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プレゼンテーションスライドは報告資料の要約版ではない プロジェクト終盤、当然、メンバーたちは最終報告資料づくりに邁進する。最終的なメッセージを決め、それをサポートするための論理と証拠を積み上げていく。大きなメッセージを伝えるためには、ピラミッドを三段くらい積まないとダメかもしれない。 そうそう、冒頭にはまず環境変化パートを置いて、役員たちの認識を揃えて、危機感を盛り上げないといけない。細かい分析資料は流石に別紙に分けようか。それも、本編と揃えてうまく構成しないと格好悪いぞ。 そうして、数ヶ月にわたったプロジェクトの成果物の集大成として、報告資料は優に 100 頁を超え、200 頁の別紙資料とともに完成となる。でも、これはプレゼンテーション用じゃない。こんな分厚いモノ、誰が 2 時間座って聞いてられようか。 プロジェクト マネージャーは最後の力を振り絞って「プレゼン パック」を作り始める。大体、前日の深夜のことだ。各章の「まとめ」を集めて、主要な「分析」を引っ張り出し、数枚の資料を一枚に押し込み、全体を数十頁に集約する。それは、ピラミッドで言えば、上から2 ~ 3段だけを切り取ったモノ。確かに全体も分かるし、全部が濃縮されている。これで OK? でも、やっぱり違う。こんなものプレゼンテーション用じゃない。報告資料が「本」だとすれば、プレゼン パックはなんだろう。少なくともそれは、本の目次じゃないし、要約でもない。 プレゼン パックは本の表紙やオビなのだ。潜在的な読者を惹き付け、手に取らせ、買うという意思決定を引き出すための。
目次 意思決定を促すためのツールとして プレゼンテーションはそもそも、なんのために行うのだろう? それは「意思決定」のためだ。相手が役員でも部長でも課長でもなんでもいい。会議をひらき、人を集めて、話をし、議論をする。膨大な手間とコストを掛けて、一体何のために? そう、物事を「決める」ためだ。プレゼンテーションは、意思決定を迫るために行うモノだし、プレゼン パックは意思決定を促すモノでなくては、意味はない。意思決定を促すために、プレゼンターは最大限の努力を傾けるべきだ。前日前夜でなく、最低一週間前から準備をし、専用の資料を作り、プレゼンテーションの予行演習をする。当然のことだ。 それはお化粧でも弥縫 (びほう) でも誤魔化しでもない。意思決定を促すというのは、それほど難しいものなのだ。別にプレゼンテーションにプロジェクターや OHP は必須ではない。口頭で十分な場合もあるだろうし、手元に紙を配って済む場合もあるだろう。 しかしながら、資料を読むために俯かれて集中されては、良い議論は出来ないし、折角集まった価値がない。皆に上を向かせ、前に集中させ、一つのことに意識を向かせるためのツールが、OHPでありプレゼンテーション ソフトだったのだ。更には、その集中を高め、メッセージを印象づけるために、様々な工夫があるだろう。色そのものがそうだし、イラストやアニメーションも役に立つ。特に Power Point 2007 では図表や文字の表現力が格段に上がっている。 でもそういった細かい技に走る前に二つ、絶対に必要なことがある。 対策1: トレードオフを明確に見せる 「戦略とは捨てることなり」という名言がある。ハガレン (鋼の錬金術師) の「等価交換の法則」ではないが、何かを得ようと思えば、何かを捨てなくてはならない。大きなリターンのためには、ある方策を定め、そこに大きな経営資源 (ヒト・モノ・カネ) を投入することが必要だ。では、そのことで「捨てているもの」とは何だろう。大きく 3 つある。 1. 大きなリターンを狙うと言うことは、大きなリスクを背負うことでもある。捨てていることの第一は、経営の安定性だ。安定を捨て、動的な発展 (の可能性) を得る。 2. ある方策を選んだと言うことは、もちろん他の方策を捨てたことだ。他の方策による成功の可能性を捨て、ある方策のみに賭けたわけだ。 3. 経営資源は有限であり、それを大きく投入することで、その分野に関係のない部分までが圧迫される。これも、間接的に捨てていることだ。 これら「捨てること」をきちんと決めずに、ただ「優先順位」とかに逃げると、結局は「全てをやる」ことになり、最終的には「何も成し遂げられず」に終わる。意思決定とは、つまりはそういうことだ。 トレード オフとは、何を得るために何を捨てなくてはいけないかの、取捨選択対象と条件を明示すること。意思決定のためには必須の内容なのだ。 |
三谷 宏治 1964 年大阪生まれ、 2 歳半から福井で育つ。 福井県立 藤島高校卒業後、浪人し上京。駿台予備校を経て東京大学 理科一類に入学。理学部 物理学科に進学するも、学部卒での「文系就職」の途を選ぶ。 87 年~ 96 年、ボストンコンサルティンググループ勤務 (内、 91 年夏~ 92 年末まで INSEAD 留学 MBA 修了、 1 年半のフランス、欧州生活を送る。 96 年~ 2006 年までアクセンチュア勤務。03 年~ 06 年まで同社 戦略グループ統括 エグゼクティブ・パートナー。同グループの 200 名超への成長に貢献。 現在、『子どもたちへの教育』を主軸に活動中。金沢工業大学大学院 客員教授、グロービス経営大学院 客員准教授、早稲田大学 非常勤講師。妻、長女、次女、三女と東京都世田谷区に在住。 ※著書より 著書 「トップコンサルタントがPTA会長をやってみた」(英治出版) 「突破するアイデア力」(宝島社新書)
「観想力 空気はなぜ透明か」 「CRM 顧客はそこにいる」(共著) 「crmマーケティング戦略 顧客と共に」(いずれも東洋経済新報社) |










