機関投資家向け STP (Straight-Through Processing) ソリューション

−第四のアプローチ 制度改革/STP 化対応を見据えたソリューション−

富士通株式会社
金融ソリューションビジネスグループ
金融ソリューション企画部 木下 啓
証券ソリューション部 川井 渉


エンドユーザーが保有する「ハイレベルな業務ノウハウ & IT スキル」「環境変化への高い即応性 & 創造性」を最大限に引き出すことで、ビジネスバリューを最大化する。それが、Usability.Fframework=「第四のアプローチ」である。現在、次期システム・ROI 向上・業務効率化・業務リスク削減に悩む機関投資家のためのソリューションとして注目を集めている。

 

トピック
STP 化とコスト/リスクのはざまで!STP 化とコスト/リスクのはざまで!
迫り来る制度改革とSTP 化対応迫り来る制度改革とSTP 化対応
悩み多き、一般的な三つのアプローチ悩み多き、一般的な三つのアプローチ
Usability.Fframework=第四のアプローチUsability.Fframework=第四のアプローチ
Usability.Fframework の基本構造Usability.Fframework の基本構造
ケーススタディー Microsoft Excelケーススタディー Microsoft Excel
将来に向けた STP/STR (Straight-Through Reporting)将来に向けた STP/STR (Straight-Through Reporting)
【BizTalk Server 2004 を利用して】【BizTalk Server 2004 を利用して】

 

STP 化とコスト/リスクのはざまで!


プロフェッショナル集団として資産運用を実践する機関投資家のフロント業務を取り巻く環境は、運用手法や投資スタイルが日々進歩し、市場環境の変化もそのスピードを増している。エンドユーザーは、この急速な環境変化に対して、次々と新しい手法をフロントシステムに取り込み、環境変化にスピード対応することで、フロント業務のビジネスバリューを最大化させ続けている。

そのフロント業務を支援する IT 環境の構築・運用スタイルとして、これまでは EUC (End-User Computing) という考え方に基づいたアプローチが広く取り入れられてきた。その背景には、PC の高性能・低価格化とその操作性向上が格段に進み、その上で利用される市販オフィスソフトの低価格・高機能化が進んだことと、インターネットとネットワーク技術の普及がある。さらに、これらを利用するエンドユーザーも単に IT 環境を利用する使用者としての位置付けから、高度な IT 知識を身に付けたハイレベルなユーザーへと進化を遂げたことも、要因として挙げられる。

一方証券金融業界の変革に目を移すと、様々な業種を巻き込んだ証券取引の STP 化がその流れを強めている。この流れは業務の流れとは逆に川下の決済業務から清算業務→照合業務→取引業務へ押し寄せている。清算業務と決済業務では、清算機関・決済機関やサービスプロバイダーの対応により、国際標準データフォーマットを用いた STP インフラの整備が着実に進展している。ところが、証券取引の主要メンバーである機関投資家においては、取引業務の STP 化が余り進んでいないのが実情である。その原因は、エンドユーザーにより構築・運用される EUC スタイルにある。照合機関・清算機関との連携や国際標準への対応 (社外 STP) は、専門的な技術ノウハウが必要なため、エンドユーザーにはあまり馴染みのない領域である。また、社外 STP の前提となる社内連携の STP 化 (社内 STP) が EUC 環境下で進んでいないのが要因として挙げられる。

社内 STP と社外 STP を実現するために、現在の環境から新たなパッケージソフトへの切り替えやフロント業務を支援するサービスの利用が良く検討されている。しかし、これらも万能ではない。パッケージソフトやサービス導入による費用対効果、業務の効率化効果や大幅な業務フローの見直しに伴うリスクを考慮すると、導入メリットを享受できないとする見方が多い。特にエンドユーザーが EUC 環境に蓄積しているノウハウを新たな環境に移植し、その後に現行と同等レベルのスピードで環境変化に対応することが可能であるかについては、ネガティブな見方が多数である。


迫り来る制度改革とSTP 化対応


「証券決済制度改革」や「STP/T+1」についての議論が開始されてからかなりの期間が経過したことで、具体的な方向性やスケジュールが確定するものや、逆に検討課題自体が変化したものが出てきている。

証券取引の安全で効率的な決済システムの構築を目指して、DVP 化・RTGS 化・ペーパレス化や決済期間の短縮化に向けた努力が業界横断的に進められており、複数の業界にまたがる清算業務・決済業務にかかわる制度改革は、順次法整備が完了し具体的な社会インフラの整備に局面が移っている。日本銀行では資金・国債決済の RTGS 化が図られ、証券保管振替機構では主に担っている株式や社債のブックエントリー化・決済業務の DVP 化そして清算業務・照合業務を含めた STP 化が進行中だ。

一方、決済制度の改革で先を行く米国では、当初「STP/T+1」が検討課題の中心であったが、現在では「STP」+「T+0 (照合)」へと中心が移っている。ディザスタリカバリーや BCP の検討が進む中で、決済期間を短縮することで決済リスクは削減されるが、逆に別のリスクが増大する可能性を指摘する考え方が出てきているためである。しかし、STP 化についてはその有効性を支持する声が依然強く、また STP インフラによる約定照合の T+0 実現は決済リスク削減に大きく寄与するとの考え方には、大きな賛同を得ている。

金融システムの更なる健全化を目指して STP インフラの整備が進行する中で、現在は金融機関側の STP 化にその局面は移っており、機関投資家側の STP 化が金融システムの健全化に向けた重要なファクターとなることは明らかだ。言い換えると、社外 STP 化・照合 T+0 化の前提となる社内 STP 化、すなわちファンドマネジャーやトレーダーの携わるフロント業務の STP 化が、金融システムの健全化に向けた重要ファクターになると言える。


悩み多き、一般的な三つのアプローチ


ファンドマネジャーとトレーダーを中心とした社内 STP と、証券会社連携の社外 STP を同時に目指す次期システムの構築アプローチとして、次の三つが良く取り上げられる。 (図 1)

第一のアプローチは、自社開発 In-House 型である。最新の IT 技術をフル活用して、現行の業務フローと機能を踏襲し、独自ノウハウを作り込みすることで、最良の次期システムが構築できるアプローチである。これには、多額の開発費用と要員体制が必要で、独自開発のリスクが伴うこととなる。また、次期システム構築後には専門のサポート部隊も維持する必要がある。

次に、パッケージソフトを導入して社内 STP と社外 STP を実現するのが第二のアプローチで、近年良く検討される考え方である。これは、業務に共通する機能がパッケージ製品化されているため、自社開発型に比べて短期間で低価格の導入が実現できるメリットがある。その一方、パッケージソフトの導入には、業務フローをパッケージソフトに合わせる BPR が前提となり、一旦独自業務ノウハウの移植を検討し始めると多額なカスタマイズ費用が発生し、短期間での導入も難しくなる。

第三のアプローチは、サービスプロバイダーが提供するサービスを利用する形態である。これは、第二のアプローチに比べサービスの利用料がさらにリーズナブルなレベルであることと、サービスの利用開始が短期間に実現できることから、パッケージソフト導入の代替案として良く選択肢に取りあげられる。しかしこの場合、基本的に独自業務ノウハウの移植が不可能であり、提供される機能もサービスプロバイダーに依存することになる。足りない機能や独自業務ノウハウの部分は何らかの形態で補うこととなるが、プロバイダーが提供するサービスとの親和性は低く、STP 化の観点からは不完全なものとなる。

この様に、自社開発 In-House 型、パッケージソフト導入 BPR 型やサービス利用型は、その長所と短所に大きな乖離があるために機関投資家の課題を柔軟に解決するソリューションとはなりえていないのが現状である。これらの理由により、多くの機関投資家は現状のスタイルを継続するという悩ましい選択に直面している。

そこで、必要になってきたのが Usability.Fframework=「第四のアプローチ」の考え方である。


Usability.Fframework=第四のアプローチ


「Usability.Fframework」とは、USABILITY をコンセプトにした Financial Institution 向けフレームワークである。

既存 Microsoft Office System の有効活用を基本スタンスとし、汎用製品である EAI・ワークフロー製品とその金融アダプターを用いた創意工夫により社内外 STP を同時に実現する柔軟性の高いアプローチ、それが第四のアプローチである。この第四のアプローチは、「USABILITY」をコンセプトにフロント業務の STP 化を柔軟に実現するアプローチであり、「ユーザー部門」、「システム部門」、そして「経営層」にとっての USABILITY に応えるものである。 (図 2)

ユーザー部門の USABILITY とは、業務に最適化された、使い慣れた Microsoft Office System をそのまま継続して利用する環境を提供することである。日進月歩進化を続ける運用手法にスピード対応できる Microsoft OfficeSystem 環境を継続提供することが、ユーザー部門のベストソリューションであることは明確である。

国内外の制度改革に伴う法整備や社会インフラが整い、社内外 STP 化への対応が迫りつつあることは、前述の通りである。この社会的責務に応えるために、Microsoft Office System を EAI・ワークフローを活用して有機的に連携させることで、社内 STP を実現する考え方が基本である。さらに国際標準に対応した金融アダプターの活用で社外 STP を実現するソリューションが、システム部門の USABILITY となる。

そして、ここまで二つの USABILITY を個別開発や機関投資家向け専用システムの形態で実現するのではなく、製造業・流通業など他業種でも利用されている汎用製品により実現することが基本スタンスである。それにより ROI の向上が大幅に見込まれるのが、経営層 USABILITY となる。基本的に Microsoft Office System の継続利用がベースであることから、蓄積しているノウハウを移植するカスタマイズ費用や、随時変化する投資運用環境に合わせたメンテナンス費用も大幅に軽減できる。また、Windows プラットフォームの汎用製品を前提とするため、各種トレーニングツールが整備され、メンテナンスも GUI による操作であり、専門のメンテナンス要員を維持する必要がない。


Usability.Fframework の基本構造


第四のアプローチを支える Usability.Fframework は、最適化された Microsoft Office System を有効活用することを基本とし、これら既存の環境を有機的に連携させ社内 STP と社外 STP を同時に実現させる考え方である。最大限に既存環境を継続利用する考え方のため、ノウハウ移植の必要がなく、Microsoft Office System の利便性・即応性メリットを継続的に享受することが可能で、業務フローも現行の流れを踏襲するため、BPR リスクを削減できる。

Usability.Fframework では、Microsoft 社が開発・提供する EAI 製品 BizTalk Server 2004 を中核に、MicrosoftOffice System のプロセスを統合し、そのワークフロー機能を活用することでフロント業務の有機的な連携を実現する。そして、国際標準 FIX をサポートする富士通製 FIXAdapteron BizTalk Server 2004 を組み合わせることで、社内 STP と社外 STP を同時に実現する。 (図3)

また、業務データは BizTalk Server 2004 上で一元的に管理するため、他システムとの柔軟な連携や BCP・セキュリティー対策にも有効である。さらに Microsoft Office System は BizTalk Server 2004 を基盤として統合するため、そのメンテナンス性も大幅に改善される。


ケーススタディー Microsoft Excel


次に、資産運用のフロント業務を Excel の表計算機能や VBA 機能を用いて行っているケースをモデルに、Usability.Fframework の適用イメージをもう少し具体的に説明する。

本ケーススタディーの登場人物は、(1) 投資方針に従いポートフォリオから注文を生成するファンドマネジャー、(2) ファンドマネジャーからの注文を証券会社に対して発注するトレーダー、そして (3) 注文を取引市場で執行する証券会社、の 3 者と設定する。

ファンドマネジャーは、バックオフィスシステムからポートフォリオデータを取り出し、情報端末から連携した価格情報と、数値化された投資方針を基準にポートフォリオの管理と注文の生成を行う。この管理と注文の生成を実行する仕組みは、表計算機能や VBA 機能を活用して実現している。

また、トレーダーは複数のファンドマネジャーから受け取った注文を表計算機能・VBA 機能を使い一括化・分割と発注管理を行い、証券会社へ発注する。

ファンドマネジャーとトレーダー間の連携は、社内ネットワークとファイルサーバーを活用し、手動で Excel ファイルを受け渡しすることで実現している。また、トレーダーと証券会社間の連携は、取引ごとに Excel ファイルを作成し、この Excel ファイルを e-mail に添付することで情報連携を行っている。

このように、各登場人物間の連携が手動で行われていることが、現状モデルの課題点である。 (図 4)

この Excel を活用したフロント業務のモデルに、Usability.Fframework を適用したのが (図 5) である。

ファンドマネジャーとトレーダーが手動で Excel ファイルを受け渡ししている部分を、BizTalk Server 2004 のワークフロー機能で、新たに STP 化する。これは単に現行の業務フローの再現だけでなく、Excel ファイルの手動受け渡しでは実現出来ない、密で有機的な連携や逆方向の情報連携も可能とする。例えば、トレーダーが証券会社に発注した取引の状況をファンドマネジャーに対してもリアル連携することが可能である。

次に、トレーダーと証券会社間の連携に関しては証券取引の国際標準 FIX をサポートする富士通製 FIXAdapter on BizTalkServer 2004 を用いて新たに STP 化を実現する。トレーダーが Excel 上で発注先証券会社を指定して発注アクションを行うと、BizTalk Server 2004→FIXAdapter と連携し、FIX を用いた証券会社との STP 化を新たに実現する。

さらに、取引データは BizTalk Server 2004 上に標準化されたデータ形式で一元管理されることから、コンプライアンスシステムと連携した取引発注前チェックや、また、取引成立後にオペレータが手入力しているバックオフィスシステムへの約定入力を自動化するなど、その他の業務システムとの連携も柔軟に実現できる。


将来に向けた STP/STR (Straight-Through Reporting)


機関投資家を取り巻く環境が急速にまた大きく変化する中で、資産運用サービスは最高の満足と深い信頼を目指して進化し続けている。高付加価値の創造と高い専門性を追求し、健全な運営による社会的信頼を志向する資産運用サービスを、IT 技術で支えるのが Usability.Fframework である。「STP」だけでなく、その先にある報告情報 (Report) のシームレスな連携を実現する「STR」も視野に入れたソリューションである。(図 6)








【BizTalk Server 2004 を利用して】

〜ソリューション開発者の目線で〜

Microsoft 製 BizTalk Server 2004 を利用して実感したことは、サーバー製品ですが「使い易い」、「取り組み易い」ということです。

1.

Office 製品や他 Windows 製品と親和性が高い
Excel や BizTalk Server 2004 は.NET Framework 上で動作し、それらを用いた開発には Visual Studio .NET が統合開発環境として存在します。また.NET Framework クラスライブラリにより Excel でも BizTalk Server 2004 でも同じインタフェース (感触) で開発ができ、しかも同じ Framework を利用するので動作面も含めてかなり親和性が高いと感じました。

2.

製品を理解し易い
Microsoft 製という観点から、Microsoft サイトにMSDNライブラリが用意されているため、製品を理解し易い環境が整っているという特徴があります。これにより利用者自身で学習・開発が可能であるため、導入ベンダとの役割分担上の柔軟性が増すことが期待できます。

3.

リーズナブル
リーズナブルであることは、様々なプラスの効果が考えられますが、実績のある既存環境を維持継続しながら新たな試みを開始するスタイルが可能になります。

4.

金融アダプター
金融アダプターとして必ず必要になる Microsoft 製 BizTalk Accelerator for SWIFT が用意されているので、バックシステムとの連携も可能になります。


「2004 冬号」

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