした。サーバー OS に Hyper-V が標準装備されていたため、仮想化ソフトウェアを別途購入する必要がなかったことと、さらに運用時には、サード パーティ製品ではなく、OS の 1 機能としてマイクロソフトのサポート対応が得られることも大きなポイントでした」(坂口氏)
<システムの概要>   株式会社ニコンシステム 第 4 システム本部 第 4 開発部 加藤 直孝 氏
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今回のプロジェクトにおいて、ニコンは国内および海外拠点を対象に「シングルインスタンス・マルチサイト」というコンセプトに基づき、システムを構築しています。具体的にはすでに導入済みの SAP ERP を含めてニコンのデータ センターに集約し、各サイトからアクセスして利用する方法です。これまで同社では、拠点や事業部単位でシステムを構築しており、インスタンスが乱立する状況にありました。それを統合することで、生産管理から発生した仕訳をシステム間の調整なく、財務会計にリアルタイムに連携できるシームレスなしくみ連携を実現し、可視化の精度を高めていくことが目的です。同時に、各拠点で個別にオペレーターを配置していた運用管理もデータ センターで一括することにより、人的リソースを削減し、運用管理にかかる工数を大幅に軽減できます。
一方、仮想環境において最も懸念されるのが、I/O のボトルネックです。これまで、仮想化テクノロジは性能上のオーバーヘッドが生じるため、SAP ERP のようなミッション クリティカルなシステムでは、パフォーマンスの低下を招くと危惧されていました。その意味において、Hyper-V は Hypervisor 型という新しいアーキテクチャのもとに開発されており、きわめてオーバーヘッドの少ない高速処理を実現します。加えて同社では、1 つのネットワーク カードに対して、3 ~ 4 の仮想 OS を実装するように分散させたり、I/O 系のファイバー チャネルを確保するなど、可能な限り遅延が生じない構成を工夫しました。汎用生産管理システムの運用管理を担う株式会社ニコンシステム 第 4 システム本部 第 4 開発部の加藤 直孝 氏は、「大井事業所から都外のデータ センターにリモート接続してテストを繰り返していますが、ボトルネックはほとんど感じられません」と語っています。
Hyper-V による仮想化がもたらすメリットはコスト面・運用管理面だけにはとどまりません。SAP システムにおけるテスト プロセスにも大きな変化を与えそうです。
「SAP ERP の機能を拡充していく際には、BASIS のテストが重要な意味を持ちます。しかし、現実問題としては、本番機はもちろんのこと、品証機も開発機もそれぞれ独立した専用マシンとして稼働しているため、パラメーターなどを変更して稼働を確認する際にも、従来は代替マシンを用意してテストを実施しなければなりませんでした。そのようなテスト環境を、仮想環境では仮想マシン上に容易に構築できるようになります。その結果、システム自体の品質を高めていくことにつながると期待しています」(加藤氏)
また、同社では新しい事業部で SAP ERP を導入した際に、これまでは研修専用のマシンを用意してトレーニングを行っていましたが、これも仮想サーバー内に展開することで容易に構築することが可能になります。
一方、Hyper-V 以外の部分では、SQL Server 2008 の効果も見逃せません。ニコンが特に注目しているのが、データ圧縮機能です。これは SAP システムにおける DBMS では、DBMS の標準機能において、初めて実証・保証された機能で、SQL Server 2008 の SAP 向け最新機能の 1 つといえます。
「現段階では最初に立ち上げる 1 サイト分の運用テストを始めたところですが、バックアップのファイル サイズは 20% にまで圧縮されました。ファイル サイズが小さくなれば、バックアップ時間も当然短くなります。業務要件から、全体のオンラインバックアップが 1 時間以内であることが求められていますが、十分に実現できるという実感があります。また、バックアップ先のストレージ容量が削減できれば、当然、その後に続くテープ ユニットを含めて、ストレージ周りのコスト削減にもつながります」(福山氏)
<今後の展望>ニコンの汎用生産管理システムプロジェクトは、2009 年 10 月に最初のサイトで本稼働を迎えます。そして、2012 年までに残りのサイトを順次カットオーバーしていく予定です。その際にポイントとなるのが、仮想環境をいかに効率的に運用管理していくかということです。その実現に向けて、同社では、仮想環境の統合管理を可能とする Microsoft System Center Virtual Machine Manager (SCVMM) を導入しています。
「今後は多数のプロジェクトで、仮想上に並行で SAP ERP のインスタンスを起こすことになります。その際に、SCVMM はチャイルド パーティションの作成を簡略化することを可能にします。さらには、SCVMM の機能を駆使して、可能な限り、運用管理の自動化を追求していきたいと考えています」(加藤氏)
また、同社では汎用生産管理システム以外にもさまざまな SAP システム構築プロジェクト案件が立ち上がっています。それだけに今後、今回のプロジェクトで蓄積した仮想化のノウハウを活かす機会は早々に到来しそうです。
たとえば、MRP (資材所要量計画) のように重要なアプリケーションにおいて、実行中の仮想マシンの状態をオンラインのまま意図したタイミングで保存する Hyper-V のスナップ ショット機能を使って、ベンチマーク テストを行うことが検討されています。スナップ ショットにより、プログラムの変更前後を容易に比較できるようになるからです。
さらには、最新バージョンの Hyper-V 2.0 (Windows Server 2008 R2) では 64 CPU までのホスト サポート、仮想マシンを停止することなく移動できる Live Migration などスケーラビリティ面、運用面ともに大幅に向上しています。今後は、案件によって本番環境での活用も実現できるといいます。同プロジェクトを通じて得られる仮想化のノウハウが、今後のシステム拡充計画のさまざまな場面で活躍することは間違いありません。
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