
第 2 回マイクロソフト NPO 支援プログラム世界職人連携 e-marketplace 構築プロジェクト 特定非営利活動法人 北海道職人義塾大學校(団体概要 ) 明治維新以降、北海道の海の玄関口として、物資輸送に関連する産業が発達した小樽は、職人の町でもあった。しかし時代の流れとともに職人の高齢化と後継者不足が進み、産業は徐々に衰退した。代わって市外から観光資本が入り、現在は観光地としての認知が高い。 そのような背景の中で生まれたのが北海道職人義塾大學校だ。南小樽駅から港の方向へ数分坂を下った位置に、その事務所がある。北側に伸びる通りにはガラス工芸などの店が立ち並び、土産屋からはカニを茹でる蒸気が立ち、その先には小樽運河がある。 小樽は職人の街  北海道職人義塾大學校は 「小樽職人の会」 を母体とする。小樽職人の会は、小樽市や北海道の優秀技能表彰に職人を推薦したり、職人技を一般の人に見てもらうため、路上での実演・販売、職人展の開催などを行ってきた。こうした職人の連携を全国に広げるため、全国職人学会を設立。そして体験学習を専門に行う組織として北海道職人義塾大學校を開設した。 「小樽は職人の街。職人が元気にならないと街は元気になりません」 。こう語るのは藤田和久さん。自身も一級建築士として内装の現場に関わりながら、北海道職人義塾大學校の事務局を担当している。職人の仕事が減り、立ち行かなくなってくると、後継者を積極的に育てようという意識になりにくい。やがては関連産業の衰退にもつながる。一方で小樽ににぎわいをあたえている観光客は、ほとんどが札幌市内に宿泊して、一部のスポットだけを訪れる日帰り客だ。この状況が続くと、街全体の活気がなくなっていくのではないか。そう感じた藤田さんは、職人技が注目され、職人が「期待されている」と感じることのできる環境と、新たな収入源を少しでもつくり、まず今の職人がやめないこと、そしてその産業が継続することを目指して 「e-marketplace」 というウェブサイトの立ち上げを考えた。 「e-marketplace」 では職人技体験活動の受け入れ調整、国内外の職人技や道具の紹介、製品の販売などを行う。この長期的な構想の初期段階の整備を進めるため、マイクロソフト NPO 支援プログラムに応募した。 体験活動を受け入れるためのシステムづくり  もともと、小樽は北海道内の小中学校が修学旅行で訪れることが多く、その一環としてものづくりの体験を取り入れることはあった。修学旅行生の受け入れは職人技のすばらしさを子どもたちに実感してもらう上でも、また職人の収入源をつくるという意味でも、重要な取り組みである。しかし顧客のニーズは様々で、職人も 17 業種と多様。ニーズと職人のマッチングにかかる事務局の負担は少なくない。従来は参加希望者から電話で問い合わせを受け、FAX などで顧客の希望とそれに対応できる職人の調整を行っていたが、ウェブサイトから予約できるシステムをつくり、職人への連絡も E メールを使えば、事務局の負担を減らし、より多くの体験希望を受け入れることができるようになる。 しかし体験活動に協力してくれる職人は、パソコンに不慣れな人も多い。技術者もおらず、予約の受付や調整のシステムをすぐに導入するのは困難だった。構築と実験、そして慣れの期間が必要と考え、段階的な取り組みを計画した。 まずは中古パソコンの寄贈を受けて、職人に 1 台ずつ提供、環境を整えた。そして予約システムの実験としてウェブサイト上で体験できる職人技の紹介と予約状況のカレンダーを公開した。体験希望者はカレンダーでスケジュールを確認し、定員に達していなければ事務局に問い合わせる。問い合わせが入ると、事務局が E メールを使って職人に連絡する仕組みだ。 2005 年 3 月の時点で、6,000 人を越える予約を受け付けている。昨年の通年での受け入れ実績は 5,700 人。3 ヶ月で既に、昨年実績を上回る予約調整を実現した。最終的には年間 20,000 人を受け入れたいと考えている。この目標が達成できれば体験学習が一定の収入源として考えることができ、職人も後継者をつくることに積極的になれる。何より、「職人になりたい」と思う機会を多くの人に与えることができる。 予約の完結までオンラインで行うための本格的なシステムを、いま構築中。職人グループは全国にあり、体験学習の受け入れを実施しているところも多いが、往々にして事務局は兼務で体制が弱い。そのため、この取り組みは全国から注目されているという。 職人の魅力をより多くの人に発信したい 職人技を紹介したり、道具を販売するウェブサイトづくりは、サイトの維持運営にかかるコストの問題もあったため、北海道庁と連携して実施する方法も模索した。しかしその話し合いの中で、 「紹介する職人をどのように選定すべきか」 という課題が浮き彫りになった。道庁は技術水準の線引きが必要と考えたのに対し、北海道職人義塾大學校はものづくりに携わる人であれば広く掲載したいと考えた。伝統工芸や表彰を受ける職人は注目されやすいが、それ以外にも各地域にいろいろな技を持つ人がいる。インターネットだからこそ、そういった「埋もれている職人技」を紹介することができる。そして何よりも職人の魅力は、その技だけではなく、生き方や人柄だと考えている。最終的に折り合いはつかず、道庁とは別に独自で取り組むことになり、これからどうするか、検討しているところだ。 藤田さんは小樽の町と職人の人柄を大切にしている。修学旅行の受け入れのように一度に大勢の参加者を受け入れ、1 人の職人が多くの参加者を受け持てば、調整などにかかるコストを下げることは可能だ。しかし「それでは小樽で受け入れる意味がない」と言う。1 人の職人が同時に受け持つ人数を 10人 以内とし、対話できる雰囲気をつくる。「小学生から感謝の手紙が来ることも少なくありません。地元の人と話しながら物をつくる体験は、必ず思い出に残ります」。参加者が小樽の人といかに接したか、ということを大切にすることで、参加者に印象深く、職人にもやりがいを持ってもらうことができる。昨年、全国職人学会から 3 人の職人が退会した。2 人は体調不良、1 人は死亡が理由だった。「職人技を伝える活動は、もう待ったなしです」と藤田さんは述懐する。小樽と職人の魅力を発信する取り組みは、始まったばかりだ。 掲載:2005/04/28 文:吉田建治(特定非営利活動法人 日本 NPO センター) 第 2 回マイクロソフト NPO 支援プログラム 助成案件 |
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