
[2006 年 5 月 12 日 掲載]

10 年ほど前、インターネットが一般に向けて一気に広がる前には「ネチケット」という言葉が、盛んに使われた。
「 (インター) ネット」と「エチケット」をあわせた造語で、インターネット利用者が、暗黙のうちに守るべき礼儀作法のことだ。
たとえば数百 KB 以上のファイルが添付された「巨大」メールを送る際には、あらかじめ相手に可否を尋ねるというのも、そんなネチケットのひとつ。
当時はインターネット接続といえば、モデムでつなぐのが当たり前なので、通信速度は 33.6Kbps 程度。8Mbps の ADSL と比べても 245 分の 1 の速度だった上に、通信時間に比例して電話代とアクセス料が加算されていたので、当然といえば当然の礼儀だ。
ブロードバンド時代が到来し、ネットもつなぎっぱなしが当たり前になった今、こうしたネチケットは不要になってしまったのだろうか?
筆者は形は変わりこそすれ、今の時代背景にあった、それ相応の作法があると思っている。今回はそれをまとめてみたい。
一口にメールのエチケットといっても、いろいろとあると思う。たとえば、どれくらいのサイズまでのファイルなら添付してもいいかという問題もあれば、ファイルの添付方法についてのルールもありそうだ。また、メールがこれだけ我々の日常に入ってきたことを考えると、メールの書き方についてもいくつかルールがあった方がいいかもしれない。
今回は、添付ファイルなどについてはさらっと簡単に触れ、筆者のこれまでの経験にもとづいた仕事上のメールの書き方についての提案をいくつかしてみたい。
なお、前回、書いた旅行先からのインターネット接続について補足したいことがでてきた。渡航先でインターネットにつながっても、メールをうまく送信できないことがあるが、その場合の対処法だ。これについては、前回の記事に追記した。
興味のある人は参考にして欲しい。
添付ファイルの作法は単純なようで奥が深い。いずれ、別の機会にたっぷり紹介したいが、メールのやりとりで一番問題が多いのもこの個所なので、今回はいくつかの基礎的なことがらだけまとめておこう。
1.「複数ファイルは圧縮して添付」
複数のファイルを添付するときは、一度それらをひとつのフォルダに入れて zip 形式などで圧縮し、ひとまとめにするといい。なお、Windows とのやりとりでは、『個々のファイルのファイル名がアルファベットだけで表記されているのが望ましい。』日本語ファイル名が混じっていると、相手の環境によって解凍できたり、できなかったりすることになる。相手が使っているパソコンの種類がわからないときも、もちろんそうする。

2.「画像、動画、PDF ファイルは圧縮しない」
メールに添付するファイルが1つの場合でも、容量を抑えるために圧縮するのが望ましい。ただし、例外的に圧縮しても意味がないファイルもある。たとえば JPEG 画像や QuickTime などのムービーファイルは、それ自体がすでに独自の方法で圧縮されており、それをさらに ZIP などの方法で圧縮しようとするとかえってファイルサイズが大きくなることがあるのだ。同様に PDF ファイルでもあらかじめ圧縮されていることが多い。
これらのファイルはそのまま添付することでメール画面の中でインライン表示 (メールの本文と共に表示) できるというメリットもでてくる。

3.「テキストファイルはケース・バイ・ケースで」
一番簡単そうで実は一番難しいのがテキストファイルの添付だ。実は素のテキストファイルをそのまま添付してしまうと、相手が使っているメールソフトによっては、勝手にそれがメール本文と合体させられてしまうことがある。しかも、その際に文字化けをおこすこともある。テキストファイルは場合にもよるが ZIP などの方法で圧縮して添付してから添付した方が問題が少ない。
4.「大きな添付ファイルは別送する」
10 年前はわずか数百 KB のファイルでも添付するのをためらったものだったが、ブロードバンド時代の今日ではこの水準はあがっている。1MB 程度の写真を添付するのは日常的に行われている行為だ。ただし、だからといって行き過ぎはよくない。今日でも相手が外出先から PHS で通信している場合の通信速度は速くても 256Kbps (場合によっては 32Kbps) になるし、相手が旅行中で海外から接続料の高価なインターネットアクセスをしているケースもある。
このため相手に迷惑をかけない添付ファイルサイズを決めるのは難しいが、最大でも 5MB くらいまでに収めた方がいいだろう (実際、多くのプロバイダーは添付ファイル容量の上限をこの程度に定めている) 。
それより大きいファイルの受け渡しは「.Mac」の iDisk などのインターネットストレージサービスを使ったり、「宅ふぁいる便」などの大容量ファイル受け渡しサービスを活用し、別送するといいだろう。
添付ファイルの作法は奥が深く、いろいろ例外規則も多い。今回の記事の反響やリクエストに応じて、いずれまた詳しく書いてみたい。
それでは以下は今回のメインテーマ、メール本文の作法について書こう。
仕事メール、3つの心得
あなたは毎日、電子メールを何通くらい受け取るだろう ?
中にはアドレスを友達にしか知らせておらず数通という人もいるかもしれないが、家族や友人、仕事仲間や取引先など、つながっている人が多くなればなるほど便利なのが電子メールだ。e コマースショップの特売情報や関心事についての最新情報が綴られたメールマガジンだって見逃したくない。こうやって手を広げていくと、どんどんメールの受信数は増えていく。1 日、十数通から数十通のメールを受信している人も大勢いるのではないだろうか (*1) 。
ただ、メールが急激に増えると、1 つ 1 つのメールの印象も薄くなっていく。1 日に覚えられることにも、できることにも限界があるので、だんだんと返事を忘れるメールが増えてくるし、大事な用件が記されていても、それを忘れることも増えてくる。
1 通 1 通のメールにかけられる時間も少なくなってくるので、さっと読み流すことが増えるようになる。大事な部分をすっかり読み飛ばしてしまい、かなり後になってから「それは◯通前のメールで書いたよ」という話になることも多いのではなかろうか。こうしたことにならないためにも、メールの書き手には工夫が求められる。
もちろん、その書き方は、相手やシチュエーションによっても異なるが、特に仕事のメールや、人に何かものを頼む際のメール、相談する際のメールでは、以下のことが重要になる :
[1] 要点がすぐに目に飛び込んでくるか
[2] 案件の内容や数がくっきりと浮き立っているか
[3] これまでの話しの流れを追えるか
挨拶は短く、心を込めて
上の 3 点からはずれる、挨拶はあまり冗長に書かない。人にお願いごとをするときなどは特にだが、どうしても
拝啓、 おだやかな小春日和が続いております。ご家族の皆様にはますますご清祥のことと存じます。
すっかり、ご無沙汰してしましましたが、先々週の飲み会の後は無事に帰れましたか。(NG 例)
といった具合に、仕事の話しを切り出す前の緩衝剤、不自然に長く挨拶をしてしまうことがある。
こうした挨拶文は、自分の言葉で綴っていれば、相手にも感じ入るところがあるが、いかにもな定型文では、相手も時間の無駄と思うだけ。それなら、俳句でも書くようなつもりで、短くても心を込めた挨拶を書いた方がいい。仕事のメールならなおさらだ。
メールのブロック構造化
相手がメールを読み返した時に、すぐに用件のおさらいができることも大事なことだ。
というのも仕事や用件をたのまれた相手が、そのメールを再び読み返すこともあるからだ。
どうしても挨拶ごとをいれないと気持ちが悪いという人は、挨拶部分と本文部分の間に 1〜2 行の改行を入れる。
このようにメールの中身をブロック構造に分けることで、2 度目以降に読むときは挨拶部分をまるまる読み飛ばすことができる。カセットテープと CD の違いのように、仕事のメールでは頭出しのしやすさも重要なのだ。

目的/結論を最初に
同様に、用件が書かれた本文もすっきりと短く、意図が伝わりやすいように心がける。まごまごして
まことに言いだしにくいことなのですが、ぜひひとつお願いしたいことがあります。A さんは以前から、B 社さんの C 専務ともおつきあいがあるといっていましたよね。私どもはこれから事業拡大に向けて、B 社さんとの提携も視野に入れております。つきましては、今度、1度、ゴルフの時にでも B 社さんの C 専務にもご紹介いただければ...(NG 例)
長い挨拶の後に、こんな文章がつづいていては、パッと見た瞬間にどの部分が用件なのか把握できない。まず、最初に結論を持ってきて、スパっと用件を書き出し、そこから丁重に説明していく。この方が用件が伝わりやすい。
今度、1度、ゴルフで B 社さんの C 専務とご一緒させていただけませんでしょうか。
仕事の話で恐縮なのですが、私どもはこれから事業拡大に向けて、B 社さんとの提携も視野に入れております。ただ、残念ながら今のところは、話しのとっかかりがあまりありません。そんな中、以前、A さんが以前から B 社さんの C 専務とつきあいがあるという話しを思い出しました。失礼とは思いますが、もし近いうちに機会があれば、ぜひともよろしくお願いできればと思っています。
複数の用件を浮き立たせる
困るのが用件が複数あるときだ。たとえば
先日出した広告の原稿に間違いがありました。35% となっているところは 25% の間違いです。これは深刻な問題なので、ぜひ早急に直してください。さらに枠外に書いてある「7 月 31 日まで」という部分も期間限定商品であることを強調して『期間限定!(〜7/31 まで)』にしましょう。それから説明文の 3 行目は『雨の多い季節ですが』も掲載時には梅雨明けしているようなのでとりましょう。(NG 例)
こんな調子で用件をひとまとめの文章で書くと、ミスコミュニケーションの元になりかねない。自分はしっかりつたえたつもりでいても、目の前の仕事でバタバタしている相手は、パソコンの前で腰を落ち着けてメールを細部まで読んでいる余裕はないので、最初の何件かは覚えていても、いくつかの用件は見逃してしまう可能性がある。こうした問題を大幅に減らしてくれるのが箇条書きだ。
先日出した広告の原稿に間違いがありました。
1. 35% ー> 25% の間違いです【重要 !】
2. 「7 月 31 日まで」 → 「期間限定!(〜7/31 まで)」: 枠外の表記もこうしましょう
3. 3 行目 :「雨の多い季節ですが」 → 削除 (掲載時、梅雨明けしているので)
といった具合になる。箇条書きにしたものは、そのままプリントアウトしたり、メモ帳ソフトなどにコピー & ペーストした際の To Do リストにもなる。つまり、案件を 1 つ対処するごとに、その行を線で打ち消したり、削除したりすることで、やり残しを防げるのだ。
話しの流れを 1 つのメールで
仕事の用件を書いたメールでは、読み直した時のわかりやすさが大事だ。
たとえば大きなプロジェクトをやりながら、別のプロジェクトについてもメールで打ち合わせをしていたとしよう。それまでのプロジェクトが一段落して、打ち合わせしてきた案件に取りかかれる。「それじゃあとりかかるか」と最終案が書かれているはずのメールを見るとこう書いてある。
そうですね。第 1 幕はそれでいいと思います。
問題は第 2 幕ですね。順番を逆にしましょう。
第 3 幕については、最初のメールの案でいいと思います。(NG 例)
「逆?」、「最初のメール?」──あなたがこのメールを受け取ってからは 3 日が経っており、その間には関係ないメールが数十通も貯まっている。最初のメールもどれだったか思い出せない。確かに Mail や Entourage には、差出人や件名を入力してメールを絞り込み表示する機能があるが、それにしても 1 件 1 件読み返していくのは時間と手間がかかる。
一番、理想なのはメールで常にまとめとなる最終案の全貌が見えるようにすることだ。
第 2 幕は逆にしましょう。第 3 幕は最初のメールの案で、つまり :
序盤 : 青、白、黒の順番でステージに登場
中盤 : 赤、黄色の順番で左袖から登場
終盤 : まずは白が中央から登場し、つづいて左右両袖から黒が登場
ということです。
こうやって議論しをしながら、常に全体像が見える文を加えておくと、読み返したときの把握しやすさに大きな差が出てくる。こうしたまとめの文はコピー & ペースト操作で、比較的手間をかけずに挿入することができる。このように書くのが面倒な場合、メールの末尾にこれまでのメールの引用を残しておくだけでも、かなりわかりやすさが違う。
ビジネスでメールを使いこなしている人達とメールでやりとりをすると、返信メールの末尾に必ずそれまでのメールのやりとりが引用されている。何もコピー & ペーストをする必要はなく、Mail でも Entourage でも「返信」を選ぶと自動的に挿入される。議論を続けるにつれ引用部分はどんどん継ぎ足され雪だるま式に大きくなっていくが、今日のブロードバンド通信はそれを許容して余りある通信速度を持っている。
頻度の高いやりとりはメッセンジャーへ
1 つの画面で表示できるメールの数は限られている。画面からはみ出したメールについては忘れてしまうことも多い。なので、1 つの画面には、できるだけ多くの案件のメールを表示しておけるのが理想だ。
特別重要なメールはフラグをつけたり、重要メールを集めた別フォルダに仕分けするといった受信者側の努力も必要だ (フラグをつけておくと、後でフラグがついたメールだけをまとめて表示できるので便利だ。用件の済んだメールからフラグを外していけばいい) 。
しかし、送り手側にもむやみやたらとメールの数を増やさないような工夫が必要だろう。
「OK」、「えー、それはやめましょう」といった一文しか書いていないメールのやりとりが続くようなら、途中からチャットや電話に切り替えた方がいい。このことについては、実は以前に「Apple's Eye Annex : Microsoft Messenger for Mac 5.0 リリース記念 メッセンジャーの時代がやってきた」という記事でまとめたことがあるので、ぜひそちらも参考にしてもらいたい。
なお、メッセンジャーで打ち合わせをした後に話し合って出た結論をお互い宛にメールしておくと、あとでその内容を忘れた時に便利だ。いちいち文章としてまとめ直すのが面倒な場合は、メッセンジャーのログをメール本文にコピー & ペーストするだけでも違う。
親しき仲にもネチケット?
ここまで仕事上でのメールのやりとりに関する話が中心となったが、親しい間のやりとりにも、ちょっとした作法はある。
親しき仲にも礼儀ありではないが、親しいもの同士でもできるだけ丁寧な言いまわしをした方が誤解が少ない。
何ソレ ? 絶対ダメ ! (NG 例)
といったメールがきたとしよう。メールでは、相手がふざけていっているのか、怒っているのか伝わらない。読み手のその時の気分や心持ちで心の中で声に出したときのトーンが変わってくる。何か落ち込んでいやなことがあった時には、相手はふざけているつもりでも「なにもそんなキツイ言い方をしなくたっていいじゃないか。ひどいな!」という話しにも発展しかねない。
短い、キツメのことばを使うときは、誤解のないように顔文字などでその真意を補った方が誤解が少ない。
ここまで書いてきた作法は、筆者がこれまでの経験で作りあげてきたもので、(他の Apple's Eye の記事同様) マイクロソフト社が推奨する方法でもなければ、インターネット関係のどこかの団体が定めたものでもない。
ただ、これらすべてのルールの神髄にあるのは、メールが読みやすいように、把握しやすいように、そして不快感を与えないように相手の視線にたって捉え直してみる、ということだろう。
筆者の場合は、1 日平均 500 通前後。多い日には 1,000 通を超えることも。もちろん、受信するメールの大半は迷惑メールで、その多くは自動的に迷惑メールとしてフィルタリングされるため、実際に目にすることはない (ただし、たまにここに重要なメールが紛れていることがあるので、目は通していなくても数ヶ月間は削除できない) 。
しかし、このフィルタリングから漏れる迷惑メールだけでも 1 日 20〜30 通はある。目を通したいけれど、通す余裕がないメールが十数通、通さなければならないメールが十数通だ。読者の方の多くは、ここまでひどい状況ではないと思うが、甘く見てはいけない。これはもしかしたら、あなたの数年後の姿かもしれない。
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