これまでに開催された大学 CIO フォーラムの内容を提言書としてまとめました。
ここでは提言書の要旨のみを掲載しますが、提言書の全体 (123 ページ) をダウンロードすることもできます。
大学における IT ガバナンス
PC やインターネットなどの IT が広く普及し、「教育」や「研究」の在り方に大きな影響を与える現代においては、全学的な IT ガバナンスの実現が、大学革新の鍵を握っている。また、IT ガバナンスを実現するためには、戦略立案、組織運営、リソース管理、プロセス管理などの権限を有した「大学 CIO」の速やかな設置が必要である。さらに、大学の経営戦略と連動し、将来的な技術動向も視野に入れた「IT 戦略ビジョン」の策定が重要となる。併せて、IT 導入に対する客観的評価の仕組みを確立し、その評価結果を絶えず次の IT 投資の判断に反映させる。
1. IT マネジメント体制の確立
全学的な合意形成の上、「大学 CIO」を設置するとともに、そのミッションや責任範囲を明確に定義する。さらに、学長がトップの「IT 戦略本部」を設置し、情報環境整備を学長の直轄的な事業として位置付け、大学 CIO は IT 戦略本部の実質的なリーダーとして機能する。最終的には、大学 CIO に IT ガバナンスに関する権限を一元化する。
2. IT 戦略ビジョンの策定
情報環境整備の促進によって大学経営にもたらされる変革と価値について明らかにし、今後の大学の方向性について示した「IT 戦略ビジョン」を策定し、経営層に提示する。大学の経営戦略と IT 戦略の整合性を維持しながら、大学活動の中心である教育、研究及び大学経営と、IT を結びつける。さらに IT の将来動向を見据えながら、新しい IT の活用機会を予見し、これをビジョンに反映させる。
3. IT 導入の客観的評価の実践
まず IT 資産管理を適切に実行して、IT 関連のコストを把握することから始め、「経済的・直接的効果」の評価を行う。さらに IT の利用度・満足度を調査し、「定性的・間接的効果」の評価を行う。客観的な評価指標については、各大学が個別に設定するのではなく、産学官連携で検討する機会を設ける。
大学機能の強化と革新のための IT 戦略
少子化の進展や国際的な大学間競争の激化に伴い、大学の諸機能の強化と革新が求められている。しかも IT を活用し、効率的・効果的に機能強化を図ることが重要である。「教育」の側面では、IT の効果的な導入による学生一人一人に対する「カスタムメイド教育」を実現する。「研究」の側面では、日本の研究者の国際的地位の確立のために、学術情報発信を強化する。また、最先端の学術情報基盤を構築し、先端的なテクノロジーのテストベッドとして大学が機能し、成果を社会に還元する仕組みをつくる。また、上記を支える前提として、IT を積極的に活用することによって、大学そのものの「経営」を最適化し、充実した「学生サービス」を提供する。
1. IT による教育の革新
Web ベースのアンケートシステムなどにより、学生の学習ニーズをタイムリーに把握するとともに、個々の学生の学習履歴等を一元的に管理するシステムを導入し、「カスタムメイド教育」の実現を目指す。また、e ラーニング支援部門の設置、e ラーニングシステムの標準化・共有化、コンテンツ流通の拡大などにより、e ラーニング利用を促進し、基礎的な知識やスキル習得の効率化を図ると同時に、IT による教育向上効果についての評価を実施し、教育の質の向上につなげる。
2. IT による研究の革新
「電子ジャーナル」や「機関リポジトリ」などを積極的に活用し、学術情報発信の強化と効率化を図る。また、研究者が自由に使えるオープンなネットワークを構築し、経営系・教育系ネットワークと切り離して運用する。さらに、ハイパフォーマンス・コンピューティングの利用領域の拡大や大学図書館の IT 化を推進する。
3. IT による経営・サービスの革新
企業と同等の会計基準の導入に伴い、財務会計・人事給与・資産管理等の「法人系システム」の強化を図ると同時に、入試管理・履修科目登録・成績管理・就職支援等の「学務系システム」とも連携させる。また、IT 調達を一元的に管理することにより、コスト削減と IT 資産の適切な管理を可能にする。さらに、学生に関する就職相談、健康相談等の情報を統合した「個人別カルテ」や、学内の各種情報サービスをワンストップで利用できる「全学統一ポータル」を提供し、学生サービスを充実させる。
安全かつ柔軟な情報基盤構築
学内の情報基盤整備に関して、これまで各学部、研究室単位で投資が行われてきたために起きている重複投資や、学内ネットワーク・情報システムの複雑化・分断化、情報セキュリティ対策の困難さ等が指摘されている。したがって、全学的な統一情報基盤の整備によって、情報基盤の信頼性・安定性、運用管理の効率性、新しいテクノロジー等に対する拡張性・柔軟性の向上を図るとともに、全学的な情報セキュリティ対策とコンプライアンスの強化、および上記の取り組みを支える専門人材の育成と活用に取り組む。
1. 情報基盤の拡張・高度化と信頼性の向上
学部、研究室ごとに個別に構築されてきた情報基盤を統一し、ユーザー認証、ID 管理、セキュリティ設定などを一元管理する。また、「SOA (サービス指向アーキテクチャ)」を導入し、柔軟なアプリケーション開発を可能にする共通基盤を整備する。「IT ライフサイクル管理」を確立し、戦略的に情報基盤のアップグレードを図るとともに、テクノロジーの進化に対応した情報基盤の拡張性にも留意する。
2. 情報セキュリティ対策・コンプライアンスの強化
「情報セキュリティポリシー」を策定し、経営層、教職員、学生を対象とする全学的なセキュリティ教育を通じて、情報セキュリティ対策の重要性に関して啓発する。コンピュータウィルス、不正侵入、情報漏洩などのリスクを的確に把握し、タイムリーに対応策を提示する。また、個人情報保護や知的財産保護などに関する「コンプライアンス」の徹底や、事故、自然災害等に対する「ディザスターリカバリープラン」の整備も併せて行う。
3. 情報専門職の育成・活用
大学における情報環境整備を担う「情報専門職」のミッション・職務機能・スキル・責任範囲を明確に定義するとともに、人材評価制度やキャリアパスと適切にリンクさせる。学外に委託したほうが効率的な業務に関しては、「アウトソーシング」の活用を検討する。