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NO.37 マックを使う楽しみ広がるデジタルハブ構想

[2001 年 3 月 9 日 掲載]

デジタルハブ : 1 、 2 月のマックワールドエキスポ基調講演では、マックの新しいあり方を提案する「デジタルハブ」が最大のキーワードだった。

iMac 、 iBook やパワーマック G4 キューブなど、他のメーカーからはおよそ出てこないような斬新なパソコンで市場を活性化し、我々をわくわくさせてきたアップル社が、今年に入ってからは ( つまり 21 世紀になってからは ) マックを使う楽しみを広げる戦略に転換し始めている。アップル社 CEO 、スティーブ・ジョブズ氏は 1 月のマックワールドエキスポサンフランシスコと 2 月のマックワールドエキスポ東京の基調講演で「デジタルハブ」というマックのあるべき新しい姿を提案し話題を呼んでいる。

「デジタルハブ」とは、我々の日常を取り囲むさまざまなデジタルグッズをマックと一緒に使うことで、もっと便利にもっと楽しくしていこうという構想だ。

例えば CD プレーヤーは、これまでただ市販の CD を聴くためだけの道具だった。ところが、マックとアップル社の最新ソフト、 iTunes を使えば CD から好みの音楽を取り込んで、好きな組み合わせ、好きな順番で再生させたり、音楽にあわせた視覚効果を楽しむこともできる。

iTunes : 好きな曲を好きなだけマックに録音しておいて、ききたい時に聴きたい順番で再生できる究極のジュークボックスソフト

さらに CD-R や CD-RW ドライブがあれば、好みの曲だけを集めたオリジナルのベスト盤音楽 CD をつくることもできてしまう ( オリジナル CD をつくっておけば、外出時でも好みの曲を好みの順番で聴くことができるのだ ) 。

これからは既成の音楽 CD を楽しむだけでなく、自分でつくったベスト盤 CD で音楽を楽しもう

もう 1 つ例をあげよう。最近、全国の若いお父さん、お母さんを中心に急速な勢いで普及しているデジタルビデオカメラ、これもただ映像を撮ってテープを積み上げていっただけでは宝の持ち腐れだが、ここから必要なシーンだけをつないで、 ( 自分の音楽センスを存分に発揮しながら ) BGM をつければ何度見ても飽きない立派なビデオクリップができあがる。
iMovie はまさにそのためのソフトで、 iMovie で編集したビデオは、そのまま ( 驚異的な高画質で ) デジタルビデオテープに書き戻したり、自分のホームページに掲載することができる ( アップル社のサービス、 iTools を使えば、これも簡単だ ) 。

子供の成長記録や衝撃の発見のビデオクリップはホームページに掲載すれば、遠くに住む親戚や海外の友達らと共有できる。これはパソコンなくしては実現不可能な楽しみであり、まったく新しいライフスタイルの 1 つである。
さらに、最近発売が始まったばかりのパワーマック G4/733MHz を持っていたり、近くにこれを持っている友人がいれば編集したビデオクリップを DVD にしてしまうことができる。

例えば親戚の家に遊びに行くときなど、わざわざマックを持っていかないでも、相手の家に DVD プレーヤーさえあれば、テレビで自作のビデオクリップを再生して楽しむことができるのだ。

それだけではない、パワーマック G4/733MHz に付属の iDVD というソフトを使えば、なんとデジタルカメラで撮影した写真も DVD プレーヤーでスライドショーとして再生することができるのだ。デジタルカメラ画像も、テレビで見れば、同時に皆で見て楽しむことができるし、何より DVD の高画質をもってすればデジタルカメラ画像は非常によく映える。

これまでただ撮るだけだったビデオカメラとただ見るだけだった DVD プレーヤーがパワーマック G4/733MHz と iDVD という 2 つの製品によってつながり、まったく新しい映像の楽しみ方が可能になる

市販の DVD プレーヤーでデジタルカメラの写真を再生しているところ。少し写真がぶれているせいで汚く見えるが、実際の画質は息をのむほどきれいだ ( もっとも、元々の写真がきれいにとれていればの話だが )

実はこの iMovie や iDVD といったソフトとマックの組み合わせは、デジタルビデオカメラ、 DVD プレーヤー、デジタルカメラといった製品単体では体験し得ない、新しい楽しみ方を実現している。実はこれこそが「デジタル・ハブ ( 中枢 ) 」という発想なのだ。

スティーブ・ジョブズ氏の最近の講演のスライドでは、携帯電話や携帯型情報端末、 CD プレーヤー、 DVD プレーヤーといったデジタル機器の写真が映し出され、その中心にこれらの機器同士を結びつける「デジタルハブ」としてのマックが描かれていた。

これまでバラバラだったデジタル機器を結びつける。これが「デジタル・ハブ」の基本となる発想だ。だが、それだけではない

だが、「デジタル・ハブ」の役割は何もデジタル機器をつなぎあわせるだけではない。

こうしたデジタル機器の多くは携帯性を重視するあまりパソコンと比べて操作がしづらいことが多い。例えば米クリエイティブラボ社が提供するノマド・プレイヤー II という MP3 音楽プレーヤーにはメモリーに転送した MP3 形式の音楽ファイルを再生するだけでなく、 FM ラジオを聴く機能もある。ただし、この FM 局のプログラミング ( どのボタンにどの周波数の局を割り当てるかの設定 ) が意外と面倒なのだ ( 小さくて操作しづらい上にそもそもボタンの数が少ないので、その分、何度もボタンを繰り返し押さなければならない ) 。
ところが、 iTunes を起動してマックとノマド II を USB ケーブルでつなげば、 iTunes に表示される FM局設定用ウィンドウを通して ( マックのキーボードを使って ) 簡単に FM 局の設定ができてしまう。

アップル社のソフトではないが、入力操作が煩雑な携帯電話にマックで入力した名前や電話番号のデーターを自動的に転送してしまうソフトもある。これらもデジタルハブの実現例の 1 つといえるだろう。

パソコンでさまざまなデジタル機器を結びつけるという発想はこれまでにもいろいろな会社が提案してきた。アップル自身、こうした提案をするのは今回が初めてではない。

しかし、今のアップルが、これまでのアップルや他の会社と違う点は、この「デジタル・ハブ」の素晴らしさを実感できる製品を現実に提供していることだ。
例えば iTunes は、製品ジャンルとしては MP3 プレーヤーソフトであり、決して珍しくないが、なんと無料であり、しかも、他のどの無料の MP3 プレーヤーとも違う充実した機能を提供している。
また iDVD は、これまでにまったくなかった新しいジャンルのソフトだ。

アップルはどうしてこんなに訴求力のある製品をつくれるのか、スティーブ・ジョブズ CEO はこう語る。

「デジタルハブを使った新しいライフスタイル、デジタルライフスタイルを提案してゆくにはただハードを提供するだけでもダメだし、ただソフトを提供するだけでもダメだ。ハードとそれにあわせた OS 、その OS にあわせたアプリケーション、そのアプリケーションの威力を世界規模に広げるインターネットへの接続性、そしてその新しいライフスタイルを世に訴えかけるマーケティング力、これらすべてが備わって初めて新ライフスタイルの提案ができる」。

そう言われてみれば、これらすべて ( パソコン本体から OS 、アプリケーション、さらには iTools などのインターネットサービスや話題性のある広告づくりまで ) を 1 社で手がけている会社というと、確かにアップル以外にはない。

アップル最大の強み、それは 1 社でハードからソフト、インターネットサービスからマーケティングまですべて手がけて総合的なソリューションを提供できることだ

最近のアップル社の戦略は、この「デジタル・ハブ」とそこから生み出される「デジタルライフスタイル」の発想を中心に展開し始めた。

新ライフスタイルを提案するアップル社の 3 大ソフト。デスクトップムービーを実現する iMovie 、デジタル音楽革命の旗手、 iMusic 、そしてパーソナル DVD を実現する iDVD

例えば 2 月末のマックワールドエキスポ東京では、花柄模様の iMac が発表されて話題を呼んだが、実はこれも「デジタル・ライフスタイル」を中心とした戦略があってこその発表だ。

実は今回の iMac の発表で、もっとも大事であるにもかかわらずもっとも見落とされがちなニュースは、今回、 iMac の最下位モデルがファイヤーワイヤーポートを搭載したことで、今ではマック現行製品の全機種全モデルでファイヤーワイヤーと iMovie 2 が標準添付になったことだ。つまり、アップルが提案したデジタルライフスタイルの第 1 弾、 iMovie によるデスクトップムービーの成否は既にユーザーの手にゆだねられているのだ。

この段階に入りアップルが新たに力を注いだのはデジタルライフスタイルの第 2 弾である iTunes を使ったデジタル音楽革命 ( ミュージックレボリューション ) を広げることだ。
iTunes を楽しむにはどんな外観のマックが相応しいか ?
おそらく最新の柄付き iMac は、こういう発想でつくられたに違いない。
何を隠そう Flower Power という柄の名前は、既に 1 月にリリースされた iTunes にビジュアル効果の 1 つとして組み込まれていたのだ。つまり、最新の iMac とはまさにデジタル音楽革命を広めるための最強のメッセージなのだ。

iTunes ではキーボードを使ってビジュアル効果の切り替えができるが、その効果の 1 つとして FlowerPower がある。ちなみにこの FlowerPower は新 iMac が発表される以前、 iTunes バージョン 1.0 からあった効果だ

これを裏付けるように先日から始まった新 iMac のテレビコマーシャルも、 iMac だけではなく iMac と iTunes の組み合わせをアピールしたものにしあがっている。

最近、パソコンがなくなり、デジタル家電に取って代わられるという意見がよく聞かれるが、スティーブ・ジョブズは、この「デジタル・ハブ」という新しいパソコンの使い方が、パソコン市場に第 3 の黄金期をもたらすとしている。
ちなみに第 1 の黄金期とは、ワープロや表計算ソフトが登場した 1980 年代から 90 年代半ば頃まで、そして第 2 の黄金期とはインターネットブームが到来した 90 年代半ば頃から 2000 年頃までだ。
そして 2001 年からが「デジタルライフスタイル」の時代であり、この時代、パソコンはデジタル家電よりも大画面でパワフル、操作がしやすく、他の機器同士をつなげる威力を持つデジタルハブとして発展していくという。

気がつけば、確かに我々の毎日は、協調性もなければ応用も狭い数え切れないほどのデジタル機器に囲まれている。
アップルがこれらの機器を有機的に結びつけてくれるというのなら、マックを買ったオーナーとしては万々歳のはず。ただし、ちょっと気になるのは、果たして日本特有の事情がある BS デジタルハイビジョン放送や CS 放送、 i モード携帯電話などとどこまで親和性を高めてくれるかという点だ。

( 林 信行 )

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