NEXT プロジェクト

公開授業報告 1

立命館小学校で UMPC 活用学習の公開授業

2006 年 11 月 21 日、「NEXT プロジェクト」のモデル校のひとつ、京都市の立命館小学校において、子どもたちのウルトラモバイル PC (UMPC) 活用学習をテーマとする公開授業が行われました。同小学校には、UMPC「SmartCaddie」が 135 台導入され、おもに 3 年生の児童 122 名が 1 人 1 台の環境で利用しています。
[注] ウルトラモバイル PC (UMPC)
UMPC は、軽量で携帯性に優れ、簡単にネットワークに接続ができる PC。Windows OS の機能を全て使うことができ、キーボード以外にも、タッチ操作をしたり、画面に手書き文字や絵を書き込んだりできる。詳細はUMPC 紹介サイト参照。
この公開授業には、全国の教育関係者のほか、マスコミ各社の記者も大勢訪れました。
公開された授業は、次の 3 つです。
イメージ:立命館小学校
立命館小学校

UMPC と「電脳陰山メソッド」を用いた漢字書取り練習

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タブレット PC 上で稼働する「電脳陰山メソッド『かんじ』」を使って行う漢字の書き取り反復練習です。3 年生の子どもたちが、約 10 分間という限られた時間内で書き取り練習を行い、その様子を多数の見学者が参観しました。
[注] 「電脳陰山メソッド」(c) Hideo Kageyama/Shogakukan2006 : タブレット PC をベースにした小学生向け手書き入力電子教材

UMPC を用いた 3 年生理科「個別課題学習『かもがわ学習』の発表と評価」授業者 : 荒木貴之教頭

「かもがわ学習」は、京都市内を流れる鴨川の河川敷をフィールドにした、自然観察を主体とする理科の学習です。児童は、PowerPoint を使って調べたことをまとめています。この授業では、児童が教室の前に出て UMPC を操作しながら電子情報ボード上に自分の作った PowerPoint 画面を表示し、口頭で発表しました。
その発表を見聞きした他の児童は、各々の UMPC 上で友だちの発表の評価を行いました。結果は自動集計され、教室前方の電子情報ボード上にクラスの平均値が表示されました。
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UMPC を使って発表する児童 (左) と、発表の画面を見る荒木貴之教頭
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* 評価の項目は、「やくにたつとおもう」「質問に答えてくれた」「いいたいことがよくわかった」「工夫して発表していた」「わかりやすかった」「みんなの目を見て発表していた」の 6 項目。これらの項目を、よく実現できているものは画面の上に、頑張った方がよいと思ったものは画面の下に配置する。すると、それが集計されて、クラス全員の平均が教室前方のスクリーンに表示される。

UMPC を用いた 3 年生学級活動「個人の学び『自学』の共有化」 授業者 : 木村直哉教諭

立命館小学校では、子どもたちの「自学」を大切にしています。児童は、興味・関心を抱いたテーマについて、「エンカルタ」などを利用し自分の力で調べます。調べたことは、UMPC 上の OneNote を使って手書きの文字でまとめ、必要に応じて画像や写真を貼り付けています。さらに資料の閲覧性を高めるために、web 形式で保存しています。
この授業では、こうしてまとめた画面を UMPC を操作しながら電子情報ボード上に表示し、発表しました。単に内容を記述するだけでなく、クイズにしたり、アルバム風に構成したり……と、思い思いに工夫を凝らしていました。そして、発表が済むと、他の児童からの質問にひとつひとつ答えていました。
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調べたことを、UMPC 上の OneNote を使って手書きの文字でまとめている児童
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UMPC なら、3 年生の児童でもラクに持って発表できる
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指導する木村直哉教諭
Microsoft Corporation シニア バイスプレジデント兼 Microsoft International 担当プレジデントジャンフィリップ・クルトワとマイクロソフト株式会社 代表執行役社長 ダレン・ヒューストン (当時) も、3 つの授業を参観しました。

公開授業の後に行われた記者説明会より

立命館小学校における
実証実験の経過とこれまでの成果
公開授業の後、記者説明会が開催され、荒木貴之教頭が実証実験の経過を説明しました。その後、活発な質疑応答が行われ、その中で陰山英男副校長が、これまでの成果について語りました。また、このマイクロソフトの役員も、公開授業の感想や NEXT プロジェクトの意義についてコメントしました。
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記者発表会での 1 ショット。左から荒木教頭、陰山副校長と
マイクロソフト役員のジャンフィリップ・クルトワ、ダレン・ヒューストン、大井川和彦


書いて覚えることは学びの基本−児童用の PC はすべてタブレット PC
荒木貴之教頭
荒木貴之教頭
3 年生の児童 122 名が 1 人 1 台の環境で UMPC を使う
私たちは、将来、国際社会でリーダーとして活躍する人材を育成したいと考えており、中学校、高等学校と合わせた 12 年間を 3 つのステージでとらえた一貫教育を行っています。本日ご覧いただいた小学校 3 年生は、その第 1 ステージということで、基礎基本の確実な習得を目指しています。
基礎学力形成に関しては、UMPC の活用の他、様々な教育上の工夫を行っています。例えば、すべての普通教室に電子情報ボードを導入して、教材のより効果的な共有化を図っています。理科嫌い、理科離れを防止するため、「ロボティクス」という教科を特設しています。
本校には UMPC「SmartCaddie」が 135 台あり、おもに 3 年生の児童 122 名が 1 人 1 台の環境で使っています。また、この UMPC も含め全校に 200 台以上のタブレット PC を導入しています。子どもにとって、書いて覚えることは学びの基本であるという認識に基づき、児童用の PC はすべてタブレット PC としています。
徹底反復学習を中心にタブレット PC を活用、今後は屋外の活動にも
UMPC は学校で学習することに加え、家庭に持ち帰って学習を進めることができるので、学習の連続性を図ることができます。この夏休みには、児童に家庭へ持ち帰らせて「電脳陰山メソッド」(読み書き計算の徹底反復により基礎学力を育成するソフトウェア) に取り組ませました。
10 月 27 日に 1 年生 〜 3 年生の児童が漢字検定を受けましたが、全員が合格しました。すべてが UMPC の成果であると考えることはできませんが、UMPC と「電脳陰山メソッド」における正答率と合格得点に相関があるかないか等について精査し、UMPC の有効性を明らかにしていきたいと考えています。
これまでは、学習履歴を管理しながらの徹底反復学習を中心にタブレット PC を活用してきましたが、今後は、携帯性に優れているので屋外での調べ学習等に使っていこうと考えています。UMPC を屋外に持ち出して、温度変化をリアルタイムでグラフ化して子どもたちに解釈させる、あるいは手書きの電子ノートとして、社会科見学に使うことも考えられるのではないか、などと想いをめぐらしています。また、本校には地下に「メディアセンター」という図書館があります。ここで動画を鑑賞したり、音楽を再生させたり、さらにテキストを使って理解を深めたり、マルチメディアのプレーヤーとしても使えるのではないかと考えています。
本校で得られた成果は遠からず各地の公立校にも波及するでしょう
陰山英男副校長
陰山英男副校長
タブレット PC は、大きな可能性を持っている
(「陰山メソッド」をデジタル化して何が変わったか?という記者の質問に答えて)
アナログベースで行っていた「陰山メソッド」は、実は限られた内容を単純な方法で徹底的に繰り返すことによって最大限の学習効果が得られるというものです。すなわち、これはまさしくコンピュータの得意とするところですね。これまで大量の紙を使って印刷していたものがディスプレイ上で行うことができるので印刷の必要がない。さらに学習履歴が残るので、履歴を教師と子どもたちが視覚的に見ることによって、両者が共有することができる。いわゆるコーチング機能を持たすことができるという点で、UMPC を用いた電脳化の意義は非常に大きいと思います。
その点でも、いちばん大きなポイントは、タブレットになったということですね。コンピュータの機能にタブレットが加わり、従来のコンピュータを利用した学習にはなかったことを、付け加えることができるようになった。こうした点で、UMPC を含めたタブレット PC は、大きな可能性を持っています。さらに、インターネットやマルチメディアを包括することにより、新しい学習形態を生み出すことが可能なので、私自身、今後とも挑戦していきたいと考えています。
日本の子どもたち全員にコンピュータを持たせるべき
(UMPC の公立校への普及は可能なのか?という記者の質問に答えて)
UMPC と「電脳陰山メソッド」を組み合わせたシステムは、山口県の山陽小野田市、広島県の尾道市のいくつかの学校と協同で実践を行っています。UMPC はこれまでのノート PC と比べ安価なこともあり、UMPC を全市的に導入しようという動きもすでに出てきています。こうした流れを見ていますと、ある時期から UMPC は一斉に普及が進んでいくのではないかと思われます。コンピュータの更新 (入れ替え) の必要に迫られている学校はたくさんありますから、公立への波及は遠からずかなり進むのではないかと私は見ております。
私は、政府の教育再生会議の委員をさせていただいておりますが、その場で、日本の子どもたち全員に 1 人 1 台のコンピュータを持たせるべきだという提言を行っています。それによって、小学校から高校くらいまでの学習内容を一括してハードディスクに入れておくことも可能になります。また、教育内容の変更に関しては、インターネットにアクセスすることによって、指導要領の改訂に伴う教材の変更が、今だったら 2 〜 3 年かかるところが、1 〜 2 週間で済むということも可能になるわけですね。
こうしたことも含めて、UMPC の公立学校への普及を考えてもいいと私は思っています。
体験的な事例からから多くのことを学び、多くの学校と共有させていただきたい!
Microsoft Corporation シニア バイスプレジデント兼
Microsoft International 担当プレジデント
ジャンフィリップ・クルトワ
ジャンフィリップ・クルトワ
われわれは世界中で 2 通りの方法で教育への取り組みを進めています。1 つには、「Partners in Learning」(日本では「小中高等学校向け ICT 推進プログラム」という名称で ICT 教育推進プログラム協議会と一緒に展開しています。)、「Unlimited Potential」といったプログラムがあり、各種の教育手段にアクセスすることの難しい、経済的にも不利な立場に立たされている人々をお手伝いするプログラムを推進しています。世界 150 か国において、2010 年までの間に 2 億 5000 万人の人々に対するトレーニングを提供する努力を進めています。
もう 1 つは、ここ立命館小学校のような先進的な教育機関とのパートナーシップを活かして、新しい教育の方法や学習の方法を追求しています。日本の「NEXT プロジェクト」の他、シンガポールでは「BackPack.NET」、アメリカのフィラデルフィアでは「School of the Future」というプロジェクトを進めています。
立命館小学校においては、ICT を使うことによって子どもたちの学習における速い進歩を実現し、最近では全国でもっともよい成績を上げていると聞いています。私たちはこうした体験的な事例からから多くのことを学びたいと考えており、その体験をより多くの学校と共有させていただきたいと考えております。
漢字学習のソフトウェアは興味深く、理科の授業内容はマジックのようだった!
マイクロソフト株式会社 代表執行役社長 ダレン・ヒューストン (当時)
ダレン・ヒューストン
今回は、NEXT プロジェクトの成果を目にする初めての機会でしたが、大変感銘を受けました。ICT を教育現場に活用していくという面で成果が見えたと思います。私の娘も東京で学校に通っていますが、立命館小学校に導入されているようなテクノロジーが娘の学校にも使われていたらどんなにいいだろうと思いました。
本日使用されていた教育用のソリューション、例えば漢字の書き取りのソフトウェアは、たいへん興味深いものでした。また理科の授業内容も、マジックのようでした。
こうしたソリューションの活用は、実際に始めてみないと課題や問題点がわからないものだと思います。概念やテーマを明確にするだけでなく、実際に使うとどうなるのかということを学んでいかねばなりません。
本日、貴重な体験を私たちに与えてくださった先生方に感謝するとともに、これからもこの資産を活用することに継続的な支援をしていくことをお約束させていただきます。