タッチ パネルと特注の寿司レーンを組み合わせたシステムで、「流れ鮨」という新業態を開発。集客向上と原価ロスの大幅低減を実現。
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静岡県を拠点に、東京都、横浜市で「沼津魚がし鮨グループ」を経営する沓間水産株式会社では、回転寿司特有の原価ロスを削減するために寿司の提供システムを一新。寿司を乗せたトレーの IC タグを読み取り、注文したお客様のテーブルへ自動的に押し出すレーンと、いつでも気軽に注文ができるタッチ パネルを組み合わせ、「流れ鮨」という画期的な業態を生み出しました。これにより、売れ残り商品の廃棄に伴う原価ロスを大幅に削減すると同時に、便利さと話題性が人気を呼び、集客数の向上をも実現しています。
<導入背景とねらい>
回転寿司特有の廃棄コストを削減するためのシステム作り沓間水産株式会社 (以下、沓間水産) は、静岡県を中心に東京都内、神奈川県横浜市内で「沼津魚がし鮨グループ」を展開。1981 年の創業以来、江戸前寿司、回転寿司、宅配寿司という各業態において、駿河湾産の新鮮な海の幸を提供する寿司店舗チェーンとして発展してきました。
高価なイメージがある江戸前寿司を、もっとリーズナブルに食べてもらいたいという思いで展開してきた「魚がし鮨」は、沼津地産の新鮮な魚を惜しげもなく使った“デカネタ”が話題となり、多くの集客を達成してきました。
しかし、“デカネタ”であるからこそ、回転寿司という業態が潜在的に抱える問題をより強く感じていたと、沓間水産株式会社 取締役 営業本部長 櫻井 俊一氏は振り返ります。
「どこの回転寿司店でも言えることですが、経営における最大の課題はいかに原価ロスを抑えるかということです。せっかくのネタも、寿司レーンの上で 20 分も回ると乾いてしまいます。そんな状態の寿司をお客様へご提供することはできませんから、廃棄するしかありません。当社のように 20 ~ 30g もある大きなネタを扱う寿司店では、寿司一貫の廃棄が利益に与える影響は非常に大きいのです」。
こうした問題の改善策を模索していたころ、ミカンの出荷工場でミカンを選別する機械を、TV で見たことがきっかけで「流れ鮨」のアイデアを思いついたと語ります。
「たまたま、ベルトコンベアに乗ったミカンの大きさを自動的に選別して箱詰めしている機械を見たとき、お客様が次々と注文した寿司を、こんな風にテーブルまで運べないだろうかと思い付いたのです」。
このアイデアの実現について、寿司レーンの開発元である日本クレセント株式会社 (以下、日本クレセント) に相談。すぐに実現に向けて開発が始まりました。日本クレセント株式会社 OCA・SOaNA 販促担当 主任 平田 泰章氏は、当時の経緯をこう語ります。
「このシステムの開発を依頼されたのは 2004 年ですから、まさに回転寿司全盛期のことです。そうした時代に、新しいシステムを作り、新しい市場作りを行うためのお話をいただけたことに、非常に刺激を覚えました。当時、高い人気を維持していた回転寿司ですが、この先お客様の嗜好の変化が起きたときには、通常の回転寿司の形態では対応していけなくなってしまうのではないかということは、私たちも強く感じていた部分でした」。
そして、寿司レーンの開発に加えてもう 1 つ、「流れ鮨」の実現に欠かせないアイデアがありました。それが、「150 から 200 品目もあるメニューを、間違いなく、すばやく、効率的にお客様に提供する」ための、タッチ パネルの開発でした。
「魚がし鮨」では、毎日の仕入れに基づいたメニューの変化に加え、ご家族連れを中心とした幅広い客層のニーズに応えて、さまざまなメニューを提供しています。そのため、口頭での受注では対応しきれないという課題があったのです。日本クレセント株式会社 取締役 徳野 貴信氏は次のように話します。
「回転寿司に限らず、大型の飲食店でお客様の注文に迅速な対応をするには、それなりの数のホールスタッフが必要です。しかし、テーブルにタッチ パネルを置けば、お客様はいつでも気軽にお寿司を注文することができるようになります。これは、魚がし鮨の新型レーンに最適な受注システムではないかと考えたのです」。
この提案が魚がし鮨にも快く受け入れられ、新型レーンと専用タッチ パネルを統合したシステムの開発が始まりました。
<システム構築の過程>
開発のポイントは「使いやすさ」今回のタッチ パネル開発にあたっての重要なポイントは、下記の 2 点でした。
1. 仕入れに応じた日々のメニュー更新が簡単に行えること。2. お客様にストレスを感じさせないよう快適に動作すること。
日本クレセントはこの 2 点をクリアするためにタッチ パネルの共同開発先であるソラン北陸株式会社と共に検討を重ね、OS に Microsoft Windows XP Embedded を採用しました。ソラン北陸株式会社 システム事業部 マネージャー 古木 英児氏は、その理由を次のように説明します。
「店舗の方々が、メニューの更新など日々のメンテナンスを行うためには、使いやすいインターフェイスが必要になります。Windows XP Embedded であれば、Windows XP 向けアプリケーションのほとんどをインストールできるため、店舗の方が日々のメニュー変更を行う際にも、まるでご家庭の PC のような感覚で操作していただくことができます。そのため、サポートの問い合わせをいただいたときでも、電話でのご説明だけで解決できる場合がほとんどです」。
動作スピードについても、期待通りの結果が得られていると古木氏は言葉を続けます。
「タッチ パネルの動作が遅ければ、お客様はストレスを感じてしまいます。しかし、Windows XP Embedded ならば必要なコンポーネントを選択して使用することができ、ムダを省いたスリムなシステム構成も可能なため、動作の高速化も達成できました」。
また、新型の寿司レーンも、今日まで常に改良を加えながら店舗に導入されてきました。最初のモデルでは、テーブルごとに色分けされた皿をシステムが判別するという形をとっていましたが、テーブル番号と皿の色の関係を覚えきれないという問題が発生しました。そこで試行錯誤の結果、トレーに寿司と IC タグを乗せてレーンに流すことで、その情報をシステムが読みこんでテーブルを判別し、目的にテーブルに到着すると、アームが動いてお寿司をテーブルへと押し出す現在の流れ鮨用レーンが完成したのです。
上述した寿司レーンの改良のほか、タッチ パネルも第 1 世代から細かく改良を重ね、現在へと至っています。この改良のコストについて櫻井氏はこう話します。
「システムの開発や改良にはコストがかかりますが、それは『流れ鮨』というブランドを確立するための投資です。それによって業務効率が向上しているという手応えは常に感じています」。
<システムの導入効果>
原価ロスの大幅削減に成功 
 日本クレセント 株式会社 OCA・SOaNA 販促担当 主任 平田 泰章 氏
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新たに誕生した流れ鮨は、原価ロスの 3% 削減という大きな成果を生みました。
「飲食業界の原価に対して 3% という数字はかなり大きなものです。特に今回は従来の食材を変えることなく、お客様に提供する商品の質を保ったまま原価ロスの低減を実現できたのですから、すばらしい効果です」。
こう話す櫻井氏は、タッチ パネルの導入により、スタッフにとってもお客様にとっても、多くのメリットが生まれていると続けます。
「特に商品計画の効率が格段に向上しています。回転寿司の場合は『どの寿司がどれだけ売れたのか』というデータを正確に把握することが難しかったのですが、タッチ パネルで注文を受けることで、正確な受注データを残すことができます。そのため、新規メニューの開発もやりやすくなりました」。
加えて、メニューの品目が増えても、注文を忘れてしまったり、間違えたりというリスクが減ったことで商品構成に余裕が出たため、今では寿司以外にも、肉料理など一品料理をメニューに加えることもできるようになったと言います。
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 |  タッチ パネルで注文した商品がテーブルへと直通で届きます。 |  |
さらに、板場に表示される注文情報には、お客様が注文されてからの時間経過も表示。通常の握り寿司であれば、必ず 5 分以内にお客様に提供できるよう、3 分で黄色、5 分に近づくと赤色で警告が表示されるしくみになっています。
そしてもう 1 つ、お客様にとっての大きなメリットとして、タッチ パネルのディスプレイ上で、常に会計を把握できるということが挙げられます。
「お子様に喜ばれる肉料理もメニューに追加されたことで、ご家族で来店されるお客様に歓迎され、客層の幅を広げることにもつながっています。また、タッチ パネルで常に合計金額を確認できますので、安心して注文いただけることも、喜ばれています」 (櫻井氏) 。
<今後の展望>
お客様満足を追求することで、さらなる売上増加を 
 ソラン北陸株式会社 システム事業部 マネージャー 古木 英児 氏
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従来の回転寿司店舗とは一線を画す「流れ鮨」という新業態を確立し、大きな成功を収めた沓間水産では、お客様にもっと楽しく寿司を食べていただける空間作りのための、新たな構想がすでにスタートしているといいます。
「2007 年 11 月に、200 人を収容できる流れ鮨浜松市野店という大型店舗をオープンしたのですが、この店の半分ほどが、実は個室になっています。個室の場合には、タッチ パネルで注文いただいたお寿司が、壁から出てくるのです。個室利用の場合には別途、席代をいただいているのですが、それでも大変な好評をいただいています」 (櫻井氏) 。
その他にも、既存の回転寿司店舗をすべて流れ鮨に変えていくことや、これまでビルのテナント出店が多かった店舗展開を路面店中心にシフトさせること、さらには海外進出など、事業拡大の計画はいくつも考えられていると言います。
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 |  Windows XP Embedded で構築されたタッチ パネルの注文画面 直感的に操作できる画面は動作も軽快 |  |
「現在進行している計画は、タッチ パネルの画面を通して、板場の動画をリアル タイム配信するというものです。目の前で板前が魚をさばいて握ってくれる江戸前寿司のシズル感を、流れ鮨の広い店内でも感じていただきたいと思っています。お客様の“食べたい”という思いを刺激することで、さらなる売上増につながるはずです」 (櫻井氏) 。
櫻井氏が話す事業拡大のさまざまなアイデアは、一貫して“お客様の満足”と“そのための業務効率改善”という点から発想されています。ビジネスの成功を握る鍵、それはやはりお客様の心を捉えるための努力なのだといえるのかも知れません。
そのことを具体的に示しつつ、意欲的に事業拡大を続ける魚がし鮨チェーンは、流れ鮨というシステムのメリットを最大限に活かし、さらなるアイデアで業界をリードし続けていくことでしょう。
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