IT 先進企業
森本昌義社長が語る情報技術と企業体質の改善との密接な関係IT をフル活用し、経営改革を断行する

完全公開された意思決定機関
2 年も前倒しで利益目標を達成
Case study

小学生から高校生までを対象とした通信教育講座「進研ゼミ」で知られるベネッセコーポレーションは、会員数の減少などにより、2000 年初頭には経営にかげりが見え始めていた。こうした事態を打開すべく 2003 年、外部からスカウトされた新社長が就任。それまで、販売・顧客管理に使われていた IT を、経営の透明化、新たなマーケティング手法の開発、教材制作の工程改革など積極的に活用することで大きな成果を挙げている。

□完全公開された意思決定機関

ベネッセコーポレーションが、IT で大きく変わろうとしている。変革をリードするのは、ベネッセコーポレーション代表取締役社長兼 COO (最高執行責任者) の森本昌義氏だ。ソニーからアイワを経てヘッドハンティングで同社に転じた。

「私は海外勤務が長く、アメリカで子供を育てた経験から、日本はもっと、教育をしっかりやらなければいけないと考えていました。そうした私の海外経験に着目して声をかけてもらったのだと思います」と、森本氏は語る。

当初は経営に直接タッチしない会長職を提示されたが、森本氏は自ら経営責任を負うことを望み、2002 年に顧問、翌年 6 月に社長 兼 COO に就任。当時、森本氏の前には 3 つの大きな経営課題が立ちはだかっていた。第 1 に、売上高の 6 割以上を占める通信教育講座「進研ゼミ」の会員数の減少。第 2 に、1993 年に買収した語学教育機関「ベルリッツ」の業績低迷、第 3 に、オーナー経営者に頼りがちな社風である。

「顧問就任後、1 カ月ほどの間に、だんだんと課題が見えてきました。そこで、社長就任を前に、新しい経営の方向をまとめ、思い切った改革に取り組むことにしたんです」と、森本氏は振り返る。

その新たな経営の方向を示したものが、「ベネッセグループの経営方針」だ。それは投資と収益の基準を示した「意思決定時の基本的な価値観と尺度」「経営の重点方針」「第三の創業にあたり新しく育みたい社風」、2006 年を最終年度とする営業利益の「中期目標」の 4 つの柱からなる。

森本氏がまず手をつけたのが意思決定の透明化だった。森本氏の社長就任に合わせてベネッセは執行役員制を導入、オーナーの福武總一郎氏が会長 兼 CEO (最高経営責任者) に就任して、経営における監督と執行の分離を図った。

同時に現場の各部門に権限を大幅に委譲。会社の最高意思決定機関である全社経営会議とは別に、事業部に当たる各カンパニーごとにそれぞれの長を議長とする「CMC (カンパニー・マネジメント・コミッティ)」を設けて、その意思決定機関としたのである。

森本氏が掲げる「第三の創業にあたり新しく育みたい社風」には「社内コミュニケーションに心がけ、意思決定の透明性を確保するとともに、意思決定の理由をきちんと説明する」「意思決定者やその関係者に、自由に意見を述べることができる」「社内の他のビジネスにも、どしどし口を出すことができる」とある。このユニークな条項が実地に移されているのが各カンパニーの「CMC」だ。開催は原則として月 1 回。会議は IT を使って完全公開で行われる。

まず会議の 1 週間ほど前に、Web 上に議案が掲載され、関心を持った社員は参加の意思をメールで伝えたうえで、誰でも会議に参加して発言することができる。テレビ会議システムを導入、岡山の本社と東京都多摩市の東京本部で同時に会議を行えるようにした。さらにはマイクロソフト社の NetMeeting を利用して、会議の模様はリアルタイムで遠隔地の社員にも伝わり情報の共有化を図る。

さらには議事録も Web 上で公開。透明性の高い意思決定プロセスの確立が「経営の見える化」をもたらした。いわば衆人環視の下で会議が行われるため、事前の根回しも通じず、社内に緊張感を生み出しているのはいうまでもない。

経営の重点方針
  1. 全社的に常に商品力の向上を図るとともに、営業力を強化する。
  2. Berlitzを含むブランドマネジメントを確立する。
  3. 中国をはじめ、東アジアを日本につぐ市場と位置づける。
  4. <進研ゼミ>については、
    1. DM 以外の営業手法の開発
    2. 顧客セグメント毎のニーズに対応する商品・サービスの開発、マーケティング手法の開発
    を行うことで深化させる。
  5. 一方で<進研ゼミ>の枠を越えた新しい教育サービスを開発する。(例:e-Learning 学習塾 等)
  6. 進研ゼミ、教育ビジネスの領域では、教科以外、人間としての成長、進路設定、職業選択等でも顧客の助けになるよう設定する。
  7. IT 技術をフルに活用した、新しい教育技術の研究・開発を積極的に行う。
  8. <進研ゼミ>をはじめ制作において、工程改革を慎重かつ大胆に実行する。
  9. 介護は“サービス業”であることを旨とする。
  10. 介護以外の領域にもシニアビジネスを拡大する。
  11. Berlitz International のガバナンスを確立するとともに、Berlitz ビジネスのダイナミックな展開を図る。
  12. ベネッセグループとして統合的な語学事業戦略を策定する。
  13. 環境経営を重視し、個人情報管理を徹底する。
  14. 以上により、会社の高い志を実現する。