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奥出雲町

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掲載日: 2011 年 11 月 15 日

Windows CE を活用した多機能テレビ電話端末「万事万端」を採用。きめ細かなニーズに応える改良と運用により、約 640 世帯の高齢者の "安心生活" をサポート

コールセンター

コールセンター

町の高齢化率が 35% を超える島根県仁多郡奥出雲町。同町では、総務省の地域 ICT 利活用モデル構築事業の一環として、2008 年度から「島根県奥出雲町 ICT 利活用モデル事業」に取り組んでいます。この事業は FTTH でつながれた最新の情報端末を活用して「声かけ」や「安否確認」、「買物支援」などの機能、サービスを提供し、高齢者の生活を支える「生活インフラ」を構築するものです。この生活インフラの実現に際し、奥出雲町では、「高齢者に使いやすい操作性」を備え、「現実のニーズに則して導入後も継続的に改良可能」な情報端末を要望。選ばれたのは、Windows CE を OS とする情報端末「万事万端」でした。

<導入の背景とねらい>
高齢化率 35% の町で「地域見守り」、「在宅医療支援」などを実践する "生活インフラ" を構築

奥出雲町役場 総務課 情報通信係長
石原 和夫 氏
コールセンターの皆様

スサノオノミコトとヤマタノオロチ退治を伝えるおろち神話や、たたら製鉄で知られる "神話の里" 島根県仁多郡奥出雲町。
人口 14,674 人 (2011 年 4 月 1 日現在) の同町の高齢化率は 35.6% に及び、高齢者の一人暮らしも全戸数の 18% 近くに及んでいます。昼間独居世帯を加えると、昼間は半数以上が高齢者のみの世帯となる状況において、医療・福祉サービスの需要増と福祉にかけるマンパワーの慢性的な不足が課題となっていました。

そして、この課題に対応し、高齢者の安心、安全な生活に貢献するために、総務省の地域 ICT 利活用モデル構築事業の一環として、2008 年度から「島根県奥出雲町 ICT 利活用モデル事業」=「高齢者等の安心・安全生活サポート事業」を開始しています。

具体的には町内全戸に引き込まれた FTTH (Fiber To The Home : 光ファイバーによる家庭向けデータ通信サービス : 2007 年 12 月導入済み) を活用し、「地域見守り」、「ヘルスケア」、「生活支援」、「在宅医療支援」に役立てることを目的として、75 歳以上の高齢者がいる約 640 世帯を対象に、テレビ電話を備えた多機能端末を無償で配布 (2009 年 1 月)。
毎日「声かけ」のために高齢者宅にテレビ電話を掛けたり、相談の窓口として機能するコールセンターを中心に、民生児童委員や福祉・医療施設などと協力体制を構築し、既に 2 年以上運用されています。

この計画のカギとなるシステムについて、奥出雲町では当時、提案型の入札を実施。
「高齢者宅に導入した後も、継続的に機能の追加や改良が行えること」を重視して選考が行われたと、奥出雲町役場 総務課 情報通信係長 石原和夫氏は振り返ります。

「ICT 活用には、非常に大きな可能性があります。しかし、一方で『高齢者が ICT 機器を活用できるのか』という疑問の声もありました。そこで高齢者の利用を前提として、インターフェイスをわかりやすく、操作性をシンプルにするといった工夫も行いましたし、民生児童委員の協力も頂きながら、根気良く使い方を説明する用意も整えていました。
でも、それだけでは不十分なのです。75 歳以上の高齢者はもちろん、私たちにとっても初めてのサービスを運営するわけですから、各家庭に導入した後で、当然のように『ここを直したい』、『こういう機能があると便利なのに』という要望、改善点が挙がってくるでしょう。その声に応えることのできる柔軟性を備えていることが重要だったのです。」

そして、数社が提案を行った中から選ばれたのが、Windows CE 5.0 を OS として株式会社コトブキソリューション (以下、コトブキソリューション) が開発した多機能テレビ電話端末「万事万端」でした。石原氏は次のように言います。

「いくつかの提案を受けた中で、導入後の機能追加なども可能だったのは、この『万事万端』だけでした。高齢者の方々とコールセンター、あるいは遠くに離れたご家族の方々、さらには病院や商店との双方向コミュニケーションを実現する上で、各社ともに非常に魅力的な提案をしていただいたのですが、応用が利かなければ意味がありません。
事実、2009 年 1 月に導入してから 2 年以上が経過しているのですが、利用者の要望に沿った細かな設定変更を含めて、非常に数多くの変更や機能追加を行っています。おかげで、かなり使っていただけるものに育っていると思います。」

<システム概要>
テレビ電話や安否確認メール、買物支援など、充実の機能で "安心" を提供

奥出雲町が取り組んでいる「高齢者等の安心・安全生活サポート事業」は、多機能テレビ電話端末「万事万端」をフロントとして、地域ぐるみの高齢者支援体制を構築するための取り組みであり、さまざまなコミュニケーションを仲介する「万事万端」には、豊富な機能が搭載されています。

システム概要図

システム概要図
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■奥出雲町における「万事万端」の主な機能
 ・テレビ電話 :
 タッチパネルだけではなく、接続されたプッシュ式の電話機からも電話を掛けることが可能。
 ・安否確認「おはようタッチ」 :
 設定された時刻に表示される画面にタッチすることで、3 名までの受信者にメールを送信。
 ・買物支援 :
 約 40 の協力店舗の取り扱い商品を画面で確認しながら、テレビ電話で注文が可能。
 ・血圧測定 :
 毎日の血圧測定結果は、グラフで表示。血圧のグラフはコールセンターからも確認できる。
 ・その他 :
 災害避難所情報、時刻表、ごみ収集日、アンケート調査機能、デジタルフォトフレーム機能など。

「万事万端」は、日常、いつでも通話できるテレビ電話としての役割が与えられているため、電源が切られることのないように、電源ボタンが外されています。
その一方で毎夜、自動的に再起動がかかるように設定されており、搭載されたアプリケーションのアップデートなども、このときに反映される仕様になっています。このため、新たな機能を追加したり、改良を加えたりした場合でも、メンテナンスのために各家庭を回る手間が大幅に軽減されています。

高齢者の生活をサポートするという目的上、安定稼働が求められるこの「万事万端」の OS に Windows CE を選択した理由について、コトブキソリューション 取締役 開発統括部長 戸野文雄氏は、「Linux などのオープンソースとは違い、メーカーの確かなサポートが得られること。そして、開発を効率良く進めるに適したソリューションなどが揃っていること」を挙げています。

「Windows CE であれば、マイクロソフトのサポートが得られます。開発ツールも揃っていますし、パートナー企業からも、さまざまなツールやサービスが提供されています。この『万事万端』は、日々、長時間稼働し続けることが前提の製品ですから、十分な可用性が求められます。そこで、横河ディジタルコンピュータ株式会社が提供する『QQFORCE』という動的障害解析ツールを活用させていただきました。」

「QQFORCE」は、開発時のバグ解析に役立つだけではなく、製品そのものに組み込むことで、使用中のアプリケーションの動きなどをすべて監視。障害発生時の原因の究明と解決に貢献します。さらに、この「万事万端」に組み込まれたバージョンでは、メモリリークなどの可能性を常時監視し、不具合が発生した場合には自動的に再起動し、利用者が一切関与することなく、復旧できるようにカスタマイズされています。
こうした仕組みを備えることで「万事万端」は安定的な稼働を続けており、「最近は特に、不具合に関する問い合わせなども寄せられてこなくなった。」と、石原氏も笑顔を見せます。

戸野氏は言います。
「QQFORCE のようなツールを自社で開発するとなれば、その負担は相当なものです。
逆に言えば、Windows CE という、よく知られた組み込み用 OS があり、パートナー企業がさまざまなツールやサービスを提供してくれているからこそ、私たちはお客様のご要望にお応えすることに注力できています。」

<導入効果>
アンケート回答者の 79% がテレビ電話で「安心」を実感

株式会社コトブキソリューション 取締役
開発統括部長
戸野 文雄 氏

株式会社コトブキソリューション
ビジネスソリューション部 課長
小森 泰彦 氏

奥出雲町では 2011 年 1 月から 3 月にかけて、約 640 世帯に配布した「万事万端」活用状況のアンケート調査を実施しています (回答数 約 48%)。
その結果、「テレビ電話を毎日、またはときどき利用する」と回答した方が 58% でした。しかし、「ほとんど使わない」と答えた 42% の高齢者でさえ、そのうちの 89% の方は「コールセンターとの会話に満足」と回答。さらに、「顔を見ながらの会話は安心、または楽しい」と答えた方が全体の 79%、「今後もぜひ使いたい、使ってもよい」と答えた方が 75% というように、結果として、ほとんどの方がテレビ電話機能に満足している実態が見えてきました。

石原氏は言います。
「導入当初は、テレビ電話なんて恥ずかしいという方が多かったのですが、最近は人の目を意識するようになったのか、お化粧するようになったおばあさんも増えました。生活に張り合いが出るという意味では、これは良い変化だと感じています。
やはり、これだけ生活に密着して、皆様に使っていただけると嬉しいですね。」

このような高利用率の背景には、コールセンターからの日々の「声かけ」通話のほか、活用を深めるためのさまざまな取り組みが存在しています。たとえば 2010 年 4 月からは、「町外モニター サービス」を開始。町外に住むご家族宅 17 件にも「万事万端」を提供しています。

「ご自宅にインターネット環境さえあれば、それが ADSL でも問題なく通話できます。お孫さんとの通話でも電話代を気にする必要がありませんし、非常に喜ばれています。
実はこのサービスを開始した後で、デジタルフォトフレームの機能を追加しています。やはり、一人暮らしされている高齢者の方々のお宅には、ご家族のお写真がたくさん飾られていますので、この端末を通じて最新のお写真を共有されるようになれば、もっと喜んでいただけるだろうと考えてのことです。
実際、ご家族の方にとっても、この端末を積極的にご活用いただく動機の一つになっているようです。」

そしてもう一つ、思いがけず喜ばれている機能として、聴覚の衰えた方のために用意した「手書き入力」が挙げられると、石原氏は続けます。
「これは簡単に言えば、双方向のお絵かきツールです。お互いに、画面を指でなぞると絵が描けます。
しかも、同時に書き込めるのです。描いた絵は保存もできますので、お孫さんと遊ぶのにもちょうど良いみたいですよ。」

こうしたさまざまな機能が追加され、喜ばれる状況について、コトブキソリューション ビジネスソリューション部 課長 小森泰彦氏も「机上で考えることと、現場で実際に使われる状況には大きな違いがあることを、改めて実感しています。アプリケーションの追加やアップデートなどで、できる限り皆様のご要望にお応えし、その成果が出ていることは素直に嬉しいです。」と話しています。

<今後の展望>
「万事万端」の機能をフルに活かし、さらなる地域活性も視野に

横河ディジタルコンピュータ株式会社
エンベデッドプロダクト事業部 事業部長
山田 敏行 氏

奥出雲町では現在、「万事万端」の活用を、75 歳以上の高齢者がいる世帯に限っていますが、このシステムが抱いている可能性は大きく、「もっと活用しなければもったいない。」と石原氏は言います。

「今は、高齢者の見守りを含めた生活インフラとしてのみ、システムを活用していますが、実は『万事万端』では、ビデオ映像による告知や、音声による告知配信など、さらにいろいろなことが実現できます。
今よりも活用の幅を広げて、若い世帯にも使ってもらうのも良いですし、町の活性化のための事業に転用することも十分に可能なシステムだと思っています。」

「万事万端」では、消防庁の全国瞬時警報システム J-ALERT に連携して緊急地震速報などを配信できるほか、Windows Media エンコーダーや Windows Server 2008 を活用した高品位な映像配信や音声告知配信が可能となっており、たとえば行政情報を配信表示したり、観光情報を配信してデジタルサイネージのような活用もできるようになっています。

FTTH やモバイル ブロードバンドなど ICT のネットワーク インフラの整備が進む中、「万事万端」のように高機能化した情報端末がもたらす可能性は「ますます広がっている。」として、横河ディジタルコンピュータ株式会社 エンベデッドプロダクト事業部 事業部長 山田敏行氏は次のように話します。
「技術の進歩により、ICT 活用が広がっている今、私たちもさらに良い製品、サービスの開発に努めなければいけないという想いを強くしています。
今回『万事万端』が不具合から自動復旧できるように QQFORCE をカスタマイズしていますが、高度な情報端末が一般に普及する中、こうして利用者にテクノロジーも不具合も意識させることなく、当たり前のように使っていただける製品、サービスを生み出していくことの重要性を、改めて実感しています。」

最後に、石原氏は次のように締めくくります。
「今、コールセンターは 3 名の女性スタッフで運用されていますが、テレビ電話がなかったら、約 640 世帯の高齢者と毎日顔を合わせてお話することなどできません。ICT をうまく使うことで、人と人のつながりが補強されているのを実感しています。
ネットワーク インフラの整備と、きめ細かいニーズに対応できる "成長するシステム" が、私たち奥出雲町が目指した高齢者の生活支援インフラとして、非常にうまく合致したのではないかと思います。」

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ソリューション概要

プロファイル

スサノオノミコトが降臨したと伝えられ「出雲神話発祥の地」にある奥出雲町外部サイトへ移動するため、別ウィンドウで開きますは、2005 年に旧仁多町、旧横田町が合併して誕生した、人口 14,674 人、4,891 戸 (2011 年 4 月 1 日現在) の町です。国指定名勝天然記念物である「鬼の舌震」をはじめ、美しく豊かな自然に囲まれた、観光の名所でもあります。

導入ソフトウェアとサービス

導入メリット

  • メーカーによる確かなサポートを受けた開発が可能
  • 広範な市場と、長年の実績を背景に、パートナー企業からリリースされているさまざまなツールやサービスを活用した効率的な開発が可能
  • Windows Media フォーマットによる高品位な映像、音声による緊急地震情報の配信や、行政情報の配信などが可能

ユーザーコメント

「今、コールセンターは 3 名の女性スタッフで運用されていますが、テレビ電話がなかったら、約 640 世帯の高齢者と毎日顔を合わせてお話することなどできません。ICT をうまく使うことで、人と人のつながりが補強されているのを実感しています。ネットワーク インフラの整備と、きめ細かいニーズに対応できる "成長するシステム" が、私たち奥出雲町が目指した高齢者の生活支援インフラとして、非常にうまく合致したのではないかと思います。」

奥出雲町役場 総務課
情報通信係長
石原 和夫 氏

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