
「買う」を楽しむマッキントッシュ
[2007年3月30日更新]

「マック購入」は、たまにしか味わうことのできない極上の楽しみだ。
じっくりウィンドウの展示を楽しみ、購入前の商品を思う存分触り、わからないところがあれば、とことんまで聞く。最終的な決断に近づいては離れ、また近づくことを繰り返す……この過程は、ちょっと恋愛にも似たときめきがある。
やがて、決断の時が訪れる。店に足を運び、店員に欲しいマックを告げる。
いくつか確認事項を述べた後、店員がしばし姿を消し、奥から黒い箱を持って現れる。この数分間、頭の中でドラムロールが聞こえてくる。
店員が、手にした箱に目をやると、それは、この世のどのパソコンとも比較にならないほど洗練された美しい箱だ。表面に印刷された字体や写真もさることながら、その大きさや形からも、強いメッセージが伝わってくる。
小ささと薄さを徹底的にアピールしたMacBookの箱、そして親しみを感じさせる大きさと薄さを強調したiMacの箱、巨大さと力強さをアピールしたどこまでも巨大なMac Proの箱……。
家に帰るまでの道のりも、このパッケージのおかげでウキウキした気分が込み上がる。
一目散に帰ってもいいが、少し自分をじらしながら、喫茶や外食を楽しんで帰るのも、またいい。
家にたどり着く。いよいよ、運命の瞬間だ。購入したばかりのマックの箱を開封する儀式は、クリスマス・プレゼントの箱をあけるようなワクワク感に満ちている。この楽しみを1人でたっぷりと楽しむ人もいれば、1人じめがもったいなくて、友達を呼んだり、ブログに書いたりして、分かち合う人もいる。
コンセントを挿して電源ボタンを押すと、「ジャーン」という起動音の後、言語を選択する画面。
一瞬の緊張。
ここで「日本語」を選ぶと、何やら新しい楽しみが始まるのを感じさせる音楽と、画面一杯のアニメーションがあなたを歓迎してくれる。
「買い物」好きの人にとって、マック購入は人生に何度かしか味わえない大きな喜びとなるはずだ。
ところで、実はこのMac購入の方法も、最近ではかなり選択肢が増えた。
1.オンライン版のApple Store
2.日本全国7カ所にある直営店の「Apple Store」
3.大型電気店や量販店といったメガストア
4.Macのエキスパートが個性を生かした品を揃えるブティック
5.アップル以外の会社によるオンラインストア
「6.」は、3月中旬、有楽町ビックカメラの5階にオープンしたばかりの新形態のショップだ。オープニング当日は限定のTシャツを配ったり、限定で特価品のMacBook Proを用意していたこともあるが、朝8時前から人が並び始め、オープン時間までに500人が行列を作った。ビックカメラ有楽町店店長の石川勝芳さんは、盛り上がり度は深夜発売を行ったWindows Vistaの行列といい勝負だったと振り返る。

「Apple ショップ」は、カメラ量販店内のストア・イン・ストアだが、ジーニアスバー風のカウンターがあり、メープルのテーブルが置かれ、一見、Apple Store風だ。
よく目を凝らしてみると、メープルのテーブルのMacの横には、Apple Storeでは絶対に置かれることはない赤と黄色の文字の値札が置かれて、ポイント還元率をたかだかとアピールしており、頭上にも最低価格を謳う特売品の名前や値段がぶらさがっている。流れている音楽もいかした洋楽ではなく、お店のオリジナルソングだが、逆にこうした部分が、これからMacの世界に入ってくる人には、より親しみやすいのも事実だ。
Macを詳しく知っている人なら、Macは頑張って価格を抑えているから、どこのお店に行っても、それほど値段が変わらないことを知っているが、それを知らない人は、大きな値札で最低価格を保証してくれている方が安心して買い物ができるし、ポイント還元があることを主張してくれることで、初めて安心して買えるという側面もある。
一方で、Apple Storeっぽい雰囲気を取り入れたことで、やっぱり数あるパソコンの中でも、Macは特別な存在なのだということを意識してもらえるし、実はそれ以上に大事なのが、ジーニアス風に見える説明員(アップル社による派遣社員)が、製品の疑問点について納得がいくまでとことん解説してくれることだろう。
「メモリはどれくらいにしたら……?」
「会社ではWindows機でOfficeを使っていて、帰宅後も自宅のMacで開けると便利なのだけれど、どうしたらいい?」
といったことも相談できる。
「MacとOfficeをセットで買うとお得なキャンペーンを実施中です。」とか、「学生の方には、5月31日までにMacとOfficeの組み合わせを買うと5,000円戻ってくるキャッシュバックキャンペーンを実施しています」といった有益情報も教えてくれるはずだ。
また、メモリ容量などハードウェア構成の一部は、購入時に顧客のニーズに合わせてカスタマイズしてくれる店も多い。
Windows機で使っているICレコーダーやプリンターが、Macでそのまま使えるのか、といった疑問を持っている人もいるだろう。こうした時、量販店ならではの豊富な周辺機器の品揃えが有利に働く。現行製品なら、実際にその売り場から持ってきて相性を試めすことができるのだ。
ビックカメラ有楽町店に、ストア・イン・ストアができたのはかなり前のこと。その後、2006年9月、もっと目立つ場所にコーナーを移動し「Mac Shop」と改名したところ、Macの売り上げが50%も伸びたという。今回のAppleショップは、アップル社の社名変更に伴うリニューアルだというが、目立つ形で設置されたジーニアスバー風のカウンターから、同店が「Mac Shop」で何が重要と悟ったかを物語っている──購入前の相談だ。
ビックカメラ以外でもMacを扱うほとんどの量販店には黒い制服を着たアップル社のスタッフがいて相談できるが、そうした裏事情を知るのはMacを少し知っている人だけ。「Apple ショップ」のジーニアスバー風のカウンターを「見える化」したものにほかならない。

「Macは欲しいけれど、本当に大丈夫なのか」心配な人にとって購入前相談は大事なステップだ。
購入前相談が受けられるのは「Appleショップ」だけではない。アップル直営のApple Storeも、当然、いくらでも相談に乗ってくれる。また量販店の黒服のスタッフも同様に相談に応じてくれる。
ブティック型ショップに行けば、アップル社員とは別の視点からのセカンド・オピニオンがもらえる。
ただし、それ以外の人達に意見を求める場合は、注意が必要だ。Macをよく知らない人に意見を求めても、正しい判断の答えが返ってくるとは限らないばかりか、もしその人がコミッション(つまり売り上げに応じた報償を得る)販売員なら、その人の利益につながる製品を勧められる可能性があるからだ。
Apple Storeのスタッフや量販店の店員には、そもそもコミッションもない。一度だけではあるが、親戚がMacの購入をしようとしたとき、いろいろとニーズを書き並べた結果、「残念ながら、今のMacではそのニーズにはマッチしないかも」という正直な答えが返って来た。嘘をつけば、その分、信頼が落ちるだけ、Apple Storeのスタッフは信頼していい。人間である以上間違いを起こすことはあるが、その際、責任を持てるのがアップル社員である彼らの強みだ。
彼らはあなたの優秀なアドバイザーであると同時に、アップル本社にとっても重要なアドバイザーだ。
たとえば「こういった購入相談を受ける」といったことや「こういったところが問題として指摘された」といった点は、ちゃんと会社にフィードバックされる。それに合わせてMacの売り方や本体の仕様、デザインに至るまで改良が行われることも多い。
こうした意見の汲み取りの仕組みをちゃんと用意している点も、アップルの強みの1つだろう。
実際、6月に発売するiPhoneについても、アップルのスティーブ・ジョブズCEOは、アップル直営店で販売・修理・相談ができることに固執した(普通は携帯電話のショップがこれを請け負う)。これはジョブズ氏が、Apple Storeから汲み取れる顧客の反応に重要性を見いだしているからかもしれない。
ところで、この購入前相談ができるのは、何もリアルの店舗だけではない。実はオンライン版Apple Storeにもちゃんと電話の相談窓口がある(電話番号0120-27753-1)。機種が決まらない人、構成が決まらない人は、Webページとにらめっこを続けるよりも、受話器をもってダイアルを回した方が手っ取り早い。
ちなみにApple ショップもApple Storeもオンライン版Apple Storeの電話相談も、日本語だけでなく英語スタッフも揃えている点も覚えておいて損はないだろう(さらにAppleショップやApple Storeには、スペイン語、フランス語、中国語や韓国語が話せるスタッフもいる)。

アップルのショップ、特にApple Storeは、Macユーザーの駆け込み寺という役割も果たしている。Macを使っていて困った時、とりあえずここへ駆け込めば、まわりにMacを使っている人がいなくても、なんらかのヒントは与えてくれる、という安心感がある。
他のパソコンだと「購入店の販売コーナーに行って、たまたま近くを通りかかった店員に聞く」というのもなんだかそれはそれで気が引けるし、顔を向かい合わせて相談できる場所がなかなか思い当たらない。
Macなら、購入した量販店の黒服スタッフか、近くにApple Storeがあればジーニアスバーにいけば大丈夫なので安心だ。
あまりにも基本的すぎて、他の人にはとても聞けないような、たとえばソフトの起動方法や終了方法やマウスの使い方だって、安心して聞くことができる。
Macが壊れたり、動作がおかしいときも、とりあえずこうした店に駆け込めば、何らかのヘルプになる。
実はこれは、国内だけの話ではない。昨年秋、アムステルダムに取材に行った。街の中心の駅からホテルへ向かう途中、黒地に白いアップルマークの看板が目に入った。どうやら駅のすぐ目の前に、Apple Center(ヨーロッパなどに多い、アップル専門店)があるらしい。
ホテルに着くと、同行編集者のiBookの調子が突然、おかしく電源が入らない。そこで再びタクシーに乗って、さきほどのApple Centerに行き、修理を試みた。

結局、この時は直らなかったが、これで問題が解決というケースも少なくないはず。
アップル関連のショップは、世界中どこへいっても中心地に近いところにあり、しかも誰の目にも焼き付く。オーストラリアにいけば、シドニーのボンダイ・ジャンクションのショッピングモールに大きなApple Centerがあるし、フランスのパリならモンパルナス駅の近くにも、ポンピドゥ・センターの裏にも、ソルボンヌ大学の近くにもApple Centerがある。この間、台湾に行ったときも繁華街の近くでApple Shopというお店を見かけた。
これらの店は直営店ではないので、どこまでのサービスを受けられるかは、店ごとに異なるが、同じMacを売る人と使う人、むげに断られることはないはずだ。

一定品質のサービスが期待できるのが、アップル社が直営するApple Storeだ。現在、日本国内に7店舗、そして勢いのあるイギリスが日本を抜いて9店舗、カナダに4店舗、そして米国には150店舗近くある。
さらに3月末にはローマにヨーロッパ大陸1号店がオープンする。
これらApple Storeでは、相談・購入以外にも、アップル社の純正パーツを使った修理を受けることができる。
またProCareという、Macを本格的に使っている人達のためのメンバーシップ制度があり、これに登録しておけば相談や修理の予約をしたり、マンツーマンの個人レッスンを受けたりすることも可能だ。
自分はMacに詳しいからレッスンはいらない、という人もいるかもしれないが、そういう人もProCareの存在を知っておいて損はない。
というのも、あなたがMacに詳しければ、それだけまわりのMacユーザーに頼りにされることも多いはずだからだ。日常の仕事を超えてまでできないサポートは、Apple Storeのジーニアスの存在やProCareの存在を教えて、そちらにまかせてしまった方があなたも楽なはずだ。

Apple Storeのもう1つ重要な役割が、Macを使うことの楽しさを教えてくれることだ。
パソコンは電子メールとWebしかやらない。Macを選んだのはオシャレだったから、という人もいるだろう。しかし、そんな人々もiLife '06で、実際にどんなことができるかを知れば、Macの活用の幅が一気に広がり、もう元には戻れなくなる。
Apple Storeでは、店頭で行われるさまざまなイベントで、こうしたMacを使う喜びを教えてくれる。
またMacを使うアーティストやクリエイターの話を聞き、自分の仕事や生活への活力にすることもできる。
Macを使うミュージシャンの音楽を思いっきり楽しむこともできれば、プロの人達がMacを仕事でどのように活用しているかを学ぶこともできる。
教育機関と密接な関係を持つMacだけあって、アカデミックなイベントも非常に多い。
筆者は先日、大阪大学コミュニケーションデザイン・センター主催の「知デリ」というイベントに参加して来たが、これが非常におもしろかった。ゴリラなどの類人猿や猿の社会性を通して人間の進化を研究している山極寿一さんがゲストだった。
けんかが起きた時、ゴリラはどうしても後にはひけなくなるので仲裁が入ってその場をまとめるが、チンパンジーはどうだとか……聞けば聞くほど人間社会の縮図みたいでおもしろいのだが、最初から最後までMacには一切関係なし。
しかし、こういうイベントもできてしまうというのがApple Storeの懐の深いところ。しかも、後で聞いたら山極さんはMacユーザーらしくて、話しのテーマとしてはMacが出てこなくても、やはり、考え方とかライフスタイルとかそういった部分ではアップルにつながっていた。
イベントを企画した大阪大学のスタッフの方々も同じだ。
「これと同じイベントを、学内や市民ホールとかで開いたら、来る客層が決まってしまう。しかし、イベントにアップルのブランドが絡んでくることで、新しい人々に知的好奇心を広めることができる」とApple Storeでイベントを開いた理由を語る。
Macはただのパソコンではない。
Macを持つということ。「他の人と同じでいいや」と流されず、イイモノを自分の目で見極めて選択するライフスタイルだ。Macを所有するということは、自分はそういう生き方の人間だというステートメントでもある。
Macの販売店には、そうした人々と製造者、アップルをつなぐ接点という大事な役割もある。