
第 2 回マイクロソフト NPO 支援プログラム病児デイケアステーション「フローレンス」設立プロジェクト 特定非営利活動法人 フローレンス(団体概要 ) 働く女性にとって、仕事と子育ての両立は大きな課題である。風邪をひいたり、熱を出した子どもは、通常の保育所では預かってもらうことができない。このような場合に子どもを預かるのが病児保育所であるが、働く女性が増え、病児保育のニーズが高まっているにもかかわらず、まだまだ数は少ない。フローレンスは、独自のモデルによって女性の仕事と子育ての両立を支援しようと取り組んでいる。JR 山手線大崎駅の近くの品川オフィスを訪れ、代表理事を務める駒崎弘樹さんに話を伺った。 学生ベンチャーからNPOへ 駒崎さんは大学在籍時から、元留学生のための相互扶助ネットワーク "ANEP" の創立やベンチャー企業の経営などに携わってきた。IT ベンチャーに関わる中、ビジネスよりも社会に役立つことをしたいと思うようになり、母親がベビーシッターの仕事をしていたこともあって、働く女性の育児を支援しようとフローレンスを立ち上げた。「海外ではビジネス戦略に基づいた事業によって社会問題を解決している。戦略的に、身近な問題を解決しようとNPOを立ち上げた」 と語る。 病児デイケアステーション 病児保育所には 3 つのタイプがある。小児科病院に併設されているもの、通常の保育所に併設されているもの、そして、フローレンスが当初計画していた独立型の病児デイケアステーションである。 なぜ、病児保育が広がらないのか。それは、不採算性にあるという。病児の発生は予測できず預かる子どもの数が一定しない。また病後児(治りかけの子ども)と違い、医師と常時コミュニケーションがとれなければ預かることはできない。医師や看護師などの人件費に加え、施設にかかる費用も大きい。こうした問題をフローレンスは IT 技術や地域の資源を活用して乗り越えようと試みた。フローレンスと小児科病院をビデオ会議システムで結び、フローレンスの看護師と医師が常にコミュニケーションをとれるようにするとともに、病児の増減に対しては、地域の元看護師・保育士ネットワークからリアルタイムで派遣を行い対応しようとした。また、最大の問題である施設については商店街の空き店舗を使用し、国の施設活用商店街活性化事業補助金を初期投資とし、家賃など施設にかかる費用を抑えようと試みた。 地元商店街の協力も取りつけ、行政との協議も重ね開所に向けて準備を進めてきたが、最終的に品川区と調整がつかず、この計画は頓挫した。 「こどもレスキューネット」サービス開始  事業には予想外のリスクがある。「そもそも目的は病児保育問題の解決であって、それは『病児保育所』の建設である必要性はないじゃないか」 と駒崎さんは考えなおし、施設なしでもできる病児保育について試行錯誤し、思いついたのが 「こどもレスキューネット」 である。これは、施設を使用せず、看護師・保育士あるいは子育てのベテランであるアクティブシニアの自宅を病児保育所として使い、地域に埋もれる子育てのエキスパート達のネットワークによって病児保育を行うものである。 利用者は子どもの体調が悪く保育所へ預けられない場合、まず 「こどもレスキューネット本部」 へ連絡する。連絡を受けると 「かけつけレスキュー隊」 と呼ばれるスタッフが自宅まで迎えに行き、子どもをかかりつけの病院に連れて行き、診断を受ける。預けてよいと診断された子どもは 「在宅レスキュー隊」 と呼ばれる在宅保育を専門に行うスタッフが預かる。また、「訪問レスキュー隊」 が子どもをその自宅で預かることもある。移動にはタクシーが利用されることが多くなることから、都内のタクシー会社に協力を依頼し、タクシー代の割引も受けられることになった。 「こどもレスキューネット」 は、2005 年 4 月から中央区と江東区でサービスを開始する。サービス開始に向けて準備も進んでいる。子どもを預かる以上、安全性は欠くことのできない要素だ。レスキュー隊のスタッフはいずれも有償ボランティアであるが、看護師、保育士といった経験を持つ人たちも多い。さらにスタッフには病児保育のための 5 日間の研修と、実際の病児保育所での実習が義務づけられている。 マイクロソフト NPO 支援プログラム申請の当初の目的は、品川でのパイロット事業であったが、計画変更してウェブサイトの構築やレスキュー隊員の研修キット作成などに重点を置くことにした。4 月からのサービス開始に向け、作成した研修キットを用いた研修はすでに始まっている。また、利用内容に関する説明会もすでに行われており多くの人が集まっている。あまり宣伝をしていないにもかかわらず人が集まるのはウェブサイトによるもので、広告費に換算して考えると、このサイト立ち上げの効果は大きかったという。また何よりもフローレンス自体が立ち上げ期であったため、人件費を助成してもらった意味は大きかったと駒崎さんは振り返る。 新たなコミュニティの構築に向けて  「そもそも、病気の子どもにとっては親がいてくれることが大事なのでは」 との疑問に対し 「昔は、子育てがコミュニティの中で行われており、社会の中で子どもを育てていた。仕事と子育ての両立は大事なことであり、病児保育のネガティブなイメージも払拭したい」 と駒崎さんは語る。「こどもレスキューネット」 を通じたコミュニティづくりに向けて、イベントやメーリングリストなどを通して、会員やレスキュー隊員の交流の機会を増やし、利用者側の安心感の向上も図るという。 アメリカでは、ある地域で起こったイノベーションが他の地域に伝播し、社会を大きく変えていくことがある。「こどもレスキューネット」 による新しい病児保育のモデルを各地で展開し、病児保育の問題を解決したいと駒崎さんは語る。「こどもレスキューネット」 による病児保育の問題への対応を通じて、社会が大きく動く日が来るかも知れない。 病児保育のフローレンス 
 掲載:2005/03/25 文:三輪浩章(特定非営利活動法人 日本 NPO センター) 第 2 回マイクロソフト NPO 支援プログラム 助成案件 |
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