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プログラム選定企業の軌跡

責任ある企業市民活動の一環として、2003 年より開始した インキュベーション プログラム、2007 年より開始した IT ベンチャー支援プログラム。種は蒔かれてまだ間もないながら、少しずつ実を結びつつあります。過去、これらのプログラムに選定された 2 社にスポットライトをあて、その軌跡と期待に満ちたこれからについて語っていただきます。

株式会社チェプロ

(2006 年度 インキュベーション プログラム選定企業)

代表取締役 福田 玲二 氏

ビジネスは順調に立ち上がるも、企業信用度が上がらないことに感じた壁

代表取締役 福田玲二氏

株式会社チェプロ。この名前には、知恵「チェ」=知恵を、プロ=「プロデュース」(創出する) 会社、という意味がこめられています。福田玲二氏が 1997 年 2 月に東京で立ち上げました。

福田氏は、大手半導体メーカーのエンジニアとしてキャリアをスタートさせました。半導体回路設計および TRON プロジェクト参画後、建設業界に転じます。ある建設会社で大規模な業務改革プロジェクトに携わることになり、それを具体的な形にする過程でソフトウェア開発を行いました。そこで身を持って感じたことは、これからは業務システムを個別に開発していく時代ではない、ということでした。知恵を絞ってビジネス モデル化し、それをソフトウェアの中に融合させて提供する。当時はまだ ERP パッケージ製品は一般的ではありませんでしたが、福田氏の考えていたことはまさにそれでした。ソフトウェア開発で大量生産、大量受注をねらっても、この先は人件費の安いアジアにみんな持っていかれてしまう。それならば、日本のソフトウェア エンジニアは知恵を出して生き抜いていくべきだ、と考えたのです。

チェプロはまず、ビジネス モデルを提唱するコンサルティング的なビジネスを始めました。

「当時、コンサルティングという言葉は世の中にあまり浸透しておらず、何だか偉そうに聞こえる言葉だったのですが、当社は『コンサルティング=相談』と考え、顧客からどんどん悩みを打ち明けてもらい、一緒に考えることで解決策を提示しようと思いました」

それが同社の掲げる「ヒューマン コンサルティング」「ヒューマン & マインド」で、業務ノウハウのある建設業界を中心に、"こうすれば原価管理や工事管理がうまくいく" といったアドバイスを、すでに骨格としてあった建設業界向け ERP ソフトウェアと共に提供していました。

幸いにもビジネスは軌道に乗り、初年度から利益を出すことに成功したのですが、ベンチャー企業であることに壁を感じてもいました。

商談相手が大手企業だと、信用がネックになってなかなか稟議が通りません。企業規模が小さく、業務年数が浅いことに、相手がリスクを感じてしまうのです。担当者レベルで賛同を得られても経営幹部で決裁が降りません。そのような経緯での失注は数限りなくあったといいます。

(クリックして画像を拡大)

「WAO」は、建設業向け統合化 ERP システムです。ユーザーのワーク管理、営業案件から工事竣工、トレーサビリティ管理までカバーします。.NET を応用した独自通信技術で実現した、軽快な画面切り替えが特長です。

また人材の確保が困難でした。当時は今日ほどベンチャー企業で仕事をしようという意欲の高い若手エンジニアが少なかったのです。ノドから手が出るほど欲しかった案件を、人手がないためにみすみすあきらめたこともあります。

なんとかして企業の信用度を上げたいと考えた福田氏は、社団法人コンピュータソフトウェア協会 (CSAJ) に入会しました。CSAJ の会員企業であるということで、商談先に一定の基準を満たした法人であることを理解してもらおうと考えたのでした。

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マイクロソフトがどう評価するかに興味を抱いてプログラムに応募

この CSAJ の活動の 1 つにベンチャー支援があり、業界内にさまざまあるベンチャー支援プログラムを会員企業へ積極的に紹介していました。その中にマイクロソフト インキュベーション プログラムがあり、福田氏は中身をよく知らずに説明会に参加しましたが、話を聞いて応募してみる気になりました。

「プログラムに応募したのは、マイクロソフトが主体となって企業を選定するということで、当社の成果物をアピールしてみたいと思うと同時に、彼らにどう評価されるかという点に興味があったからです。米国本社視察や開発環境の提供も魅力的でしたが (笑)、それより何より当社が作ってきたものをマイクロソフトにぶつけたいと考えました」

そう福田氏は語ります。審査会へは、この頃にはソフトウェア パッケージとして固まりつつあった ERP システムを出しました。これは、基幹業務システムのあるべき未来を考え抜いたチェプロが、次世代 Web システムのリアルな実現例として世界に放つソフトウェアです。他のシステムのように画面表示時にフォーム情報とデータベース情報の双方をサーバーよりダウンロードする必要がなく、データのみをサーバーとクライアント間でやりとりするため、インターネット環境でも C/S システムと同等のレスポンスを実現します。また、.NET Framework を利用した 3 層構造で動作する通信プロトコルで、クライアントの画面項目単位で通信を行ってデータを取得するため、少ないデータ量で交信を行えることも大きな特長です。審査員からは、その場で「これはいい」という声が上がりました。いい感触を得たという実感は当たり、チェプロはマイクロソフトインキュベーション プログラム 2006 年度選定企業になりました。

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米国視察ツアー参加で一変したビジネスの進め方

IT ベンチャー支援プログラム同様、インキュベーション プログラムにも数々の支援メニューがあります。同氏はマイクロソフトにどう評価されるかへの興味で応募しましたが、今になってみると最も大きな収穫は米国マイクロソフト視察ツアーだったといいます。この年のツアーでは、カリフォルニア州パロアルトにあるヒューレット・パッカードの本社を訪ねたり、シリコンバレーのベンチャー企業の話を聞く機会がありました。

「とにかく刺激になりました。まずはマイクロソフト、ヒューレット・パッカードという IT 企業の歴史と現在を見たことが大きかったですね。どちらもベンチャー企業から身を起こして現在の地位を築いたこと、既に巨大企業でありながら今なお明確なビジョンを持ち、ソフトウェア開発に投資を続ける一方で、マーケティング活動も怠らない。そこに IT 企業のあるべき姿を見ました。

またシリコンバレーのベンチャー企業からは、ソフトウェア パッケージの考え方を学びました。日本のソフトウェア ベンダはどうしてもニーズを根掘り葉掘り聞いて作り、個別最適ではあるけど汎用性のないものを作ってしまいがちですが、彼らはとにかく市場を引っ張っていくような技術創造を優先します。思い出しました。ああ、チェプロがもともとめざしていたのはこれだったって (笑)」(福田氏)

さらに、彼らは自分たちの強みがどこにあるかを熟知していて、必要なら技術をぱっと売って次へ行く、マーケティングは専門会社に任せてしまうなど、とにかく判断も動きも速いことに感銘を受けたといいます。こうしたことを見聞きして、チェプロのこれからの活動イメージや方向性がはっきり見えてきたそうです。

実際、帰国してから福田氏の動きは迅速になりました。建設 ERP システムをバージョン アップさせる開発で、以前なら開発プロジェクトを細かくフェーズ分けしていましたが、それを止めすべてを一気に作りました。

何よりスピードを重視するようになったといいます。

もう 1 つ役立った支援メニューは、開発環境の提供でした。ベンチャー企業の常ながら、資金繰りが潤沢であることはなかなかなく、受注は順調なチェプロといえど、その例外ではありませんでした。開発環境を整えるといった設備投資よりは会社運営に資金を回してしまいがちです。自前で用意すれば数百万円はかかるサーバー OS や開発ツールが無償で利用できることはありがたかった、と福田氏は語ります。

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"日本からスタンダード ソフトを" チェプロがその先駆者になる夢に向かって

インキュベーション プログラム選定企業になったことは、チェプロのビジネスを大きく変えました。最も大きな成果は、大手企業との商談が決まるようになったことです。大型案件が 2 件まとまり、それらは受注金額にして 5 億円近い規模になるといいます。実は、当初は暗礁に乗り上げかけていたのですが、その途中でマイクロソフト インキュベーション プログラムの選定企業になったことが商談先に伝わり、"それほど技術力がある企業なら" と、経営トップから GO サインが出たのです。「マイクロソフトは、お墨付きとしてはまさに最強の存在だった」と福田氏は振り返ります。

2008 年 2 月、米国マイクロソフト CEO スティーブ バルマーが来日した際、福田氏は選定企業の 1 社として会う機会がありました。最後の質疑応答の時間、福田氏は真っ先に挙手してこう発言しました。「今日はスピードの時代。マイクロソフトとしても、優れた技術が既にあるのなら、自社開発にこだわらず、どんどん取り入れていくべきなのでは。当社はこんないい技術を持っている。ぜひ協業のチャンスが欲しい」

日本のソフトウェア開発は世界的に見ても、最先端を走っています。しかし、言葉の壁が高いからか、謙虚な国民性からか、なかなかこのような行動に出る人物はいません。福田氏のそれはまさに従来の日本人のイメージを打ち破るものでした。バルマーは福田氏の "直訴" に「そんなにいいものがあるなら、ぜひ教えてほしい。担当者に言ってくれてもいいし、メール アドレスもオープンにしている」と回答しました。

福田氏のこの発言が契機になって、日本の意欲ある IT ベンチャーのテクノロジを米国マイクロソフトで披露する機会が生まれました。福田氏は 4 月中旬、再びシアトルへ飛びました。

「ねらっていました。前々から機会があれば直接訴えたいと思っていたんです。好意的に受け取ってもらえたようなので、このような機会をどんどん活かして次につなげていきたいと思っています」(福田氏)

ソフトアドバンス同様、チェプロも Microsoft® Innovation Award 2007のコマーシャル部門優秀賞を受賞しています。「インキュベーション プログラムは企業に対しての選定だが、こちらは製品に対する賞で、これをきっかけとして製品に注目してくれる人が増えた」と同氏は喜んでいます。

福田氏の夢は、世界で標準的に利用されるソフトウェアを日本から出すことです。製造業ではたくさん例があるのに、ことソフトウェア開発に限るとほとんど皆無、と眉の根を寄せました。しかし、チェプロがそのパイオニアになる、と語ると今度は笑顔になりました。建設業向け ERP は、このほど大幅なバージョンアップを果たし、建設業統合化ソフトウェア「WAO (ワオ)」と名付けられました。このソフトには、さまざまに流用可能な次世代テクノロジがいくつも搭載されているといいます。今後もマイクロソフトと最良の協業体制を探りつつ前進を続けたい、と福田氏は力強く言葉を結びました。

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