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伝説のプレゼンターを目指せ! 2

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伝説のプレゼンターを目指せ! 2 第 6 回 クロージング

「未来は背後からやってくる」

一時期、CRM をテーマに何十回と講演を行った。聴衆は 20 名から数千人まで。

そのクロージングとして、いつの頃からか始めたのが「さくらばなし」

スクリーンには一面の桜の花びらの画像。なんのことはない、私の長女の名前に引っかけてのもので、内容は長女の IT 物語だ。

彼女が最初にパソコンに触れたのは、小学 2 年生の時。

夏休み前のあるとき、彼女は私の部屋に来てこう言った。

「おねがいがあるの」「なつやすみに、本をいっぱいよむの」「そのなまえをおぼえていたいから、お父さんのパソコンをかして」

つまり彼女はエクセルで、読書リストを作りたかったのだ。ちょっと感激した私は、彼女ら向けにタッチパネル付きのパソコンを買い、居間に据え、メールアドレスも作った。

これは君たちのものだ。画面を押せばいろいろなことが出来る。でも、やっぱりキーボードが使えると便利だから、練習してごらん。

2 週間でタッチ タイピングを習得! とうたうタッチ タイピング練習ソフトが付属でついていたので、それを起動し、長女にちょっとだけ説明。画面に出た文字をそのまま打つだけだよ。

それから数時間後、彼女は曲がりなりにもタッチ タイピングが出来るようになってしまっていた。残念ながら、ローマ字を習っていなかったので、「さ、ってどう打つの?」「S と A だよ」「S ってどんな字?」「ヘビみたいなやつ」という会話は必要だったが。まねをしていた保育園年長さんの次女も、数日で習得。

それから長女たちからはときどきメールがくるようになった。

翌年、やはり夏休み前、長女が私の部屋にやってきた。こんどはなんだい?

「夏休みのけんきゅうのかみを、お父さんのつかってるやつで作りたい」

??? ああ、パワーポイントのことか。

わかりました。テーマは何にするの?「かいきげっしょく」

私はパワーポイントを立ち上げて、使い方を説明する。エクスプローラーも立ち上げて、検索の仕方も教えて、やってみせる。「皆既月食って入れて、いろいろ出てきたら、順々に押していく」「いい写真があったら、右クリックしてコピーして、パワーポイントにもどって、右クリックして貼り付ける」「わかった?」

「わかった」

教えた時間は 30 分足らず。あとは彼女がやった。それ以来、ほとんど教えたことはない。

翌年、彼女が小四になると、勝手にいろいろ探して勉強している。もう、使い方を聞かれることもない。

私が RPG で詰まっていると、親切に教えてくれる。「お父さん、さっきの入り江で、貝殻は拾ったの?」「それがないと進めないみたいだよ」「ありがとう・・・」

彼女らの進化とともに、この「さくらばなし」はどんどん変わっていく。(いま高 2 の彼女のタイピングスピードは、外資系のセクレタリー並みだ)

そこで言いたかったことは、「顧客の進化を、あなたの進化スピードで測ってはいけない」ということ。大人になってしまった我々よりも、若者たちは驚異のスピードで進んでいく。自由時間がいっぱいある、シニアたちもそうかもしれない。自分がついて行けないからと言って、IT を拒否してはいけないよ、ということ。

そして、そういった波は未来から突然来るのではなくて、身の回りからすでに起こっているんだよ、ということ。目をこらして遠くを見ずとも、足下にその変化はもう起きているのだ。

そのまとめの間も、画面はそのまま。桜の花びらの映像がただ、続く。「進化」というキーワードとともに。顧客の「進化」、自分の「進化」、IT の「進化」、そして断絶としての「進化」

テクニックとしてみれば、これは、最後に単純なまとめでなく、違った角度からのエピソードで、聴衆の視点を動かし印象づける戦術だ。そして、そのシンプルなメッセージが繰り返されることで更に印象は強くなる。

仕事のプレゼンテーションでも、十分使える。最後に、一見内容とは関係のない、個人的な経験や、家族のことや、マンガ・歴史の話しで、聞き手の頭を再活性化させて、でもきちんと本編と同じ方向の結論に落とす。それでメッセージをもう一回印象づけるわけだ。

熱き心を届けよう

でも、そんな技術論だけに「さくらばなし」クロージングの価値があるわけではない。

私がみなに伝えたかったのは、私の「期待」だ。

「この世の中を変えられるのは、君たちしかいない。自分の殻を破り、自らを信じ全力で進め」

最後に届けるべきは、小さな合意でも大きく出ることでも二者択一でもなんでもない。それは、自らの心そのものだ。それこそが相手を動かす最強の締め括り (クロージング)。

あなたは相手に、どんな心を、どうやって届けますか?

これで 6 + 6 回の「伝説のプレゼンター」は終了だ。ここまでどうだっただろうか。ここでは最後に、四字熟語や故事の引用もしない、エピソードもなしだ。
ただただ、読者諸氏の研鑽を願い、成功を祈る。

そして、己が得たものをまた、次の世代へ。


読まれてのご意見ご感想、ご質問はこちらへ。
manabinogensen@hotmail.co.jp

文: 三谷 宏治 K.I.T.虎ノ門大学院

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編集後記

プレゼンテーションを行う方で、「クロージング」について意識していなかった人も多いと思います。私もその一人。終わりがはやり重要なんですね。

さて、今回の 12 回の連載が終了しました。是非とももう一度、最初から読みなおしてはいかがでしょうか? あなたも「伝説のプレゼンター」になるヒントを見つけられるはずです。

著者紹介

三谷 宏治

三谷 宏治
K.I.T虎ノ門大学院 教授

1964 年大阪生まれ、 2 歳半から福井で育つ。 福井県立 藤島高校卒業後、浪人し上京。駿台予備校を経て東京大学 理科一類に入学。理学部 物理学科に進学するも、学部卒での「文系就職」の途を選ぶ。

87 年~ 96 年、ボストンコンサルティンググループ勤務 (内、 91 年夏~ 92 年末まで INSEAD 留学 MBA 修了、 1 年半のフランス、欧州生活を送る。)

96 年~ 2006 年までアクセンチュア勤務。03 年~ 06 年まで同社 戦略グループ統括 エグゼクティブ・パートナー。同グループの 200 名超への成長に貢献。

現在、『子どもたちへの教育』を主軸に活動中。K.I.T.虎ノ門大学院 教授、グロービス経営大学院 客員教授、早稲田大学ビジネススクール 非常勤講師。妻、長女、次女、三女と東京都世田谷区に在住。永平寺ふるさと大使。


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