トピックExcel のワークシートが方眼紙代わり。「セルを小さくしてドットのようにしたらゲームが作れるかも!」という発想がゲームを作るきっかけに――近田さん、武藤さんともご自身でコミュニティを立ち上げ、「 エクセル大事典(武藤氏)」、「 VBA アクションゲーム?Excel で動かそう!(近田氏)」をはじめ、複数のコミュニティの運営や管理をされていますが、テクニカルコミュニティ活動を始めたきっかけはなんですか?  (近田)1997 年 Excel と出会って、その便利さ、高機能にほれ込み、業務で使用するアプリケーションを個人的に作っていました。2000 年頃かな、ある日、セルを正方形にしてみたら、ワークシートが方眼紙に見えてしまい、「あ、テトリスができるかも、いや、もっとセルを小さくしてドットのようにしたらインベーダーもできるかも!」と思ってしまい、Excel ワークシート上で高速にセル背景色を書きかえて表現するゲームを作るようになりました。当初より Excel をテーマした Web サイトは多くあり、いくつかのサイトへ作品を投稿させていただいてましたが、2002年、「セルベーダー」の完成を機にいよいよ自分でもWebサイトを立ち上げてみたくなり、「VBA アクションゲーム?Excel で動かそう!」を公開しました。当初は自分の作品を公開するだけのサイトでしたが、同じ Excel でゲームを作成する者が集うようになる中、自然と作品が投稿されるようになり、今度はそれを公開するコーナー( VBA ゲーム博物館)を作ると、それがきっかけで新たな投稿者が増え・・・といった感じでExcelゲームプログラマ集団「動かす会」が発足してコミュニティとして発展してきた次第です。ということで、コミュニティの活動としては、掲示板でのレス、いただいた作品の公開作業が主ですね。  (武藤)もともとは独自にExcelゲームの開発を行っていましたが、2003年に近田さんが運営される「動かす会」の存在を知り、参加させていただいたのが始まりです。その後、自身の開発したExcelゲームが「日本ゲーム大賞2006」、「第 10 回、第11回文化庁メディア芸術祭」など著名なコンテストで入賞し、2007 年にはマイクロソフトから Excel MVP の表彰をいただくことができました。そのころから、Excel ゲームで培った VBA の技術をできるだけ多くの方と享受したいと考えるようになり、最初はゲームのソースコードを自身の Web サイト「GEN MUTO'S HOMEPAGE 」で公開しておりましたが、やはり体系的な知識習得には不十分であると感じて総合的な学習サイト「エクセル大事典」を立ち上げることにしました。 ――ご自身のコミュニティで活動される上で何か工夫していることはありますか?  (近田)うーん、昔は、競作とか、いろいろ企画してサイトやコミュニティを盛り上げようとがんばっていましたが、ここ数年は自然体でやっています。(笑)それでも新しくExcel VBAゲーム作成者が現れ続けて、ありがたいことです。
 (武藤)私はできるだけ多くのサンプルを載せるようにしています。解説ではよくわからなかったけど、サンプルを見れば「なるほど、こうやって使うものなのか」というのが、一目瞭然で分かることが多々あります。また、質問掲示板で質問があった場合には単にやり方を教えるのではなく、今後の開発を独力で進められるように応用可能な知識を教えるよう心がけています。
Excel の素晴らしさをもっと知ってもらいたい――継続的にオンラインコミュニティを支援されていますが、熱意をもって続けられる理由はなんですか?  (近田)やはり Excel という稀有なアプリケーションへの愛情、熱意ですね。このプラットフォームの素晴らしさを世に知らしめたい、わかってもらいたいという思いが根本にあります。継続という面では、無理をしないということでしょうか。サイトの更新も自分のペースで、余裕のあるときに行う、といった割り切りが長く続けられる一つの要素だと思います。義務感や責任感が先立つと、苦しくなってしまうような気がします。
 (武藤)VBA で開発を行われる方の多くが「こんなことができたらいいのに」という理想と「やってみたけどうまくいかない」という境界で悩んでいます。不可能なことは仕方ありませんが、明らかに可能なことを方法を知らないためにあきらめてしまうのは実にもったいないと思います。私が「Cell_雀」を開発するまで、Excelで麻雀ゲームができるなんて誰も想像しなかったと思います。でも、それを開発したことで実現可能であるということを多くの方に知っていただくことができました。(Cell_雀は 2009 年 6 月現在、累計ダウンロード数 50 万に達しました) Excel ゲームであれ、業務システムであれ、何かを形にしたいという夢を少しでも多く VBA で実現していただきたいというのが、活動を継続する一番の理由です。 ――武藤さんと近田さんは同じ Excel MVP としてアワードを受賞されていて、Excel VBA によるゲーム制作の専門家でもあり、コミュニティの運営者として似た経緯をお持ちですが、お互いに「ここがすごい!」と思われるところを教えていただけますか?  (近田)とにかく誠実なところ!武藤さんのお人柄は VBA のコードにも表れています。年に 1,2 回はお会いして飲んでますが、最初から最後までひたすら Excel 談義です。それと作るゲームの完成度が尋常でないです。武藤さんの作品は最初は LSI っぽいゲームとか簡単なものだったんだけどなあ。代表作「Cell_雀」は、もう市販ソフトを超えています!
 (武藤)Excel ゲームというニッチな分野の歴史は意外と長いです。その代表として、長年コミュニティの運営を続けてこられた近田さんの功績とご苦労は筆舌に尽くしがたいものがあると思います。単に ”Excel が好き”というだけでなく、”Excel を愛して”いなければこの活動を継続することは困難でしょう。こうした活動を精力的に続けられている、近田さんを心より尊敬しております。
MVP アワード受賞はすばらしい技術や知識を持つ MVP と知り合え、本を執筆するきっかけに――MVP アワードを受賞してよかったことはなんですか?  (武藤)すばらしい技術や知識を持つ、数多くの MVP の方々と知り合うきっかけをいただきました。また、Excel ゲームを開発する近田さんや私のような人間がマイクロソフトから MVP として表彰されているという事実が今後 Excel ゲームを開発する方々にとってなにより心強いエールになればすばらしいと思います。また、最近では MVP を受賞したことで本業であった Access VBA 方面においても「VBA エキスパート公式テキスト Access VBA Basic、Standard」(オデッセイコミュニケーションズ刊)を執筆させていただくことができました。
 (近田)MSDN/TechNet サブスクリプションの利用など MVP アワード受賞特典はとても嬉しいですが、意外だったのは勤務先での評価が高かったこと。私の所属しているセクションはシステム部門ではないのですが、マイクロソフトMVPアワード受賞というのは驚きと興味を持って受け入れてもらえました。「MVP アワードについてはよく知らなかったけど日本で 約 200 人の1人というのはすごい!」と評価され、当時部長からはお祝いの席を設けてもらったほどです。いい会社だなあ。 ――武藤さんと近田さんは「Excel VBAアクションゲーム作成入門 」を共著として出版されていますが、出版に至る経緯を教えてください。  (近田)別件で知り合ったインプレスジャパン社の編集者が「できる Excel 大辞典」の編集者でもあり、Excel の話で盛り上がったことがありました。その編集者が、非常に「できる」方で、私のサイトを調べ上げ、ゲーム本の企画を社内に提出してくれたのです。以前、出版した「 Excel VBA ゲーム大作戦」が出版社の倒産で絶版となり、オークションサイトなどで高額取引されていること、私が MVP であること、出版社の社長が大の Excel 好きであること(お会いしたときに熱弁されていました!)、等々が追い風となって、その企画が通りました。本の内容については何度も編集者と話し合い Excel ゲーム作成の決定版とすべく目次案を作成しました。「動かす会」で活躍されている、各モード( Excel VBA ゲームの作り方)の第一人者をそれぞれ著者として参画してもらいたいと考えていたため、著者に関してはほぼ一任させていただきました。もちろん同じ MVP でもある武藤氏もその中の一人で、執筆依頼に快諾いただきました。そうして、編集・著者全員が一体となって執筆・編集・宣伝を行うという、類まれな形態の書籍が誕生したのです。おかげさまで、発売 1 ヶ月を待たずして増刷、発売後 4 ヶ月の今なお、Amazon でも上位にランクインするなど好調な売れ行きを維持しています。本書で共著させていただいた、「動かす会」の、谷孝一氏、USA(うさ)氏、影斬氏は、きっとどこかのタイミングで、私たちと同じように MVP アワードを受賞されるのではと思っています。  (武藤)共著の執筆に関するオファーは昨年の 7 月頃、近田さんよりいただきました。近田さんは以前にも Excel ゲームに関する書籍を執筆されており、「次に本を書かれるときは、ぜひ私にもお声をかけてください」と、お願いしていました。今回、執筆の機会をいただいたことで念願だった Excel ゲームの作成入門をテーマに扱った書籍を執筆させていただくことができました。近田さんには心より感謝しています。
――ご自身が参加されているコミュニティは 10 年後どうなっていると思いますか?  (近田)思えば、あっという間の 7 年間でしたから、10 年後も Excel がある限り、コミュニティは続いていると思います。Excel自体はどうなるかというと、VBAで書かれた膨大なアプリケーションを有効に生かすため、Windows7でDOSのバッチが動くように、OS が変わっても Excel マクロは動き続けるんじゃないかな。いや動き続けてほしい。また、たとえばExcel VBAでブラウザをコントロールすることも簡単にできてしまう、そういう意味では、Excelはクラウドを補完するプラットフォームにもなるわけです。Excelゲームにおいても 2003 年当時「パッセルマン」が限界と思われていましたが、今なお新たな表現技法が生み出されていますし、Excel 2020、どんな機能が実装されているのでしょう。考えるだけでも楽しいです。
 (武藤)VBA を解説するサイトはたくさんありますがそれ以上に VBA の学習内容は膨大で、まだ多くのことを解説しきれていないのが現状です。エクセル大事典も 10 年後には現在の何倍ものVBAに関するコンテンツを充実させたいと思っています。またオフラインでも地元の小中学校において無償で Excel VBA のセミナーを開催する活動を行っております。児童に VBA の講習を行う際、「ゲーム」という内容はまさにうってつけの学習素材であり、10 年後にはこの活動を全国的な規模の活動に推進できればと思っています。
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