"持たざる IT" を実践し、Exchange Online をはじめとしたクラウド サービスを採用することで、セキュリティ レベルの高い、グローバルなメッセージング基盤を、低コストかつ短期間に導入
2009 年 4 月の経営統合によって、陸・海・空のロジスティクスサービスを総合的に手掛ける "グローバルSCMサービスプロバイダー" へと進化を始めている株式会社バンテック。同社では、統合後のシナジー効果を追求するべく、各種業務システムの統合が進められています。その一環として、グローバルに広がるバンテック グループのコミュニケーションを支えるメール システムの統一を実施。持たざる IT を実践しつつ、"グローバル対応" "高セキュリティ" "高ユーザビリティ" を実現するプラットフォームとして選ばれたのが、Microsoft Online Services と Windows Azure Platform を連携し、機能を強化させたソリューションでした。 |
<導入の背景とねらい>
統合後のシナジー効果を追求するために、グローバル レベルでのコミュニケーション基盤確立を  |   株式会社バンテック 執行役員 情報システム部 部長 加松 哲夫 氏
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日本や世界の主要自動車市場を中心に展開してきたコントラクトロジスティクス (※1) と、世界 40 か所あまりの拠点で展開するフォワーディング (※2) の 2 つの事業の「ハイブリッド化」に取り組んでいる株式会社バンテック (以下、バンテック)。
2009 年 4 月に、株式会社バンテックおよびバンテック ワールドトランスポート株式会社 (旧東急エアカーゴ) と持株会社が合併し、新生「バンテック」として誕生した同社では、陸・海・空のロジスティクスサービスを総合的に手掛け、グローバル市場において幅広く顧客のニーズに応えています。
3 社による経営統合を経たバンテックでは、社内の全体最適化に向けて、各種業務システムの統合を推進しています。その背景について、同社 執行役員 情報システム部 部長 加松哲夫氏は次のように説明します。
「当社が目指すのは、"グローバルSCMサービスプロバイダー" としてシームレスなロジスティクスサービスを提供することです。その実現に向けて、まずは組織を一体化し、シナジー効果を徹底的に追求することで競争力の強化を図ろうと考えました」
こうした取り組みの中で、最適化が急がれる重要なシステムの 1 つとして挙げられたのが、社内外のコミュニケーションを支えるメール システムでした。
旧バンテック グループでは、社内で利用するメール システムが統一されておらず、合併後も、自社開発のメール システムと Lotus Notes が混在する状況が続いていたため、管理負荷が増大するなどの問題が発生しており、メール システムの統一・整備が急がれていました。
加松氏は言います。
「社内に、グループウェアと普通のメール環境とが混在していたことが、ボディブローのように、いろいろな場面に影響していました。私たち情報システム部の業務としては、運用・管理の負荷が増大するという影響がありましたし、利用面においても部署ごとにツールが異なるなど、現場でコミュニケーションを行う社員たちにとってさまざまな影響が出ていました。
そこで、2010 年 10 月に関連会社を含めた事業再編が予定されていたこともあり、『グローバル スタンダードに基づくメッセージング基盤の構築』の検討を開始しました。ただし、IT に関するコストは厳しく見つめていかないといけません。そこで、できる限り自社による構築・運用の負担を減らし、市場の動向、業績の変化に応じて伸縮できるような "エラスティック" なコミュニケーション基盤を構築していきたいと考えていたのです」
同社では、この考えを実現する手段として、クラウド サービスに注目したと、加松氏は続けます。
「"持たざる IT" という考えを実現するクラウド サービスは、今後の IT テクノロジーの主流になると目される魅力ある存在です。インターネット登場以来の革命的な出来事であると言えるでしょう。しかし、情報セキュリティの観点から見て、すべてのシステムを、現時点で一気にパブリック クラウド化することはできません。まずは、プライベート クラウドに止めるべきもの、オンプレミスで運用するべきものを選別していく必要があるでしょう。そうした取り組みの第一歩として、私たち自身がクラウド サービスを実際に体験するのに最も適しているシステムは何だろうかと検討した結果、マッチしたのがメッセージング基盤だったのです」
そしてまた、クラウド サービスの導入は、「情報システム部門の負担を軽減し、運用・保守業務に費やされていた労力を解放し、"付加価値創造型" のシステム構築などにつなげていくための一手でもある」と、加松氏は続けます。
「メールは、元々社外とのやり取りにも利用されています。つまり、外に出る情報でもあります。必ずしも社内で構築・運用する必要もないでしょう。それに、過去に比べてセキュリティ要件も増大していますから、自社でその対策のすべてを用意して運用するのは、大変な負担です。
それならば、セキュリティを固めたデータセンターを擁して、SaaS (Software as a Service) でメール システムを提供している事業者に運用を依頼した方が、負担は少なくて済むでしょう。
私たち情報システム部が、ビジネスに対してより大きなメリットをもたらす、新しい提案、新しいシステム構築を推進していくためには、こうした運用・保守の負荷を減らし、業務効率を向上させていくことが、まずは重要なのです」
こうしたねらいに基づき、バンテックでは、複数のクラウド サービスを詳細に検討。最終的に選ばれたのが、マイクロソフトの Microsoft Exchange Online と Windows Azure Platform を連携し、機能を強化させたソリューションでした。
加松氏は言います。
「メールは、私たちの業務に欠くことのできない重要なシステムです。グローバルに展開する私たちのビジネスを、24 時間 365 日、しっかりと支えてくれる基盤でなくてはなりません。さらに言えば、社員個人の生産性向上に寄与するコミュニケーション ツールとして、人のアクティビティをサポートする使い勝手の良いものである必要があります。
こうした条件を満たし、私たちの目的を叶えるものとして残ったものが、マイクロソフトの Online Services だったのです」
<システムの概要>
"グローバル対応" "高セキュリティ" "高ユーザビリティ" の 3 本柱  |   株式会社バンテック 情報システム部 イノベーション推進課 課長 本多 晋 氏
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バンテックが、新しいメール システムに求めた主な要件は、下記の 3 点でした。
1. グローバルでの運用に耐える可用性と、サポート体制を備えていること
2. 高いセキュリティ レベルでのアクセス管理ならびに端末の制御が行えること
3. 現場の社員にとって使いやすいシステムであること
同社 情報システム部 イノベーション推進課 課長 本多晋氏は、各種クラウド サービスを比較検討した結果について、次のように振り返ります。
「当社で、クラウド サービスの検討を開始したのが、2009 年 10 月のことです。国内外数社のサービスを比較検討したのですが、グローバルに展開するためには多言語対応や、各地でのサポートが重要となります。国内の事業者によるサービスは、残念ながらこれらの要件を満たすには至りませんでした。
次にセキュリティや利便性と検討を重ねていく途中で、Exchange Online が発表されていることに気が付いて、『これも比較した方がいい』ということで、2010 年 3 月になって、マイクロソフトにデモンストレーションをお願いしました」
そして、Exchange Online を含めた最終選考が行われた際に、一番のポイントとなったのが「使いやすさ」だったと、本多氏は続けます。
「Exchange Online は、元々グローバルに展開されているサービスですし、セキュリティについても、ソフトバンク・テクノロジー株式会社が Windows Azure 上に開発されたという ID 管理システム『Online Service Gate』で、シングル サインオンなどのアクセス管理および端末の制御が行える。ここまでを比較すると最終候補となったソリューションは機能が拮抗していると感じたのですが、やはり使い勝手に大きな差がありました。
最終候補として残っていた Google Apps のメールは、スレッド表示形式の変更ができません。当社では、1 人が 1 日に数百件のメールを処理することも珍しくないほど、メールが多用されています。その中でメールを探すためには、送受信の日時であったり、前後の経緯というものも重要になります。件名ごとにスレッドでまとめられてしまうと、現場でメールを活用する社員が、間違いなく混乱してしまうと感じたのです。
一方の Exchange Online であれば、ほとんどの社員が慣れ親しんでいる Outlook のインターフェイスで、メールが時系列に表示される中で、さまざまなビューから検索できます。さらに、添付ファイルまで検索対象となるのは大きなポイントです。ビジネスユースであるという意味で、こうした検索性の高さはとても重要なことでした」
こうして 3 つの要件をクリアし、2010 年 6 月に、Exchange Online と Online Service Gate を活用したシステムの構築が決定。それから 1 か月も経たない 7 月中旬には、情報システム部のチーム 10 名による試験運用を開始。8 月中旬には、メール使用頻度の特に高い、営業や経営企画部門を対象とした 130 名を追加。そして、10 月初旬に、国内の残りのユーザーを含めた合計約 3,000 名を対象にサービスインを迎えるという、短期間でのメール基盤整備を実現します。
このメール システムでは、Outlook Web Access (OWA) を使用し、ブラウザー経由でメールを利用。社内に支給されている PC であれば、どの PC を利用しても自分のメールを利用できるようになっています。ただし、自宅や出張先からの利用に関しては、Online Service Gate によって、アクセスできる PC 端末を制限。会社が許可し、貸し出した PC 以外の端末ではアクセスができないようになっています (下図参照)。
こうして順調に導入・展開が進んだメール システムの操作について、社員からの問い合わせは、ほとんど寄せられていないと、同部 基幹システム課 課長 市川慎也氏は言います。
「Outlook の操作性と、基本的には変わらないということが功を奏したのだと思いますが、問い合わせの電話などはほとんどありませんでした。また、導入直前の社内説明会も私が担当したのですが、セキュリティのためのオンライン化や端末制限であることからさまざまな制約についても、理解を示してくれました」
<導入効果>
システム構築コストを 70% 削減し、将来的な運用・保守業務からも自由に  |   株式会社バンテック 情報システム部 基幹システム課 課長 市川 慎也 氏
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 |   株式会社バンテック 情報システム部 基幹システム課 課長 金子 淳 氏
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システムの導入効果について、本多氏は、試算上「70% のコストカット」が実現できたと胸を張ります。
「今回導入したメール システムには、ウィルス チェックやスパム フィルター、メールのアーカイブ機能、冗長化など、必要な機能・要件が揃っています。これと同等の構成をオンプレミスで構築した場合と比べての試算では、導入コストはわずか 10 分の 3 程度。コストを 70% 抑えることができています。この試算には、メールの運用工数は含めていませんから、実際にはもっと大きなコスト メリットが生まれているということになりますね。さらに、今後海外拠点への導入が開始されると、オンプレミスであれば、データセンターや回線の強化を自前で図らなければなりません。そうなればもう比較になりませんよね」
さらに、本多氏は「5 年先の心配まで減って、本当に楽になった」と笑顔を覗かせます。
「今までずっと、ハードウェアやソフトウェアのライフサイクルに合わせて、『5 年経ったらサーバーを買い換えて、構築し直して…』とやり続けてきた作業から、これで解放されたのかなと思うと、本当にすっきりした思いでいます。まずはメールから、というところですが、これは大きな変化だと思います」
バンテックが、クラウド サービス利用に対して、上述のような安心感を見せる背景には、マイクロソフトのサポートを受けた実体験が影響していると、同部 基幹システム課 課長 金子淳氏は話します。
「これは失礼な言い方かも知れませんが、今回の導入を通じて感じたのは『マイクロソフトってここまで、私たちの声に耳を傾けてくれるんだな』という想いです。実際のところ、他社ではセキュリティに関する要望などを挙げても、『これは Web サービスですから、こういうものなのです』という一言で終わってしまうところも少なくありませんでした。しかし、マイクロソフトは、デフォルトでは対応できない要望には Online Service Gate を用意するなど、非常に柔軟に、手厚く対応してくれました。短期構築を無事に実現させることができたのも、マイクロソフト コンサルティング サービスの方たちの協力が大きかったです。非常にありがたかったですね」
<今後の展望>
海外拠点への順次導入やスマートフォンの活用でコミュニケーション基盤の拡充をクラウド サービスを利したバンテックのメール システム導入は、2010 年 10 月に、関係会社を含めた国内事業再編の実施をもって、国内約 3,000 ユーザーへの導入を完了し、順次、約 800 名が利用する海外拠点への展開を進行させていく段取りになっていると、本多氏は説明します。
「どちらかというと、メール システムの統一を望む声は、海外の方が強く挙がってきています。一部、Google Apps を採用している拠点もありますが、これも Exchange Online に切り替えていく予定です」
このメール システム導入を初手として、バンテックの IT 戦略は、今後ますます進化していくと、加松氏は話します。
「これだけ変化の速い時代にあって、『一度立てた計画は、3 年、5 年と忠実に守らなければならない』という考えは実態に即したものとは言えません。"完璧な戦略" を求めて意思決定までに時間をかけていては、出遅れることもあるでしょう。さらに、『予定と違う』となったときに、方向修正も難しくなってしまいます。それよりも、とにかく行動に移して、駄目であれば方向を転換する。そういう機動性の高い戦略をサポートできる IT システムが求められています。
その意味で私は、クラウド サービスに大きな期待を寄せています。マイクロソフトにもぜひ、SharePoint Online や Office などさまざまな Online Services を、今後ますます充実させていって欲しいと思います」
Exchange Online の採用を初手として、クラウド サービスの活用を開始したばかりのバンテック。今後、この成功事例を 1 つのステップとして、「ビジネスの生産性を高めるために、Windows Phone などの導入も検討している」と加松氏は締めくくります。
「冒頭にもお話しましたが、やはり個人の生産性向上に寄与するには、社員が働きやすいようにサポートしてくれるツールであることが重要です。今、外出時にノート PC を携帯する社員の中でも、実はスマートフォンさえあれば用が足りてしまう人も多いのではないかと思います。ノート PC を持ち歩くよりは、格段に楽ですしね。
そういう意味で Windows Phone の導入も有効ですが、まずはセキュリティと利便性のバランスについて検討を行っているところです」
世界の拠点を結び、コミュニケーション環境を充実させることで、より俊敏なビジネス展開を推進していくバンテック。同社の試みは、今後も続いていきます。
※1 特定の荷主と物流業者間で契約し、独自のロジスティクスサービスを行うこと
※2 貨物輸送。ここでは航空貨物輸送、海上貨物輸送を組み合わせた国際物流サービスを指す