FIT 記事 No.31 (2008)
内部統制を見据えた金融機関における文書管理の潮流
〜内部統制の強化と業務の効率化を実現するための文書管理〜
09 年 3 月期の本決算から、上場企業およびその連結子会社を対象に開始される J-SOX の施行を目前に控え、国内でも企業の内部統制強化に向けた動きが活発化している。金融機関においてもこの動きは顕著で、最近では、コンプライアンス対応を前提とした文書の管理、そして、そのためのシステム化を検討する金融機関が増えてきている。特に現場レベルでミスやコンプライアンス違反が発生しないための事務規定や業務マニュアル、業務指示等の文書が文書管理の対象となっている。しかし、関連する文書の種類は多く、文書間で互いに関連する箇所も数多く存在する。このため、何度も発生する改訂のたびに、複数の文書に同様の修正を加える必要があるなど多くの負荷が生じている。金融機関では、このような文書管理を効率化できる有効なソリューションを切望している。
本稿では、このような金融機関におけるコンプライアンス対応に向けたドキュメント管理を包括的に支援する、マイクロソフトの提供テクノロジーを活用したソリューション例をご紹介する。
トピック
インディゴ株式会社
サービス & ソリューション事業部
ジェネラルマネージャー
田中 優成 氏

日本マイクロソフト株式会社
第二プロダクトソリューション
営業本部
金融担当
岩松 健史
システム化が急務となる金融機関の文書管理
近年、コンプライアンス対応を前提とした文書管理のシステム化を検討する金融機関が増えてきた。対象となる文書の種類や理由はざまざまであるが、現在、検討が進んでいる文書には、以下のようなものがある。

通知/通達文書
日々発生する文書であり大量に蓄えられる。公開直後に数多く参照され、以後参照の比率は減少するが、一定期間の保管が必要な文書。このため、作成→レビュー→承認→公開→保管といったライフサイクル管理や、それに伴う、バージョン管理、承認ワークフロー、監査ログ、期限管理、アーカイブなどの機能が必要となり、グループウェアや文書管理機能を持ったソフトウェアによって対応するケースが多い。最近では、文書管理機能だけでなく、フロントエンドのポータル化やパーソナライズ、全文検索等の付加価値をつける形態が増えてきている。
財務諸表関連データを扱うドキュメント
SOX 法対応として財務諸表の整備が進行しているが、ここで用いられる Excel ファイルにかかわる課題が浮上してきている。中でも Excel シート内に組み込まれたマクロ処理が問題視されている。「スプレッドシート統制」や「EUC 統制」などの言葉で表されるものだ。
スプレッドシート統制、つまり表計算を使用する場合に必要とされる内部統制としては、以下のようなものがある。作成者/利用者が同一である場合に、不正や計算式の誤り等が見逃されるリスク、プログラムされた内容が文書として記録されず不明になるリスク、バックアップが十分でなくデータが失われるリスク、データの改ざん、消失が生じるリスク、などである。
これらのリスクを排除するための対処としては、Excel を使用したアプリケーションのシステム化や、ERP システムへの置き換え、さらに EUC のシステム化などをあげることができる。
業務マニュアル、事務規定等の事務リスク関連文書
法令を遵守し事故を防ぐため、業務規定やマニュアルの変更管理や職員への徹底などが、金融庁が出している各種検査マニュアルにも記載されている。これらのリスク管理文書を整備し、その利用を促進することが、企業力の強化と、より高い顧客サービスの実現につながる。
顧客提供が前提となる、約款/案内パンフレット/契約のしおり等の文書
保険業では、09 年に施行が予定されている保険法改正に向けて、保険約款や案内パンフレット、契約のしおり等、顧客に提供することが前提となる各種文書の全面的な見直しや改定業務が発生する。これらの実施にあたっては、膨大な作業量が予想され、その効率化、品質管理が大きな課題となっている。
求められる包括的なドキュメントのライフサイクル管理
ここまで見てきた通り、09 年 3 月期の本決算から開始される SOX 法の施行を目前に控え、多くの金融機関では、財務諸表作成に使用される Excel ファイル等の文書の管理に向け、パッケージを利用したシステム化対応が進んでいる。また、事務リスクに対応するために、事務規程や業務マニュアルの管理の強化を検討するケースも増えてきている。そして、ここで求められるのは、「文書の作成」「編集・レビュー」「承認」「公開」「廃棄・アーカイブ」という、文書の作成から保管に至る文書管理の全ライフサイクルを包括的にカバーできる仕組みである。これを具体的なシステムとして実装する際、最近のテクノロジーとしては、XML ドキュメントに注目が集まっている。しかし、現状の業務手順を大幅に変えることが必要となるこのような大がかりなシステム化の対応は、事務効率を落とす可能性もあり、容易に認められるものではない。既存の業務手順を大幅に変化されることなく、ドキュメント管理の効率化を図り、さらに、システムの利用者となる一般職員がミスなく規定を順守できるような仕組みが求められている。(図 1)
マイクロソフトでは、このような要件に向け、Office 文書の XML 対応や Office SharePoint Server によるコンテンツ管理機能の強化を図っていた。しかし、これらの製品が提供する機能は、目的となるシステムにとって素材に過ぎない。実際に金融機関で使用されるシステムを実現するには、これらのマイクロソフト製品と連携したパートナー製品なども必要となってくる。
ここでは、マイクロソフトの提供テクノロジーを活用し、金融機関におけるドキュメント管理を効率化し、その品質向上に貢献しているパートナー製品について、その概要をご紹介したい。併せて、これらのパートナー製品を活用してお客様の課題を解決するソリューションについて見ていくことにする。

「DocuDyne」の提供機能
インディゴ株式会社が提供する「DocuDyne (ドキュダイン)」は、マイクロソフト Word で作成された文書の管理に特化したドキュメント管理ツールであり、Office SharePoint Server 2007 との連携ソリューションを実現する。最新バージョンでは、Office Open XML 形式に対応することで文書データの部品化機能を実現した。
内部統制対応等に向けた他社ソリューションでは、大がかりな開発によって、文書の XML 化を図るなどの施策が見られるが、実際のビジネス現場におけるドキュメントのほとんどは Word をベースにした手軽なものである。この点から考えても、Word ドキュメントをそのまま活用できる DocuDyne には優位性がある。多大な開発投資や教育投資をしなくても、手慣れた Word を使ってストレスなく業務を遂行することができる。
DocuDyne の提供機能は、ファイル管理と部品化管理に大別され、それぞれ下表に示す各機能が含まれている。 (表 1)

提供ソリューションの特徴としては、以下の 3 点をあげることができる。
- 詳細な差分管理 (新旧対照表の自動生成) を実現
- 文書の意味構造に着目した高度な検索を実現
- ドキュメント部品化手法で文書作成/管理効率を向上
詳細な差分管理
文書改版時の文言変更/削除/追加、段落の追加/削除/移動について、詳細な差分比較が可能となっている。ここでは、差分管理にあたって、文書を新旧対照表の形式で出力できるため、差分/変更箇所の可視化が極めて容易に行える。なお、今後リリースされる最新バージョンでは、新旧 2 つの文書を Word 上で比較することができ、テキスト内容の比較だけでなく、レイアウト上の差異も確実に捉えることが可能となる。
高度な検索機能
Word の書式スタイルで、章/節/項の意味構造を付与することで、DocuDyne が構造解析を行い検索サービス化することができる。たとえば、『条文タイトルの文言』で検索するなど、検索対象を文中の意味構造に即してスクリーニングし、該当箇所をピンポイントで検出することもできる。
ドキュメントの部品化
部品化機能では、「共通記述や手順の部品化」「部品化による文書更新」「部品化による監査証跡管理」「部品の派生管理」「部品の引用管理」の 5 つの機能を提供する。本機能では、複数の文書の中から共通となる要素を抽出し、部品として活用することができる。部品は、Word 2007 上から直接操作し、登録や組み立てることができる。(図 2)
たとえば、保険業界では、約款のように保険商品ごとに作成される文書がある。これらの内容では、多くの文書で共通な部分があり、作成にあたって部品を利用した場合のメリットが大きい。さらに、定期的な改訂が発生した際、部品側の内容を更新するだけで、この部品を使用している文書の内容を一括で更新できるため、これまでのように複数の関連ドキュメントを手作業で更新していた手間が大幅に削減される。(図 3)


次に、DocuDyne が持つ部品化機能・新旧対照表機能を積極的に活用して、マスターデータの効率管理と校正負荷軽減を狙い、複数の生損保で保険法改正の対策として活用されている「DocuDyne 保険約款ソリューション」をご紹介する。
DocuDyne 保険約款ソリューション
DucuDyne 導入による期待効果としては、手作業による修正作業のケアレスミス排除、作業時間の短縮などがある。保険会社における過去の作業フローでは、修正申請書が届くと、手作業でその修正を原稿に加えていたため、誤植のリスクがあった。DocuDyne ではあらかじめ校正済みのテキストを「部品」として保存しておき、使う際にはそのまま取り出して使用できるため、人手で転記する際の写し間違いなどの可能性が排除される。さらに、部品化された原稿を使い回せるため、転記や加筆、そして校正などの作業時間を短縮することが可能だ。この結果、どんな判型やメディアへの対応要求が来ても即座に対応することができ、激しいサービス競争の中での大きな競争力となる。(図 4)

なお、保険法改正の対策として「DocuDyne 保険約款ソリューション」を導入決定・運用開始している事例が、すでにマイクロソフト社の Web サイト上で公開されている。詳細はこちらを参照願いたい。
事務マニュアル作成管理ソリューション
企業の基盤ドキュメントの 1 つである「通達・規定・事務マニュアル」文書の管理も、金融機関から引き合いが急増しているテーマだ。過去の事務マニュアル作成・管理では、次のような課題が見られた。
- 複数のマニュアルや作成者によって品質が異なる
- 業務品質均一化を図る効果的な手段が見つからない
- 事務手順における役割/責任分担の把握が難しい
多くの金融機関では、これらの課題を解決し「活用される事務マニュアル」を実現するために、複数のドキュメント管理システムの評価を実施してきた。しかし、これらのシステムは、高機能であるものの、Word ドキュメントとして作成していた事務マニュアルを、XML フォーマットに変換するなど、現状のドキュメント作成手順を大幅に変更しなければならないものであった。
DocuDyne を核にした「事務マニュアル作成管理ソリューション」では、「作成」「管理」「公開」「閲覧」という事務マニュアル作成・管理に関わる一連の工程を包括的にカバーする。
作成工程では、日頃の業務で使い馴れた Word を使って事務マニュアルの部品を作り、また同じ Office 製品として親和性の高い Visio で業務フロー図を作ることができる。作成された Word 部品は、Word に組み込まれた DocuDyne のアドインによって、DocuDyne 上で事務規定および事務マニュアルの部品として管理される。
マニュアル管理担当者は、Visio で作成した業務ワークフロー図と組み合わせることで、作成、確認、承認、そして公開などのマニュアル管理作業を遂行できる。過去のマニュアル運用で最も作業負荷がかかっていた更新内容の確認については、DocuDyne が提供する「新旧対照表」により、変更箇所を確実に把握することができるようになった。さらに、部品化された共通記述部分に修正が発生した場合、部品に変更を加えると、この部品を使用したすべての箇所が自動的に更新される。
これにより、従来のような対処箇所の確認作業や複数回におよぶ同一の変更作業が不要になる。DocuDyne 上で部品化され管理されたマニュアル情報は、同一データで公開用コンテンツ制作用途として利用することもできる。公開に伴うデータ変換は、Office SharePoint Server 2007 との連携が可能なサードパーティのツール群を活用して、導入する金融機関の公開ポリシー・環境に合わせて柔軟に対応できるのも魅力だ。例えば、Word から PDF への自動変換ツール経由で公開用サーバーへ格納し PDF 公開したり、HTML または Flash 形式に変換した後、自動公開することも、公開ツールの選択で実現できる。閲覧時には、ページ単位での検索および業務概要図から詳細文書への階層的なナビゲーションを実現した導入企業もある。
「事務マニュアル作成管理ソリューション」を活用する金融機関の中には、初回の提案からわずか 3ヶ月で実際の導入を決定したお客様も存在する。

まとめ: 文書管理における標準システム基盤の実現に向け
金融機関における文書管理のニーズとその対応について紹介してきたが、重要なのは、事務部門における文書作成管理の効率化だけでなく、これらの文書を使用する一般職員による活用をどう活性化できるかという点だ。これが投資を判断する際に着目すべきポイントとなる。たとえば、事務規定を利用する銀行窓口職員に対し、どのように業務に沿った規定を遵守させるか、また、文書のたどり方や探し方を工夫し、ミスなく業務を遂行できるよう支援するシステムを実現するかが問われてくる。そのためには、ドキュメント管理に関わるライフサイクルを包括的にカバーし、利用にあたってのハードルが低く、さらに、大きな導入負荷や時間を必要としないで実装できるシステム基盤が不可欠だ。今回紹介したソリューションのテクノロジーベースなっている Word 2007 と Office SharePointServer 2007 のコンビネーションは、まさに、これに該当するソリューションと言えるだろう。さらに、DocuDyne のようなパートナーソリューションを併用することで、よりきめ細かなドキュメン管理を実現できる。
Office SharePoint Server 2007 は、出荷後わずか 1 年半で、多くの金融機関に導入が進んでおり、日本国内で公開されている金融機関の導入事例だけでも 5 社を誇る。これらの導入金融機関では、主に文書管理の用途で使用しているが、Office SharePoint Server 2007 には、豊富な提供機能があり、文書管理はこれらの 1 つに過ぎない。多くの提供機能を該当する対象業務に適用することで、高い導入効果をあげることができる。
マイクロソフトでは、Office SharePoint Server 2007 を、文書管理のソリューションなどの業務領域をカバーするシステム基盤と考えている。そして、個別開発の必要なアプリケーション部分を最小化し、実装を早めることで、業務ニーズに迅速に答えられるシステム基盤の提供を目指している。(図 6)

※インディゴ株式会社: インターネットを中心としたコミュニケーションのインフラにおいて、新しい価値の創造を目指すコミュニケーション・デザイン・カンパニーとして、先進のテクノロジーと豊富なノウハウ、クリエイティブな発想を組合せ、様々なサービスを提供しています。
金融 IT 情報誌 FIT No.31「2008 冬号」
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