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Silverlight と Smooth Streaming で全試合を生中継した夏の甲子園の舞台裏
沖縄代表、興南高校の優勝で幕を閉じた第 92 回全国高校野球選手権大会。通称「夏の甲子園」の 15 日間に及ぶ全試合が、Silverlight と Live Smooth Streaming を利用して、朝日放送の高校野球ホームページから、インターネットライブ中継されました。
このライブ中継では、高画質ながら極めて短いバッファリング時間でライブ映像を再生することができる(=再生ボタンを押したらすぐに見られる)、ライブ中に見逃したシーンやもう一度見たいシーンを「巻き戻し」て見ることができる、オンデマンドで配信されるハイライト動画とライブ中継を切り替えられるといった新しい体験を視聴者に提供すると共に、サービスを提供する側のビジネスモデルとして、ライブ映像と広告との連動にも取り組んでいます。
ライブ中継の全体の流れはどうなっていますか?
赤藤氏:テレビ中継では、阪神甲子園球場に設置された14台ものカメラが使われ、すべての映像・音声信号は、場外に設けられた中継車に集約されています。中継車では、ディレクターの指示によって、スロー再生などの各素材を挟みつつ放送用のコンテンツが制作されていきます。
今は地上デジタル放送が主体なので、この間の信号はすべて HD-SDI で統一されています。この HD-SDI の信号が大阪・福島区にある朝日放送に送られてきて、コンバーターで SD-SDI に変換、Inlet 社の Spinnaker 5000 というハードウェアエンコーダーを通じて、リアルタイムで Smooth Streaming にエンコードしていきます。Spinnaker がダウンしたときに備えて、バックアップには Expression Encoder 4 Pro を稼動させています。幸か不幸かいまのところ出番がないですね。
壷井氏:朝日放送さんでエンコードされたメディアファイルは専用線を通じて、NTT スマートコネクトの Origin サーバーで受け取り、Edge サーバーに負荷分散、約 20 Gbps の回線から、各クライアントに配信しています。
 球場内に設置されたカメラ |  場外に設置された中継車 |  ハードウェアエンコーダー Inlet Spinnaker 5000 |
HD-SDI を SD-SDI にダウンコンバートしたのはなぜでしょう?

朝日放送株式会社
技術局 開発部 主任
赤藤倫久氏
赤藤氏:当初は HD でライブ中継することを考えていたのですが、Windows Media Player で配信していた昨年を例にとると、平日の視聴数は土日に較べて 4~5 倍、つまり、多くの方は会社でこっそり見ているようです(笑)。そのようなことで、非常に多くの方にご覧になっていただいているわけですが、基本的により多くの方に広くあまねく見ていただくことを目的に、低めの解像度で配信を行っています。
このため、エンコーダの入力の段階で SD にダウンコンバートしても画質にも影響なく、エンコーダの負荷も小さいという利点もあります。またこの画質については、画の大きさに合わせてエンコーダやフレームレートを調整しつつ、比較的綺麗に見せることができているかと思います。
今回、SilverlightとLive Smooth Streamingを使おうと思った理由を教えてください
赤藤氏:放送局の人間として、ネットでの映像の見せ方を常に考えています。ブラウザー上で配信する場合、Windows Media Player の場合は HTML に埋め込むことになるので、Web ページ全体で見た場合、デザインがそぐわないことがあっても、カスタマイズは難しいのですが、Silverlight ならインタラクションを含めて自由にデザインできます。バナーをクリッカブルにする、時間の経緯によってバナーを変更する、CM を挟み込むといった、広告との連動をし易いことも、テレビ局としては大切なポイントです。
サービスの観点では、映像が再生されるまでの早さ、切り替えたときのレスポンスの良さ、それになんといっても「ライブ中に巻き戻せる」ことですね。スポーツというコンテンツの特性にぴったりです。視聴者の方に喜んでもらわないことには、始まりませんから。ただし、Silverlight をインストールしていない、あるいはできない方のために Windows Media Player での視聴も今回は残しています。
[後日談] 関係者の間では 7 割が Silverlight、3 割が Windows Media Player での視聴と想定していましたが、結果的にライブ中継では 94 %、VOD では 89 %が Silverlight で視聴されました。多くの方に新しくインストールをして頂いたと思いますが、スムーズに行うことができたと考えています。
サーバー周りも一新されましたが、その辺りの移行はいかがでしたか?

NTT スマートコネクト
サーバー構成図 [
拡大図]

NTT スマートコネクト株式会社
サービスオペレーション部
IP システム担当
壷井氏(左)、森内氏(右)
壷井氏:Smooth Streaming で配信するために Windows Server 2008 R2 を導入しました。冗長化とキャッシュの設定で苦労はありましたが、総体的にはスムーズに移行できたと思います。Windows Media サービス 9 と較べるとマシンのパワーを要求しない感じがしますね。生中継の場合は、生カメとの遅延を指摘されることがありますが、Smooth Streaming はそのディレイも少ないようです。
Silverlight のプレイヤーは朝日放送で制作されたのですか?

プレイヤーのインターフェイス。
ビデオの解像度は384×216、
Smooth Streaming用に256k,
350k, 500kbpsでエンコードして
いる [
拡大図]
赤藤氏:社内のデザイナーと私が開発者として協業する形で制作しています。私の方で CodePlex の Silverlight Media Framework 2.0 をカスタマイズしながらベースを開発し、その上にデザイナーが Photoshop でデザインしたインターフェイスを載せるという流れです。XAML をいじったのは今回が初めてですが、マークアップ言語のことが分かっていれば、簡単ですね。割とシンプルなプレイヤーだったこともありますが、分業というか協業はうまくいったと思います。
プレイヤーにはどんな仕掛けを組み込んでいますか?
赤藤氏:先ほどお話ししたように今回は Silverlight と Windows Media Player に配信をしていますが、視聴できるコンテンツの種類や体験には差をつけています。たとえば、生中継でも見ている試合はどこにでも「巻き戻せる」のは Smooth Streaming に対応している Silverlight 版ならではのサービスですね。他にも試合間のインターバル動画、ダイジェスト、ハイライトなどをお楽しみいただけるようになっています。
今回の新しい取り組みはいかがでしたか?
壷井氏:Smooth Streaming はライブ向きのすばらしい技術だと思います。最近ではライブ中継そのものの問い合わせも増えていますので新しいライブ配信技術への取り組みという意味で非常によい経験だったと思います。今後、セキュリティ面での強化を考慮し てDRM つきのライブ配信にも取り組んでみたいです。
赤藤氏:生中継の日別の再生回数は大会序盤で 100,000 前後(準決勝や決勝では 200,000 を超えることもありました)、平均の視聴時間が 30 分を超えていますから、提供するコンテンツ、サービスという観点では成功しているといえます。スケジュール的には大変でしたが、やってみてよかったし、なによりも新しいことに挑戦することは楽しかったです。コンテンツをどう見せるのか?視聴者にどう喜んでもらうのか?は今後も考え続けていきたいと思っています。
キーワード: Silverlight、紹介日: 2010 年 11 月 22 日