手話による IT 講習会 - NEC ラーニングとかがやきパソコンスクール

IT 機器やアプリケーションは年を追う毎に、より高度化していきます。それに加えてビジネスの現場では、業務の多様化が進んでおり、さまざまなスキルを身に付けなければなりません。企業ではこのような状況に対応するために、最新のテクノロジーに対応できる人材を、これまで以上に短期間で育成する必要に迫られています。

障碍 (しょうがい) のある方への講習

写真 : NEC ラーニングの山崎さんと須山さん

そのような状況のなか、NEC グループの NEC ラーニングでは、NEC グループを含むさまざまな企業からの人材育成の要請に応えるために、多彩な研修サービスを提供しています。マイクロソフトから、先進的で優れた活動を行っているパートナー様に贈られる賞を 2 年連続で受賞するなど、技術力の高さも広く認められています。

一方、NEC グループでは早くから障碍のある社員の雇用に力を入れており、1996 年以降は毎年法定雇用率を達成しています。また、2005 年 9 月にはこれまでの成果を認められ「平成 17 年度障碍者雇用優良事業所厚生労働大臣表彰」を受けています。そのため障碍のある社員が多く在席しており、彼らに対しても効率的な講習を実施する必要がありました。

これまで障碍のある社員に対する講習は、一般の人と同じ講座を受講し、その中で個別のニーズに合わせた配慮を行っていました。聴覚障碍の人に対するサポートとしては、手話通訳者を手配し講義内容を通訳するなどの配慮がされていました。これで講師の説明を知ることは出来るようになりましたが、手話通訳にも限界がありました。専門用語などが多いアプリケーションの操作説明をうまく翻訳することが難しかったのです。また講義を受ける際には、手元の画面と教科書、そして講師が操作するスクリーンの画面を同時に見ながら、更に手話通訳を見る必要がありました。口話が出来る参加者はそれに加えて講師の口元を見ながらパソコンを操作していたので、聴覚障碍のある受講者に大変負担がかかるものでした。

受講者からこのような相談を受けた NEC ラーニングの山崎さんと須山さんは、より満足度の高い効果的な学習ができるようにするために、さまざまな情報を調べました。その時に 2 人が出会ったのが、「かがやきパソコンスクール」でした。聴覚に障碍のある人に対して、安心して学べる場所を提供することを目的として設立されたパソコンスクールで、代表の益田さん自身も聴覚に障碍があり、これまでに数多くの講義を実施してきた経験がありました。NEC ラーニングはかがやきパソコンスクールに連絡をとり、益田さんが講師を務める聴覚障碍のある人向けに、第 1 回目の講習会を開くことになったのでした。聴覚障碍のある人に対する講習会を数多く実施してきた益田さんは、製品のことを熟知していて、口話と手話の両方を使いながらの講座を行えるため、受講者にとって大変判りやすく、講座修了後のアンケートの結果もとてもよいものでした。

第 1 回目の講座に手応えを感じた NEC ラーニングでは、益田さんを講師に迎えた聴覚障碍者向けの講座を定期的に実施することを決めたのでした。

講座は現在のところ 2 か月に 1 度 (半期に 3 回) のペースで実施されており、受講者は NEC グループ全体から集まっています。NEC は今後も障碍のある社員の雇用を積極的にすすめていく予定なので、開催される講座は今後も増えていくでしょう。講座内容は Word や Excel などの Office 系のアプリケーションが中心です。NEC では現在 Office 系のアプリケーションのバージョンを 2003 から 2007 に切り替え始めており、講座もそれに呼応して 2007 に対応した内容を準備しています。
「最先端の技術を身に付けて、職場で輝く人を育てたいのです」と NEC ラーニングの山崎さんは話してくれました。新しいアプリケーションを覚えると、周囲の人から操作方法について色々と質問や相談を受けるようになります。そうして職場の中で次第に頼りになる存在となっていくのです。

聞こえなくても安心して IT を学べる環境を

写真 : 手話を交えながら講習を行う増田さん

講師を担当したかがやきパソコンスクール代表の益田さんはNTT勤務を経て、2002 年にスクールを立ち上げました。パソコンスクールを選んだのはいくつかの理由がありました。

益田さんがパソコンに出会ったのは、電電公社が NTT に変ったばかりの頃、新人として職場に配属されたときでした。当時まだ目新しいパソコンを担当することになり研修を受けましたが、講師の説明が聞き取りにくく、結局は独学で勉強を続けたそうです。

益田さんは普通学級で学び、職場でも健聴者に囲まれて過ごしてきたので、これまで耳が聞こえない人に出会わなかったのですが、40 歳を迎えた頃に自分と同じように職場で苦労している人がいるのではないかと、ふと思い立ったそうです。そこで調べてみると耳が聞こえなくて困っている人は、益田さんの予想よりも遙かに多くいらっしゃることが分かったのでした。また当時は e-Japan 計画や全国ブロードバンド構想などが発表されるなど、IT に対する世間の注目が集まっていた時期でもありました。

自らの体験と時流を見て益田さんは、これからは聴覚に障碍のある人が IT のスキルを身に付けて、より生産性の高い仕事が出来るようにする必要があるのではないかと考えました。そのためには聞こえなくても安心して IT を学べる環境を整える必要があると、パソコンスクールの立ち上げを決めたのだそうです。

写真 : 手話を交えながら受講者に説明をする酒井さん

これまで聴覚に障碍のある人に出会わずに過ごしてきた益田さんは、起業した当時、手話をまったく知らなかったそうです。そのためスクール開設当初は受講者と手話でコミュニケーションを取ることが出来ずに、大変苦労したそうです。今ではすっかり手話をマスターした益田さんですが、当時の益田さんをサポートしてくれたのがインストラクターの酒井さんでした。酒井さんは一度他の企業に就職したものの、学生時代に覚えた手話を活かした仕事に就きたいと、まだ開設したばかりのかがやきパソコンスクールに転職してきたそうです。小学生の頃から Windows を使っていて、パソコンの操作にも詳しかったのですが、転職後の 2003 年には Microsoft Official Trainer の資格を取得してインストラクターとしての腕を磨き、今ではかがやきパソコンスクールに欠かせない存在となっています。

講習の時には 2 人でペアになって教えています。益田さんが正面に立って全体的な解説を行い、そして酒井さんが、受講者の席を回りながら分かりにくい点を手話で個別に説明していきます。これならば益田さんの説明を聞き逃したり、分かりにくい点があっても、すぐに酒井さんがフォローしてくれるので、講義について行けなくなるような心配もありません。

一般のセミナーでも講師も行える技術力のある 2 人が、手話も使ってセミナーを行うことで、とてもわかりやすいセミナーが行えているのです。

写真 : 山崎さん、須山さん、増田さん、酒井さん

益田さんはかがやきパソコンスクールを、安心して勉強が出来る環境に育てることを目標としています。現在はパソコンのスキルを中心に講座を開設していますが、ゆくゆくは働く上で必要な経営や法律、経済の事などを学べるビジネススクールのような形に発展させることを目指しています。

NEC ラーニングの開催する聴覚障碍者向けパソコン講習は、現在は NEC グループを対象にしたプログラムですが、今後は対象を社外にも広げていくことを考えています。そうなれば益田さんや酒井さんのようなプロフェッショナルなインストラクターの講習を、より多くの人達に提供できるようになるでしょう。


最終更新日 : 2008 年 4 月 4 日