第 3 回マイクロソフト NPO 支援プログラム 選後評

新しい市民活動を生みだす情報技術の活用

                                                                                                  選考委員会 委員長 ((株)三菱総合研究所主任研究員)
                                                                                                   山 田 栄 子 

<選考結果>

IT を活用する市民活動の支援をめざす本助成プログラムも、早 3 年目を迎えた。今回の応募総数は、 261 件であり、昨年度の 163 件を大きく上回った。採択数で見ると、昨年度の採択は 7 件、今年度は 7 件である。ただし、今年度は、少しでも多くの有望な団体を支援したいとの思いで、本採択の 7 件に加え、 1 件あたりの支援金額を小さくして、 3 件を奨励賞として支援することにした。それでも、採択率は 4% 弱とかなり厳しく、狭き門であることには相違ない。応募いただいた多くの団体には、ご要望に応じることができず大変申し訳ない思いである。

 

<選考経過>

公募は 5 月 24 日から 7 月 20 日までの 1 ヶ月余。その後約 1 ヶ月かけて予備審査を行った。選考委員 1 名およびマイクロソフトの担当者で全応募案件を読みこみ、本助成プログラムの趣旨に照らして ABC 評価を行い、上位 80 件を本審査の対象に選出した。

8 月には、これらを 5 人の選考委員が 1 件につき 3 人で分担して詳細にチェックしてもらい、各委員から 4 件の推薦と 2 件の準推薦を選出してもらった。推薦または準推薦のあった案件は合計 24 件になり、 8 月 28 日の選考委員会ではこれらを対象として熱心に議論を重ね、助成候補を絞り込んでいった。活動団体における情報技術活用に向けた企画の独自性を中心に、その継続的な活用の現実性や社会的な効果、さらにそのプロジェクトを実施することが応募団体の今後の発展にどう結びついてくるのかといった点も議論された。また、活動団体の事業内容そのものについても、これからの社会に必要な非営利の活動として特色あるものを採択するよう心がけた。

こうして助成候補となった案件については、選考委員や事務局スタッフが現地を訪問し、委員会で出された疑問や課題を踏まえて具体的な企画内容や実現の可能性についてヒヤリングを行い、最終的にはその結果をもとにした委員長決裁という形で、助成対象と助成額を決めていった。 10 月末のことで、応募締め切りから約 3 ヶ月を費やしたことになる。私たちとしては、出来る限りのエネルギーを使って慎重な選考を行ったつもりである。

<助成の特徴>

採択になったプロジェクト 10 件 (奨励賞も含む) は、東京とそれ以外の地域がそれぞれ 5 件である。個々の活動内容としては、障害者に関する活動団体が 4 団体、がん患者および家族のための活動 (1 団体) を含めると、半数が、障害者や患者等を対象とした活動になっている。 IT 活用の効果が大きいものの、営利サービスでは IT 活用が普及・定着しない分野への、非営利団体の活動の広がりが読み取れる。残り半数は、ボランティア情報発信 (1団体)、離れて暮らす老親支援 (1団体) 、在日外国人支援 (1団体) 、環境問題への取り組み (2団体) となっている。

応募に際しては、情報技術の活用によって、@人々の可能性を最大限に引き出す、A社会的課題の解決をめざす、のどちらからのテーマを選択することになっているが、今回の採択案件は、すべて、社会的課題の解決をめざす活動を選んだ案件であった。

助成を受けた団体は 2005 年 1 月から 12 月にかけて本格的に IT 活用事業に取り組むことになるが、マイクロソフトの社員ボランティアによる IT サポートも予定され、情報技術の活用による市民活動の新たな広がりが、大いに期待される。

icon 第 3 回マイクロソフト NPO 支援プログラム 助成対象一覧

 プロジェクト名団体名代表者氏名所在地助成額(万円)

1

視覚障害者のための、言葉の道案内の WEB サイトの制作と普及

(特) ことばの道案内

古矢利夫

東京

115

2

がん患者および家族のための「セカンドオピニオン」情報基盤構築

(特) 救命促進情報センター

中村直行

東京

300

3

北海道季節限定ボランティア・常時募集ボランティア情報の発信サイトの構築

(特) ボラナビ倶楽部

森田麻美子

北海道

300

4

遠距離介護者 & 故郷の老親にとって役立つサービスのクチコミ情報局開設事業

離れて暮らす親のケアを考える会 パオッコ

太田差惠子

東京

257

5

IT による在日ブラジル人子弟のための母国語教材等作成プロジェクト

Grupo ABC
(グルッポ アーベーセー)

和田タニア

神奈川

130

6

兵庫県内作業所の働く願いと行政・企業をつなぐ『作業所しごとデータベース』構築・運営プロジェクト

(特) 兵庫セルプセンター

小川美知子

兵庫

300

7

環境総合サイトの作成

(特) みちのく Eco ・リサイクルネットワーク

菅原啓

宮城

298

 

奨励賞

 プロジェクト名団体名代表者氏名所在地助成額(万円)

1

重度身体障害者ITサポート事業

(特) 介助派遣サービス レイ

原田華代

東京

100

2

横浜トリエンナーレ「横浜アートマップ」

グリーンマップ横浜

高橋晃

神奈川

100

3

C-MUSIC ネットによるチャレンジド(障害者)の音楽活動支援と社会進出の促進

(特) 日本バリアフリー協会

貝谷嘉洋

東京

100

(合計)

2000

icon 選考委員一覧

須藤  修                        東京大学 大学院 情報学環 教授

長友  治                        マイクロソフト株式会社 業務執行役員 (渉外・社会貢献担当)

浜田 忠久                       特定非営利活動法人市民コンピュータコミュニケーション研究会 代表理事

松原  明                        市民活動を支える制度をつくる会 事務局長

山岡 義典                       特定非営利活動法人日本 NPO センター 常務理事、法政大学 教授

○ 山田 栄子                   株式会社三菱総合研究所 主任研究員

                                                                                    (五十音順、敬称略、○は委員長)

icon 各団体の採択理由

1.

プロジェクト名

視覚障害者のための、言葉の道案内の WEB サイトの制作と普及

団体名

(特) ことばの道案内

所在地

東京

助成金額

115 万円

採択理由

各種施設への道案内を言葉で記述してウェブサイトで公開するという本プロジェクトは、国内約 35 万人の視覚障害者に対して外出支援を行ない、視覚障害者の社会参加のきっかけを与えるということで社会的意義が大きい。さらに、本プロジェクトは健常者にとっても有用であり、ユニバーサル・デザイン、ユニバーサル・サービスを実現するものである。障害者の立場に立った文章による道案内の説明の表現規定を定め、表現のわかりやすさや標準化の研究も行なうなど、活動の社会的意義は高く評価できる。

団体 URL

http://www.kotonavi.jp/ Leave-ms

2.

プロジェクト名

がん患者および家族のための「セカンドオピニオン」情報基盤構築

団体名

(特)救命促進情報センター

所在地

東京

助成金額

300 万円

採択理由

(特)救命促進情報センターは、これまで主として代替補完治療に関する適切な情報流通、セカンドオピニオンの促進を目的に精力的に活動を展開した実績を有する。今回のプロジェクトでは、営利を目的としない信頼できる中間組織 (NPO) として、医療機関・医療者・研究者・行政・産業と共に医療関係情報を収集・精査・選択した上でデータ化し「セカンドオピニオン」情報基盤を構築しようとするもので、これからの高齢化社会を考えるきわめて意義の高いプロジェクトである。

団体 URL

http://www.qmei.jp/ Leave-ms

3.

プロジェクト名

北海道季節限定ボランティア・常時募集ボランティア情報の発信サイトの構築

団体名

(特) ボラナビ倶楽部

所在地

北海道

助成金額

300 万円

採択理由

「月刊ボラナビ」の発行で知られるボラナビ倶楽部は、道内の NPO やボランティア団体を広く市民に結び付けるための活動を、これまでも展開してきた。今回のプロジェクトは、季節を限定して募集するボランティアの情報を全国に向けて発信するサイトを構築し、併せて道内向けの常時募集ボランティアの情報も発信しようとするものである。このうち前者は、全国的にも新しい試みとして注目される。夏休みや冬休みに北海道で滞在型のボランティアをしたいと考える学生たちは増えているように思うが、適切な情報源は必ずしも十分ではない。この試みが成功すれば、ボランティアの概念やそのあり方そのものへの影響も大きい。そのようなボランティアの参加を前提としたさまざまな試みが展開され、農業や観光事業に新しい動きがでてくるかもしれない。全国的にも先駆的なモデル事業になる可能性がある。

団体 URL

http://www.npohokkaido.jp/volunavi/ Leave-ms

4.

プロジェクト名

遠距離介護者&故郷の老親にとって役立つサービスのクチコミ情報局開設事業

団体名

離れて暮らす親のケアを考える会 パオッコ

所在地

東京

助成金額

257 万円

採択理由

高齢者のみ世帯、あるいは高齢者単身世帯が増えている昨今、離れて暮らす親の生活を支えるために、「クチコミ情報局」を開設するこの団体の試みは、日本の現状において、重要な社会課題と言える。しかしながら、このテーマは、ニーズに合った情報を、常に鮮度と信頼性を保ちつつ充実しておくか、という課題をどのような体制でクリアしていけるかがポイントである。ニーズはあるものの、なかなか成功しづらいテーマだけに、情報技術を効果的に活用するとともに、信頼できる「人」のネットワークを使って、数年後に大きな成果をあげる良い事例に成長することを期待している。

団体 URL

http://www.paokko.org/ Leave-ms

5.

プロジェクト名

ITによる在日ブラジル人子弟のための母国語教材等作成プロジェクト

団体名

Grupo ABC (グルッポ アーベーセー)

所在地

東京

助成金額

130 万円

採択理由

今回のプロジェクトは、日本という社会環境の中で母国語とともに母国文化も理解できるよう、その教材を作成し、サイトによって発信しようとするものである。特にブラジル人学校に行っていない保育園や小学校の児童生徒を対象としているところに特徴がある。これまでの現場で築かれてきた経験と人脈を土台に、その成果を広く全国の在日ブラジル人の子どもたちに分かち合うという点で意義深い。教材作成は、ブラジル国の教員免許を持った人など、母国語教育に関心の高い人たちが中心になって行うが、日本の大学でポルトガル語を学ぶ学生や留学生、帰国子女なども協力する。それぞれの専門をもつ関係者が協力して行うプロジェクトとして、その過程でのネットワーキングの広がりにも期待したい。よく練られた国際性の高いプロジェクトとして推薦する。

団体 URL

http://www5d.biglobe.ne.jp/~grupoabc/ Leave-ms

6.

プロジェクト名

兵庫県内作業所の働く願いと行政・企業をつなぐ『作業所しごとデータベース』構築・運営プロジェクト

団体名

(特) 兵庫セルプセンター

所在地

兵庫

助成金額

300 万円

採択理由

小規模授産施設や小規模作業所の活動にとって、共同して製品の販路を確立していくということは、長年大きな課題である。このプロジェクトは、データベースを作成し、企業や自治体などに兵庫県内の作業所が対応できる仕事について情報発信をし、マッチングを進めていこうというもので、 IT 技術を使うと言っても、地道な調査や販路開拓の作業が求められる事業でもある。兵庫セルプセンターは、すでにここ数年の活動実績もあり、共同受注などの仕組みや一定の販売先に関する情報も整えてきている。また、県内な作業所に関するデータベースも大枠できており、今回はそれを発展させる形で、より受注に必要なデータを調査し発信していくという提案であり、成果が一定見込めると期待される。この事業がモデルとなれば、全国的な波及効果も大きいと考え、推薦した。

団体 URL

http://www.hyogo-selp.jp/center/ Leave-ms

7.

プロジェクト名

環境総合サイトの作成

団体名

(特) みちのく Eco ・リサイクルネットワーク

所在地

宮城

助成金額

298 万円

採択理由

環境 NPO 団体は数多くあるが、横の連携が少ないという認識から、環境関連事業のエキスパートが自ら立ち上げた NPO の運動で、東北地域での連携を目指したいという熱意と行動力が感じられる。今や広く普及しているカメラ付き携帯電話で市民からの写真投稿により「きれいなスポット」「きたないスポット」の写真収集をしたり、仙台七夕祭りなど地域のイベントでごみ分別作業に協力してごみ減量の啓発活動を実施したり地域に密着した活動を実施しながら、東北地域の環境保護のための情報共有をめざしたポータルサイトを運営する本プロジェクトは、分かりやすい形で住民や行政に対する影響力が生まれる可能性に富み、大いに期待したい。

奨励賞

1.

プロジェクト名

重度身体障害者ITサポート事業

団体名

(特) 介助派遣サービス レイ

所在地

東京

助成金額

100 万円

採択理由

重度障害者に対する IT サポートや IT スキルトレーニングは、ほとんど技術としては確立されていない分野である。本提案事業は、介助派遣サービス レイが、培ってきたノウハウをより一般化し、より多くの重度障害者に向けたサポート技術を生み出していくというモデル性の強い事業であり、なかなか成果を出すことも一朝一夕にいかない難しい事業でもある。しかし、重度障害者の可能性を広げていこうという試みは、マイクロソフトの 「Realizing Potential」 というミッションに合致した提案であると考えた。チャレンジへの応援と、モデルとしての今後の発展に期待して推薦した。

団体 URL

http://homepage3.nifty.com/npo-lei/ Leave-ms

2.

プロジェクト名

横浜トリエンナーレ「横浜アートマップ」

団体名

グリーンマップ横浜

所在地

神奈川

助成金額

100 万円

採択理由

今回応募された課題は、「マップシステム」を「アートマップ」としてカスタマイズし、市内のアート環境の視覚化、データベース化を行ない、その活動を通して、アーティストと、市民 (団体)、企業、行政機関などとの相互交流が図れるポータル機能により社会的恊働の仕組みを作り、創造的な街づくりを企図するものである。このような活動は、都市のアメニティの観点からも、さらには地域コミュニティの自治の観点からも期待すべきプロジェクトである。

団体 URL

http://www.greenmap-yokohama.net/ Leave-ms

3.

プロジェクト名

C-MUSIC ネットによるチャレンジド(障害者)の音楽活動支援と社会進出の促進

団体名

(特) 日本バリアフリー協会

所在地

東京

助成金額

100 万円

採択理由

このプロジェクトは、音楽を演奏する障害者の社会参加の機会づくり、フォローアップのために、ストリーミングおよび Web を効果的に活用している。移動が困難である障害者、また賛同するプロの音楽家にとっても参加しやすく、より多くの方々の目に触れることが期待される。障害者の社会進出が大きく遅れていると言われる日本において、音楽という普遍的なメディアで多くの方に夢を与えるプロジェクトである。

団体 URL

http://www.npojba.org/ Leave-ms

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