
Macworld Expo/2008
[2008年1月25日更新]

1月14日(月)、毎年恒例のイベント、MACWORLD Conference & Expo/San Francisco 2008が開催された。今年のExpoでは、日本のMacユーザーが待ち望んでいた薄型軽量ノート、MacBook Airなどが発表された。
まずはアップル社の新製品を、スティーブ・ジョブズCEOの基調講演に沿って振り返ってみよう。
ジョブズ氏の講演は4つの要素で構成されていた。
1つ目はMac OS X。話の中で新製品「Time Capsule」が発表された。

ジョブズ氏はMac OS X v10.5 "Leopard"が、累計500万本を出荷したことを明かした。これによりMac OS Xユーザーの約19%がLeopardを使っていることになる。
ジョブズは続いて、Mac OS X "Leopard"で紹介した機能の1つで自動バックアップ機能のTime Machineを取り上げた。
Time Machineを利用したバックアップには、外付けハードディスクが必要だ。しかし、頻繁に持ち歩くノート型Macではディスクを着脱する手間があり、常にバックアップできる状態にしておくことは難しい。そこで登場したのがTime Capsuleだ。
Time Capsuleは、簡単に言えばハードディスク内蔵型のAir Mac Extreme Basestationだ。
ネットワーク接続したMacのハードディスクを、内蔵する500GBまたは1TBのハードディスクにバックアップできる。複数のMacのハードディスクをバックアップすることも可能だ。
Time CapsuleはUSBポートを備えているので、ここに外付けハードディスクをつなげば、AirMac Extreme Basestation同様、AirDisk(ネットワーク経由で利用するファイル保存用ハードディスクスペース)としても使うことができる。
ただしTime Machineを利用したバックアップをAirDiskにすることはできないので注意が必要だ。
2つ目の話はiPod touchと欧米で発売中の携帯電話、iPhoneについてだ。

アップル社は、これらOSのアップグレードを発表した。
アップグレードの価格は2480円(iPhoneは無料)。
最新OSで追加された機能は以下のとおりだ。
・メール機能
・天気の表示機能
・ノート(メモ帳機能)
・株価表示機能(米国株式市場)
・Google Mapの地図表示機能
・位置特定機能
・Webクリップ機能
・ホーム画面のカスタマイズ機能
・映画のチャプター・字幕・言語選択機能
・歌詞表示機能
簡単に説明をすると、位置特定機能はGPSによく似た機能で、今自分がどこにいるかを認識し、それをGoogle Mapで表示してくれる。
iPod touchにGPSは備えていないが、周囲にある無線LANの基地局から今の自分の居場所を特定する(iPhone版では、さらに携帯電話の電波を利用して補正している)。
Webクリップは、お気に入りのWebページをアイコンとしてホーム画面に追加する機能だ。
ホーム画面のカスタマイズとは、ホーム画面のアイコンの並び順や表示位置を自由に入れ替える機能だ。Webクリップがたくさんある場合は、ホーム画面をページめくり方式で切り替えることもできる。

ジョブズ氏は、2月にもプログラマーがiPod touch用のソフトを作るのに必要なSDKを提供することを改めて約束している。まもなくすればiPod touchのホーム画面はたくさんの魅力的なアプリケーションで埋め尽くされるはずだ。
ところで、このiPod touchのOSのアップグレードは、アップルストアに出向いても入手できない。もう1つの新しい試みとして、iTunes Storeで売られることになったのだ。
これまでiTunes Storeで音楽を買ったことがなかった人も、この機会に自分のアカウントを作ってアップグレードを購入してみて欲しい。

3つ目の発表はiTunes Movie Rentalという新サービスだ。サービス開始にあわせてApple TVもOSのアップデートを行う。

日本のiTunes Storeは、今のところ音楽と音楽ビデオ、ピクサー社のショートフィルムしか販売していないが、米国ではそれに加えてTV番組や映画も販売している。ただ、映画を観たいだけなら1000円近くを出費するよりも、レンタルビデオ/DVDを利用した方がいいという人も多いだろう。
iTunes Movie Rentalは、まさにそんな人たちのためのサービスなのだ。新作3.99ドル、旧作2.99ドルで、映画を観ることができるというおもしろいサービスだ。
映画を購入してしまうと1本当たり数百MBもの容量を食うことになり管理も大変だが、レンタルなら見終わった後はきれいさっぱりなくなってくれるので、ハードディスク容量の節約にもなる。
レンタルといってもディスクで借りるわけではないので、返却を忘れて、延滞料金を取られることもない。
その代わり、いくつか通常のレンタルにないおもしろいルールが決められている。
まずレンタルした映画は30日以内に見始めなければならない。つまり、借りた後、1ヶ月以上放置しておくと、映画を観ないままお金だけ払ったことになってしまう。もう1つは映画を見始めたら24時間以内に見終えなければならない。
つまり、1度再生を始めると、24時間後には映画が自動的に返却されてしまう。
途中で急にどこかへ行かなければならなくなったら、と不安に思う人もいるかもしれないが、移動で困るのは通常のレンタルも同じ。
実はこの点はiTunesの方が便利にできていて、パソコンで見始めた映画をiPodに転送して続きを見るといったことも可能になっている。
映画はレンタル開始(=ダウンロード開始)から30秒もしないうちに視聴可能になり、Macだけでなく、PCやiPodでも観ることができる。

メジャースタジオの映画が1000タイトル以上も用意されており、今後もDVD発売から30日後にタイトルが追加されていくという。
米国だけのサービスなんでしょう? という人もいるかもしれないが、スティーブ・ジョブズは、「今は米国だけのサービスだが、年内には海外での展開も始めたい」と言っている。
日本は著作権関係に対して非常に慎重な国だ。今や音楽業界や映画業界を見渡しても、作品を楽しむ一般の人と、作品を提供するレーベルや配給会社、そしてその間に立つ著作権管理団体が完全に敵対関係になってしまっている。しかし、このiTunes Movie Rentalなら三者とも失うモノが少なく、日本でもやりやすいかもしれない。
最近、コンテンツの楽しみ方の日米格差がどんどん開いていってしまっているが、ぜひともこのサービスくらいは日本でも実現して欲しいところだ。
ちなみにアップルは、同サービスの発表にあわせてApple TVも新調している。
これまでのApple TVは、いわば据え置き型のiPodだった。リビングに置いてあるモノの単体では楽曲や映画を取り込むこともできず、パソコンを使ってコンテンツを同期する必要があった。
ジョブズ氏は、これの間違いを認め、Apple TVの新しいOSでテイク2、つまり2度目のスタートをすることを宣言した。

新OSを搭載したApple TVでは、iTunes Movie Rentalに対応する(米国のみ)。しかも、MacでもPCでも、iPodでも観られないハイビジョンの映画コンテンツに対応した。ハイビジョン画質の映画は、ドルビー5.1チャンネルの音声にも対応する。
これに加えて音声や映像付きPodcastに対応すれば、.macやFlickrといったインターネット上の写真共有サービスの写真も鑑賞することができる。
さらに音楽やテレビ番組(米国のみ)をiTunes Storeから直接購入することもできれば、家庭内ネットワーク経由でパソコン上の音楽や映像、写真を再生できる。

このアップグレードは、すでにApple TVを持っている人に対して無料で提供される。
画面のインターフェースを刷新した新Apple TVは、リビングでのコンテンツの楽しみ方に一石を投じてくれるはずだ。
講演でオオトリを務めたのは、まるで芸術作品のように美しいノートパソコン、MacBook Airだ。

実際、漆器などの上に飾って、床の間に置いておけば、芸術作品と間違える人がでてくるはず。
「これが本当にコンピューターなのか?」と疑いたくなるほど美しく、そして薄い。
最薄部は0.4ミリで一番厚いところでも1.94センチとなっている。
これまでのMacBookおよびMacBook Proシリーズは、先進機能をできるだけ小さなサイズに詰め込むために平らな板を2枚重ねたような形状だったが、MacBook Airは薄さを強調することもあってか、底面も上蓋も端に向かってゆるやかな曲面を描いている。これが美しい上に、手に持った時の感触も心地よいのだ。

日本には多くの薄型パソコンがあるが、こうしたパソコンでは、軽量化のために画面サイズを小さく抑えていたり、あまり使わないキーが細長くなっていたり、最小限の機能しか備えていなかったりすることが多い。しかしMacBook Airは、一切の妥協もなく作られている。

CPUも1.6 GHzのIntel Core 2 Duoなら、画面も余裕の13インチサイズ、キーボードも、打ちやすさを妥協しないフルサイズのキーボードな上に、上位製品のMacBook Pro同様に、周囲の明るさにあわせて光るバックライト付きキーボードになっている。
それだけではない。MacBook Airには、いろいろと新しい試みが詰まっている。
まず1つ目は、マルチタッチの操作だ。2本以上の指を使ったマルチタッチ操作といえばiPod touchを思い浮かべる人が多いかも知れないが、実はMacBook、MacBook Proシリーズでもタッチパッドに指を2本置いて動かすと、スクロールできるというマルチタッチ操作があった。
MacBook Airでは、これをさらに大幅に拡張しているのだ。
iPod touch同様に指2本の間隔を広めたり、狭めたりするピンチ操作で画像を拡大/縮小することもできれば、まったく新しい操作として、指2本を回転させて画像を回転させる機能、タッチパッドの上に指を3本置き、払うような操作をするとページめくりができる、という新操作も加わっている。
また、通常のハードディスクモデルに加えて、大容量64GBのフラッシュメモリーをハードディスク代わりに使うSSDという技術を採用したモデルも用意されている(やや高価なオプションだが、落とした時の耐久性の高さや、動作音の静かさといった点で期待されている)。

さらに、頑丈さを確保するためにバッテリーの取り外しをできないようにしたり、光学式ドライブを内蔵しないでも困らないように、Remote Discという新技術も開発している。これがなかなかスゴい技術で、家にある他のパソコン(MacでもPCでも可)の光学式ドライブにCD-ROMやDVD-ROMを入れると、それをMacBook Airからネットワーク経由で利用できるのだ。
なんと、Remote Discに入れたOSディスクから、マシンを起動することもできてしまう。
今回、発表された数々の魅力的な製品のうちですぐに入手できるのは、iPod touchのOSアップグレードだけだ。
それ以外の、Time Capsule、Apple TVのアップグレード、そしてMacBook Airは、すべて来週から発売が始まる。
来週の週末には、全国のApple Storeが再び混雑することになりそうだ。
なお、近所にApple Storeがある人は、ぜひともMicrosoft Office 2008 for Macの店頭デモのスケジュールも確認しよう。
実は今回のExpoでは、アップル社の新製品について大きな注目を集めていたのが、このMicrosoft Office 2008 for Macだった。基調講演の前日には、かつて基調講演が行われていた大ホールにて、Office for Macのファンを集めた1日がかりのイベント(朝10時から夜6時半まで)が開催され、大いに盛り上がった(なんとOffice 2008 for Macの開発者自らが製品の説明をし、質問に答えたのだ)。
同イベントには、老若男女非常に幅広い層の人が集まり、Officeが単に会社の書類を自宅に持ち帰るためだけではなく、学級新聞や地域のニュースレターの作成から、本格的なスモールビジネスの運営まで、幅広い用途に使われていることを知れるいい機会だった。

Expo会場には今回の発売を記念し、Microsoft Macビジネスユニット(Mac BU)特製のOffice for Macの模様入りMacBook Proも展示され、抽選会が行われていた。
MACWORLD EXPOは業界見本市であると同時に、Macを本格活用するためのさまざまな術を知ることができる国際会議の場であり、日頃使っているソフトの開発者と生で話しあえる貴重な場でもある。
いろいろなブースを回って新製品の情報を仕入れられる場所でありながら、各社のプロモーショングッズや抽選会でTシャツから高価な製品まで、いろいろなグッズをもらいまくれる場でもある。
また年に1回だけ世界中のMac好きが集まってくる場であり、他のMac好き達と出会って交流できる場でもある。
日本からも大勢の人が参加している。ある人は、海外展開の第一歩としてブースを構え、アメリカ人の反応、審美眼の厳しいMacユーザーの反応を確かめていた。
アメリカの見本市はこれ以外にもあるが、出展料がやたらと高い展示会、出展者が多過ぎてどんなに頑張っても埋もれてしまう展示会など、なかなかいいバランスのものがない。MACWORLD EXPOは、そういう意味でもバランスが取れていたと、ある出展者は語っていた。
Macが好きで、MACWORLDがどんなものか見てみたいとやって来た一般来場者もいる。ソーシャルネットワークサービスを使って仲間を募り親睦を深めたり、レンタカーをシェアしてアップル本社に行った人達もいる。
かと思えば、Macのことは全然知らずに、アメリカでとにかく盛り上がっているアップル社の最新状況を視察しろと上司に命じられて参加した人もいる(他では見ることがない熱狂ぶりを肌で味わい、いろいろな人に出会って、なかなかいい刺激を受けていたようだ)。
やっぱり、アップルの動向は外せないと、わざわざ日本から取材に来たプレス(マスコミ関係者)も大勢いる。

筆者もその1人だ。昔はMac専門誌のプレスばかりだったが、iMac以降はパソコン総合誌の関係者も来るようになり、iPod発売以降は音楽雑誌やテレビ局、ガジェット雑誌のプレスも参加するようになった。そして今年からは、携帯電話関係の記事を書くプレスが参加し始めた。MACWORLDを取材するプレスは年々増加傾向だ。
このように、目的や参加方法はさまざまながら、それぞれが満足し、新製品情報だけではない何かを得て帰って行く。
MACWORLD EXPOはそんなイベントなのだ。
ここ数年はiPod関係の展示が増え、Mac好きとしては寂しいところもあったが、今年は米国でMacの売れ行きが急速に伸びたことを受けて、出展者の8割近くがMac関係の展示だった。
MacBook Air発売後は、日本にもさらなるMacブームが訪れるかも知れない。
人々に楽しさと刺激を与え、常に新しい文化を創造し続けるMacの活力の秘密を知りたい人は、ぜひとも来年のMACWORLD EXPO参加を、今から計画してみたらどうだろう。