DV 被害者の苦しみ 近年になり日本でも、ドメスティックバイオレンスが「DV」という言葉の認知と共に、社会問題として注目を集め始めました。内閣府の調査によると、DV 被害女性は 1999 年以降大幅に増加しています。2005 年のデータでは、女性の約 3 人に 1 人が夫から暴力を受けています。 DV 問題をとりまく現状![]() ITVP のコーディネーターである TVAC の河村さん 内閣府によれば、20 組に 1 組の夫婦で、命に危険がおよぶ暴力に妻がさらされているというショッキングな調査結果が出ています (2000 年度) 。日本では長い間家庭内の問題だとされていましたが、2001 年に制定された DV 防止法 (※ 1) によって初めて犯罪とみなされるようになりました。 NPO そして他社との協働![]() マイクロソフト株式会社 TVAC は DV 被害者のために、小規模なパソコン教室を、彼女たちの安全が確保できる場所に非公開で設けようと考えていました。DV 防止法の策定にも関わった TVAC 所長の山崎美貴子さんは、パソコン講座の立ち上げに至るまでの経緯をこう話します。「DV 被害者の保護のために活動しているシェルターなどの NPO は、企画の段階で既に、講座を開設するための資金や、講座でインストラクターを務めてくれる優秀なボランティアを集められるだけの力が不足している、という問題に直面していました。NPO、ボランティア組織、そして企業との間で、新しいネットワークを組織化しなくてはならないことがわかったのです。ちょうど時を同じくして、私のところにマイクロソフトの社会貢献担当者が連絡してきました。DV 被害者の支援プログラムに非常に強い関心があると言うのです」 ![]() 東京ボランティア・ 2002 年 4 月、ボランティアの募集が、メディアに取り上げられ、マイクロソフトと日本ヒューレット・パッカードのウェブサイトにも掲載されました。ITVP が公式に発足したのです。山崎所長曰く、「DV 被害者支援のような日本ではまだ新しく、かつ大きな社会問題への取り組みが、ボランティアと NPO、企業の協働で行われることは、大きな注目を集めました」被害者の女性たちの男性に対する恐怖心が根強いため、募集するインストラクターは女性に限ることにしました。男性は後方支援のエンジニアとして募集しました。結果、インストラクターとして 238 名の女性、LAN システム構築のためのエンジニアには男性を含む 41 名の応募を得ました。そのうちの多くがマイクロソフトと日本ヒューレット・パッカードの社員たちでした。 ボランティアたちの奮闘 ITVP のボランティアは、それまで触れる機会のなかった DV 問題について理解を深めることを含め、この講座のための特別なトレーニングを 3 か月 (2 時間× 6 回) にわたって受け、また、その後もさまざまなテーマで勉強会を開いています。エンジニアのボランティアたちは、インストラクターのトレーニングに使用するために、“DV 被害者のための安全なインターネット活用法”というテキストブックを作ることにしました。DV 被害者の子どもを世話するボランティアにも特別なトレーニングが必要でした。子どもたちもまた、虐げられてきたケースが多いことから、大人に対する不信感で心を閉ざしていたり、情緒が不安定な傾向にあるので、個別のケアが求められるからです。 活動が生み出した成果 西原さんは彼女が心身を回復させていく過程において、IT スキルを身に付けることがいかに重要だったか詳しく語りました。パソコン講座に通い始めて 3 か月になる頃、彼女は DV というものの実像と、自分の身に起こったことの責任の所在は自分にはないことを理解するようになりました。「パソコンを学び始めて、自分に自信が持てるようになりました。コースの終わりに修了証を受け取りましたが、そこには、マイクロソフトとヒューレット・パッカードの名前が記載してありました。それは私にとって、とても意味のあることだったのです。私が社会の一員としてやっていくだけの強さを持っている証のような気がして、勇気づけられました」 まだやらなくてはいけないことがたくさん残されている、と TVAC の山崎所長は強調します。パソコン講座のインストラクターなどボランティアを対象としたトレーニングをより質の高いものにしていくこと、このプログラムを日本中に広げていくこと、そして、DV の問題を社会が共有できるよう理解を促すこと。しかし同時に、山崎さんは ITVP がこれまでやり遂げてきたことを非常に誇らしく思っています。「これは、DV 被害者と公的機関、民間企業が互いに協力し合い、前例のない枠組みのもとに行われた実に画期的な取り組みだと思います。大変な挑戦でしたが、私たちは、そこに存在していた壁を取り払うことに成功したと言えるのではないでしょうか。単に民間企業から支援が行われたというストーリーに終わらせず、人間の結びつきの強さを示したものだと思うからです。私たちは今、それぞれのセクターが持つ力を結集して、さらに力強く、社会の中に根深く残る問題を変えていける何かを作り出す場面に立ち合っているのだと感じています」 活動を全国へ拡充女性のための UP プログラムは、2004 年 7 月にスタートした特定非営利活動法人 WING21 での活動を皮切りとしています。2005 年 5 月からは財団法人横浜市男女共同参画推進協会 (YWACN) 、同年 6 月に東京ボランティア・市民活動センター (TVAC) において活動をスタートさせ、これら 3 つの団体と強力なパートナーシップを組んでプログラムを実施しています。 ![]() パソコン講座の様子 また、マイクロソフトは、2006 年 5 月、新たに全国女性会館協議会および特定非営利活動法人全国女性シェルターネットとパートナーシップを組み、このプログラムを全国で展開する「女性のための UP プログラム全国版」を発表しました。これは、全国 82 ヶ所の女性会館を会員にもつ全国女性会館協議会、全国 47 ヶ所の民間シェルターを会員にもつ全国女性シェルターネット、マイクロソフトの三者が連携することで、困難な状況にある女性を対象に、IT を活用した支援体制の全国展開を目指すものです。就労に必要な基礎的な IT スキルの習得ができる IT 講習や就労支援を、地域の行政や企業等とも連携して実施することで、女性の自立支援促進に取り組んでいきます。
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