大学革新のための IT 戦略
セッション 1 : 教育の革新と IT [
次のページへ > ]
第 2 回大学 CIO フォーラムでは、2005 年 11 月に開催した第 1 回フォーラムでの議論をもとに、参加大学の CIO や情報担当理事の方々と検討を重ねてまとめた「大学革新のための IT 戦略」について提言書を発表しました。そして、その中でも重要な課題である「教育の革新と IT」、「安全かつ柔軟な情報基盤整備」、「大学経営の革新と IT」をテーマに取り上げ、大学革新のための IT 活用の方向性を議論するとともに、大学 CIO の果たすべき役割を探りました。
IT による先進的教育環境づくりの取り組みの事例として、東京大学の TREE プロジェクト (Todai Redesigning Educational Environment) を紹介しました。
セッション 1 : 教育の革新と IT
IT を利活用したカスタムメイド教育の実践例とその効果
各大学の IT を利活用した学生の学修支援システムや評価システムの実践例などが紹介された。
これらシステムの効果としては、(1) 学生の成績の向上、(2) 学習者の多様化、が挙げられた。
千田 (同志社大) : 学生の「学修サイクル」(Plan、Do、Check、Action) をサポートするため、Web を使った学修支援システム DUET (Doshisha University Electronic Tutorial System) を開発しました。このシステムの運用後は、シラバス情報への検索数、図書館の利用数、成績得点分布へのアクセス数が激増するという効果がみられました。教務部サイドは、このシステムによって学生の成績が向上したと非公式ながら判断しています。
村井 (慶大) : 1997 年からシステム構築の実証実験として、インターネット上での授業の公開、オンラインでの履修申請や成績評価、授業内容のアーカイブ化、授業のリアルタイムでの中継などを行ってきました。これらの試みは現在では正式に大学から単位が認められるようになり、外部の人も有料で履修することが可能です。IT の活用によって成績向上などの学習効果があったかどうかを判定することは難しいが、学習者が非常に多様化する (例えば、行政に携わる人や高校生、また海外の大学生など) という点では明らかに効果がありました。
また、受講者がビデオを何分間見たか、どこまで見たか、という履歴を認証と一緒にチェックする仕組みを作り、受講者の成績に関して信頼感をつくる工夫もしています。
椿 (広島大) : キャンパス間の遠隔講義は 10 年前から行っており、現在は 3 キャンパス間で実施しています。また、昨年度は一般の講義 100 科目を WebCT でコンテンツ化し授業に用いる実験を行いました。教員側の WebCT 未経験者が 7 割以上であったにもかかわらず、70 を超える科目がコンテンツ化されました。
腰塚 (筑波大) : 5 年くらい前から、学生に Web で履修申請をさせ、担任の教員は学生の単位数、授業科目、成績などを把握できる仕組みを運用しています。しかし、このようなシステムを非常に上手く利用する教員と全く利用しない教員がおり、例えば Web で成績をつける教員は 8 割程度に止まっています。
IT を利活用したカスタムメイド教育の課題
IT を利活用したカスタムメイド教育の課題として、コンテンツの共有化にともなう著作権の問題や、カスタムメイド教育を支援する体制構築の問題が指摘された。
椿 (広島大) : 広島大学の資源を使って作り上げた授業コンテンツは、教員のものであり、同時に大学のものでもあります。教員が他の大学に移ってもコンテンツをそのまま使えるようなルールを考えていく必要があります。
また、授業内容は毎年新しくなるため、教員自身が支援ツールを上手く使いこなして、みずからコンテンツのメンテナンスが出来るように自立するところまでフォローアップする必要があります。カスタムメイド教育に対する支援としては、授業の WebCT 化に関して 1 科目 5 万円の予算をつけたり、メディアセンターには技術的なサポートをする教員や技術補佐員等を配置したり、教員同士の情報交換のための研究会を開催しています。しかし、これらのサポートは実験的・自主的な取り組みにとどまっているため、大学として組織的に取り組む体制を作っていくことが今後の課題です。
村井 (慶大) : カスタムメイドという意味を考えた場合、教員の個性を活かして、教員がやりたい授業をできるような仕組みを作ることが重要です。
コンテンツの公開に関しては、教員のポリシー (教材をどのように使いたいかを明確にする) や、学生のポリシー (授業中に生み出した創造物に関してどう考えるのかを自分で決め、それに従う) をそれぞれ設定することが重要です。
腰塚 (筑波大) : IT の活用が非常に効果的な授業の事例 (体育実技でのフォーム分析など) を教員間で共有することで、IT を活用した授業の質の向上を支援しています。
千田 (同志社大) : 現時点では、コンテンツの著作権処理を済ませて外に出すケースは多いが、その大学間での共有化までは至っていません。オープン・コース・ウェアを構築する場合、教材をオープンにしやすい環境を整備する必要があります。
第 2 回 大学 CIO フォーラム - セッションリストセッション 1 : 教育の革新と IT