エグゼクティブ座談会
2006 年 7 月 7 日 札幌市役所 市長会議室

IT 人材の育成が地域経済を牽引する

札幌市 上田市長、福井経済局長 / マイクロソフト ヒューストン、鈴木、小川

座談会

上田市長

どうも、ようこそおいでいただきました。

ヒューストン

こちらこそ、お忙しいところありがとうございます。

上田市長

札幌市は、IT 技術のスキルアップと産業の成長をはかるうえで、マイクロソフト社のご協力なしでは考えられないほどにたいへんお世話になっており、あらためて感謝申しあげます。

ヒューストン

札幌市で実施されている事業に携わることができ、また成功してきていることを嬉しく思っています。

上田市長

札幌市は、早い段階から IT 技術の集積をはかって将来の産業の発展を考えていこうと取り組んでまいりましたテクノパークが 20 年目をむかえ、この区切りのいいタイミングでこれまでに作り上げてきたものをベースにさらに発展させていきたいと考えております。
ここで新たなご協力をいただけることをたいへん嬉しく思っております。

ヒューストン

私は 2 日前から札幌にきていますが、この街で人々がテクノパークの話をし、それがサッポロバレーと呼ばれていることも聞こえてきました。テクノパークは成功しているのだなという印象を受けました。

札幌市の IT 産業で、10 年後に企業数 600 社、従業員数 3 万人、売上高 1 兆円をめざす !

上田市長

テクノパークをはじめとして、働く人の数や生産量を考えましても、IT 産業は札幌の産業の中では独立した科目としてさらに発展させるようとりくむべきものになっています。
ですが、現在の構造としては、まだ大手のソフトウェア会社から下請けをするという形が多く、それを(大きな開発案件を上流工程から)直接受注できるようにするためにより高度な IT 技術を発展させていく、技術者のスキルをしっかり向上させていくことが今後の課題だと思っています。
そのためにマイクロソフト社のご協力は不可欠なものになっています。地方がこのような援助を直接得られる機会を提供していただいていることに感謝して、有効に活用させていただこうと思っています。
テクノパーク 20 周年をむかえたいま、札幌市は次の目標として、10 年後に企業数 600 社、従業員数 3 万人、売上高 1 兆円産業をめざしており、また、これはけして無理な計算ではないと考えております。

ヒューストン

たいへん興味深い話です。なぜなら、マイクロソフト日本法人も今年で 20 周年をむかえました。長くやっている印象があるかと思いますが実際はまだ日本にきて 20 年しかたっていません。テクノパークの歩みと時を同じくしてマイクロソフト日本法人も歩みを進めてきたのです。
世界的に見て、IT という観点からアメリカと日本が重要な国だと考えてきました。そして日本の多くの企業や技術がこの 20 年間、IT 技術の発展に大きく貢献してきました。

上田市長

マイクロソフト社の技術はいまや世界の財産となっていると理解していますが、その中で、日本で事業展開をされるにあたって、この 20 年の間、ご苦労されたことがあればおしえていただけますか。

ヒューストン

当初の話にさかのぼりますが、ソフトウェアはアメリカで開発されましたから、ローカライズにはたいへんな労力を必要とし 9 ヶ月から 1 年という時間がかかっていました。日本の厳しい品質基準に対応することにも労力を要しました。
しかし今ではオリジナルをアメリカで開発してから日本にもってくるのではなく、初めからグローバルな観点から製品を開発しています。日本では実に 400 名がそのために働いています。

上田市長

「日本の品質基準」というお話がありましたが、具体的にはどういうようなことなのでしょうか。

MS参加メンバー
ヒューストン

私たちが日本についてわかったことは、「100 ひく 1 は 0」だということです。日本では100の正しいものを提供したとしても、たった 1 つミスがあればそれは0の評価になってしまう。これはもう世界中で既に知られていることですね。この日本の品質基準に対応すべく厳しいテスティングを行っています。

「Plan-J」構想で日本市場への投資を拡大

ヒューストン

そしてまだ日本にはもっと多くのことをやっていかなければならないと考えています。
たとえば昨年 1 年進めてまいりましたが、「Plan-J」という具体的な構想をもって、日本市場をさらに成長させるために日本への投資を拡大しています。
具体的には、札幌市をはじめとする多くの自治体・大学などの教育機関・パートナー企業の方々と協業して地域の経済を活性化していくというのが、この「Plan-J」の構想です。

地場のパートナーと協業して、利益をきっちり地方に落としていく仕組みづくり

小川

マイクロソフトは今後も日本への投資、地域、大学への投資を拡大していく予定でおりますが、マイクロソフトが一社でできることは限られております。
これまでも産学連携のプログラム、高度 IT 人材育成事業などをご協力いただきながらやってまいりましたけれども、そのようにして、地方の自治体、地域団体、地場のパートナーの皆様方と一緒になりながら、いろいろな発展や利益をきっちり地方に落としていきたい。けして大都市圏だけではなく、産業の発展やコマーシャルなエコシステムを地域の中でやっていきたいと考えています。
いままで「営業所」としておりました札幌拠点ですが、今後は「支店」に名前を変えまして、もっともっと地域の皆様と密着していろいろな活動していき、売り上げだけでなく地域との連携を深めることをミッションとしてやっていきたいと思っております。
それにともなって札幌支店を、セミナールームの設けられる広い場所に移転予定です。セミナールームは地場の皆様が集えるような場所にし、いろいろなコミュニティなども作っていきたいと考えております。

上田市長

非常にありがたく思います。営業の対象としての札幌から、地域の中の産業の仲間として、また先導的な役割をしてくださるチームリーダーとしてお力をいただき、ありがとうございます。

札幌市参加メンバー

技術者のレベルをひきあげ、高度な開発案件を一括受注できる企業体制に

福井局長

札幌市ではさきほど話にあった「高度情報通信育成活用事業」と同時に「地域提案型雇用創造促進事業」のふたつのプロジェクトを進めています。そこでマイクロソフト社には重要な支援企業としてご協力いただき本当に感謝しております。
「高度情報通信人材育成活用事業」に関しましては、先ほど市長からお話がありましたように、札幌をはじめとした道内の IT 企業の受注が下請け中心であり、国内他都市やアジア各国との価格競争による受注単価の下落をもたらす厳しい現状をどうにかしようというところからはじまっています。
この問題を解決するためには、開発の上流工程を担える高度な技術力をもつ技術者が必要だろうと、この人材を育成することが第 1 だと考えたことから、この事業を始めたのです。
昨年度は、まず札幌市内の IT 企業からレベルの高い人材を集めましてコミュニティを作り、そして高度なスキルをもつ「IT アーキテクト」の育成カリキュラム策定に着手しました。そのコミュニティの中で、札幌の技術者には何が足りないのか、これから何が必要なのだろうかを話し合いました。今年度は、今月の末からそのカリキュラムを使用しまして研修をスタートさせていきます。

ヒューストン

日本には高度な教育を受けた潜在的に優秀な人材、また優秀な技術者が数多くいます。こうした人材を支援し育てることはとても重要なことだと考えております。今後も IT 人材育成は支援を続けていきたいと思います。

上田市長

おっしゃるように札幌にも優位な人材がたくさんおります。しかし残念ながら今の産業形態の中でその優位な人材を札幌にひきとめておくだけの産業がまだまだ十分ではありません。いま進めております事業はそうした技術者を札幌の企業にとどめていくひとつの手段となりえると考えております。

情報を集積して全国へむけて発信する基地、「マイクロソフトイノベーションセンター」

鈴木

ヒューストンが申しましたようにソフトウェア技術者を日本の中でより増やしていく、またはスキルをアップさせていく、技術者の価値を高めていくことはマイクロソフトの非常に重要なミッションだと考えております。
その一環としまして、今後の支援体制のひとつとして、「マイクロソフト イノベーション センター」というものを立ち上げる構想をもっております。
マイクロソフトは、長年、技術者の教育支援、技術の開発に大きな投資をしてまいりましたが、そうした中で日本でもいくつかの研究機構を保有しています。
たとえば東京都の調布技術センターにはさきほど話しがありましたように 400 名の技術者がおり日本においてグローバルな取り組みをしています。また、主要大学陣と連携しての産学連携研究機構や、パートナー企業との数多くの共同開発プロジェクト、これらの情報を集約した技術情報発信基地「マイクロソフト イノベーション センター」を調布に設立する予定です。
これは、各種共同研究の成果やマイクロソフトの最新技術、製品づくりのノウハウを集約し、全国に向けての情報発信の基地と位置づけまして、さまざまな形でITエンジニアの価値向上支援を進めてまいりたいと思っています。それによって地域の振興や、人材育成、ベンチャーインキュベーションなど、さまざまな形で日本の産業の競争力を高めるということができるのではないかと考えております。

福井局長

そうやって情報が集約され、地域での有効活用が可能になるというのは、われわれにとって非常に喜ばしいことです。札幌市のテクノパークにも、中核施設となるエレクトロニクスセンターがあります。是非、調布のイノベーションセンターと連携し、地場企業の活性化を図る機能強化についても検討していきたいと思います。

ヒューストン

さまざまな変化がいま IT の中でみられています。過去の 20 年間に比べてこれからの 20 年間はもっとエキサイティングな非常に大きな変化のある 20 年間になると思います。この変化をうまく活用することができれば、札幌もますます発展していくのではないかと思います。

上田市長

ありがとうございます。今後ともよろしくお願いします。
本日は本当にありがとうございました。

ヒューストン

こちらこそありがとうございました。

座談会参加者

左から福井局長、上田市長、ヒューストン、鈴木、小川

札幌市が再び挑む新たな IT 産業革新の序章

札幌市はこれまで内需型産業を主に発展してきましたが人口増加の鈍化などにともない、今後は自立型経済を確立させるために外需型産業への移行を必要とする転換期をむかえています。
通称サッポロバレーとも呼ばれる国内初の IT 集積地「札幌テクノパーク」が形成されて今年で20周年をむかえます。札幌市は、これを機に IT サービス産業の振興をさらに具体的に推し進める事業を開始し、それによって道外からの案件を呼び込む外需型ビジネスへと発展させていく構想をたてています。

企業情報センターを介した双方によるビジネスマッチング

高品質のビジネス案件を呼び込む 「高度情報通信人材育成」事業

開発案件を上流工程から一括で受注できるようになることが道外からの開発案件を呼び込む重要な鍵となる、それには高度な情報通信のスキルをもつ人材を地場の企業内に抱えることが肝心と考え、「高度情報通信人材育成事業」が計画されました。
具体的な活動として、昨年度は、札幌市の賛同企業から精鋭技術者 17 名でコミュニティを構築し、教育カリキュラムを策定しました。今年度は、市内で活躍中の技術者を対象に、このカリキュラムを用いたトレーニングを開始します。また、これによって育成された人材や第一線で活躍中の技術者によるコミュニティを構成し、そのスキルレベルをより実践的なものにしていきます。
同時に、札幌標準のスキルアセスメントを策定し、道外の企業に対して札幌の企業の技術力を可視化して開発案件の受注に結びつけるという包括的な仕組みづくりを進めています。

高度情報通信技術者が不足している道内IT企業
札幌テクノパーク専門学校 赤羽幸雄 学校長
プロがプロを育てるコミュニティの形成

人材育成は手段であり最終目標は札幌市の雇用や業績をあげることです。 そのためには実践的で高度な IT スキルをもつ人材を育成することが必要ですが、学校教育ではそのレベルまでは到達できません。プロが人材育成のための「コミュニティ」を形成することにはとても大きな意味があります。プロはプロにしか育てられないのです。
高度情報通信人材の育成事業は長期的に実施してこそ真の成果を実らせることができる長期プランであり、2 年後に設立する IT 専門職大学が継承し札幌市に根付かせていく計画です。

「地域提案型雇用創造促進事業」

ビジネススキルや経験がなく就職が困難、または他業種から IT スキルを身につけてキャリアアップ手段として IT 企業へ転職したい市民を対象に、IT 教育から就職までをサポートする事業です。
一定水準の IT トレーニングを実施し、参画企業へ就職を前提とした派遣就労を斡旋し、その後の正式採用への道が開ける仕組を構築しています。
IT トレーニングだけにとどまらず、具体的なキャリアパスを提案したプランであることがこの事業の特色です。

潟pソナテック 札幌支店 西垣友道 支店長
個人にも企業にも有益な人材育成と雇用のスキーム

実はビジネスの局面において、技術の習得よりも難しいのはヒューマンスキルなのです。そういう意味で潜在的に能力が高く職務経験や技術スキルだけが不足しているという方々がいます。そういった方々に IT の基礎技術トレーニングを施し、個々の企業のニーズを把握した上で適切な人材をご紹介しています。
正式採用の前に派遣就労の期間を設けることで、個人と企業がお互い安心してトライすることができ、結果的には高い確率で正式採用にいたっています。

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参加者プロフィール

上田 文雄

(うえだ ふみお)

札幌市長

上田 文雄
1948 年北海道幕別町生まれ。中央大学法学部卒業後、78 年札幌弁護士会に登録。94 年札幌弁護士会副会長。96 年札幌弁護士会消費者保護委員会委員長。97 年札幌弁護士会子どもの権利委員会委員長。99 年札幌弁護士会公害対策環境保全委員会委員長。同年、特定非営利活動法人北海道 NPO サポートセンター理事長。01 年日本弁護士連合会人権擁護委員会副委員長。03 年札幌市長再選挙で初当選。
著書に「孤立する日本の原子力政策」「市民のための教育」「問診義務」「医療はかく裁かれた」など。趣味、音楽を楽しむこと、人を楽しませること。

福井 知克

(ふくい ともかつ)

札幌市経済局長

福井 知克
1951 年札幌生まれ。北海道大学経済学部経営学科卒業。73 年札幌市採用。94 年総務局職員部職員研修所主幹。96 年市民局市民生活部勤労市民課長。99 年下水道局総務部総務課長。01 年交通局自動車部長。02 年交通局事業管理

ダレン ヒューストン

(Darren Huston)

マイクロソフト株式会社
代表執行役 社長 兼
マイクロソフト コーポレーション
コーポレートバイスプレジデント (当時)

ダレン ヒューストン
1966 年生まれ。カナダのトレント大学より経済学の学士号を、ブリティッシュコロンビア大学より経済学の修士号を、ハーバード大学より MBA を取得。イタリア トリエステの United World College を卒業。
カナダ政府の経済担当顧問として、92 年の地球サミット関連の交渉や気候変動や種の多様性についての初の国際協約の制定に貢献。McKinsey & Company の役員として、様々な業界のビジネスリーダー達との協業のもとに、同社のマーケティング手法や戦略の展開を推進。Starbucks Coffee Company のシニア バイスプレジデントとして企業買収、業務提携、新製品開発において主導的な役割を果たし、Starbuck Card や Wi-Fi を全世界の Starbucks の店舗に導入するプロジェクトを成功に導いた。03 年 9 月に北米地域スモール アンド ミッドマーケット ソリューションズ & パートナーグループ担当コーポレートバイスプレジデントとしてマイクロソフトに入社。05 年マイクロソフト株式会社 代表執行役 社長に就任。

鈴木 協一郎

(すずき きょういちろう)

マイクロソフト株式会社
執行役
デベロッパー&プラットフォーム統括本部長 (当時)

鈴木 協一郎
1965 年横浜市生まれ。北海道大学工学部卒業。89 年に建設業界よりIT業界に転身。東京とサンフランシスコを拠点に Synon、CA、MetaTV 、等スタートアップベンチャーから上場企業に渡る様々なソフトウェアメーカーにて開発ツール、プラットフォーム、マルチメディア製品の研究開発とビジネス展開に携わる。同時に、ビジネスオブジェクト推進協議会 (CBOP) 設立、オブジェクトマネジメントグループ (OMG) における標準化活動、シリコンバレー日本人起業家支援活動 (SVJEN) 等、業界活動にも参画。
04年帰国を機にマイクロソフト株式会社入社。現在、執行役デベロッパー & プラットフォーム統括本部長として日本の全てのソフトウェア技術者へ向けた開発支援、最新プラットフォーム技術の訴求、およびVisual Studioに代表されるツール製品事業を指揮統括している。
趣味:アウトドア、アメリカンフットボール、豆腐作り。

小川 秀人

(おがわ ひでひと)

マイクロソフト株式会社
業務執行役員
東日本営業本部長 (当時)

小川 秀人
1963 年東京生まれ。明治大学商学部卒業。85 年株式会社岡村製作所入社。90 年マイクロソフト株式会社入社、第一営業部に配属 全国の販売店及び流通会社を担当。95 年営業統括部第一営業部部長。96 デスクトップ製品統括部 Office マーケティンググループ部長。97 年チャネル戦略企画部部長。97 年流通営業部兼チャネル戦略企画部部長。98 年名古屋営業所所長。02 年東日本営業本部長 兼 関東甲信越営業所長 兼 中部北陸営業所長。02 年執行役員 東日本営業本部長 兼 関東甲信越営業所長。04 年 業務執行役員 東日本営業本部長。06 業務執行役員 エリアビジネス統括本部長。

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「夢工房 〜夢をかなえる人々へ〜」第1回 IT都市・札幌を目指して

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