ここにきて、タブレット型 PC に対する関心が急速に高まっている。 1 つには大ヒットを収めた「iPad」が先導役を果たしたこともあるだろう。では、Windows 7 を搭載したスレート型 PC が持つ魅力とは何か。今回は、株式会社セカンドファクトリーで日夜、Windows スレートのユーザー インターフェイスとユーザー体験のあるべき姿を追求する東 賢氏に話を聞いた。
(文:河原 潤)
コンシューマ向けデバイスが
ビジネス向けタブレット型 PC およびスレート型 PC に与えたインパクト
新野 タブレット型 PC は、まずコンシューマ市場で盛り上がり、今度はそれをビジネス シーンでも活用していこうという流れが出てきています。東さんは今の動きをどのようにとらえているのでしょうか?
東 氏 コンシューマ市場ではご存じのように、アップルの iPad が相当なインパクトをもって登場し、幅広い層に選ばれています。強みはやはり、iPhoneの登場時から高く評価されてきたユーザー インターフェイス(UI)にあると思います。
セカンドファクトリーは、デバイスやプラットフォームを問わず様々な UI を手掛けている会社です。なかでも Windows ベースの UI を作ることを得意としておりますが、お客様から Windows ベースであっても「iPhone のような UI にしてほしい」という要望をいただくことがあります。統一感の高い UI やデバイス全体での完成度といった iPhone や iPad の特徴が、ビジネス用途のタブレット型 PC やスレート型 PC の世界でも強く求められていることを感じます。
新野 iPhone や iPad の市場での成功が、企業ユーザーが求めるタブレット型 PC の UI にも影響を与えていて、新たなニーズも生まれているわけですね。
東 氏 タブレット型 PC の UI を手がける開発者がやるべきことのハードルが一気に上がったという印象を持っています。例えば、Visual Studio を使ってコントロールを並べていくスタイルしか知らない開発者が、タブレット向けアプリケーションの開発を担当することになったとき、既存のスキル セットでは解決できない問題がたくさん出てくるでしょう。
新野 逆に、セカンドファクトリーのような UI の独自開発に強みを持つ企業にとってはまさに今、チャンスが広がっていると考えていいですか?
東 氏 確かに大きなチャンスを感じています。タブレット型 PC は、ガートナーが公開しているテクノロジー ハイプサイクルで言うと、今、山頂に近いところに位置していると感じています。つまり、その後「これでは到底企業では使えない」といった反動期を迎えると考えられます。その反動を抑えるためにも、タッチ インターフェイスの UI 開発に強みを持つ会社として、アドバンテージを維持していきたいと思います。
タッチ インターフェイス開発のスペシャリストから見た
Windows スレートの現状と可能性
新野 さて、東さんはタッチ インターフェイスの開発に取り組まれるにあたって、Windows スレートをどのように位置づけているのでしょうか? 先ほどの「iPad ふうのアプリケーションがほしい」という要望があったお話を聞くに、ならば、ユーザーの要求をそのまま iPad で実現する手だってありますし、実際、そこに商機を見る開発会社も多いと思います。
東 氏 そうですね。1 つには開発効率性の問題があります。そもそも iOS と Windows では、アプリケーションを起動したとき、その画面 1 枚だけを表示するのか、マルチ タスクの同時表示にするのかというアーキテクチャの違いがあり、開発環境も当然異なります。仮に、長年 Windows 系の開発を手がけてきた人が、iPad のソフトウェア開発に取り組むことになったとして、その人が開発効率性やこれまでの投資をどこまで重視するのかによるでしょう。
多くの開発者にとって、既存のスキル セットを切り捨てるような判断は、現実には非常に難しいと思います。iOS の開発言語である Objective-C は、開発を取り巻く環境も含めて軽量言語開発の方向性に近いと思うのですが、これまで .NET ベースでの開発をやってきた人からすれば、その延長線上で開発できたほうがありがたいわけです。
あと、iPad というデバイスは、アップルの完全な統制下にあることにも着目する必要があるでしょう。それが開発上のメリットになることもありますが、UI の厳格なレギュレーションや I/O の制約などが、実現したいことの範囲を狭めてしまうケースも多いです。例えば、お客様からの要望の中に USB ポートと既存のデバイスを活用したいというニーズがかなりあります。既に確立された手法を用いて活用の可能性が大きく広がるのは、Windows スレートを選ぶ大きなメリットだと考えています。
新野 なるほど、Windows 開発のスキル セットをそのまま生かせることと、自由度の高い拡張性を生かして Windows スレートならではの付加価値を創ることができる。それらが強みになっているのですね。
東 氏 はい。シンプルなスレート型 PC の筐体に、いろいろな周辺機器をつなぐことの是非はあるにせよ、実際のところ、iPad でもさまざまな周辺機器が出ていますよね。それぞれの強みを発揮されて生まれた創意工夫が掛け算で増えていくのが、Windows のパートナー ビジネスの良さでもあります。また、スマート デバイス向けには Windows Phone プラットフォームもあって開発成果を展開していけるなど、非常に面白い状況にあると思います。
