
第 2 回マイクロソフト NPO 支援プログラムIT 技術を活用した、医療者、出産・育児にかかわる女性、出産育児ローカルグループのインタラクティブなネットワーク構築事業 優しいお産のネットワーク REBORN 病院や医療のシステム化とともに、お産は母子や家族の意思よりも、医療的な合理性が優先され、少しずつ生活の場から切り離された。 それに対して 1990 年代ごろから、自分らしいお産をしたいと、自然出産が少しずつ注目されるようになった。各地で出産・育児サークルができ、情報交換が活発化する。専門の雑誌も刊行されるようになった。お産に対する考え方が多様化する中、今では、年長者の経験や、テレビ、大手出版社の刊行物など、様々な形で出産に関する情報があふれている。情報を誰でもが得られるようになる一方、情報を選ぶ難しさや、頼るメディアの偏りなどの問題も出てきた。 母と子が主役の出産のために  REBORN はそうした状況に対して、母と子が主役のお産を実現するために、各地で活動している人たちが情報交換することを目的に活動を開始した。1993 年のことである。お産に関する情報を発信し、生む人と医療をつなぐ冊子として 「REBORN」 を創刊。その後、定期的に発行を続け、1999 年には全国の出産情報をまとめた 「REBORN産院リスト1999−2000年版」 を出版した。2001 年 5 月からはウェブサイトに移行し、ニュースレター 「紙REBORN」 も発行している。 REBORN の活動の中心となっているのは、12 人のボランティアスタッフ。出産や育児分野のフリーライター、マタニティコーディネーター、助産師、育児サークル運営者、漫画家、教員など、それぞれ専門の職業を持つ人たちが、ウェブサイトの編集や出産関係者の参加するメーリングリストの運営などを行っている。 マイクロソフト NPO 支援プログラムには 4 つの狙いで応募した。1 つは書籍を基にした情報をウェブサイトでも公開した 「REBORN産院リスト」 の充実。2 つ目は産む人から医療への情報提供。3 つ目は産む人と産む人の情報交換の促進。そして 4 つ目は快適・安全・安心な出産・育児のためのオンラインショップの開設だ。 お産の質にこだわるための情報を提供  ウェブ上の 「REBORN産院リスト」 には、冊子に掲載した 160 の産院のうち、転載に同意した 100 ヶ所弱を紹介していた。しかし「自分の県に 1 つある、ということが分かっても、本当に使える情報にはなりません」と担当の白井千晶さんが語るように、掲載件数をもっと増やす必要がある。利用者が「自分の街にどういう産院があるか」を調べることのできるようなリストにしたいと考えた。また、リストの公開から 5 年が経ち、産院の情報自体も古くなっていた。 そこで、既に紹介している産院に、その後の取材や紹介などで知り合った産院を加えた 500 ヶ所にアンケートを送付。電話で回答依頼や無記入部分の確認など、精度を上げるための努力を行った。その結果、50% の回答率を達成。そのうち、独自に定めた掲載基準に合致した 185 の産院を掲載した。 医療現場に産む人の声を なぜ、医療の合理性が優先され、産む人の意見が通らないのか。そこには医療機関にそれを受け入れるだけの、労力や時間的な余裕がない、という事情が原因の一つとしてあった。それならば生の声をそのまま届けるのではなく、REBORN が出産経験者の意見を集約した上で読みやすく編集し、医療側に届ければよいのではないか。 意見の募集にウェブサイトを使うことを考え、そのためのシステムを作った。漠然と意見を募集しても編集ができないため、テーマを設定することとした。第 1 回のテーマは「わたしがお産でうれしかったこと、つらかったこと」。今後も継続的に取り組んで行く予定だ。また、それら集まった意見をパンフレットにまとめ、医療シンポジウム等で配布することも考えている。 ゆっくりと、しかし着実に活動を展開するための基盤をつくる 一方で、すべての計画が実現できたわけではなかった。同じ課題で悩みがちな出産・育児グループの情報共有のための「産む人と産む人の情報交換の促進」、財政基盤が脆弱な REBORN の収入源としても期待していた「快適・安全・安心な出産・育児のためのオンラインショップの開設」の 2 つは計画を変更し、助成期間内での取り組みを見送った。 「助成が終わった後も、事業を継続できるかどうか。そのことを意識して事業を進めました」と白井さんは語る。助成を受けることで、通常の年間予算ではとても実現できない事業に取り組むことができた。しかし助成期間が終了したときに、事業の質ができるだけ落ちないよう、常に検討しながら事業を進めた。その結果、上記 2 つの計画は現在の体制では取り組むべきではないと判断し、産院リストの充実化と持続に、より重点を置いた。 産院リストづくりには多大な労力と費用が必要だが、今回と同規模の予算を今後も確保することは容易ではない。単に手間とお金の掛かる従来の手法で調査するのではなく、ウェブサイトからアンケートに回答できるフォームを作成、郵送などの手間をかけずに産院リストを更新していけるようにしたのである。産院が記入に要する時間も短縮でき、回答率の向上を見込むことができる。 マイクロソフトからの助成を受けて、こうした将来に残せる持続的な 「ツール」 を開発し、活動をより円滑に進めるための、様々な基盤を作ることができた。全ての計画を実行したわけではないが、家族にとって一番幸せな出産のスタイルを考えるために、ゆっくりと、しかし着実に活動を展開していく可能性を感じた。 掲載:2005/04/28 文:吉田建治(特定非営利活動法人 日本 NPO センター) 第 2 回マイクロソフト NPO 支援プログラム 助成案件 |
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