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No.176 - マイナーチェンジに見えた新MacBook Proで、 Macの魅力を再発見。

[2006112更新]

■新MacBook Proに至るまでの道のり

Macの魅力ってなんだろう? 10月に発表された新MacBook Proは、一見するとただスピードが39%速くなっただけのマイナーモデルチェンジに思える。しかし、よくよく調べてみると、細かなところまで非常によくリファインされている。

何よりも驚かされたのは、内蔵iSightカメラの横にあった黒い小さな穴がなくなったことだ。

この穴、実はiSightが動作しているかどうかを示すインジケーターになっている。PhotoBoothなどのソフトを起動してカメラがオンになると、ここが緑色に光っていたのだ。

このインジケーターがないとユーザーは、「もしかしたら、今の自分は誰かに覗かれているかもしれない」という不安にさいなまれながらMacに接することになる。またPhotoBoothを起動しっぱなし、iSightの電源も入れっぱなしで、バッテリーを無駄に早く消耗させていたとしても、それに気が付かない。

iSightのインジケーターは、実は非常に重要な役割を果たしているのだ。

では、新MacBook Proは、この大事な光を無下に取り去ってしまったのだろうか?

PhotoBoothを起動してみてびっくりした。なんと新MacBook Proでは、iSightの横のなんの変哲もなさそうなアルミベゼルの内側からポッと緑色の光の点が現れるのだ。

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およそ光りを通しそうにないアルミから緑の光りが透けて見える。この不思議な現象を実現するために、アップルはいったいどれだけの努力を費やしたのか。どれだけの技術を研究し、どれだけの人に会い、どれだけの試行錯誤を繰り返したのかと考えると、気が遠くなる。

■止まらない進化の足どり

筆者にはアップルがなぜこれをしなければならなかったかはよくわかる。まだ発表されてから1年にも満たないインテルMacのノート機には、このiSight内蔵のあるべき姿を模索する足取りを見て取ることができる。

1月に発表されたMacBook Proでは、カメラの右側に黒い点のようなインジケーターが普通に配置されていた。それほど大きな穴ではないが、画面に集中して作業をしている時、ふと見上げると気になる点ではある。

初めてMacBook Proに触れた人は「この点はいったいなんだろう?」と疑問に思ったかもしれない。

その後、登場したMacBookではiSightカメラの左右両側に対称的に点が置かれた。この工夫によって見る人も「ふーん、そういう外装なんだなぁ」となんとなく納得できるようになった。対称性が違和感を緩和してくれたのだ。

ちなみにこの2つの点、実はまったく同じものではなく、向かって右側がiSightのインジケーターで、左側がマイクになっている。

ただ、存在感の強さを弱めることはできても、「そこに点がある」という存在そのものは、消すことができていなかった。

節目なくなだらかなMacBook Proの表面にポツンと開いた穴──アップルの工業デザインチームは、長いことどうやったらこの穴を無くせるのか頭をひねっていたのだろう。

こんな不可能に思える命題に直面したら、たいていのデザイナーは「それは無理」とあきらめて、穴を目立たせなくする工夫や装飾の方に目を向けてしまうことだろう。しかし、アップルのデザイナー達はあきらめず、これを実現してしまった。おまけに、こんなすごいことを達成しながらも、製品そのものの機能や性能には関係がない部分ということで、取り立てて宣伝するわけでもなく、サラリとやってのけている。最近、流行の「開発者苦労話」とか、「開発秘話」の類いもない。

MacBook Proの公式ホームページを見ると、確かに「iSight」というページで、この内側から光るインジケーターの拡大写真が載ってはいた。しかし、それについて特に何か書き立てているわけでもないので、MacBook Proが発表されてから数日間、この事実に気がつき、取り上げている人もいなかった。

騒がずサラリとすごいことをやる。

こういう姿勢をみると、アップルのモノ作りというのは、アーティストの姿勢に近いのだな、と改めて思わされる。

そういえば1984年に発売された最初のMacでは、アート作品よろしく、筐体の内側に開発エンジニアらのサインが彫られていた。

実は同じようなことはiPodでも体験している。どのモデルだったか正確に思い出せないが、あるときiPodのマイナーチェンジが発表になった。容量が多少増えてはいたが、外観はほとんど変わらない。そのため、歴代のiPodを買い揃えている筆者も、この時は購入を控えた。

ところが、後からそのマイナーチェンジモデルを購入した友人に、気がつきにくい変化があることを教えてもらった。なんとヘッドホンを抜くと、自動的に再生が一時停止するようになっていたのだ。

家に帰り、まったく同じ外観の筆者のiPodで曲の再生中にヘッドホンを抜いてみたが、一時停止にならず曲を再生し続けている。

実はちょっとしたマイナーチェンジにも、よく使わないとわからないこんな変化を忍ばせている──それがアップルという会社だ。

■変えることがデザインではない

さて、このMacBook Proの発売にあたり、アップル社の プロダクトマーケティングディレクター、服部浩氏にお話を聞くことができた。

まずはIntel Core 2 Duoという新CPU搭載にいたっても変わらない外観デザインについて尋ねると、アップル社工業デザイン部門副社長、ジョナサン・アイブが数ヶ月前に答えていたインタビューでの言葉を引用した。「変えることがデザインではない」というものだった。

服部氏は、そういってMacBook Proを閉じると、「MacBook Proのデザインの良さは、日本人にこそわかってもらえるものだ」と語った。

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節目のないきれいな面や、肌触りのいい表面仕上げ、エッジの切り方の美しさ。

実際、筆者もある夕方、MacBook Proの前身、PowerBook G4に夕陽が射し、丸みを帯びた角にきれいなグラデーションを帯びた陰影が描かれるのを見て感動したことを思い出した。

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さらに服部氏は、 「こうしたクラフトマンシップ。モノとしての質の高さ、そしてiSightインジケーターのようなところにまで至るこだわり──こうした部分は審美眼の磨かれた日本人にこそわかってもらえるものだと信じています」とも語った

確かにそうかもしれない。 しかし、日本では新しいノート型Macが出ると、すぐに話題になるのは、「速さ」、「重さ」、「バッテリー寿命」だ。

■軽さとバッテリー寿命に対する誤解

「新MacBook Proは、バッテリー寿命が30分程伸び、15インチモデルで最大5時間動作するようになった」と服部氏は言う。

でも、Windowsノートには平気で7〜8時間動作するものがある。こう言うと服部氏は、「確かにWindowsノートには極めて軽いものや、極めてバッテリー寿命が長いものがある」と認めたうえで、「ぜひMacBook Proを同じクラスのIntel Core 2 Duo搭載マシンと比べて欲しい」と提案してきた。

そこで実際に探してみることにした。

探してみるとおもしろくて、実はまだWindowsのノート機でも、Intel Core 2 Duo搭載機はまだまだ少ないことに驚かされた。

なんとか、搭載機を見つけても、CPU動作速度は1.66〜2.0GHzくらいが中心で、MacBook Proと同じ速度のものは見当たらない。

服部氏は、「MacBook Proは、確かにIntel Core 2 Duo搭載では後発でしたが、そのまま後発に留まるのではなく、後発の強みを活かして、今回のMacBook Proでは一気に先頭集団に躍り出ることができたと思います」と自信をうかがわせた。

なかなか同じ速度のCPUが見つからないので、ややCPU性能が落ちるものも含め、液晶サイズをベースにした比較を行ってみた。 まず、15インチ液晶搭載マシンでは重量3〜4.3kgくらいの重量が一般的で、バッテリー動作時間は1.7〜3時間ほどだった(これはぜひ、皆さんも実際に検索して試してもらいたい)。

ちなみにMacBook Proの15インチは2.54kgで駆動時間は最大5時間。驚いたことに、Intel Core 2 Duo搭載15インチノートでは、かなり軽い部類に入り、バッテリー寿命も長い。

では、17インチモデルはというと、他社の製品は4キロ台後半(4.9kg前後)が多く、バッテリー動作時間は2〜2.6時間程度だった。

これに対してMacBook Pro 17インチは3.08kgで5.5時間と、かなり優秀だ。

実は「Macだから重い」、「Macだからバッテリー寿命が短い」というのは一種の都市伝説であるようだ。

では、何が問題だったのかをあらためて考えてみると、どうやらアップルが「機能を削ぎ落とした軽量モデルを用意していない」というのが問題の本質だったようだ。

■アップルはなぜサブノートを出さないのか

それでは、なぜ、アップルはそうした製品を出さないのだろう。

それに対して服部氏はこう答えてくれた。

「日本では、機能を削ぎ落として軽量化したサブノート機を出して欲しいという意見がよく聞かれます。ただ、アップルの製品作りはよりバランスのよい製品を作ることにあります。別途メインマシンを用意する必要があるマシンではなく、ちゃんとそれ1台で日常のメールチェックからiLife体験まで楽しめる。それがMacの条件となっているのです」

確かに気が付けばMac mini、MacBook、iMacに1種類ずつコンボドライブモデルがあるが、今ではほとんどのMacがSuperDrive搭載、つまりiTunesやiPhoto、iMovie HD、iWebはもちろんだが、iDVDを使ってスライドショーやホームムービーをDVD作品に仕上げることまでできてしまうのだ。

これがMacとしての前提条件だが、さらにMac ProやMacBook Proといったプロ用製品は、ターゲットとなっているプロフェッショナルユーザー向けに最適化されているという。特にMacBook Proで言うと、クリエイティブ・プロフェッショナル向けの「モバイルスタジオ」となることを目指した。

プロとしての仕事環境のすべてを、一冊のノートパソコンに凝縮することで、これまで実現できなかったようなことが可能になる。

たとえば国内のある番組では、取材した内容をその場でノート型Macを使って編集。短いビデオクリップであれば、そのままインターネット経由で編集動画を送ったりすることもあるようだ。Macを導入するまでは、中継車を手配して、その中のスタジオで編集したり、ビデオテープをテレビ局に大急ぎで届けたりする必要があったのだから、コストの点でもスピードの点でもかなり融通が利くようになったことだろう。

■Windowsノートでも売れ筋はフルスペック仕様

Macが軽くないという都市伝説について、服部さんは、もう1つの答えを用意していた。「実はマスコミ関係の方の間では、確かにサブノート機を求める声が多いですが、実際に市場を調査してみると、Windowsノートでも売れているのは、そうではないフルスペックモデルなんですよ!」

果たして本当だろうか。日本ではBCNランキングが週替わりで売れ筋パソコンのランキング情報を紹介している(最新ランキングにある「ノートパソコン」というリンクをたどればよい)。

これを使って過去の人気製品を調べてみても、確かに売れ筋製品は2kg台後半から3kg台半ばくらいまでの中堅製品が多い。

できれば、そうしたバランス製品に加え、毎日持ち歩いても苦にならない軽い製品を出して欲しい、という願いは筆者にもある。

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しかし、最近、ちょっと考え方が好意的になってきた。

最近、筆者はMacBookを持って外出しても、途中でコインロッカーやクロークを見かけるとすぐに預けてしまう。こうしてサイフと携帯電話だけの身軽な身で行動すると、本屋にいる時間も、美術館で過ごす時間も、友人とお酒を飲んでいる時間も楽しくなる。

実は最近では携帯電話が進化してきたので、MacBookを常に肌身離さず置いておかないでも、それほど困らないのだ。

たとえばメールをしばらく受信していなくて気になったら、携帯電話を開き「リモートメール」などのサービスを利用して携帯電話でチェックすることができる。

ちょっとしたテキストファイルやWord、Excel書類、さらにはPDFも、携帯電話を使って開いて確認できるようになりつつある。

さらに、インスタントメッセンジャーも使える。最近、NTTドコモとauの携帯電話ではWindows Live Messengerが使えるようになったのだ。

MacBookのように、フルキーボードを活かして長文の返事を書くことはできないが、「今、外出先なので、21時に帰宅してから校正を送ります」といった応急処置的なメールなら送ることができる。

ここで下手にMacBookを持っていることが相手に知れると、「急いで返事をください」などと言われ、駅のホームでMacBookを開いて作業、なんていうことになりかねない。

MacBookを持ち歩いていることは、秘密にしておいた方が都合がいいことが多いのだ。

■ハードと一体化したOS/ソフトの魅力

Macの魅力といえば、そのOSやソフトの使い方についても言及しなければならない。

Mac OS Xの感性に響く使い心地は、これまでにもApple's Eyeの連載の中で、度々触れてきた。

それに加えて、たとえば無線LANなどの先進の技術を、難しいと感じさせずユーザーが使いやすい形で提供している点も感じてもらえればうれしいと服部氏は言う。

彼が特に気に入っているのがBluetoothのファイル送信機能のようだ。

「多くの人がBluetoothというとワイヤレスキーボードとワイヤレスマウスのための技術だと思っているようですが、実はこれを使って簡単にファイルのやりとりもできるんですよ。無線LAN経由のファイル共有だと、共有フォルダの用意や、フォルダのマウントと、いろいろと手順が大変ですが、Bluetoothメニューから「ファイル送信」を選んで、送りたいファイルを選び、送り先の相手を選ぶ。ただ、これだけのステップでファイルが送れてしまいます」(注:「システム環境設定」の「Bluetooth」で「Bluetoothの状況をメニューバーに表示」をチェックしておく必要がある)。

こうしたハードウェア機能と一体感のあるOS設計も、Mac OS Xならではの強みだろう。

■購入後の安心感もMacならでは!?

だが、Macの魅力は製品そのものの魅力だけに止まらない。

いざという時──たとえば故障したときや、思った通りに動かないとき──頼れる先があるというのもMacならではの大きな魅力の1つだろう。

9月、取材でアムステルダムに行ったのだが、飛行場から電車で街の中央駅に向かいそこからタクシーに乗ると、すぐに見慣れたアップルのロゴマークが目に飛び込んできた。

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ヨーロッパで、Apple直営店「Apple Store」があるのはロンドンだけだが、実はそれ以外の国にもアップルのロゴマークを掲げたApple Centerというディーラー、コンサルタントそして修理サービスを提供している機関がたくさんある(オーストラリアなどにもある)−−ちなみに最近では、これらApple Centerも、Apple Storeに外観を似せているところが多い。

こういったApple Centerは、Apple Store同様、結構目立つ場所にあることが多く、黒地に白のリンゴマークのおかげで、すぐに目に飛び込んでくる。

アムステルダムで一緒に取材に行った同僚のiBookが故障したのだが、その時も「たしか駅の近くにあったはずだ」と持ち込んでみると快く対応してくれた。

しかも、服部氏によれば、MacBookやMacBook Proは、世界中で有効なグローバルワランティーになっているため、海外での修理などにも(場合によっては多少条件が異なるかもしれないが)保証が適用されるのだ。

こうした安心感は、日本にいても恩恵を受けられる。Apple Storeの存在だ。

何か困ったことがあれば、すぐにApple Storeに足を運んでジーニアスに相談することができる。

Apple Storeは、法人向けの対応もしっかりしていて、最近では「Apple StoreをあなたのオフィスのITデパートメントとして使ってください」といったことも謳っている。

Macを使うクリエイティブプロフェッショナルの多くはSOHOワーカーであることが多く、当然、IT部門なんてものはない。たとえばMacを使ったネットワーク関連のトラブルがあるときでも、Apple Storeに行けば相談に乗ってくれる。

さらに、最近では使い方についての個人レッスンまで受けられる(本来はPro Careユーザーのためのサービスだが、最近、Apple Storeではこの個人レッスンを体験受講する券が配られていることがあるようだ)。

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クラフトマンシップの活きる素晴らしい製品の外観、その外観に負けない素晴らしいハードウェア性能、そしてそのハードウェアと見事に融合したOSやアプリケーション、さらにはそれ全体を包む購入体験や購入後体験の良さ──こういったものすべてがMacの良さにつながっている。

一見、マイナーアップデートに見えるMacBook Proから、改めてそのことを気づかされた。

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