No.243 - iPhone 3GSでスタート ──デジタルライフスタイルの第2章[2009年7月3日更新] ■iPhone 3GS、ついに国内でも発売!6月のWWDC 2009で発表された新製品「iPhone 3GS」がついに日本でも発売になった。「『S』は『Speed』の『S』」というだけあって、同じアプリケーションを起動しても、同じWebページを表示しても、これまでのiPhone 3Gと比べて圧倒的にスピードが速い。 パソコンだとマシンの外観が変わらなくてスピードが速いだけの新機種は「マイナーチェンジ」としてそれほど大きな注目を集めることはない。しかし、iPhone 3GSに関しては外観こそ変わらないが、触ればすぐにわかる「まったくの別物」に仕上がっている。 ちなみに外観が変わらないということは、これまでiPhone 3G用に作られたアクセサリーがそのまま使える、ということでもある。 iPhone 3Gといえば2008年には「ソフトバンク表参道」店から渋谷まで1Km近い長い行列を作り出したことが記憶に新しいが、今年のソフトバンクはバージョンアップしていた。 6月26日、朝7時からiPhone 3GSの販売を開始したソフトバンク表参道店では、契約窓口が混雑して混乱がおきないようにあらかじめ予約を受け付け、顧客から申し込みに必要な情報を受け取る体制を整えていた。発売の朝の300~400人近い行列は、あらかじめ予約済みの人の行列とそうでない人の行列に分け、週末限りのiPhone専門店と化したソフトバンク表参道に100人近いスタッフを配備した。 このため、発売日はちょっと寂しいと思えるくらいに混乱がなく、購入手続きが驚くほどスムーズに行われた。 昨年のiPhone 3G発売では、最初の顧客が7時ちょっと過ぎに入店してから、契約を終えて店を出てくるまで万全の準備であたっていたにも関わらず20分近くかかっていたが、今年はそれがわずか数分だったことから考えても、いかにソフトバンク側が準備をちゃんとしていたかがうかがえる。 こうした行列の体制だけでなく、梅雨時なので万が一雨が降った場合にも備え、徹夜行列の客が梅雨の雨に濡れることがないよう400人を収容できるクエストホールをおさえて前夜祭を開催するなどもしていた。 ソフトバンク表参道店で陣頭指揮にあたっている孫正義氏が深夜0時のカウントダウンとともに現れるという演出も行った。実は筆者は、この前夜祭のオーガナイザーをつとめさせてもらった。イベント前半では注目のiPhoneアプリ開発者によるデモ、中盤では会場の人々に壇上でお勧めのアプリを紹介してもらうコーナーを用意した。 ちなみにこのコーナーで接戦の末、優勝したスティーブン・ナガタ氏のお勧めソフトは、iPhoneから自宅のパソコンの画面を呼び出して、遠隔操作する「LogMeIn」というソフトだった。 イベントの後半では、日本でもっとも多くのApple Users Groupイベントを取り仕切っているMacお宝鑑定団会長、DANBO氏をゲストに招き、彼がわずか1日で集めた100を超える賞品を配るというじゃんけん大会を実施。次から次へと出てくる豪華な賞品の中には、iPhone 3GS本体よりも高価なものも多く会場も驚いている様子だったが、その後、さらにこれまたApple Users Group Meetingでお馴染みのトリニティ社とフォーカルポイントコンピュータ社が、自社の製品を紹介しつつじゃんけんで提供するプレゼント大会も行われた。 ちなみにソフトバンク表参道とほぼ同時、朝7時からiPhone 3GSの発売を開始したApple Store Ginzaでもちょっとしたイベントがあったようだが、こちらも混乱を避けるべく、あらかじめ顧客から予約を取り、ピックアップの時間を指定していたため、ほとんど行列という行列ができなかった。 人間とはぜいたくなもの。並ばずに済んだと喜ぶユーザーがいる一方で、さすがにここまで混乱がないとなんだかちょっと物足りない、と感じているユーザーも多いようだ。 もっとも、見た目には小さな変化でもiPhone 3GSが、携帯電話業界に与えたインパクトは大きい。 アメリカやカナダなど7カ国での先行発売されたiPhone 3GSは、わずか3日間で100万台が売れたという。3日で100万台というのは、昨年のiPhone 3G発売と同じ記録だが、昨年のiPhone 3Gは、世界21か国同時発売でそのスピード。それに対して今回はわずか7カ国で同じ記録ということで、昨年より3倍とはいわないまでも、売れ行きのペースがそれなりには加速していることが十分わかる。 ちなみにiPhone 3GSの勢いを示す統計が他のところからも出ている。新iPhone 3GSは、300万画素の動画撮影機能付きのカメラがついたことが大きな特徴で、同カメラで撮影した動画は、ボタンで選ぶだけで簡単にYouTubeに投稿できるのも大きな特徴だ。YouTubeはiPhone 3GSの発売後、動画の投稿数が1日あたり400%のペースで増えた、というのだ。 これからはあなたが目にするインターネット動画でも、iPhone 3GSからアップロードされたものの割合がどんどん増えていくのかもしれない。 ■iPhone、タッチ操作に加わる第2の操作方法今やIT系のニュースは、このiPhone 3GSの新機能や発売のニュースが目白押しだ。iPhone 3GSのスピード以外の特徴・新機能と言えば、300万画素のTap to Focus(タップしてフォーカス)操作の内蔵カメラや動画撮影機能、音声コントロールが目玉になるが、実はそれに隠れてもう1つ「ユニバーサルアクセス」機能にも対応しているのをご存知だろうか。 「ユニバーサルアクセス」とは、障害を持つ人でも、使いやすいように用意された一連の機能のこと。例えば目が弱くて通常の表示だとまぶしくてよく見られない人には、白黒を反転したやや暗めの画面で表示するモードが用意されている。 また片方の耳しか聞こえない人がヘッドホンで大事な情報を聞き漏らさないように、モノラルオーディオという機能もある(通常のステレオ再生だと、右チャンネル、左チャンネルしか聞こえない音がある)。 さらに画面をズーム表示してくれる「ズーム機能」も用意されている。同機能をONにして画面に指3本を揃えてタップすると、その部分がズーム表示される。アプリケーションの切り替え操作などを行っても、1度、全体像が見えた後、ビューンと画面が自動的にズームする。 ここまでの機能でも十分すごいが、さらにすごいのがVoiceOverという機能だ。これは画面が見えない視覚障害の人のための機能で、ほとんどすべての操作を、画面を一切見ずに行えるようにする機能だ。 iPhoneの操作は、画面上に表示されるアイコンやボタンといったオブジェクトを直接タッチ(タップ)して行うのが基本だが、VoiceOver機能を有効にすると「選択」、「実行」の2段階の操作になる。 画面上では常にどれか1つのオブジェクトが選択された状態になっており、iPhone 3GSが、どのオブジェクトが選択されているかを読み上げてくれる。 他のオブジェクト(アイコンやボタン)を選びたい場合は、液晶画面の上の好きな場所で、指を右方向にフリックする(下に何が表示されているかは関係ない)。すると次の項目(1つ右隣の項目か1つ下の項目)が選択され、名前が読み上げられる。逆に左方向にフリックすると、前の項目が選択される。 実行したい項目が選択されたら、画面の好きな場所をダブルタップする(2回叩く)。するとその項目をタップしたのと同じ状態になり、画面に変化があった場合には、どんな表示になったかを再び読み上げてくれる。 ちなみにSafariを起動してWebページを表示させるときも「読み込み完了」を声で知らせてくれた上で、右フリック操作を繰り返せば1段落ごとに文章を読み上げてくれるので、iPhoneをポケットに入れたままの操作で、「Webページを聞く」ことができてしまう。 こうしたユニバーサルアクセスの機能の多くは、普段はそうした障害を持たない人にも便利なことが多い。例えば目を怪我して、一時的に見えなくなっているときはもちろん、暗闇の中で作業をしなければならない時や、狭くてiPhoneを体の前に構えることができない時などもそうだろう。 ユニバーサルアクセスの機能は、何も今回iPhone 3GS用に作られた機能というわけではなく、Mac OS Xの中にも組み込まれている。黒地に白、ズーム機能、VoiceOverはいずれも元々、Mac OS Xで実現していた機能だ。 その中でも「ズーム機能」は、Macでのプレゼンテーション中に、画面の一部を拡大表示するための機能として多くのビジネスマンも愛用していた。 ただし、iPhone 3GSは、日本語でのVoiceOver機能やモノラルオーディオなど、まだMacには搭載していないユニバーサルアクセス機能もいくつかある。 iPod touchで採用されたマイク付きヘッドホンが最新のMacBook Proでも使えるようになったり、MacBookから始まった2本指操作がiPhone上で洗練され、MacBook Proにも3本指、4本指でのジェスチャーをもたらしたように、アップル社の各製品は相互に緩やかな影響を与えつつ共に進化している。 そう遠くないうちに、Macでも日本語のVoiceOverが実現することはおそらく間違いないだろう。 ■社会インフラに食い込むデジタルライフスタイル第2ステージアップル社は2001年、「デジタルライフスタイル戦略」を始動させた。身の回りのデジタル機器を、Macを中枢としてつなぎあわせることで、より楽しく、より快適なデジタルライフスタイルが送れるという戦略だった。このビジョンが多くの共感を得たことはiPodの成功が裏付けしている。 アップルを中心に広がったデジタルライフスタイルのおかげで、音楽や写真の楽しさは大きく広がった。iPodの登場後、多くの人々が「久々に音楽を聴くようになり」、iPhoneの登場後、Flickrなどの写真共有サイトにはiPhoneで撮った写真が日々大量に投稿されるようになり、今度はiPhone 3GSの登場でYouTubeへの動画投稿も急激に増えた。 しかし、これらはいずれも、それなしでも過ごせる「楽しみ」の部分に過ぎなかった。 筆者は今、アップルはデジタルライフスタイル戦略の次のステージでは、生活インフラに踏み込もうとしているのではないかと思っている。 例えば今回、iPhone 3GSで採用されたユニバーサルアクセス機能が端的な例だ。iPhone 3GSは、おそらくこれまであった数あるインターネット端末の中でも、視覚障害者にとってもっとも手頃な携帯型インターネット端末の1つではないだろうか。 ![]() AirStrip Technologyの患者の情報を監視できるアプリケーション ![]() ZipCarのiPhone用アプリケーション、 予約から借りる車のアンロックまでiPhone上から可能 ![]() iPhoneあしながプロジェクト(仮名) それだけではない。新しいiPhone OS 3.0では、新たにドック端子を使った周辺機器が開発できるようになったため、例えばジョンソン&ジョンソン社傘下のLifeScan社が糖尿病の人向けにiPhoneを使って血糖値をモニターする「OneTouch」という製品の開発を進めている。これを使えばiPhoneに接種した食事の内容を入力するだけで、どの程度のインスリンを接種したらいいかがわかる。 Tom Tomというオランダにある世界トップクラスのカーナビメーカーも、自社のカーナビの売り上げを損なう可能性もあるiPhoneアプリ版のカーナビを発売し、iPhoneを車載するための周辺機器まで開発した。 AirStrip Technologyという会社は、iPhoneを使って遠隔地から患者の心拍数や血中成分などの生体反応の情報を監視できるアプリケーションを開発した。 医者不足が問題になっているのは日本だけではない。院外の患者の診療中や休み中に患者の容態が急変したとき、AirStripの製品があればすぐさま医療データーの変化をチェックして、看護スタッフにすぐさまどのような対応をすればいいかの指示を出すことができる。 ZipCarという会社の試みも面白い。同社は米国と英国で展開する世界最大規模のカーシェアリングサービス会社だ。カーシェアリングとは、車を所有せずに必要なときだけ借りられる会員制サービスで、貸し出し手続きが自動化されたレンタカーのようなシステムのことだ。 わざわざ自宅の駐車場まで戻らないでも好きな場所で借りられる自由や、気分にあわせて車を選べる、といったメリットもある。 ZipCarが開発したiPhone用アプリケーションを使うと、GPS情報をもとに周囲にあるZipCarの拠点(大半は公共駐車場)を探し出してそれぞれの拠点にどのような車があるかを表示、気に入った車があればそのままiPhone上で予約できるというものになっている。 駐車場に行った後、iPhone画面に表示されるクラクションのボタンを押すと、今、借りようとしている車のクラクションが鳴って、どこに駐車されているかを教えてくれ、iPhone画面上のアンロックのボタンをタップすれば車の鍵がアンロックされる。 2001年1月の「デジタルライフスタイル戦略」発表から8年半、今、iPhoneを中心としたアップル製品は、生活の楽しみの部分だけでなく、日々の生活の根っこの部分、社会インフラの部分にまで影響し、広がろうとしているようだ。 なお、iPhone 3Gユーザーの中には、iPhone 3GSのスピードや新機能に目を当てられ、乗り換えた人も多いはずだ。そのような乗り換えをしても、旧モデルのiPhone 3Gが、通話と3G通信以外の機能はちゃんと使えるのもiPhoneの素晴らしいところだ(これまでの携帯電話の中には、解約してしまうと購入した音楽も聴けなくなってしまうものが多かった)。もっとも、まだまだ使える旧iPhone 3Gを世の人のために役立てたいという人には、徳島文理大学教員の林 向達氏が使わなくなったiPhoneを集めて学校に貸し出す「iPhoneあしながプロジェクト(仮名)」を立ち上げようとしているので、連絡を取ってみるといいかもしれない。 ■Twitter、お題iPhone 3GSの発売でさらに大きな跳躍を果たしたアップル社。みなさんは、このiPhone 3GSをどのように見ていますか? ぜひ感想を、Twitterを使って共有して欲しい。 答える際は、答えの最初に指定した2つのタグをつけるのを忘れないように(タグの間には半角の空白をいれるのを忘れずに!)。 お題1. お題2. お題3. お題4. |