No.242 - アップル、唯一の公式行事WWDC開幕[2009年6月12日更新] ■"One year later, light-years ahead."新フォーマットを採用したばかりのApple's Eyeだが、今回は、今やアップルが参加する、1年にただ1度の恒例行事となったWorldwide Developers Conferenceの会場にてこの記事を書いている。 WWDCそのものがニュースの宝庫なので、今回はWWDCのニュースとTwitterのお題の2部構成でお届けしたい。 さて、WWDCの会場に貼られた横断幕には、「One year later, light-years ahead.(1年後、幾光年先へ。)」と書かれ、そのまわりには無数のiPhoneアプリケーションのアイコンが散りばめられている。 今からわずか1年前、アップル社は、このWWDCでiPhone向けのアプリケーション開発手段を公表した。それから1年後、iPhoneとiPod touchは合計4000万台規模の巨大プラットフォームになり、世界80カ国以上の人々の暮らしぶりを変え始めた。iPhone用アプリケーションの中には、1日に数万本が売れ、わずか数日間の売り上げで、家が建てられるほど大成功した「iPhone長者」も大勢生み出し、「21世紀のゴールドラッシュ」などとも呼ばれている。 そう、iPhone 3Gの登場でアップル開発者コミュニティーは、まさに幾光年先の未来まで飛躍してしまったのだ。 ■シラー上級副社長が登壇WWDCのオープニングイベントであり、唯一その内容が公開されている基調講演は、例年CEOのスティーブ・ジョブズ氏が行うが、今回は体調不良のための長期休暇から職場復帰に間に合わず、登壇しなかった(会社には姿を見せているという噂がある)。 ジョブズ氏に代わって講演を行ったのは同社上級副社長のフィル・シラー氏だ。 シラー氏は、まずこの数年でアップル社のOS技術であり、MacだけでなくiPhoneでも使われている「OS X」が、ものすごく巨大なプラットフォームになったことに触れた。 その数は、まもなく7500万人にものぼる勢いだ。 今回、このWWDCに世界から参加した5400人以上の開発者達は、いずれもがこのOS Xの開発者と言える。急成長するプラットフォームの勢いを反映して、イベントのチケットも昨年に引き続き完全に売り切れとなった。 さて、そんな巨大なコミュニティーに対してアップルが今回発表した内容は、大きくわけて4つある。 1つ目は、Macのノート型製品シリーズの一新と即時発売。 2つ目は、Macをさらに飛躍的に進化させる次期OS、Mac OS X "Snow Leopard"の詳細説明と、9月にこれまでより1万円近く安価な29ドルという新価格の発表(ファミリー版でも49ドル=約5000円)。 3つ目は、米国時間の6月17日に公開予定のiPhone/iPod touch用新OS、iPhone 3.0の詳細説明(iPhoneは無料。iPod touchは1000円前後)。 4つ目は、日本では6月26日の発売となる新製品「iPhone 3G S」の紹介。 ■ノート型製品シリーズを一新ここ数年、Macの利用者が急速に増えている。しかも、その利用者の多くがノート型製品、MacBookシリーズを購入している。 今回のWWDCでは、そのノート型シリーズがほぼ一新された。 前兆はあった。今年の1月に発表されたMacBook Pro、17インチモデルの発表だ。本体ボディと完全に一体化することで同じスペースに、より大きな容量のバッテリーを搭載し8時間の駆動を実現した。また最大8GBのメモリー搭載と最大500GBのハードディスク、または128GBのSSD搭載に対応した。 実は、この流れを継承してMacBook Proの15インチモデルも同様に、バッテリー長時間駆動(7時間)と最大8GBのメモリー、最大500GBのハードディスクまたは128GBのSSDの搭載に対応した。 だが、すごいのはここからだ! これに加えて、13インチの液晶を持つ、MacBookも、バッテリー長時間駆動(7時間)と最大8GBのメモリー、最大500GBのハードディスクまたは128GBのSSDの搭載に対応。さらにFireWire 800ポートも追加された。 これではもはやコンシューマー機とは呼べない、ということで、名前もMacBook Proに格上げされた。 ちなみに新しい13インチモデルと15インチモデルのMacBook Proでは、これまであまり使われることのなかった「ExpressCard/34スロット」に代わって、今やほとんどのデジタルカメラのメディアとして採用されているSDカードのスロットが標準装備された。これにより今後はカードリーダーを持ち歩かないでも、MacBook Pro本体だけでSDカードが読み込める(17インチモデルは引き続きExpressCardスロットを継承)。 さて、13インチモデルがMacBook Proに格上げされて、MacBookがなくなったのかといえば、そんなことはない。 実は前回のアップグレードで、驚くほどの性能アップが行われた白いポリカーボネート素材のMacBookホワイトが、アップルの最新ラインアップの一端を担う製品として復活したのだ(これまでは、教育市場など、特殊なニーズを満たすための製品と見なされ、アップル社のWebサイトの目立たないところに掲載されていた)。 MacBook Airにも変更があった。これまでに比べて大幅に値下げが行われ、わずか16万8800円から購入可能になったのだ。 ということで、アップル社はノート型シリーズをほぼ一新してしまった。 もっとも安価な白いMacBookは10万8800円で強烈なパフォーマンスを発揮し、MacBook Proシリーズは13万4800円から、という手頃な価格で、これまでのノートパソコンの常識を打ち破る高性能を発揮する。 そしてMacBook Airは、わずか16万8800円から。ライフスタイルまで変わりそうな、所有する満足感の高さを味わわせてくれる。 ■新OS、"Snow Leopard"をお披露目アップル2つ目の発表は、9月に発売予定の新OS、Mac OS X "Snow Leopard”だ。 同OSは、その名前からもわかるように、アップル史上もっとも成功したソフトウェア製品にして、現行OSの「Mac OS X "Leopard"」をベースにしている。 このOSの使い勝手のよさを損なわないようにした上で、製品価格やパフォーマンスなど目立たないところも含めて、OS全体の90%ほどをブラッシュアップしている。 このため、同OSをインストールするとMacのハードディスク空き容量が増え、動作速度が向上し、その上、これまで不自由に感じていた操作も楽に行えるようになる。 機能だけではなく、価格についても見直された。レパードから新OSへのアップグレード版は、なんと29ドルに設定されている(ファミリー版でも49ドル)。 このOSは、Macのプラットフォームを、大きく未来へ前進させるOSになる。8年前に誕生したMac OS Xとしては初めてのインテルMac専用OSとなっており、PowerPCのサポートにかかる余計な手間をなくしたことでOSのサイズ的にも6GBほどの余裕を生み出したのだ(つまり、インストールするとハードディスクの空き容量が6GB増えることになる)。 その一方で、Macが採用したインテルCPUのうち、Intel Core Duoを除くほとんどが対応している64ビット処理にも標準で対応した。これは1度に最大で従来の倍の情報を処理が可能な技術であり、Macで扱える論理メモリーも飛躍的に増大させる技術だ。 これまでのMac OS Xでは、OSの仕様のせいで、8GBを搭載していても、実質的にOS側で活用できるのはそのうち4GBまでだった。しかし、Snow Leopardでは、これが一気に160億GBまで増えたのだ。 また、これまでのMac OS Xでは、アプリケーションを起動しているだけでそのアプリケーションを使っていない間も動作速度に影響することがあったが、こうしたことを減らし、CPUをいかに効率的に使うかの交通整理役を担うGrand Central Dispatchという技術も加わった。 また、今や1テラフロップスというとてつもない処理能力を持つ、最新Macのグラフィクカードを、画像表示以外のことにも役立てるOpen CLという技術も実装する。 これに加えて、大幅に高速化されたSafari 4やメール、プレビューなどのアプリケーションも搭載される。 Finderにいたっては、ウィンドウの左下にアイコンサムネールの拡大表示を切り替えるスライダーが用意され、動画をFinder画面の中でプレビュー再生しながら、その大きさの変化を楽しむ、といったこともできるようになっている。 Safari 4では、過去に訪問したWebサイトの全文検索が可能になり、検索でヒットした候補となるWebページがカバーフロー形式で表示される。 動画再生技術のQuickTimeもQuickTime Xとなり、映像の邪魔にならないシンプルなインターフェースを採用するばかりか、簡単な映像編集をした上に、それをYouTubeやMobileMeなどを利用して簡単に共有する機能も用意された。 使い勝手の点でなんといってもすごいのは、新しいExpose機能だ。新Exposeでは、ドックに表示された起動中のアプリケーションのアイコンをクリックすることで、そのアプリケーションのウィンドウだけを絞り込み表示できる。これだけだとまだたいしたことはないが、例えばExposeを起動して、ドックのFinderアイコンをクリックすると、Finderのウィンドウの一覧が表示される。 このうち、写真ファイルが表示されているウィンドウにカーソルを合わせて、その1つをドラッグする。 ドラッグした写真ファイルのアイコンを、ドックのMailアプリケーションに重ねると、Exposeの表示がMailアプリケーションで開いているウィンドウの一覧に切り替わるので、そのまま写真ファイルを新規メールのウィンドウの上までドラッグしていき、マウスから指を離すと、なんと1度の連続動作でFinderのアイコンを、Mailの新規書類に簡単に添付できるのだ。これはぜひ基調講演のビデオ映像を通して確認して欲しい。 飛躍的前進となるSnow Leopardは9月のリリース予定だが、WWDCに参加した5400人の開発者には、ほぼ最終版と同じ仕様のものが配られたので、9月のリリース時には、Snow Leopardならではの機能を生かしたアプリケーションもたくさん登場しているかもしれない。 ■iPhone 3.0でiPhoneが大きく前進日本では1年弱前に発売されたばかりのiPhoneも大きく前進する。アップルは、WWDCでiPhoneについて2つの発表を行ったが、ここではまずOSの話。つまり、現行のiPhone 3Gや初代および2代目のiPod touchでも恩恵が受けられる機能を紹介しよう(なお、OSはiPhone 3Gユーザーなら無料で取得できるが、iPod touchユーザーは1000円ほどを払ってのアップグレードとなる──執筆時点では価格未発表)。 まず1つ目はMac OS Xでいうところの編集メニューの機能:カット、コピー、ペースト、そして取り消しがiPhoneで利用可能になる。 何か操作をして間違ったらiPhoneを左右に振ると、取り消しになるそうだ。 2つ目はランドスケープモード。これまではWebブラウザーなど、一部のアプリケーションでしか利用できなかったランドスケープ(横長表示)モードが、標準装備のほとんどのアプリケーションで利用可能になった。 ランドスケープモードでは、キーボードの表示が大きく打ちやすい、といったメリットがある。 3つ目はMMSの搭載。これまでのiPhoneにもソフトバンクのユーザー同士であれば、わざわざ相手からメールアドレスを聞き出さないでも、電話番号だけで、簡単なテキストメッセージを(それも楽しく)やりとりできるSMSという機能があったが、MMSは同じ方法で、写真や動画、今いる場所のGPSデータなど、テキスト以外の情報のやりとりを可能にする技術だ。iPhoneが発売される世界80カ国の中には、この機能を実装しない国も多いが、日本のソフトバンク社は、サービスを提供する。 4つ目は検索の機能も強化された。メールやメモ、iPod機能など、ほとんどの機能に、文字を入力して検索できるサーチ機能が追加されている。なんと、電子メールの検索では、サーバー上にあるメールまで検索ができる。 5つ目はSpotlight機能。上の検索は個々のアプリケーション内の情報しか探せないが、Spotlightという機能を使うと、すべてのアプリケーションを横断的に検索できる。つまり、どのアプリケーションで見たのかわからない情報を発見するのに有利だ。 6つ目。iTunes機能も強化されている。米国ではiTunesで、映画やテレビ番組などビデオコンテンツも多数発売、レンタルされているが、これらをiPhoneから直接買えるようになった。 7つ目は、ペアレンタルコントロールモード。子供には見せたくないコンテンツを表示しない機能で、これからは安心して子供にもiPhoneを持たせられそうだ。 8つ目はテザリングという機能で、iPhoneをモデム代わりにしてパソコンにつなぎ、パソコン側でのインターネット接続を実現する機能だが、日本のソフトバンクは、こちらの機能は提供しないと発表している。 Webブラウザーも大幅に高速化され、ビデオ映像のライブストリーミング対応にも対応した。また、今後重要になるHTML 5標準の対応や、Webページのフォームを自動的に書き込んでくれるオートフィル機能も搭載された。 アラビア語、ヘブライ語、韓国語など、これまで対応していなかった多数の言語に対応した。 さらにiPhoneを万が一、紛失した場合、拾った人宛にメッセージを送ったり、盗まれたと思ったら遠隔操作ですべての情報を削除し個人情報の流出を防げる「Find My iPhone」という機能も搭載された。 ここまではユーザー向けの機能だが、これに加えて大きいのが、開発者にとって恩恵がある機能だ。 例えばIn App Purchaseは、iPhoneアプリケーションビジネスを変えてしまう可能性があるサービスで、追加ステージの購入やコンテンツへの月額課金などを可能にしてくれる。 他のiPhoneユーザーと簡単にゲーム対戦できるようにするPeer-to-Peerの通信機能も搭載された。 さらにドックポートに接続可能な周辺機器の開発も可能になった。 そして、例えば新メッセージの受信などの通知を、iPhone本体に負担をかけずに行うPush Notificationという機能も搭載された。 新iPhone 3G Sの発表で、悔しい思いをしているiPhoneユーザーも多いかもしれないが、これまでのiPhoneでも、OSをiPhone 3Gにアップグレードすることで、これだけの新機能を享受できるのだ。 ■"S"はスピードの「エス」とはいえ、やはりiPhone 3Gユーザーは悔しい思いをするだろう。というのも、日本では6月26日から発売となる新製品「iPhone 3G S」は、やっぱりすごい機能を備えているからだ。 ちなみに「iPhone 3G S」の「S」はスピードの「S」だ。 ほとんどのアプリケーションの動作が2~3.6倍ほど高速になり、高度な3D処理が可能になるチップも搭載した。通信も最大7.2MbpsのHSDPAに対応している。 そんなiPhone 3G Sの新機能の中でも、もっとも重要な機能が、300万画素のオートフォーカス機能付きのカメラだ。 同カメラは画面に表示されている被写体をタッチするだけで、フォーカスと明るさ調節、色バランスの調節を行ってくれる。その上、毎秒最大30フレームの動画も撮影することができる。 撮影した動画は、そのままMMSやメールで送信できる。 これ以上にすごいのが音声コントロールの機能だ。iPhone 3G Sのホームボタンを押しながら、同機に向かって「電話」、「林 信行」、「自宅」といった具合に声で話しかけると自動的に私の自宅に電話をかけてくれる。 最初は英語のみの対応かと思われていたが、実は日本語にもちゃんと対応していた。 これまでiPod nanoやtouchにしか対応していなかったスポーツ系周辺機器、Nike+にも対応した。 セキュリティー機能がいっそう強化され、大企業でもさらに導入がしやすくなった。 またバッテリー動作時間も強化され、これまでだと約7時間しか連続再生できなかった動画が、10時間は観られるようになった。 基調講演は2時間ほどにわたって行われた。ここでは紹介できなかったが、iPhoneを実際に医療や教育、交通などの現場に活用しようとしている人達も登場し、iPhoneがいかに我々の社会までも変えようとしているかを強く印象づけてくれた。 昨年から「1年後、幾光年先へ」を標語にしたWWDC 09だが、このわずか2時間の講演の前と後だけでも、さらに数光年先の彼方に進んでしまったような印象を受けた。 ■Twitter、お題さあ、怒濤の発表があったWWDC、あなたはどのようにみましたか? ぜひ感想を、Twitterを使って共有してください。 さて、以前の連載で紹介した新フォーマットで、#appleseye のタグでお題を用意して、Twitterで返事を呼びかけたところ、非常に多くの書き込みがあった。 そこで引き続きTwitterを使って、読者の方の感想を募集したい。 答える際は、答えの最初に指定した2つのタグをつけるのを忘れないように(タグの間には半角の空白をいれるのを忘れずに!)。 お題1. お題2. お題3. お題4. お題5. |