第 3 回 大学 CIO フォーラム

公開日 : 2007 年 12 月 4 日
大学革新のための CIO の役割
〜 IT を活用した学生本位の大学経営を考える 〜
セッション 1 : 学生本位の魅力ある大学づくりに向けた取り組み [ 次のページへ > ]
去る 2007 年 6 月 27 日、14 の国立 / 私立大学から CIO や情報担当の方々をパネリストとして迎え、約 100 名の参加者を得て、第 3 回大学 CIO フォーラムが開催されました。
今回の大学 CIO フォーラムは、大学の主体である学生にフォーカスを当て、IT を活用した学生本位の大学経営の取り組みを紹介するとともに、その中における CIO の役割についてさまざまな議論が交わされました。
学生に選ばれる大学づくりを推進するために、いま、どのような取り組みが求められているのか、このページでは、当日行われた 2 つのセッションの内容をご紹介いたします。

セッション 1 : 学生本位の魅力ある大学づくりに向けた取り組み

[ パネリスト ]
ファシリテーター 関口和一氏大阪大学 下條真司氏九州大学 村上和彰氏筑波大学 腰塚武志氏
東京大学 岡村定矩同志社大学 真鍋正宏氏広島大学 渡邉敏正氏早稲田大学 堀口健治氏
各大学における IT 利活用の取り組み
[イメージ] セッション 1 : 学生本位の魅力ある大学づくりに向けた取り組み
関口 (ファシリテーター): どうすれば学生本位の競争力のある大学を作れるのか、まずは IT 利活用の実情についてお聞きしたいと思います。
下條 (大阪大学) : 大阪大学ではコースマネジメント システムとして WebCT VISTA を導入しており、現在は共通教育の全授業で活用し、資料の配布、課題の提出、日々の質問等を行っています。
この他にも学務情報システム KOAN、外国語教育のためのマルチメディアコンテンツを提供する WebOCM というシステムがあります。
これらのシステムは連携しており、全学の統一認証システムにより、同じユーザー ID、アカウントで使うことができます。
また、Student Advisor という制度を設けてこれらのシステムの窓口業務を行う体制を作っています。
村上 (九州大学) : 昨年 1 年間をかけて組織改革とルール改革、さらにお金の使い方を変えるべく、全部局長の意見を聞いて回り、新しい情報政策を作りました。
そしてこの 4 月からは情報統括本部を作り、学内の IT 投資、運用、執行に関しては情報統括本部で一元化して行うことになりました。
現在、情報統括本部では「6 つのキャンパスでの無線 LAN へのアクセス」「付属図書館にある電子ジャーナルの利用」「さまざまな講義資料にアクセスできる WebCT の活用」「マイクロソフトのキャンパスアグリーメントの導入」という 4 つのサービスを考えております。
キャンパスアグリーメントについては、この 3 か月間ですでに 2 億 3,000 万円の費用削減効果を得ております。
腰塚 (筑波大学) : 学務に関するシステムは 6 年前から順調に動いていますので、筑波大学では、課外活動においても IT を活用できるのではないかと議論をしています。たとえば、消極的な学生に対して一体どういう支援ができるだろうかということで、正課外における学生の活動に関する情報もきちんと整備していこうと考えています。
岡村 (東京大学) : 東大の IT 化は他の大学に比べて少し遅れていると思っています。
実は学務システムも構築中で、10 月から試験運用を始め、来年度から本格的に動かそうという状況です。
また、駒場キャンパスでは先端のシステムを入れた教室 KALS (Komaba Active Learning Studio) を作っており、10 月から動き始めます。
ようやく東大ではこのレベルのものが 1 つ動き始めるというところです。
真鍋 (同志社大学) : 同志社大学の学修システム DUET は、履修科目の登録や修正、GPA 得点分布、登録科目の一覧、成績通知表等の確認、授業評価アンケートも行うことができます。
GPA得点分布ではその科目がどれくらいの率で A 評価、B 評価、C 評価が出ているかが 6,000 科目以上すべて出ており、ネット上でオープンになっております。
渡邉 (広島大学) : 広島大学ではキャンパス ユビキタス プロジェクト (CUP) に取り組んでいます。
無線 LAN のアクセスポイントを増やすなどの大学のインフラを整備すると共に、学生にパソコン購入を奨励し、活用を進めています。
まだまだ活用は進んでいませんが、今後は、リテラシー教育の提供や e-Learning を増やしたり、学生と教員の双方向のアクセスを増やす工夫を進めたいと思います。
システムは本当に活用されているのか
関口 : 学務システムから教育授業システム、学生/教職員のコミュニケーションまで、いろいろな形でシステムが導入されていますが、実際にはどれだけ使われているのでしょうか。
渡邉 : 授業評価システムですが、評価を提出しなければ成績開示をしないと脅しをかけてやらせていましたが、端末が少ないこともあり、なかなか集まりませんでした。
そこで携帯電話で行えるようにしたところ、今では 8 割の回収率をキープしています。
真鍋 : 以前はシラバスが電話帳みたいに厚く、登録したい科目をうまく探せない状況がありました。
DUET にしてからはシラバス情報だけで約 50 万件、GPA 得点分布は多い日で約 8 万 5,000 件のアクセスがありました。
ただ 1 つ問題があり、授業評価アンケートの回収率が紙媒体では約 5 割ですが、ネットだと 3 割もいかない。それをどうするかが今後の課題です。
腰塚 : 学務システムでは休講などの連絡もできるのですが、先生があまり休講の掲示を使わないため、学生もだんだん見なくなってしまいます。
また、学務システムが学務課のものだと決めつけ、あまり職員が使わないという問題もあります。
我々が作った時には全学の学生と職員と教員の真ん中において学務だけでなくいろいろな使い方ができるものだと説明してきたつもりなのですが、「もっとできるはずだったのに」という思いもいあります。
岡村 : 東大も学務システムを作ろうとしていますが、これを使わなければ卒業できないので皆さん使うと思います。
東大は学務システムにいろいろな機能を載せるのではなく、機能ごとに分けようとしています。
全学のポータルサイトも作ろうとしていますので、学務システムは学務に特化しますが、もとになるデータベースは共有できるようにしようとしています。
堀口 : コースナビをいかにうまく使うかは教員の材料の提供の仕方にかかっていると思います。
たとえば、私の専門分野ですと、穀物の先物市場であるシカゴの市場で先物を仮に売買させ、それをコースナビのレポート機能で提出させて 3 か月後に評価するということも、コースナビを使えば即座にできますし、学生に返すことができます。
そういう意味では使い方次第で学生の高いレベルの需要にも応えられるのではないかと期待しています。
システムを活用させるための工夫
関口 : システムは学生に使ってもらわなければ意味がないわけです。
学生に使わせるための工夫や秘策があれば教えてください。
下條 : やはり学生の声に答えることです。
WebCT でも学生がいろいろ問い合わせをするのですが、それを TA を使って必ず答えを出すようにして、我々もたまに答えるようにする。
そうすると学生も見てくれているのだと思うはずです。
村上 : 情報システムが多すぎるのも問題です。
たとえば、ポータルがいっぱいあるという困った状況に九州大学もなっておりまして、そういうポータルの統一化、ID パスワードの統一ということも今やっております。
また、学生がどういうサービスを提供して欲しいのかを我々も聞く必要があり、学部、大学院の学生、それぞれの代表を集めて意見を集約しようとしています。
導入過程、運用上で最も頭の痛い問題
関口 : システムを導入あるいは運営していく上で、学内の抵抗勢力や学長の意識の問題、技術の問題など、いろいろな悩みがあると思います。
皆さんにとって最も頭の痛い問題は何でしょうか。
堀口 : 教員の IT スキルの問題です。
全教員に 1 台ずつパソコンが与えられていますが、パソコン自体開けないという人もいました。
今は会議の予告や資料等は紙では配らず、パソコンを開かなければ会議の日程すらわからないということで大分そういう教員は減ってきました。
また、スキルを上げるための講習会や支援/個別対応も大事なことだと思います。
真鍋 : 学生には入学時に 4 月いっぱい使える ID を配り、その間に情報倫理という講座を取らなければ 5 月からは使えないようにしています。
教員には各教授会の前に DUET のプレゼンを行い、使用人数を高めるようにしています。
腰塚 : せっかく新しいシステムを作るのだから業務改善を伴ってやるべきですが、そこで職員の方の抵抗にあうため、CIO を含めたチームにどのくらい職員の見方をつけられるかがポイントだと思います。 時間はかかりますが、そういう職員を増やしていくしかないと過去の経験から思っています。
村上 : キャンパスアグリーメントの導入は 3 か月ぐらいで全部局への導入に成功しました。
正直、部局や個人の抵抗もありましたが、最終的には「教職員だけでなく学生への効果を見てください」と訴えて理解を得ました。
やはり「教育」というのは法人化後の重要なキーワードだなと今回実感しました。
そして 2 つ目のポイントは、コスト削減効果をきちんとシミュレーションした上で時間をかけて説得すれば納得してもらえるということです。
今回、10 年間のコストを計算し、年間で約 3 億円のコスト削減効果が得られることを報告しました。
※文中 敬称略
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セッション 1 : 学生本位の魅力ある大学づくりに向けた取り組み