(この文章は札幌チャレンジドのメンバーに執筆いただきました)

NPO 法人札幌チャレンジドと夕張の仲間たち

夕張の仲間たちとの出会い

NPO 法人札幌チャレンジドは、自立をめざすチャレンジド(障碍 (しょうがい) のある人)にパソコンやインターネットの活用方法を教えることによって、社会参加と就労を支援しています。
2007 年 1 月、夕張市が「財政再建団体」になるとの報道が日増しに大きくなってきました。札幌を中心に活動している札幌チャレンジドでは、夕張に暮らすチャレンジドが、これから辛い目に遭わないだろうか?何か私たちにできることはないだろうか? そんな想いが真っ先に思い浮かびました。
『札幌から夕張は、車で約 1 時間半。なんとか日帰りできる。NPOとしてできることを探そう!』との想いで、雪の降る中、夕張に向かいました。夕張市役所、夕張市社会福祉協議会、夕張商工会議所などを訪問する中で、知的障碍者の入所施設「夕張清水沢学園」を紹介してもらい、訪ねました。
そこで運命とも思える出会いがありました。指導員の石田隆二さんとの出会いです。石田さんは、常々、チャレンジドたちにパソコンを使えるようになってもらいたいと思っていましたが、日常の業務が忙しくて、教えることができませんでした。石田さんの想いと札幌チャレンジドの想いが重なりました。『清水沢学園のチャレンジドたちがブログを書けるようになって、夕張に暮らすチャレンジドの生活や想いを自分で発信できたら素敵だね』。これが私たちの夢 (目標) になりました。

アクセシビリティ設定をフル活用

夕張清水沢学園のチャレンジドたちは、知的に障碍があるために文字を読んだり、書いたりすることができません。文字の認識がほとんどなかったのです。そんなチャレンジドがブログを自分で書けるようにするためには、どのようにすれば良いのだろうか? 札幌チャレンジドは悩みました。いろいろなことを調べました。また、知的障碍だけではなく、手や足に重複障碍のある人がほとんどでした。
夕張への訪問講習は雪解けの 4 月から始まりました。札幌から車でノートパソコンを持ち込んでの講習です。
チャレンジドたちがパソコンを操作できるようにするために、まずは、環境設定から始めました。

  • マウスを操作することはできるが、細かな動きが難しい人のために、ダブルクリックの速度やポインターの速度の調整、固定キー機能の設定。左利きの人のための設定変更。画面が見辛い人には、画面の大きさの設定変更など、あらゆるWindows のアクセシビリティ機能 (ユーザー補助機能) を駆使して、その人、その人に合った環境設定をしました。
  • マウス操作が困難な人には、トラックボールの設置。
そして、いよいよパソコン講習の開始! 初日はボランティアが 6 名、受講者が 10 名で始めました。まずは、パソコンを楽しいものだと実感してもらうために、好きな芸能人を教えてもらいました。そして、その芸能人のホームページを開いて見てもらいました。中でも、氷川きよしさんのホームページから歌が流れてきたときには、チャレンジドたちは拍手で大盛り上がり! 他にもアンパンマンのゲームなどをして楽しんでもらいました。
帰り際には、『またやろうね』と私たちひとりひとりをまわって言って下さる方、チャレンジド講師の手を握って涙ぐむ方。車が出るのを窓際でずっと手をふりながら見送ってくださった方々を見て、目頭が熱くなる想いの帰路でした。

写真 : 札幌チャレンジドのボランティアに講習を受ける夕張の仲間たち   写真 : 講習で笑顔をみせる夕張の仲間たち

文字認識への挑戦

インターネット環境によって

2 回目の講習からは、少しずつマウスやトラックボールの操作に慣れてもらうことに重点を置き、クリックゲームやドラッグゲームを何度も何度もやりました。そして、慣れてきた夏頃からは、いよいよ「文字」への挑戦が始まりました。ローマ字入力は行えませんし、キーボードを直接、打つことは困難です。そもそも文字の認識がありません。そこで考え付いたのが、「ひらがなワープロ」というフリーソフトの導入です。パソコンの画面にひらがなが大きく50音順に並んでいます。一文字ずつ画面の文字をクリックしていくと画面に文字が入力されます。
講師は、紙に書いた一文字を掲げて、「『こんにちは』の『こ』です」と言い、チャレンジドたちは、同じ文字を画面で探して、その文字をクリックします。この繰り返しで画面に「こんにちは」という言葉が入力されます。そして、ワープロの「読む」というボタンをクリックします。するとパソコンから機械音で『こんにちは』と聞こえてきます。チャレンジドたちは、拍手をしながら満面の笑顔です。知的障碍のチャレンジドたちにとっては、音が聞こえてくることで自分が操作したことを理解し、大きな喜びを感じたようでした。

写真 : ひらがなワープロを使い文章を作る夕張の仲間たち

4 月から毎月 2 回の訪問を続けて、2008 年 1 月までの 15 回程度の講習で、成果が徐々に現れ出しています。6 名ほどのチャレンジドは、少しずつ文字を記憶し、講師が一文字ずつ文字を掲げなくても、画面の文字を自ら選択しながら入力できるようになってきました。少しずつ文章としての感覚を掴んでもらうために、
こんにちは。
 わたしは、○○です。(○○には名前が入る)
 きょうは、○○です。(○○には天気が入る)
 わたしは、○○をつくっています。(○○には作業所で作っているものが入る)
と書かれた横断幕を見せて、文章としての入力も始めました。

また、パソコンでブログを書けるようになるだけでなく、パソコンで絵を描くことも考えています。ブログを書く人、絵を描く人。それぞれの好きなこと、得意なことをパソコンでできるように、これからも札幌チャレンジドは、夕張の仲間たちと一緒に歩んでいきたいと考えています。
IT を活用することでいろいろなことができるようになりますが、一番大切なことは、IT を活用することで、人と人の絆が深まり、誰もが安心して、楽しく暮らすことができる社会を創っていくことだと思います。札幌チャレンジドは、ユニバーサルな社会の実現に向けて、これからも自分たちにできることをやっていきます。


最終更新日 : 2008 年 4 月 4 日