
導入の背景と狙い:
IT 基盤、オフィス ファシリティ、“人の意識”を最適化してワークスタイルを変革
キリンビール株式会社(以下、キリンビール)は、2007 年に創業 100 周年を迎える、わが国のビールメーカーの老舗です。近年は発泡酒やチューハイなどで酒類市場のさらなる拡大を図ると共に、キリングループとして清涼飲料事業や優れたバイオ技術をベースにした医薬事業、健康食品分野など、新たなマーケットと商品価値の創造を世界規模で進めています。
キリンビールで推進している「ワーク スタイルの変革」は、以前から取り組んでいる「情報マーケット確立」の延長線上にあります。
「情報マーケット確立」とは、社内のあらゆる情報を人体の血液のごとく環流させ、全体の業務の活性化を図っていこうというものです。そのためには、具体的にどのようなワーク スタイルが必要であり、どう進めていくかを重要な検討課題として、継続的に取り組んできました。
「情報マーケット確立」および「ワーク スタイルの変革」の取り組みの背景には、昨今のビール業界を取り巻く急激な市場の変化があります。業界はビール消費の頭打ち傾向と低価格化という厳しい流れの中にあり、それに対抗するために発泡酒や“第 3 のビール”、焼酎飲料など非ビール類へのシフトを迫られています。また一方では高付加価値ビールなどの新しい試みも行っていますが、市場の多様化が進む中で、同社のような大手有力メーカーにとっても未来は未知数です。
「こうした状況を打開するためには、今までの業務のワクを超える業績の伸びを実現しなくてはなりません。確かに今までも右肩上がりの成長を続けてはきました。しかし、新しい時代の市場においても存在感を確立していくには、単なる昨日までの業務の続きではなく、一挙に市場や業態のワクを超え、お客様のニーズに答えていくことが必要なのです。これを私たちは、“非連続な成長”と呼んでいますが、そうした創造的な仕事を可能にする上でも、ワーク スタイルの変革は不可欠の条件といえます」と、キリンビール株式会社 企画部 企画担当 主査 阿部 泰二氏は語ります。
「ワーク スタイルの変革」は、「IT 基盤の整備」、「オフィスのファシリティの最適化」、「“人”そのものの意識などの最適化」の 3 本柱から取り組みが進められています。その中の「IT 基盤の整備」では、目的を明確にするため、「情報コミュニケーション スタイルの変革」というスローガンを打ち立て、それを第 1 ステップとしています。
第 1 ステップとして「情報コミュニケーション スタイルの変革」にフォーカスした理由について、キリンビジネスシステム株式会社 情報技術統轄部 ワーキングスタイル変革グループ部長の桝田 浩久氏は次のように説明します。
「『ワーク スタイルの変革』は、人が常に動き続けるワーク スタイルへの変革を実現するというものです。つまりそれぞれの社員が、単に指示に従って働くだけでなく、自分で考えて、機能的にアクションを起こすということが大切になります。そのようなアクションを継続することにより、企業が持っているダイナミズムを維持できるようになるでしょう。そして社員の動きを支援するしくみとして、『情報コミュニケーション スタイルの変革』に着手することになったのです」。
新しいコミュニケーション スタイルを実現するしくみを検討するため、同社では社内情報をセグメント化して整理しました。情報のタイプとしては、ストック型、フロー型に種分け。ストック型は、規定集や議事録など、一度作成したら変わりにくい文書情報、フロー型は、ニュースの記事や検討が進行中の案件の情報など、鮮度が高く、流動的な情報です。この 2 種類の情報をチームあるいは個人で扱うためのしくみを多角的に整備することになりました。
セグメント化された社内情報の中でも「フロー型-チーム」の部分は、リアルタイムに時間を共有するための「次世代型コミュニケーション」を実現するしくみが必要になります。また情報のタイプや重要度、緊急性などもさまざまなものがあるので、それぞれに適したコミュニケーション手段を用意しなければなりません。そこで同社では、複合的な伝達手段を実現するユニファイド コミュニケーションを確立することにしました。
具体的には、文書情報を共有するためのポータル サイト、在席状況を確認するプレゼンス管理機能、電子メール、IP 電話、チャット、Web 会議などの手段を組み合わせて利用し、効率的なコミュニケーションを実現します。このようにさまざまなしくみを組み合わせるメリットについて、桝田氏は次のように説明します。
「たとえば電子メールを送った場合、送信者は 24 時間以内のレスポンスを期待するでしょう。また電話の場合はリアルタイムでの会話ができます。しかし場合によっては 10 分ぐらいで返事がほしいこともあります。電子メールと電話の中間に位置する手段としてインスタント メッセージが使えるようになれば、コミュニケーションはさらに効率的になります。そしてそれを有効に活用するためにも在席状況を確認できることは大切です」。