資格武装せよ。 資格活用事例

株式会社TKC

ねらいは、エンジニアのモチベーションを高めること 若手エンジニア研修に MCP を組み込むことによって常に新しいことを勉強する姿勢がエンジニアに根付いた

全国の会計事務所と地方公共団体に情報サービスを提供している株式会社TKC は、ソフトウェア開発に携わるエンジニアの育成に特に力を入れています。同社の教育研修制度の柱となっているのは、新人研修、若手エンジニア研修、リーダ教育研修の 3 つの研修。モチベーション向上をねらって 2008 年に開始した若手エンジニア研修では、マイクロソフトの認定資格プログラム「Microsoft Certification Program (MCP)」と Microsoft Certified Associate (MCA) を研修メニューに組み込むことによって、エンジニアの底上げを達成しました。初年度の MCA/MCP 取得者は計 273 名。以前からの取得者数を含めると、累計では 1,200 名に迫ろうとしています。初年度の成果を確認した TKC は、リーダ教育研修でも Microsoft Solutions Framework と Microsoft Project 資格試験の導入を決定。ソフトウェア開発プロジェクトにおけるマネージメントの品質も高めようとしています。

写真:岩井 康治 氏

株式会社TKC
執行役員・システム開発研究所・システム開発本部長・兼・.NETエンジニアリングセンター長
岩井 康治 氏


ソリューション概要

プロファイル
1966 年、栃木県宇都宮市で株式会社栃木県計算センターとして創業。1986 年に定款上の商号を現社名の株式会社TKCへと変更しました。おもな業務は、全国の会計事務所と地方公共団体に対するパッケージ ソフトウェアと情報サービスの提供。社是である「自利利他」と「顧客への貢献」という経営理念のもと、IT の力によって広く日本の経済と地域社会の発展に寄与することを目指しています。ソフトウェア開発に携わるエンジニアは、従業員のほぼ 1/3 にあたる約 700 名。MCP 取得者数は、累計で 1,200 人に迫ろうとしています。
ユーザー コメント
「MCP を若手エンジニア研修に組み込むことにより、常に新しいことを勉強する姿勢が弊社のエンジニアにも根付きました」

導入背景と狙い

認められるスキルを身に付けてもらうことでエンジニアのモチベーション向上をねらった写真:岩井 康治 氏

1966 年創業の株式会社TKC (本社: 栃木県宇都宮市) は、会計事務所と地方公共団体向けにパッケージ ソフトウェアと情報サービスを提供している IT 企業です。創業以来掲げている社是は、「自利利他」。「顧客への貢献」という経営理念と併せ、IT の力によって広く日本の経済と地域社会の発展に寄与することを目指しています。
ソフトウェア ビジネスにかかわる同社は、従来から、エンジニアを非常に重要な経営資源と考えてきました。従業員数約 2,000 名 (2009 年 4 月現在) のうち、ソフトウェア開発に携わっているのは約 700 名。「人材育成のために積極的に投資することが、弊社トップの一貫した考えです」と、執行役員の岩井康治氏 (システム開発研究所・システム開発本部長・兼・.NETエンジニアリングセンター長) は言います。
このような基本方針のもと、TKC のソフトウェア エンジニア向け教育研修制度は、新人研修 (2006 年開始)、若手エンジニア研修 (2008 年開始)、リーダ教育研修 (2009 年開始) と段階的に整備されてきました。
4 月から 12 月までの 9 か月をかけて行われる新人研修は、即戦力となるエンジニアを育て上げるのが目的。「まず、最初の 1 か月で開発のポテンシャルを見極めてソフトウェア開発職と営業職に振り分け、その後の 8 か月でみっちり教育して即戦力の人材に育て上げています」と、岩井氏は説明します。新人研修のおもなカリキュラムは、日商簿記 2 級、基本情報技術者試験、C#プログラミング、ビジネスマナーの 4 つ。エンジニア全員に日商簿記 2 級の取得を義務付けているのは、同社が会計と税務のアプリケーションを強みとしているためです。
これに続く若手エンジニア研修は、入社後 10 年以内のエンジニアを対象に実施されています。「社是の『自利利他』を実践できるようになるには、その前段階として、マズローの言う『自己実現の欲求』が満たされていなければなりません (図 1)。そこで、若手エンジニアの自己実現欲求、すなわち『人に認めてもらえるスキルを身に付けること』を支援することによって、各人のモチベーションを高めてもらおうと考えました」(岩井氏)


導入経緯と運用方法の概要

.NET ベースでソフトウェアを開発する企業にはマイクロソフトの MCP がもっとも適している写真:稲垣 啓志 氏

では、どのようなスキルを身に付けてもらえば、エンジニア個人にも会社にもメリットがあるのか――。TKC が選んだのは、マイクロソフトの認定資格プログラム「Microsoft Certification Program (MCP)」を若手エンジニア研修に組み込むという方法でした。
「弊社は、現在、.NET Framework 上で動作する C#プログラムを Microsoft Visual Studio Team System (VSTS) を使って開発する『.NET 開発』を標準としています。このようなプロセスで仕事をしている会社には、同じマイクロソフトが実施している MCP がもっとも適していることは明らかでした。経済産業省の情報技術者試験は基礎体力の習得には向くのですが、それだけでは不十分です。エンジニアには、『カーブの打ち方まで教えてくれるのが MCP』と説明しています」(岩井氏)
TKC の若手エンジニア研修は、実際には、「チャレンジシート」と MCP 研修の 2 本立てになっています。
チャレンジシートは、入社 3 年目までのエンジニアを対象に行われる目標管理のためのツールとなるもの。これを設けた背景について、岩井氏は「有能なエンジニアを育て上げるには最初の数年が非常に重要――と、弊社は考えています。そこで、3 年間は業績を評価する成果主義ではなく、開発のポテンシャルを高めるための育成主義に徹することにしました」と説明します。目標として設定されているのは、「プログラミング スキル」、「社外資格」、「担当システムの知識」の 3 項目。それぞれに本人がチャレンジ目標を設定し、半期に 1 回行われるフィードバック面談の場で本人とリーダ (上司) が話し合うことによって、エンジニアのチャレンジとリーダの支援を促す仕組みです。
一方、MCP 研修は、入社 2 年目から 10 年目までの幅広いエンジニア層を対象とすることから、TKC では対象者のスキルレベルを 5 段階に分類。それぞれに MCP のカテゴリーや Microsoft Certified Associate (MCA) を対応させることによって、成長の段階や業務上の役割に応じてレベルアップしていけるように配慮しました (図 2)。
具体的には、入門レベルの「.NET 版システム開発前提知識」で MCA アプリケーションおよび MCA データベースの取得を全エンジニアに義務付け。大半を占めるアプリケーション スペシャリストには、成長の段階に応じて Microsoft Certified Technology Specialist (MCTS)、Microsoft Certified Professional Developer (MCPD) または Microsoft Certified IT Professional (MCITP) 内のカテゴリーを取得させていくというパスになっています。
各レベルの MCP 研修では、TKC 本社内のトレーニング ルームに用意された研修用仮想環境 (40 席) を使って、外部の専門インストラクターが Microsoft University (MSU) の標準的なコースを提供。3 日間から 8 日間の MCP 研修が終わったところで、そこで学んだことを基に、各自が MCP/MCA の試験を受けます。MCP 研修を実際に受講した現役システム・エンジニアの稲垣啓志氏(システム開発研究所・.NETエンジニアリングセンター)は、「限られた日数の中で、ポイントを絞って説明してもらえたのが分かりやすいと感じました」とコメント。MCP 研修で必修とされたもの以外に、自分が興味を持つ分野の MCP を受験する社員も現れていると言います。また、「受験料は個人負担ですが、合格するとかなりの額の一時金をもらえました」(稲垣氏) とのこと。一時金の考え方について、岩井氏は「金額は、業界平均の倍くらいに設定しました」と説明しています。


導入効果と今後の展望

新しいことを勉強する姿勢が根付いたことが成果今後はリーダー教育でも MCP や MSF を活用していく

MCP を組み込んだ若手エンジニア研修の制度が始まって、まる 1 年。岩井氏は、エンジニアのモチベーションを以前より高めることができたと実感しています。
「現在のソフトウェア開発の現場では、自ら調べて情報を取りに行く姿勢と能力が求められています。メインフレーム全盛の頃は COBOL さえ頭に入れておけばよかったのですが、今は日々新しいテクノロジーが登場する時代。MCP を若手エンジア研修に組み込むことにより、常に新しいことを勉強する姿勢が弊社のエンジニアにも根付いたと感じています。」と、岩井氏。「MCP の取得者は仕事の上でもよい成果を上げていることが多く、賞与支給時の考課にも結果としてそれが反映されています。ですから、私は、MCP はエンジニアの底上げにも効いていると見ています」とのことでした。
最初の 1 年における MCP/MCA の取得実績は、MCA が 138 名と MCTS が 135 名の計 273 名。「若手エンジニア研修制度を始める前からの取得者数を加えた累計では、1,200 名近くになっているはず」と、岩井氏は見ています。
初年度の成果を確認した TKC は、若手エンジニア研修の制度を今後も続けていくことに決めました。2 年目に入った 2009 年は、MCPD と MCITP のトレーニングも開催する予定。初年度を迎えたリーダ教育研修では、必須メニューの Microsoft Solutions Framework (MSF) と MCTS: Microsoft Project を学習するためのコースも新設されています。
「弊社の教育研修制度の基本は、エンジニアの持つ自己実現の欲求。それを支援することによって、全社レベルでモチベーションをさらに高めていきます」と語る、岩井氏。エンジニアの個人的なスキルアップだけでなく、TKC のソフトウェア開発組織におけるチーム力の向上にも、マイクロソフトの MCP は大きな役割を果たしていきます。

図: 1 エンジニアの持つ自己実現の欲求を満たす目的で実施されている、TKC の若手エンジニア研修。これをクリアすることによって社是「自利利他」も可能になると TKC は考えています。(自己実現のステップとして、マズローの欲求 5 段階説に「社是」を加えた図)

図:A・H・マズローの欲求五段階説

図: 2 成長の段階や業務上の役割に応じて 5 段階のスキルレベルを設定。それぞれに、MCPのカテゴリーや MCA を対応させることにより、レベルアップを促します。

図:5 段階のスキルレベルを設定、それぞれに、MCPのカテゴリーや MCA を対応させる

(取材/文: 山口 学)