Japan Innovative Education Forum

21 世紀型スキルを育成するための学校の情報化、授業や校務での ICT 活用を学びあう機会の場として、Japan Innovative Education Forum を「21 世紀の学びへ ~ 明日をつくる力、未来へつながる力」をテーマに、2011 年 6 月 3 日 ~ 6 月 4 日に開催されました。
このページでは当日の様子をお伝えします。

基調講演「教育の情報化ビジョン」

基調講演者:文部科学省 生涯学習政策局 参事官 齋藤晴加 氏

21 世紀を生きる子どもたちに求められる力

2010 年 4 月から 2011 年 4 月まで、文部科学省は「学校教育の情報化に関する懇談会」を設置して検討を重ね、4 月 28 日に「教育の情報化ビジョン」を公表しました。教育の情報化ビジョンは、21 世紀を生きる子どもたちを育む基盤となり、本格クラウド時代に備えたソフト・ハード・ヒューマンの充実と学びのイノベーションを目指すものです。

21 世紀を生きる子どもたちは、知識基盤社会とグローバル化の中で成長していかなければなりません。そこでは、幅広い知識と柔軟な思考力に基づく新しい知や価値を創造する能力が求められます。知識・人材をめぐる国際競争が加速する中で、異なる文化・文明との共存や国際協力の必要性が増大しています。21 世紀を生きる子どもたちには、「生きる力」(確かな学力、豊かな心、健やかな体) の育成がますます重要となります。必要な情報を主体的に収集・判断・処理・編集・創造・表現・発信・伝達できる能力等である「情報活用能力」を育むことは生きる力に資するものです。こうした考え方は OECD (経済協力開発機構) や欧州委員会が提唱するキーコンピテンシー (主要能力) 等と認識を共有しています。

学びのイノベーションと学校の情報化の果たす役割

情報通信技術は、時間的空間的制約を超越し、双方向性、カスタマイズが容易といった特長をもっています。情報通信技術を活用することで、一斉指導による学びに加えて、一人一人の能力や特性に応じた学び (個別学習)、子どもたち同士が教え合い学び合う共同的な学び (協働学習) を一層推進することができます。教員全員のかかわりと情報共有によってきめ細かい指導を行うこともできます。

子どもたちの情報活用能力の育成のためには、新学習指導要領の円滑かつ確実な実施や、学校現場での好事例の収集・提供が重要です。また、指導資料や教材の開発、子どもたちへの情報モラル教育が重要になってきます。今後に向け、研究開発学校制度等を活用して、情報活用能力の育成のための教育課程についても実証的な研究を進めることも求められ、学びの場における情報通信技術の活用実証研究として、学校種・発達段階・教科等に応じた効果・影響の検証、デジタル教科書・教材、情報端末等を使用した指導方法の開発、モデルコンテンツの開発などを行うことが重要です。費用対効果、セキュリティ等を十分考慮しつつ、将来的にはクラウド・コンピューティング技術を活用してデジタル教科書・教材を供給・配信することが考えられます。
特別支援教育においても、障害の状態や特性に応じた情報通信技術 (ICT) の活用は極めて有用です。アプリケーションの開発や情報機器のアクセシビリティの保証が必要ですし、学校と家庭、地域や、関係機関との連携を密にして推進していくことが重要です。

校務の情報化と教員への支援

校務の情報化によって、情報通信技術を活用した教職員の情報共有によるきめ細かな指導、校務負担の軽減を図ることができます。全ての学校に校務支援システムが普及することが期待されます。教育情報の項目、データ形式等の標準化を推進することも重要です。

教員に対する支援として、ICT 活用指導力向上のための研修、新たな教員養成カリキュラムの開発や効果的な履修体制の構築等に加えて、教育 CIO や学校 CIO、外部の専門的スタッフ (ICT 支援員) の配置等によって教員のサポート体制の充実を図ることが大切です。

学校教育の情報化の着実な推進に向けて

ソフト・ハード・ヒューマンの総合的計画的推進のために、地方交付税措置と併せ、一定程度使途を限定した支援措置の検討も重要です。また、「新成長戦略」及び「新たな情報通信技術戦略」を踏まえ、子供たち 1 人 1 台の情報端末による 21 世紀にふさわしい学びと学校を創造するという方向性に沿って、文部科学省の「学びのイノベーション事業」(ソフト・ヒューマン・教育面) と総務省の「フューチャースクール推進事業」(ハード・インフラ・ ICT 面) の連携によって、全国のモデル地域・学校などで総合的な実証研究を行います。教育の情報化に関する総合的・継続的な調査研究および推進を行う基盤の確保を検討し、産学官等の連携による広範なネットワークの形成、社会的機運の醸成など、総合的な推進体制の構築を図っていきます。

事例紹介「21 世紀の学び~日本の取組みと課題」

フューチャースクール推進事業実践を通して

基調講演者:葛飾区立本田小学校 副校長 山田幾世 氏

葛飾区立本田小学校は、明治 7 年開校、児童数 314 名、学級数 12 の学校で、学級担任の約半数が 6 年未満の若手が占めています。フューチャースクールの実証校として、2010 年 10 月から実証を開始。各教員の自由な発想を尊重し、活用する教科や場面などの制限はせずに、教員も子どももまずは ICT 機器に慣れよう、難しく考えず触ってみようを目標に実施しています。

タブレット PC 活用に向け、支援員が常駐勤務し、時間割によってサポートに入る日を決めています。教科別の活用状況は、総合 36%、算数 29%、国語 23% など。教材・資料や意見の共有、作品の制作、調べ学習での情報収集、ドリル学習による習熟などに活用しています。例えば、算数で協働教育アプリケーション「もぞうし」を使って教材や意見の共有を行ったり、総合学習でプレゼンテーションソフトを用いて作品の制作を行ったりしています。

ICT 活用によって、学習指導の向上、画面共有による学び合い、表現力の育成、教師間の学び合いといった成果があがっています。今後の課題として、授業力の向上を図り、活用が効果的な場面を検証しつつ、協働教育を推進するとともに、他校教員との学び合いを進めていきたいと考えています。

高校生にとっての ICT 活用とは

基調講演者:千葉県立柏の葉高等学校 教諭 滑川敬章 氏

2007 年 4 月開校の千葉県立柏の葉高等学校に、千葉県で初めての情報に関する専門学科「情報理数科」が新設されました。現在、専門学科の「情報科」を設置している高校は全国で 19 校です。本校情報理数科では、高校 3 年と大学 4 年の 7 年間を見通してスペシャリストを育成することを目指しています。論理的思考力、主体的に取り組む力、コミュニケーション力といった社会で活躍できる力と、大学で専門を学ぶために必要な学力を育成するために、「学力向上支援」、「大学・企業等との連携授業」、「情報力の実践」の 3 つを取組の柱にしています。大学・企業から講師を招いての特別授業や連携講座、大学研究室や近隣研究施設の見学のほか、高校生が主体となって地域で行われる子ども科学教室の講師を担当するなど、地域貢献活動にも取り組んでいます。

情報理数科の生徒は、調べる・まとめる・伝えるツール、情報発信ツール、コミュニケーション・ツールとして ICT を活用しています。例えば、統計グラフポスターの作成やポスターを使っての研究発表、Web 上でブログ風の日誌を書いての情報発信、教員と生徒、生徒間、生徒と外部とのコミュニケーションなどです。外につながっていくことで、生徒たちは多くのことを学んでいます。
JRST (情報理数科サイエンスチーム) の名称で大学院生と一緒に地域での科学教育活動を行ったり、近隣の女子大学生と連携し、女子中学生に向けて自分たちの学びを PR しようというプロジェクト JRG (情報理数科女子チーム) も活動しています。

受動的学習より能動的学習の方が生徒たちは多くのことを吸収し伸びていきます。自ら学ぼうと思ったとき、ICT はとても有効です。ICT を活用した学びによって、学校の外へ学びを拡げていく力を育むことができます。どこからでも、どのような端末からでも使える教育用クラウドがあれば、ICT を活用した学びの可能性を広げていくと思います。セキュリティの確保を含め、このような環境の実現がこれからの課題です。

アジアと特別支援教育から日本の ICT 教育を見る

基調講演者:東京大学 先端科学技術研究センター 人間支援工学分野 教授 中邑賢龍 氏

ICT によって世界中のリソースを活用できる時代になりました。日本にいると実感しにくいですが、グローバライゼーションの加速は地球規模の問題をもたらし、領域を超えた課題解決が求められています。ICT を取り込んだ新しい能力を考える時代に入ったといえます。ICT 活用によって、障害のある子どもが時には有利になる可能性もあります。

2011 年 3 月 8 日~ 10 日にタイのプーケットで開催されたマイクロソフトの Regional Innovative Education Forum (RIEF) では、アジア・太平洋約 17 カ国から約 200 名の先生が参加して ICT を活用した未来の能力が議論されました。ICT を活用したグローバルかつ領域横断的な課題解決型学習活動の実践や、クラウドを活用した教員支援システムの活用事例の紹介もありました。アジアの国々では ICT を使ったグローバルな活動にすでに取り組んでいるのです。

特別支援教育の現場では、タブレット型 PC を子どもたちに与え、デジタル教科書を提供して、拡大・読み上げなどの支援を行っています。タブレットを使うことで読みの苦手な子どもたちの成績向上を促し、全体の底上げを図ることができます。

ICT は子どもの適正にあわせて活用すべきで、誰にも同じように有効ではありませんが、ICT (デジタル教科書) 活用によって基礎学力を向上できる可能性があります。グローバルな子どもの能力を考える時期にきています。英語力向上とあわせて ICT 活用を進めていくことが望まれます。

初等中等教育機関向けプログラムのご紹介

基調講演者:日本マイクロソフト株式会社 パブリックセクター インダストリーマネジャー 滝田裕三

マイクロソフトのビジョンは、「個人に合わせた学びを通じて、すべての人々に教育の恩恵を教授できるようにすること」です。初等中等教育のプログラムとして、子どもを対象とする「21 世紀型スキルプロジェクト」、先生を対象とする「ICT スキルアップ研修」、「ICT 活用実践コンテスト」、「教員向けイベント IEF (イノベーティブエデュケーションフォーラム)」、学校を対象とする「ICT 先進事例作り」、「21 世紀の学びを実現するための支援」を用意しています。さらに、小中高等学校の教育現場における ICT へのアクセスや ICT スキルアップを支援するための世界的な教育プログラム「Partners in Learning」を提供。ICT にアクセスできる環境の実現と活用方法の研修を通して、教員や生徒自身の可能性を最大限に発揮するための支援を行います。

横浜市との Innovative Schools Program では、個別に存在する生徒情報を集約し、先生・保護者間で共有しながら生徒の指導に活かす仕組みを提供し、生徒個別の支援、家庭と連携した学習支援の実現を図っています。

パネルディスカッション (要旨)

ファシリテータ:
尚美学園大学 芸術情報学部 教授/文部科学省生涯学習政策局 学習情報官 小泉力一 氏

パネリスト:
東京大学 先端科学技術研究センター 人間支援工学分野 教授 中邑賢龍 氏
葛飾区立本田小学校 副校長 山田幾世 氏
千葉県立柏の葉高等学校 教諭 滑川敬章 氏
日本マイクロソフト株式会社 パブリックセクター インダストリーマネジャー 滝田裕三

小泉氏:学習指導要領では現在を「知識基盤社会」ととらえています。知識基盤社会では、情報は知識の源であり、知識は「生きる力」の素となります。知識の獲得に ICT の活用は役立ちます。ICT の活用によっていろいろなことが予想されますが、いまどんなことを感じていますか?
山田氏:小学校の高学年を受け持っていたときの経験ですが、子どもたちは勉強をすると次々に疑問が湧いて知らないことが増えてきます。この勉強するほど「疑問が出てくる」ということを学ばせることが小学校教育の大事な役割だと思っています。疑問を解決する過程で ICT を通じていろいろな人とやりとりができ、得られる情報も広がっていきます。教室の中だけでなく、より広い環境につながることができる。私自身も教育者としてそうしたことに関わっていけることをうれしく感じています。
滑川氏:いまやネットを通じて世界のリソースを活用できます。ただし、得た知識をどのように使っていくかを体系的に学ぶ場がないと伸びないのではないかと思っています。コーディネータがいて学ぶ力をつけさせるような場ができるといいと感じています。
小泉氏:学ぶ方法を学ばせることは、大きな課題ですね。簡単なようで難しい。先生方がツールを使いながら、あらゆる状況に対応できるスキルを身につけていなければなりません。

小泉氏:子どもも先生方も積極的に学校の教育スタイルを変えようとしています。どこから手がけたらよいと思いますか?
中邑氏:これだけ科学技術が進展すると知識量が増え、全部学ぶことはもはや不可能です。この量の増大にどう関わっていくかを考えなければなりません。1 つは、完全にツールに依存するということです。例えば、入試に携帯を持ち込んでもよいかなど、真剣に議論する必要があります。もう 1 つは、平均的な子どもの育成を目指すのではなく、多様な教育をすればいいのではないか。子どもたちは好きなことだけをやればいい。デコボコ (凸凹) の子を組み合わせればいいのです。それが世の中を救うことになります。小学校のときからコースを分けて教育する。そして、それぞれの能力の子どもがコラボレートできる社会を目指すべきです。
小泉氏:極めて衝撃的なご提案ですが、まさに学びのイノベーションとはやり方を変えることですから。日本では、「皆同じように」という親の意識や制度があって平均的な教育になりがちです。ICT を活用すれば、グローバルにコミュニケーションし、コラボレートできる時代です。
滝田:世界はどんどん小さくなっています。ICT も英語も使いこなせるように頑張ってほしいですね。マイクロソフトとしても、学校だけではなく、クラウドを通じてさまざまな貢献ができるのではないかと思っています。
小泉氏:世界の中の日本として教育をどのように変えていくべきか、十分に議論すべき時期にきています。ご来場された皆様も、今日ここで話されたことを心の片隅にでもおいていただければと思います。
本日はありがとうございました。

基調講演+座談会「21 世紀の学びを実現するために」

21 世紀の学びを実現するために ~学習科学から~

基調講演者:東京大学 大学発教育支援コンソーシアム推進機構 副機構長
大学院教育学研究科 教授 三宅なほみ 氏

学習科学とは

21 世紀型の学びについて、私の専門分野である学習科学の視点からお話ししたいと思います。一人一人の学習者が自立して判断できること、学習者自身に学習権を取り戻すことが大切です。21 世紀に求められる学びとはどういうものか、総意としてどこに力を注がねばならないかを考えなければなりません。
企業の方たちが集まるある研修会で、子どもたちにどんなスキルを身に付けさせたいかを尋ねたところ、1 つは「幅広い知識」、2 つ目は「負けを活かす力」、3 つ目として「問題解決能力」がでてきました。このようにことばにするのは案外簡単なのですけれど、それらをどうやって育てるのか、どうやって育ったことを確かめるのか。そこに学習科学のフィールドがあります。

最近の学習についての考え方では、Formal と Informal、さらに Training と Education をわけて考えます。例えば、学校はフォーマルラーニング、家庭はインフォーマルラーニングの場です。最近はインフォーマルラーニングが見直されてきています。人間が潜在的にもっている力をうまく伸ばし知的に活発にしていくことを Education と呼び、得意でなくとも一生懸命に訓練してできるようにすることを Training と呼びます。Training して全員のレベルをそろえ、それで社会を維持しておけばよいという考え方は最近通用しません。学校は人が持っている潜在能力を引き出すところでなければなりません。中でも、人と関わりあいながら人の知力を育てていく仕組みはどういうものか。それを探求するのが私の専門分野です。

「建設的相互作用」と新しい学びのあり方

潜在的な能力を活かすために大事なことは、「外を使う」ことと「ことばを使う」ことです。外とは、モノ、道具、やったことの軌跡など。ことばとは、自分の発話、人の言ったことなどです。

例えば、「折り紙の 3 分の 2 の 4 分の 3 に斜線を引いてください」という課題を出すと、たいていの人は計算せずに折ったり目印を付けたりして答を出します。同じような問題を 2 度続けて二人ペアで行うと、2 回目には計算して答を出す人が 7 割程になります。被験者が一人だとそうはなりません。ペアで何が起きているのか詳しく分析してみました。二人で考えたり問題を解いたりすると、実は自分の考えを見直すチャンスが増え、それに加えて相手の解を少しだけ広い視野から見直して、各自が自分の考えを作り直し、その繰り返しによってより抽象度の高い、深い理解が生み出されていました。こういう現象はゴールを共有した二人の話合いでよく見られ、これを「建設的相互作用」と呼びます。ただし、同じ考えに収斂するわけではありません。

今、学校での授業を、この建設的相互作用の考え方を使って、先生中心の授業から、生徒中心の授業へと作り替えて、冒頭でお話ししたような 21 世紀に必要になる考え方を身につける授業へとつなげるお手伝いをしています。[知識構成型ジグソー法]と名前をつけた枠組みを使っています。中学校の理科でのこのジクソー法の例として、クラスを 3 つのグループに分け、「デンプンの消化の仕組み」を課題にして、「栄養素の大きさ」「小腸での吸収の仕組み」「酵素の働き」という三つの資料についてそれぞれ調べてから、この三つの資料を担当したひとりひとりが集まって新しいグループを作って互いに自分の担当部分を説明し合い、デンプンの消化の仕組みについて自分たちなりの答えを作る、という授業を行ったところ、授業後に全員が消化について自分なりに納得の行くストーリーを書くことができました。
今約 30 の教育委員会の下、100 名強の先生に推進委員になっていただき、子どもたちが自分たちでまとめてこのような理解につながるストーリーをつくる授業を実践してもらっています。子どもたちにも評判はよくて「またやりたい」という声があがっていますし、先生方からも子どもの能力を見直したという声が聞かれます。
[人はいかに学ぶか]についての基本的な考え方、その考え方に基づく教材観、授業観を新しく作って行くのが私たち学習科学者の使命です。子どもたちひとりひとりが作る教科ないようについての自分なりのわかり方、ここで言うストーリーは、ひとりひとり違って多様ですが、その多様性が、子どもたちの間に自己効力観、学び続ける力、他人と話し合いながら自分自身を賢くし続ける力を育んで行きます。子どもたち自身から学びの力を見せてもらいながら進めています。21 世紀型の学びというのはこのようなところから始まるのではないかと考えています。

グローバル人材を育成する新しい学びと新しい学校

基調講演者:文部科学省 国立教育政策研究所 所長 徳永 保 氏

これからの学校教育に求められるもの

小・中・高の学校教育については学校教育法という法律で定められ、それに基づいて学習指導要領には、「基礎的な知識および技能」、「これらを活用して課題を解決するための思考力、判断力、表現力」、「主体的に学習に取り組む態度」を育むことが記述されています。学校教育の基本は知識の習得なのか、技能の習得なのか。教科は知識体系別になっていますし、教育現場でも混乱しているのではないでしょうか。
今後の学校教育と運営の上で考えなければならないことは、「人口減少局面での資源の有効活用」と「東アジアの経済成長と国際分業の拡大を見据えた雇用政策と人材育成」です。日本の人口減少と東アジアの経済成長を背景に、グローバル化する経済活動等を担う人材育成という観点を初等中等教育政策、とりわけ高等学校教育政策に導入することが必要でしょう。

これからの教育には、国際的に通用するスキルを身につける新しい学び、新しい学校が求められます。新しい学び、新しい学校のイメージは、子どもの理解状況や習得過程等に応じた指導を行い、指導スタッフとして専門家である教員、教員活動を支援する専門的スタッフ、地域ボランティアなどが協働してきめ細かい指導と多様な学びの形態に対応し、校長を中心に多様な指導スタッフと地域住民・保護者が参画し、マネジメントを行う、といったものです。

新しい学び、新しい学校を実現するために

新しい学び、新しい学校を実現するためには、大学の教員養成制度そのものを見直す必要があるのではないか。個人的な提案ですが、従来の教職専門科目と教科専門科目に加えて、新たに「教科の指導と個別授業の構成・展開に関する専門科目」というような新しいカテゴリーとそれに属する専門科目群を導入し、それに伴って教員養成教育期間を延長し、大学教員の審査基準も新しい専門科目カテゴリーに相応しいものにすべきなのではないでしょうか。
現在の学習指導要領は、学問分野別の教科編成が主体になっています。それを涵養しようとする資質能力とそのための学習活動という観点からの教育課程編成に転換することを検討すべきと考えています。このことについては、国立教育政策研究所のプロジェクト研究として、「教育課程の編成に関する基礎的研究」(平成 21 年~ 25 年) を実施しています。

学校施設や情報環境も重要です。とりわけ学習の場を形成する物理的な環境は、教授法や学習スタイルに相互に影響を及ぼします。情報機器はいかに革新的なものであっても、教育の革新が先行して初めて活きてくるものです。そのことを忘れてはなりません。

座談会

東京大学 大学発教育支援コンソーシアム推進機構 副機構長
大学院教育学研究科 教授 三宅なほみ 氏
文部科学省 国立教育政策研究所 所長 徳永 保 氏

座談会ファシリテータ:
日本マイクロソフト株式会社 執行役 パブリックセンター担当 織田浩義

織田:新しい学びを実践するためにはまずはどこから手を着ければうまくいくのでしょうか、これまでのご経験からうまくいくツボとはどこになりますでしょうか。
三宅氏:現場の先生方は、新しい教え方で子どもが学んで楽しかったという経験をなさると、ご自身も楽しいと感じられるようです。そういう場面をたくさん作るお手伝いをして、子どもと先生のもっと学びたい、みんなで賢くなりたいという気持ちを大事にしていくことがツボと言えば言えるでしょう。現場の先生は知識を教えるのに忙しく、新しいことを試すことをなさらないという考え方があります。でも、いっしょに仕事をするとそんなことはないです。先生方が授業を変えて行けるその前提おして、しっかりした教育委員会がついていることが大事だと感じています。指導者と現場が一体になって進めていくことが大事です。行政の力と現場の力が融合したとき日本を変えていくでしょう。
徳永氏:ツボは入学試験と教員養成教育だと考えています。学力調査のグローバルスタンダード PISA をもとにした PISA 型入試を取り入れる学校が増えています。一方で企業は急速にグローバル化し、それに対応して大学も変容してきています。あと数年でスキル中心の入試になってくるのではないか。そして、教員養成については、教育に学習科学を取り入れるべきです。プロジェクト研究を行っていますが、多くの大学で急速に展開していくのではないかと思っています。

織田:新しい学びの中で、ICT の役割についてはどのようにお考えですか?
三宅氏:授業の記録がきちんと取れて、必要な時に学習者も先生も研究者もその過程を振り返って見直したり、分析したりできて次の授業につなげることができる、そういう強固な ICT 基盤がまず必要です。その上で、子どもたちが学ぶために使えるツールがきちんと使える形で揃っていること。例えば、ジクソー型のような授業の場合、子どもが手軽に使えるビデオなどがあれば記録を取って見直すことができますし、ネットにつながっていればいろいろなデータを見ることができます。他にも手書きの記録が取れるノート、必要ならセンサやデータ解析ツール、モデル化ツールなどがあったり、ネット越しに専門家に相談できるリソースがあったりすれば学びが広がりますので、学校の ICT 化は進んでほしいと思っています。
徳永氏:2 つあります。1 つは、ICT を使えば、新しい学び、習得のプロセスを記録して振り返ることができますので、学習に関する評価の質が向上します。もう 1 つは、ICT を使うことで、知の地平線が違ってきます。例えば、MIT も東大も講義を Web 上に公開しています。

会場参加者からの質問:ビジネス側から 21 世紀型スキルを提唱している立場にいるのですが、一方で職を離れて考えると、小・中・高・大学は、ビジネススクールでもないのにビジネスで役立つものを学ぼうとすることが正しいのかという疑問もあります。
徳永氏:私どもがコンピテンシーを身につけることを期待しているのは企業で役立つ職業教育という意味ではありません。言語表現力、論理的な理解力などは、どんな場面でも、世界中のどこに行っても必要なことです。世界の中で異なる背景をもつ人々と交流し、協調し合うことはとても重要です。
三宅氏:社会の中で必要とされるスキルが変わってきているのではないでしょうか。学ぶ力がみんなに求められていると感じています。

織田:最後にスピーカーのお二人からコメントをお願いいたします。
三宅氏:2015 年に PISA (OECD による生徒の学習到達度調査) が新しい問題を公開するというニュースがあります。PC を使ったテストでスキルが測られるというものです。そういう時期だからこそ、降ってくるものに対応するだけではなく、日本として 21 世紀型の学びを考えていきたい、そういう位置に立っているとよい!!と思っています。
徳永氏:先生には自分なりに冒険していただきたい。いろいろな授業展開ができますので、1 つでも 2 つでも少し違うことに冒険していただくことを期待しています。

織田:21 世紀の学びは奥が深く、みんなで連携して進んでいかなければなりません。本日はありがとうございました。

教育の情報化ビジョンワークショップ

講師:東京大学大学院 情報学環 学際情報学府 准教授 山内祐平 氏

ワークショップのテーマ

「もし 5000 万円の予算があるとしたら、どんな夢のある教室をつくるのか」 参加者は東京大学の駒場アクティブラーニングスタジオ (KALS) の事例を基に、所属する学校の実情と照らし合わせながら夢の教室を考えます。他の教員とディスカッションを通じて「なぜ必要なのか」「何が障害になるか」「どういったことが可能となるか」を分析し、教育の情報化ビジョンを作成するプロセスを実際に体験します。

ワークショップの目的

学校の情報化を進めるためには、教員をはじめ関係者が何のために行うのかについて「ビジョン」を共有する必要があります。学校の実情に応じてどのような ICT 化対応教室をつくるのか。ICT 化のプロセスをシュミレーションし、ワークショップでそのポイントについて議論することで、教員の情報化への理解をすすめ、将来の学校 ICT リーダーを育成します。

東京大学 KALS の事例の紹介

はじめに講師の山内先生から東京大学の ICT 支援型学習教室 駒場アクティブラーニングスタジオ (KALS) のビデオが発表されました。「課題解決型人材の育成」という目標の下、東京大学で実際に行われた教室コンセプト作成のプロセス (教員と授業を分析し、3 年間のアクションプラン作成したこと) や改革を進める上でのポイント (ターゲットとなる授業の明確化、同僚の協力、思考力向上のための専用ソフト開発など) について紹介。KALS の事例を参考に、参加者は「夢の教室」へのアイディアを膨らませます。

グループセッション

参加者は小学校、中学校、高校、教育委員会、大学のグループに分かれ、まず個別に学校プロファイルシートの記入、分析を行い、教室コンセプトシートを作成しました。その後、グループ内で自己紹介を兼ねて作成したシート内容を各人が発表し、グループ討議によってその中からグループ毎に 1 つのプレゼンシートを選出しました。

発表

小学校グループの発表からは、目標として「求める、伝える、つながる」を掲げ、一人 1 台の PC を用意し「自発的なコミュニケーションとして、ICT を、子どもたちの人間関係構築、知識の定着、学びが深まることを目的として利用する」という意見が出ました。高校グループは「将来、社会でリーダーシップをとれる人材育成の達成を目指し、教科の枠を越えた学習者にあわせた教室を作る」とし、授業内容はワークショップ、ディベート中心のものを想定、可動式テーブルや無線 LAN、電子黒板などの設備を備えた教室コンセプトを紹介しました。教育委員会グループは、高校における「文系理系の枠を越えた高い教養を備えた人材育成」を目標とし、ゼミ方式の授業での他校との双方向コミュニケーションや道内を結んだ遠隔授業などを想定したアイディアを発表しました。大学グループは、「地域連携型の教育拠点」を目指して、制作実習や情報発信の場として授業を遠隔で受けられるステーションをつくることや、「グループワークによる自由な発想の尊重、新たな知の創造」を目標に、20 人程度の少人数クラスの授業でディスカッションが活発に行えるよう、可動式の机と椅子、学習活動を保存・蓄積・利用できる環境などを整備すること提案しました。

ワークショップのまとめ

最後に山内氏が次のようにコメントされました。
「それぞれの発表内容がまったく異なることに驚かれたでしょう。地域や学校によってニーズがまったく違いますので、情報化ビジョンはそれぞれの学校で考える必要があります。このワークショップでは、リーダーに当たる方が 1 人で考え、グループ討議をしていただきましたが、リーダーが育ってきたら学校全体でこのようなことをやる必要があります。
そのときに、Web 調査ツール「マイクロソフト・パートナーズ・イン・ラーニング・スクール・リサーチ (PILSR)」は、教育のビジョンを共有し、学校の状況を把握し、教育の改革を進めるのに役立つでしょう。地域、地方、世界レベルでの結果の比較も行えます。
今日のワークショップでは、すべて教育情報化ビジョンの原型になるものが出てきました。皆さんもリーダーとして IT を活用したさらに学習を拡げていただければと思います」

21 世紀の学びを実現する ICT 活用 (授業での ICT 活用)

リーダー講師:
熊本県教育庁 教育政策課 指導主事 山本朋弘氏

ワークショップのテーマ

21 世紀の学びである「協働型学習」「個別型学習」の場面で ICT をどう活用していくのか。より良い ICT の活用について先進事例から学び、今後の可能性と指導のポイントを探っていきます。

21 世紀の学びと ICT

ワークショップでは、はじめにリーダー講師の山本先生から ICT 活用の際のポイント (情報教育・教科指導での ICT 活用・校務の情報化) について説明がありました。そして、21 世紀の学びである「協働型」「個別型」のそれぞれの特徴とその中で ICT をどう活用するかについて話し合うことの重要性を確認しました。

ICT 活用事例の共有

次に先進事例として 3 人のグループリーダーから発表が行われました。「デジタルノートの活用」「モニタリング・映像の利用」「思考の共有」「授業での対話」などの例を参考に参加者には自分の学校において「どんな授業をやってみたいか」「期待できる効果」を思い描いてもらいます。

グループセッション

各グループにおいて、まず参加者はそれぞれが「(ICT を活用して) やりたいこと」について意見を出し合いました。そして、それらを「協働学習」「個別学習」に分け、合わせて「指導する際のポイント」を検討しました。

発表

グループ A からは、個別学習と協働学習の発達段階において、どうやって ICT を活用していくかが重要だという意見がでました。グループ B からは、生徒の学習レベルに応じた活用ができるといった点や、「協働」「個別」とは分類できない活用例として「作曲した歌を動画撮影し、コメントをもらう」「創作文芸の発表」などの多くのアイディアが出されました。グループ C からは、活用例だけでなく、ICT とアナログの違いとは何か、協働学習の定義といったことについても議論が交わされました。グループ D からは、海外とのコミュニケーションでの活用に着目し、ウェブ会議システムを利用して、海外の学校とのリアルタイムで交流ができるのではないかという意見がありました。どのグループでも共通した意見として、記録と共有 (情報や意見など) の利便性の高さが挙げられました。

ワークショップのまとめ

グループセッションでは、小中高や企業に分かれて協議を進め、全てのグループで活発な意見交換が行われました。その中で、これから実践できそうな ICT 活用のアイディアを出し合うことができ、参加者にとって貴重な情報交換となりました。今後の ICT 活用では、「教師の ICT 活用」だけでなく、「子どもの ICT 活用」がより重要となってきます。ワークショップで共有したアイディアを参考にして、子どもたちが積極的に ICT を活用できるように今後も支援していきたいと思います。

A グループ リーダー 和歌山県和歌山市立藤戸台小学校 教諭 本岡朋氏
グループメンバー:主に小学校の教師

協働型個別型その他はっきりしないもの
活用場面
  • 図工 作品の鑑賞
  • 書写 鑑賞
  • 美術 協働お絵かき
  • 体育 跳び箱、ハードルなど動画静止画の
  • 社会 社会科見学 (市内見学、清掃工場のまとめ)
  • 国語 漢字の学習 (テストの結果→次の出題)
  • 国語 個に応じた出題
  • 国語 採点の基準 (はね、はらいなど) 筆順まで採点できる
  • 算数 分数の大きさと数値
  • 算数 分数の割り算、約分 (計算手順の確認、公約数)
  • 生活科 (1 年) アサガオの観察記録・写真と気づいたことを
  • 音楽 歌を考える。歌を友達に動画で撮ってもらう→共有できるようにし友達にコメントしてもらう。
ポイント
  • 応用的な活用
  • 動画・静止画を扱う
  • 作品に直接書き込める
  • 持ち点・正確・早く

B グループ リーダー 熊本県人吉市立人吉西小学校 教諭 中島公洋氏
グループメンバー:小学校・中学校・特別支援学校の教師

協働型個別型その他はっきりしないもの
活用場面
  • 体育 授業内のゲーム (サッカー・バスケ、野球など) を撮影し、作戦を練る
  • 国語 文学作品の読み、創作作品、行事感想文の共有
  • 国語 新聞の 4 コマの 4 コマ目のセリフを考える
  • 英語 生徒の書いてきた英作文を 1 単語ずつ書き直し
  • 英語 授業で行っている 2 ミニッツチャットを撮影する
  • 英語 マウスを英単語の上に持っていき、日本語訳がでるような機能がほしい (デジタル教科書以外のものでも)
  • 全教科 自分の考え、解き方をグループに提示する場面など、それぞれの考えをグルーピングして、共通点・相違点をわかるようにする
  • 特別支援 野外活動 個別に考えた計画を共有する。
  • その他 子供たちの使っている日記やブログを通じて交流したい。普段子供たちが興味を持って使っているブログだとより積極的に交流できるのではないか。
  • 国語 漢字の書き取り
  • 国語 EJOURNAL PLUS つかって文章をよむ
  • 算数 計算
  • 英語 (機能としてあるならば) 各自の理解のレベルによって映画のセリフをゆっくり聞いたり、早く聞いたりして、リスニング力を高める。
  • 理科 実験の表の下にきづいたことを書き込ませる
  • 社会 各自で旅行の企画をされる
  • 全教科 個人端末に課題を送付。回答したら次の問題がでる。複数の問題を用意しておいて、できる子は問題をどんどんとけるようにし、わからない子はどこでつまずいたのかわかるようにする
  • 特別支援学級 語彙を増やす、計算、漢字
  • 特別支援学習 技術家庭 包丁の使い方を撮影しアドバイス。タブレット PC に動画に文字を書き込んでそのまま保存ができる機能がほしい (振り返り学習をさせたい)
  • 特別支援 自分の障害をどう思っているのか、将来の夢について書く
  • 特別支援 みんなで歌う歌詞の投影をする。
  • 歌詞は数秒前に表示されるようにし、歌いながら次の歌詞を見ることができるようにする。
  • 校務 膨大な校務資料をとりまとめ
ポイント
  • 考えを共有することが ICT を活用することによって時間の短縮、見やすさを可能にしている
  • それぞれの生徒の理解レベルに応じてできる

C グループ リーダー 千葉県立袖ヶ浦高等学校 教諭 永野直氏
グループメンバー:主に高等学校の教師

協働型個別型
活用場面
  • 歌詞分析 (年代によって変わってくる)自分たちで分類わけができるるようになるが、ある程度目星をつけて実施している
  • 広告分析グループで意見を出し合う
  • 情報整理省 (KJ 法、ブレーンストーミング)今までの題材:学校についてのイメージ
  • ダイヤモンドランキング 焼畑農業=環境に悪い (教科書では) 本当に環境破壊だけなのか?を調べさせる。文化的側面があったりする。文化産業、環境といったところが複雑にからまっている。ことだま【フリーウェア】を活用している。並び替え、整理ができる
  • 商品開発 (実践学習) リアルタイムでのアイデアの共有
  • データ分析、グラフ、表
  • 地域の抱える課題 実習の様子を動画でサーバーにとっておき共有する
  • 歌詞分析 回答の過程を記録して再現する、Undo 機能
  • 広告分析 マインドマップを書かせる。情報の整理のため (初心者は紙の方が良い) 協働で短時間でやるのであればデジタル使用する
  • 情報整理省 興味、関心、個人の特性として
  • 地域の抱える課題 実習の様子を動画でサーバーにとっておき共有する
ポイント
  • 並べ替え、整理、共有、保存性 (必要なときにすぐに取り出せる) 分類、検索しやすい
  • ナログとデジタルの融合 場面によって記録 (←→オーラル)、過程 (戻れる)、再現性、配置を変えられる。
  • 1 人一台あることのメリット。教材として残す事ができる。個別のニーズに合わせて対応できる (拡大してみたい等)

D グループ
グループメンバー:企業参加者

協働型個別型その他はっきりしないもの
活用場面
  • 制作
    修学旅行、校外学習での事前学習と事後のまとめ
    一年間で撮った写真をコメントと音楽を付けて動画にし、生徒自身が自分たちの卒業アルバムを作る
    タブレット PC を使った新聞製作
    課外活動ーマイクつき端末でインタビューする
  • 時差型協働学習
    電子ノートを海外の学校と共有。時差を利用して、お互いが絵をかいたり、ディスカッションを行ったり、物語を作ったりする。
  • リアルタイム
    ことばさがし (反対語、同義語を書き込む)
    情報モラルや道徳など自分の考えを深める授業
  • 対話
    図形 (円柱・角柱) を断片で切っていき、様々な形にかわっていく中で、生徒たちが問題を出し合う。
    海外との交流 カメラ・マイク付き端末のそれぞれから海外の学校と 1 対 1 の交流
    音読した英文を録音し、他の生徒にディクテーションしてもらう。その中にネイティブスピーカーも入って学習する
    テレビ会議システムとプレゼンを同時に行う
    クイズボードで回答を共有
  • 共有
    ノートを実物投影機等を使ってインタラクティブホワイトボードなどへ拡大表示
    体育の演技 (映像) をみて振り返る
    デジタル教科書 / 教材の活用
    理科の実験結果を書き出す (共有ノートで)
    実験結果の発表
  • カメラを使ったスピーチの練習
    英語の発音の練習
  • 調べ学習
    興味のある歴史上の人物について調べてまとめる
    社会科で江戸幕府について調べてプレゼンする
  • ドリル (習熟)
    タブレット PC を使ったドリル学習
    英語をペンで書き、サーバー側で採点
  • デジタル教科書 / 教材
    デジタル教科書等への書き込み (メモ、ハイライト)
    デジタルペンで書いてつまづきがわかる学習
  • 家庭学習
    自宅でのエコ活動を紹介する
  • TV (Web) 会議システムを使い外国の外国人学校との交流
ポイント
  • グループで生徒オリジナル作品を作り上げる
  • リアルタイムでの学び
  • 考えを共有し意見を出し合う
  • 外国との交流
  • ふりかえり学習 (記録が残せる 履歴が確認できる) で理解を深められる
  • 個人のレベルに応じた学習ができる

繋げる・深めるコミュニケーションの力 (校務での ICT 活用)

講師:
千葉県印西市教育センター 指導主事 松本博幸氏
取手市教育委員会 指導課 指導主事 石塚康英氏
東京都立上野高等学校 情報科 主任教諭 能城茂雄氏

ワークショップのテーマ

平時・非常時における教職員間、学校と家庭・地域社会とのコミュニケーションが今最重要検討事項の一つとなっています。情報共有を円滑かつ正確に行うにはどうすればいいのか、想定外の災害に見舞われた場合にきちんと対処できるのか。また、日々時間に追われている教職員の在宅勤務の可能性についても、各校の ICT の活用事例を共有し検討します。成功事例や課題、解決方法等情報共有することで、今後の ICT アクションにつなげていきます。

教職員間・学校間コミュニケーション

はじめに教職員同士・学校におけるコミュニケーションの現状について、印西市の事例が紹介されました。平常時の教職員コミュニケーションにおいて、グループウェアはどう活用されているか、次に非常時におけるコミュニケーションとして、東日本大震災の時の教職員の安否確認、学校の安全確認がどうだったかを説明されました。これまでの事例からうまくいった点や改善すべき点を踏まえ、参加者は自分の学校と照らし合わせ、考えを深めていきました。

ワーキング 1

参加者は平常時、非常時とわけて、教職員間コミュニケーションの現状について話し合いました。平時どのようなコミュニケーション媒体 (紙、メール、ウェブ) を使っており、どう感じているのか、また ICT 導入のメリットと懸念点、運用へのハードルも出し合いました。非常時では、東日本大震災の際、これまでの機能は通常どおり働いたのか、想定通りに対応できたかについて話し、認識した課題、今後必要なフローについて検討しました。

発表

ディスカッションを通して見えてきた課題として、在宅勤務においてはグループ A からは労働超過への懸念、グループ B からは個人情報の問題上、実現が難しいという点が挙げられました。グループ C からは、承認が必要という旧態ルールから紙ベースでの情報共有がメインとなっている現状や予算整備においては自治体での差が大きいことが問題となっているという意見が出ました。どのグループもセキュリティ問題とインフラとして予算 (が少ないこと) が大きな障害となっていると感じており、解決策として例えば県レベル・文科省レベルで「一括指針として」出してもらえれば今後の足がかりになるのではないか、という提案もありました。

学校と保護者・児童生徒のコミュニケーション

印西市の事例として、平時のコミュニケーション (例:インフルエンザ、学級閉鎖、日常の連絡事項) におけるメール配信システムの活用についての説明と非常時における安否確認と保護者へ (保護者から) の伝達手段について示されました。震災の経験を踏まえ、今後の課題として連絡体制・フローの明確化が挙げられました。

ワーキング 2

震災から約 3 か月後ということもあり、参加者は当日保護者や生徒とどのように連絡をとりあったかについて熱く話し合いました。学校からの連絡だけでなく、生徒同士の横のつながりを利用して安否確認をしたことや、メールやホームページを使った情報提供については、承認確認をどうおこなったのかについて意見を交換しました。また今後のコミュニケーション手段として、教師が直接連絡をとりあえるスマートフォンやタブレット PC の携帯することや、電話やメールが不通状態の時でもオンタイムでやりとりできるソーシャルメディアやツィッター等の利用も検討材料となりました。

発表

グループ A とグループ B からは平時・非常時ともに情報提供としての学校ホームページの役割の重要性が挙げられ、これは学校の信頼性を得るためにも有効とだという認識でした。グループ C からは、これまでのアナログの手段 (紙、ハンドマイク等) に加えデジタル (パソコン、携帯電話等) も合わせて利用することや、現存するような部分的な連絡網ではなく、全体的な通信網の構築が急務という意見が出ました。サーバーダウンの危険性に直面し、クラウドやデータセンターへの移行も積極的に取り入れるべきというアイディアも出たようです。

ワークショップのまとめ

本ワークショップでは、コミュニケーションについて現場で試行錯誤が続いていることが明らかになりました。
クラウドやソーシャルメディアは日常生活では一般的になり、震災時の存在感から重要なコミュニケーション媒体という認識はあるものの、学校での活用は今後検討という状況でした。また、学内コミュニケーションはICT整備状況に左右される傾向にあり、運用ルールも自治体や教育機関によってまちまちでした。
いずれについても、繋がるコミュニケーションの実現にはハード面のインフラと、ソフト面の指針・フローの両面が重要と認識させられる有意義なワークショップとなりました。

学習に困難のある子どもの ICT 活用 (アクセシビリティ)

ICT を活用した学習は、成績のいい子どもの学力を向上させるという側面以外にも、従来の方法では学習に困難のあった障害のある子どもの学習への参加を助けるという側面があります。通常学級に在籍しながら授業についていくのが難しく、通級指導教室で指導を受ける児童生徒が年々増加する中、読み書きなど学習に困難のある子どもへの配慮として有効な ICT を活用した学習について学ぶことは重要です。本セッションでは、国内や、米国等海外の事例も紹介していきます。

外見では判りにくい困難をもった子どもを理解する

講師:岐阜市立岐阜特別支援学校 教諭 神山忠氏

ディスレクシアという言葉を聞いたことはありますでしょうか?ディスレクシアとは読みに困難のある人々のことです。外見からは判りにくいのですが、このような困難をもった子どもたちもいることをぜひ認識・理解していただければと思います。

私自身がディスレクシアです。ディスレクシアを理解するためにいくつか例を紹介します。ディスレクシアといっても一括りにできるわけではなく、それぞれ特性が違います。
私の場合は、文字が絵のように見えたりします。フォントでは、明朝体が特に苦手です。縦の線が太く、横の線が細いという違う太さの線が混在しているのが苦手ですし、止めの部分が三角になっているのがとても気になってしまいます。文章は横書きよりも縦書きが苦手で、私にとってはとても読むのが難しいです。
しかし、文字を読み取ることは苦手でも、事象をフローチャートで整理すると理解しやすいことがわかりました。それからは、メモや授業の内容を、フローチャートで整理して理解することが多くなりました。
また、苦労して文字を目で追わなくても、音で聞き取れば、問題なく理解ができます。
今では紙の情報ではなく、インターネットの情報やデータでもらった資料をパソコンで音声で読むことができ、とても便利です。

子どものころは、自分も周りもディスレクシアという概念がなかった環境でした。小さいころから、勉強ができない子といわれて、自分で、自分は生きる価値がない人間であると思っていました。でもその一方で、工作では友達より面白いものが作れる力があることにも気付いていました。
これは自分の特性であり、努力不足ではないとわかったのは 27 歳のときでした。NHK の番組で米国で自分のような子どもがいるという番組を見て、初めて知りました。自分と一緒だというショックも受けましたが、一方でほっとしました。40 歳くらいから自分の障害をオープンにできるようになり、ディスレクシアということを周囲に伝えるようになりました。

ディスレクシアや発達障害は一つの特性です。例えば写真を見た場合、写真のメインの被写体ではなく、背景のとても細かい一部分に目がいってしまう子がいます。しかし、誰でもが興味関心のあるところに目がいくのは自然なことです。見せたい部分を注目させるためには背景を切り取って、見せたい部分のみを見せるようにするなどすればいいだけです。少しの工夫で、その子の特性にあった提示の仕方をすれば、健常児と一緒に学ぶことができるのです。
ディスレクシアなど特性のある子どもへの理解が進み、少しでも多くの子どもたちが学べる支援を受けられるようになることを願っています。

学習に困難のある子どもの ICT 活用

講師:東京大学先端科学技術研究センター人間支援工学分野 (バリアフリー系) 特任講師 近藤武夫氏

テクノロジーで、いかに困難のある子を支援していけるかを紹介していきたいと思います。
米国では、障害により印刷物を目で見て読んだり、手でページをめくることが難しい、プリントディスアビリティ (印刷物障害) のある子どもたちに対する教育における配慮が進んでいます。この障害には学習障害 (LD) を代表として、視覚障害、肢体不自由のある子どもたちも含まれます。日本でも、一般の学校でどれくらい LD の子どもたちがいるのか文部科学省が調査し、4.5 %の子どもに学習の著しい困難があるという調査結果がでています。すなわち学習障害があることが疑われる子どもが 1 クラスに 1-2 名は存在するという状況であるにもかかわらず、これまで十分な支援、特に教科書教材や試験のアクセシビリティを確保する支援はなされてきませんでした。そのような子どもたちは学校の学びの場所に自分の居場所を見つけられない、将来に夢がもてない状況にあります。
学習障害の子の中には、鉛筆では文字は書けなくても、パソコンのスクリーンキーボードなら文字を打つことができ、自分の考えを表現することができるという子もいます。日本の教育場面では鉛筆で文字を書くことにこだわりすぎている傾向があると思います。例えば、文字を読むのに障害があっても、人に文字を読んでもらうと理解ができる子どももいます。だからといって、試験の解答をワープロや代筆など手書き以外の方法で行ったり、試験問題を音声読み上げソフトや口頭で読み上げてもらう支援を希望しても、日本の受験では認められず受験ができない状況です。一方で、米国では合理的配慮の一環としてそうした支援を実施することにより、障害をもった子どもも大学を受験し進学しています。社会みんなで障害の特性を理解し、それにあった支援技術 (Assistive Technology) を提供することで、子どもたちはその力を発揮できるようになります。このことを、ぜひ社会全体で理解していければと思います。

現在、読み書きが困難な人を支援する技術は多くあります。この支援技術で何ができるのか少し紹介します。
●音声読み上げソフトウェア:教科書や教材のテキストデータ部分を自動的に流ちょうな音声に変換して読み上げる。
●印刷物読み上げ機器:印刷物の文字を撮影してとりこみ、文字部分を読み上げる。
●アウトラインエディタ 文章を構造的に理解することを助ける。
●マインドマップ 文章を視覚構造を通じて理解できるようにする。
●音声認識ソフト 音声で文字を入力する。
●ひらがな・なびぃ ボタン一つで漢字をひらがなにしたり、分かち書きをする。
●パワーポイント アニメーション効果を活用して、漢字、ひらがな、カタカナの構造をわかりやすく提示し文字の学習に役立てる。

このようにテクノロジーを活用することにより、障害により「どうしてもできないこと」を別の方法で置き換え、教育へ参加する機会を得ることができます。本質的な変更でない限り、「能力に下駄を履かせている不公平な扱い」と考えるのではなく、「公平な参加機会や競争を実現するために土俵を等しく整える配慮」と考えるべきです。教育の分野でも、こうした配慮がゆるされにくい状況があると思います。

ここで海外の事例も紹介します。
米国ではインクルーシブ教育が実施されています。特別支援学校も存在していますが、基本的には、障害のある子どもも同じ地域の子どもたちと同じ場所で学んでいます。身体的に重い障害のある子が所属するクラスもありますが、教科や参加できる活動には他の子どもたちと一緒に参加できるようになっています。障害のある児童生徒には、支援技術サービスも含めた特別支援教育サービス (個別教育計画、 Individualized Education Plan) が提供されています。例えば、ワシントン州北西部のシアトル公立学校区では、 14.1 %の児童生徒が IEP を受けています。また、米国では障害のある児童生徒のために、教科書・教材のデジタルデータを、インターネット上の図書館である Bookshere.org を通じて全米にネット配信しています。このサイトに登録した学校区は、その学校区に通う障害のある児童生徒のために、教科書・教材の電子データにアクセスできるようになっています。こうしたデータがあることで、弱視や LD など印刷物障害のある児童生徒は、音声読み上げや文字、背景の調整機能のある支援技術ソフトウェアを使い、自分にとってアクセスしやすい形に教科書・教材を変更することができます。学校区には専任の支援技術専門の支援員がいることも珍しくなく、障害のある児童生徒に適切な指導をしています。

大学において、障害をもつ学生の割合は米国では全学生の約 10 %、日本では約 0.2 %となっています。障害種別の内訳をみると、構成比の傾向は日米で顕著に違います。日本では肢体不自由、聴覚障害、病弱ある学生の割合が大きく、米国で障害学生の多数派をしめる ADHD や学習障害、認知面に困難を持った学生はほとんど統計データに現れていない現状があります。支援技術やアクセシブルな教材があれば、学習障害や認知面に障害があっても、大学で学ぶことができる人々の潜在数は日本でも多数に上るはずです。
支援技術は、能力に下駄を履かせているわけではなく、障害のある人々とそうではない人々が同じ土俵を用意し、公平に勝負できるようにするためのものです。しかしながら日本ではまだそれを取り入れる制度がなく、活用が認められていません。米国、英国、韓国ではすでに「合理的配慮がないことは差別であり、これを禁止する」とする法律があり、国連でも障害者権利条約にこのことが示されています。支援技術を活用して、すべての人の社会参加の可能性を広げることができます。ひとりひとりが未来に夢を描ける社会になるように、みんなで一緒に取り組んでいきましょう。

学習に困難のある子どもの ICT 活用

講師:日本マイクロソフト株式会社 技術統括室 アクセシビリティ担当 大島友子

私のセッションでは、特別な技術や製品でなくても、学習に困難のある子に役立つソフトウェアなどをご紹介したいと思います。
一つ目は PowerPoint です。
皆さんにもお馴染みの PowerPoint ですが、マイクロソフトの Web サイトで、特別支援教育の教材として使用できる 2 種類の PowerPoint スライドを無償で提供しています。(http://www.microsoft.com/ja-jp/enable/ppt/default.aspx(新しいウィンドウで開きます))
「文字のスライド」と「アイデア スライド」です。
「文字のスライド」では、小学校で学習するひらがな、カタカナ、漢字、数字など 1,182 字のスライドを提供していて、それらは一画ごとにアニメーションで書き順を設定したパーツの組み合わせで作成されているので、文字の学習に困難がある子に、文字の細かい違いや、止め、跳ねなど間違いやすい箇所を、色を変えたり、アニメーションをつけて注意させることができます。色のつけかた、アニメーションのつけかたなどのアレンジするための説明書も提供しています。
「アイデアスライド」は、リアクションを感じながら学べるクイズのスライドや、コミュニケーション支援のスライドなどを提供していて、そのまま使っていただいたり、自由にアレンジして使っていただくことができます。

続いて PowerPoint のアドオンソフト「Mouse Mischief」をご紹介します。
「Mouse Mischief」は、1 台のパソコンに複数のマウスをつなげて使用する教材が作成できます。一つの問題をそれぞれの子どもがマウスで回答したり、同時にそれぞれのマウスで一つの絵を作成することができます。
マイクロソフトのサイトで、無償提供されています。(http://www.microsoft.com/japan/multipoint/mouse-mischief/(新しいウィンドウで開きます))

三つ目は、DAISY です。
DAISY は Digital Accessible Information System の略で、ファイルフォーマットです。
テキストを音声で読み上げたり読み上げている部分をハイライト表示させることができるので、米国や欧州の多くの国で、障害者向け電子教科書や電子書籍のフォーマットとして採用されています。
DAISY の文書の作成には、専用のソフトウェアが必要だったのですが、Word に DAISY Translator という無償のアドオンソフトを追加することで、音声合成エンジンと組み合わせ、音声つきの DAISY ファイルを作成できるようになりました。
また、Word や PowerPoint のアドオンソフトとして、よく使う機能だけをわかりやすい表現で「きっず」タブに配置した「Dr. シンプラー」というものもあります。
お子さんに限らず、通常の Office を使うのが難しい知的に障害のあるお子さんにも有効なことがあると思いますので、お使いいただければと思います。
このように、普段皆さんが使われているソフトウェアなどでも、学習に困難のある子に有効な技術、機能は多くあると思います。
ぜひこれらを、皆さんの教育の場でもお役立ていただければと思っています。

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