Microsoft NPO 支援プログラム (2007 年)

選後評 : 新しい市民活動を創出する情報技術の活用

                                                                                                   選考委員会 委員長 ((株) 三菱総合研究所主任研究員)
                                                                                                   山田 栄子 

<選考結果>

IT の活用により、市民活動の活性化をめざす本助成プログラムは、5 年目を迎えた。今回より、(財) 日本国際交流センターがマイクロソフト株式会社と共に本プログラム事務局を担うこととなった。今回の応募総数は 187 件であった。昨年の 296 件より大幅に減少したが、これは、本プログラムの趣旨をより明確に伝えるために、今回より応募要項とは別に「応募にあたって注意事項、応募用紙記入の手引き」を作成したことも影響したのではと思われる。例年に比べ、本プログラムの趣旨により合致した応募プロジェクトが増えたとの印象を受けた。採択数で見ると、昨年度は 7 件、今年度は 6 件である。採択率は 3% と依然厳しく、応募いただいた多くの団体には、ご要望に応じることができず大変申し訳ない思いである。

 

<選考経過>

公募は 2007 年 1 月 1 日から 2 月 20 日までの 2 か月弱。締め切り後、約 1 か月かけて予備審査を行った。選考委員 1 名およびマイクロソフト株式会社、(財) 日本国際交流センターの担当者で全応募案件を読みこみ、本助成プログラムの趣旨に照らして ABC 評価を行い、上位 52 件を本審査の対象に選出した。
3 月には、これらを 6 人の選考委員が審査し、各委員から 4 件の推薦と 2 件の準推薦を選出してもらった。推薦または準推薦のあった案件は合計 19 件になり、4 月 7 日の選考委員会ではこれらを対象として熱心に議論を重ね、助成候補を絞り込んでいった。応募団体における、情報技術活用に向けた企画の独自性、先駆性、事業の社会的な意義を中心に、IT の継続的な活用の現実性や社会的な効果、さらにそのプロジェクトを実施することが応募団体の今後の発展にどう結びついてくるのかといった点が議論された。また、応募団体の事業内容そのものについても、これからの社会に必要な非営利の活動として特色あるものを採択するよう心がけた。また、今回より継続助成の検討も行っており、事業が生み出す中、長期的な成果についても議論した。
こうして助成候補となった案件については、選考委員や事務局スタッフが現地を訪問し、委員会で出された疑問や課題を踏まえて具体的な企画内容や実現の可能性についてインタビューを行い、最終的にはその結果をもとにした委員長決裁という形で、助成対象と助成額を決定した。最終決定は5月末のことで、応募締め切りから約 3 か月を費やしたことになる。私たちとしては、出来る限りのエネルギーを使って慎重な選考を行ったつもりである。

<助成の特徴>

採択になったプロジェクト 6 件は、東京が 4 件、それ以外の地域が 2 件 (愛知と鹿児島) である。毎年、地方での活動団体をなるべく多く採択するよう心がけているが、今年は、地方が半数以下という結果であった。個々の活動内容としては、環境分野に関連した活動が 2 件、保健、医療分野が 2 件、教育が 1 件、ボランティア支援が 1 件である。
特に、今年は、団体の活動と、情報技術の活用がともに新鮮で、社会的に重要なものを重点的に採択した。たとえば、環境分野の案件は、環境再生医やダイバーの活動ログを蓄積し、情報発信することで環境再生を促進するものである。一方医療分野の案件は、今まで構築しづらかったアレルギー情報に関する患者と企業のダイレクトネットワーク構築と、企業との協働による HIV 感染者の就労を支援する情報ネットワーク構築を採択した。教育分野では、文化、言語、距離の壁を超えて交流することを目的として開発された「絵文字コミュニケーションツール」の普及、ボランティア活動支援については、今までなかなか成功していないマッチングシステムに関して双方向性を重視した意欲的なトライアルを進める案件を採択した。
助成を受けた団体は 2007 年 7 月から 2008 年 6 月にかけて本格的に IT 活用事業に取り組むことになるが、マイクロソフトの社員ボランティアによる IT サポートも予定され、情報技術の活用による市民活動の新たな広がりが、大いに期待される。

 

icon 各団体の採択理由

1.

プロジェクト名

ビデオブログを活用した社会啓発、環境教育の促進

団体名

(特)自然環境復元協会

所在地

東京

助成金額

300 万円

採択理由

全国各地における市民、NPO による自然環境の復元への取り組みをビデオブログとして配信し、情報ネットワークを確立する活動。映像、情報の共有を通して相互のネットワーク化も計る。また、市民へ広く環境への知識を伝えるために、市民の活動を題材とした環境教育コンテンツの制作、配信も行う。日本全国に 600 名以上の会員と約 2000 名の環境再生医を持つ同団体のネットワークを活かし、バラエティーに富む活動が配信され、各地で地域社会、環境の再生への取り組みを考える一助となることを期待する。

団体 URL

http://www.narec.or.jp/ Leave-ms

2.

プロジェクト名

双方向のボランティア人材マッチングシステム事業

団体名

(特) ボラみみより情報局

所在地

愛知

助成金額

300 万円

採択理由

ボランティアをしたい人、ボランティアを必要とする NPO の双方向からのアプローチが可能なボランティア登録システムを構築する。ボランティア人口が増加する中、最近では、自分自身が持つスキルや経験を生かしたボランティア活動を希望する人が多くいる。しかし、現状、NPO からは広範囲で一方的なボランティア募集が多く、ボランティアサイト等には多量な情報が蓄積され、特にボランティア初心者が適格な活動や団体を探し出すことは容易ではない。長年望まれてきた、両者が満足する円滑なボランティアマッチングの実現に向けて、大きく前進することを期待する。IT の利便性とコンシェルジュ的な人的リソースのバランスをうまくとり、NPO にとってもボランティアにとっても有益なシステムを開発することが鍵となる。

団体 URL

http://www.boramimi.com/ Leave-ms

3.

プロジェクト名

HIV 感染者、企業のための就労に関する協働ポータルサイト構築

団体名

(社福) はばたき福祉事業団

所在地

東京

助成金額

300 万円

採択理由

HIV 感染者の雇用、就労に関する情報を提供するポータルサイトを構築する活動。感染者、企業に対し、就労ガイドラインをはじめとした雇用、就労に関する制度、情報の提供および活用への支援をとおして、就労環境の整備、改善を目指す。25−34 歳が我が国における HIV 感染者の圧倒的多数を占める現状を鑑みても、緊急性の高い社会的課題である。長年にわたり感染者への支援、薬害問題に携わってきた当事者団体としてのネットワーク、実績を活かした取り組みになることを期待する。また、IT を活用することにより、幅広い情報発信を可能にすると共に、感染者、企業からの情報発信、提供など、自主的な取り組みを促す情報プラットフォームとなることを期待する。

団体 URL

http://www.habatakifukushi.jp/ Leave-ms

4.

プロジェクト名

世界の子ども達を繋ぐ ICT 同期アクテビィティコンテンツの開発

団体名

(特)パンゲア

所在地

東京

助成金額

300 万円

採択理由

世界の子どもたちが、文化、言語、距離の壁を超えて交流することを目的として開発された「絵文字コミュニケーションツール」のコンテンツ拡張のための活動。偏見、誤解のない多文化共生社会を目指す上で、幼少期から他国の子どもと交流することは重要である。このツールは、自国にいながら他国との交流を実現し、また、実際に海外へ行かれない子供たちにも交流の機会を提供する。専門的な知識をもとに、IT を最大限に活用したユニークな活動は、子ども達の無限なる可能性を広げると言える。また、今後、多様なシーンで社会的課題解決のツールとして活用されることを期待する。

団体 URL

http://www.pangaean.org/ Leave-ms

5.

プロジェクト名

ダイバーログの活用によるサンゴ礁再生プロジェクト

団体名

(特) 与論情報化グループ e-○K

所在地

鹿児島

助成金額

300 万円

採択理由

ダイバーが潜る毎に記録している「ダイバーログ」に着目し、そのデータを蓄積し、サンゴ礁再生に活用するシステムを開発する。温暖化による海水温上昇により、近年、与論島を囲むサンゴ礁は壊滅的なダメージを受け、その回復のスピードも思わしくない。ダメージの原因、再生方法の調査は、データ不足により進んでいないのが実状だが、観光業が主な産業である与論島にとって、その観光源であるサンゴ礁を保全、再生することは緊急な課題である。ダイバーが使い易く、適格なデータを収集するシステムを構築し、サンゴ礁保全、再生において、先駆的な活動になることを期待する。

団体 URL

http://www.yoron.tv/ Leave-ms

6.

プロジェクト名

食物アレルギー危機管理情報ネットワークの構築

団体名

(特) アトピッ子地球の子ネットワーク

所在地

東京

助成金額

300 万円

採択理由

アレルギー患者と企業が協力し、食物アレルギーに関する危機管理情報ネットワークシステムを構築する活動。患者と企業を直接つなぎ、必要な情報が的確に提供される仕組みを構築する。食品衛生法によるアレルギー表示義務化後も、誤食による発症事故は発生し続けており、社会的意義、緊急性の高い活動と言える。長年にわたりアトピー患者支援を行ってきたネットワークと実績を活かし、有効かつ的確な情報が患者に提供されるシステムが構築されることが期待できる。また、企業と患者間の情報交換、共有が促進されることにより、アレルギー表示方法の改善などにつながることも期待したい。

団体 URL

http://www.atopicco.org/ Leave-ms


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