本シリーズは、シーズ=市民活動を支える制度をつくる会のホームページ
から転載したものです。
第ニ回 特定非営利活動法人難民支援協会プロジェクト名: IT を活用した難民及び難民申請者の言語デバイド・情報デバイドの解消及び当協会の IT に関するキャパシティ ビルディング
■ 団体概要 設立: 1999 年 7 月(1999 年 11 月 6 日 NPO 法人化) 目的: 主な事業: ホームページアドレス: 難民支援協会は、日本へ逃れてくる難民の支援を行っている団体だ。新宿区神楽坂の雑居ビルの一角にある協会の事務所には、1 か月に 50 人ほどの難民が相談に訪れる。難民とは、政治的、宗教的理由などから、母国にいると迫害を受ける恐れのある人々のことだ。協会は日常的に彼らへの直接的な支援を手がける一方で、ホームページを活用した支援のあり方を模索している。ここでは、新しい取り組みを、事務局長の筒井さんからうかがった。 1) 難民の命を守るために 「難民というと、アフリカのキャンプなどで戦争や飢餓のためにさまよっている人々の姿を思い浮かべる人が多いでしょう。でも、実は日本にも難民はたくさんいるのです。 アフリカやアジアなどのさまざまな国から、把握されているだけでも毎年 250 人もの難民がやってきています。いずれも母国で政府と違う意見を持っていたなどの理由で迫害を受け、国を出なければならなくなった人たちです。」と難民支援協会事務局長の筒井さんは状況を説明する。 必死の思いで逃れてくる人たちだが、日本での受け入れ状況は厳しい。それは、日本政府が難民の受け入れにきわめて消極的なためだ。 母国から逃れてきた人は、即座に「難民」とされるわけではない。「難民」となるためには、法務省に申請して、認定を受けなければならない。 認定を受けられると、日本にいることができるし、健康保険などの公的扶助制度を利用することができるとされている。しかし、認定を受けられないと、「不法滞在者」とみなされ、場合によっては母国に強制送還されてしまう。母国の政治的状況によっては、その人の命にかかわる迫害を受ける場合もある。 日本では、1989 年から 97 年まで、難民として認定された人は年間に 1 名から数名でしかなかった。これは、年に数千〜数万人を受け入れる欧米諸国と比べて、かなり見劣りするものだった。 難民問題に消極的だという、国内外からの批判の高まりもあって、政府は難民認定数を 98 年から増加させ、申請審理体制も増強した。しかし、これらは十分なものではなく、今なお日本で難民認定を受けるのは至難の技といわれている。 2002 年度に認定を受けたのは 14 名だった。 このような厳しい状況下で、認定を受けたいと思っている人たちにとって頼りになるのが難民支援協会だ。 協会は、日本にたどりついた難民に対して、相談などに応じて、難民認定の申請手続きの手助けを行っている。事務所には毎月 50 〜 60 人の難民が相談に訪れる。 難民申請をする人に対して、情報提供してくれる機関は、日本では、協会の他にはない。 99 年の設立だが、今では、世界中で難民問題に取り組んでいる UNHCR(国連難民高等弁務官事務所) との協働事業として、「難民ホットライン」というサービスも任されている。ホットラインには、毎月 200 件程度の電話相談が寄せられ、スタッフはさまざまな難民の相談に親切に対応している。 UNHCR にとっても、頼れるパートナーなのである。 ![]() 2) 難民フレンドリーホームページへ 「日本では、難民であることを証明する責任は、申請する本人に過度に求められます。認定の申請には、迫害を受けてきたことを証明する資料の提出も必要になります。多くの難民は、命からがら日本に入ってきていて、そんな資料は持ち合わせていません。当然、日本で資料を集めなくてはならないのですが、母語を使用できない環境で、自らが迫害を受けていた証拠となる新聞記事などの資料を集めるのは、たいへん困難なことなのです。」と筒井さんは問題を語る。 さらに協会は、難民に対する住宅や就労、医療などに関する情報提供、住宅費や医療費への金銭的支援など生活面での支援も担っている。難民に関するニーズは増える一方なのである。 どうにかして、増えていくニーズに対応し、難民支援活動をより効率的に展開したい。たとえば、ホームページをもっと活用できないか。筒井さんがそう考えていた時、「Microsoft giving NPO 支援プログラム」の募集を知った。もちろん、すぐに申請することに決めた。 現在の協会のホームページは、主に日本の難民政策に関する問題点や協会の提言活動、過去の取り組みなどを掲載し、研究者や支援者がユーザーとして想定されている。いわば「支援者フレンドリー」なものとなっている。 申請の狙いは「難民フレンドリー」なホームページの構築。つまり、難民にとって必要な情報提供をできるようにすることであった。 ![]() ホームページで適切な情報提供が可能になれば、電話相談にかかる時間も短縮され、より多くの難民からの相談を受けることができる。加えて、全国にちらばる難民が、協会で資料を集めたり、相談を受けたりするために、わざわざ東京まで足を運ばねばならないという問題の解消にもつながる。 「ホームページの充実は、難民がこれまで支援の受け手という受動的な立場から、必要な情報を自分で探し得るという能動的な行動に変わることを可能にします」と、筒井さんは話す。 「自治体の図書館やインターネットカフェなど、各地でインターネット環境は急速に整備されてきています。そのことを難民に知らせてあげることができれば、多くの難民がインターネットを活用できるようになります。そして、協会の HP にアクセスしてもらえれば、難民申請の方法、その後の見通し、生活に関する情報などを多くの人と共有できるのです。」 3) 生きた情報を探して奮闘中 6 月、協会のホームページに「難民認定申請を行う人への助言」という文章が日本語と英語で掲載されたことは成果の第一歩だ。 難民が、一歩、日本の空港におりたった時にまず必要なのは難民申請手続きに関する情報だ。それが、どこでも、いつでもホームページで見られるようになったのである。 さらに協会では、この文章を日本に来る難民が理解できる言語であるビルマ語、トルコ語、ペルシャ語、ウルドゥー語、フランス語に訳していく作業に取り組んでいる。 特記しておかなければならないことは、実は、この翻訳作業を支援される側だった難民の人が担っているということだ。難民政策に関する専門的な文章なだけに、なかなか適切な翻訳者が見つけられないでいたところ、難民の人たちに依頼すると、みな快く受けてくれた。 「難民の方々は同じ立場の人や協会に貢献できることを心から喜んでくださいました。この翻訳作業が彼らへのエンパワメントになっていたのです。」と、筒井さんは語る。 認定手続きの情報だけでなく、生活支援情報の提供にも取り組んでいる。相談活動の中でニーズが高いのは、外国語でコミュニケーションのとれる病院はどこか、就職口を探しているがうまく見つからない、格安のアパートはないだろうかといった医療、仕事、住宅、財政的支援などに関する情報だ。 ![]() それらの情報を HP に掲載するため、情報の収集、適切なリンク先の調査も現在進行中だ。まだ作業中だが、いずれは、多言語でのアクセスを可能とした難民のための総合生活情報サイトの確立が目標である。 さらに協会では、助成の一プログラムとして、難民の方からパソコン講習へのニーズが高かったことから、10 月には難民向けのパソコン講習会を開くことも計画している。 4) 今後の協会に期待 協会の体制も助成を受けたことで大きく変わった。 以前は、ホームページの運営は、理事がボランティアで行っており、更新もその人の空き時間と熱意に頼るという状況だった。助成によって、常勤スタッフのなかに IT 担当者をおき、ホームページの更新体制を組むことが可能となった。 さらに、協会の IT 環境の整備も進んだ。3 台だったコンピューターは 7 台に増え、LAN も構築、ネット環境も整った。マイクロソフトからの助成を受けた NPO 同士での情報交換から、多言語化に成功している NPO との交流も生まれている。 「協会の支援者からいただいた資金の多くは、難民のために使わなければならないという制約があった。そのため、どうしても事務局内部への投資は後回しになりがちだった。」と、筒井さんは助成の意義を強調した。 ![]() 近頃、難民申請制度の問題については新聞などでも取り上げられるようになり、入管法の改正が取りざたされるようになってきた。 しかし本当の難民政策とは、ひとりひとりの難民の入国から定住まで、つまり住居を確保し、仕事に就いて、自立するまでを支えることだといえるだろう。制度の充実のためにはなすべき課題が多く、日々の相談から制度充実のための政策提言活動まで、今日も協会の活動はあわただしい。 しかし、ニーズが増えていっているからこそ、IT の活用がますます不可欠となってきている。 日本に来た難民が、頼りとするホームページがオープンする日はそう遠くないだろう。
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