事例紹介 教育

生徒たちの意識は、私たちの先をゆく
タブレット PC が "学び" の入り口になっていく

東京都豊島区立千川中学校 校長
小林 豊茂さん

教員の意識を高めていくことから始める

「21 世紀型スキル※では ICT のリテラシーを高めることは大切。
しかし、そればかりでなく PC の活用によって授業を効率化でき、その分、教員の創意工夫を活かせるのではないか。それが 1 年間を振り返ってみた実感です」と語るのは豊島区立千川中学校の校長、小林 豊茂さん。

同校では現在、日本マイクロソフト、東京大学、レノボ・ジャパン、そして豊島区教育委員会が連携した「21 世紀型スキル」の育成を目指すプロジェクトが進められている。タブレット PC 40 台、教育向けソフトウェア、クラウド サービスを備えた ICT 環境を構築。生徒 1 人あたり 1 台の PC を活用した授業を行い、21 世紀型スキル育成のための ICT 活用に取り組んでいる。
「ICT を教育に活用するためには、教員の意識を高めていくことが欠かせません。まず ICT スキルの高い教員を中心にすそ野を広げていきました」

プロジェクトが本格的に動き始めたのは 2011 年秋。それに先駆けて導入のための環境づくりを着実に進めた。

2 年生を対象とした道徳の授業では、Microsoft PowerPoint で「デジタル紙芝居」を作成。あらかじめ 7 つのフレームを用意し、生徒たちが個性を活かして自由に表現できるように工夫した。

東京大学の山内 祐平准教授をはじめ専門家による講習を行い、21 世紀型スキルの育成においても ICT の活用とともに教員たちの個性や工夫が大切であることなどの浸透を図った。さらに、米国ワシントン DC で開催されたマイクロソフト主催の世界各国の教員や教育研究者が集まり経験を学びあう国際イベントである Partners in Learning Global Forum に 3 人の教員を派遣。世界各国の教育関係者との交流が自信につながり、そこから「自分たちでもできる」という雰囲気が広がり始めたという。

タブレット PC が生徒たちの隠れていた能力を引き出す

紙芝居の作成にあたっては、祖父母への取材で自身の人生について考え、資料作成を通して IT 技術に親しみ、最後にプレゼンテーションを経験することでコミュニケーション力等の向上を図った。

そして最初にスタートしたのは、1 年生を対象とした国語の授業。
内容は、東京大学と日本マイクロソフトが連携して開発した読解力支援ソフト、MEET eJournal Plus を使い、朝日新聞の「天声人語」の記事を題材に、内容にふさわしい題名をつけて自分の考えをまとめるというもの。この授業で早くも手応えを得た、と小林さんは話す。

「文字を書くことが苦手で勉強につまずいてしまう子どもはたくさんいます。タブレット PC を使ったこの授業では、マーキングや抜き出しによって、ビジュアル的にわかりやすく自分の考えをまとめることができる。そんな風に子どもたちが目を輝かして授業に取り組むようになったのです」
次のステップとなったのは、2 年生向けの道徳の授業。「生命の尊重」をねらいに、生徒それぞれが Microsoft PowerPoint で「デジタル紙芝居」を作成し発表した。タブレット PC を使ってお互いに紙芝居を共有したり見せ合ったりすることで、これまでにない活気のあるコミュニケーションが生まれた。

「この年頃は、表現は好きだが人前で話すのは嫌いという子どもも多い。そんな生徒たちが生き生きと作品をつくり発表するようになって驚きました」
また、この道徳の授業では、日頃からボランティアとして同校の活動に関わっている大学生たちも活躍した。紙芝居のベースとなる、PowerPoint のフレームを学生たちが独自に作成して提供。漫画のキャラクターなど現代感覚にあふれるフレームが生徒たちに好評で、教員たちにも刺激になったという。
同じく 2 年生の理科では、班ごとに異なる実験を行い、それをデジタル ノートの Microsoft OneNote で共有しながらまとめていくというコラボレーションを必要とする授業も実施。実験を並行的に進めることで授業の効率化も図ることができた。さらに数学の授業では、タブレット PC を 1 人 1 台使い、生徒一人ひとりの進度にあわせて基礎を習得できるように取り組んだ。

ICT の試みがきっかけで登校するようになった生徒

このように授業を重ねるごとにタブレット PC も身近なツールとなり、最近では休み時間に生徒たちが自主的に準備を済ませてしまうなど授業の効率も高くなってきたという。生徒たちに引っ張られるように教員たちの意識も変わりつつある。
「常日頃から携帯電話やゲーム機を使っている子どもたちにとって、タブレット PC は先入観なく気軽に触れられる存在。不登校気味だったのに今回の授業がきっかけで学校に来られるようになった生徒もいます」

同校では授業だけでなく、生徒会新聞の作成などにもタブレット PC を活用している。新聞の編集会議では、タブレット PC で情報を共有しながら記事の作成や新聞のレイアウト作成がごく普通に進められている。そんな生徒たちに囲まれながら、小林校長は次のように語る。
「私は、PC を教育の入口に使うことで、勉強が嫌いになってしまった子どもたちに再スタートの機会を与えられるのではと思っています。これからも授業だけでなく教育活動のさまざまな場面で ICT を活用し、21 世紀型スキルを学ぶ場を広めていきます」

※ 21 世紀型スキル
21 世紀の国際社会で必要となる、子どもたちがこれから身につけていくべき能力のこと。コミュニケーションやコラボレーションの能力、課題発見解決力などとともに、それらのスキルを支える ICT 活用力や情報リテラシーの育成が推奨されている。

今回のプロジェクトでは、キーボードを備えたコンバーチブル型タブレット PC を採用。ペンタッチで容易に操作できることに加えて、知的生産に不可欠となるキーボード入力も学べるように配慮した。

「21 世紀型スキル」は、社会で働くだけでなく、学びを広げていくためにも、大変重要なスキルであると実感しています。東京大学様、レノボ・ジャパン様と日本マイクロソフトは 2006 年に共同プロジェクトを実施して以来、この 21 世紀型スキル育成のために生徒 1 人 1 台タブレット PC 活用の研究・実践を続けてきました。

今回、豊島区教育委員会の皆さま、千川中学校の先生方、生徒の方々と一緒に取り組めたことを、他の学校・教育委員会とも経験を共有できる場を多く作っていくように努めてまいります。

日本マイクロソフト
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西嶋 美保子