Apple's Eye

No.305 – Mac新OS、OS X Mountain Lion発表
勢い増す、新Macプラットフォームの第2章

■iOSにあわせてMacのOSも、さらに進化

前回、年頭のCES(国際家電ショー)が、スマートフォンとタブレットで大きく変貌しようとしていたことを紹介した。スマートフォンとタブレットが勢いをつける中、パソコンは使われなくなってしまうのか?

マイクロソフト社はCESで、新しいパソコン用OS、Windows 8(コード名)を披露したが、実はアップル社も秘密裏にMac用次期OSのリリース準備を進めていた。

アップル社は、昨年リリースしたMac用OSのOS X Lionで「Back to the Mac」、つまりiPhone/iPadで起きたイノベーションを、パソコンであるMacにも取り込んで、iPad登場で時代遅れになりつつあったパソコンに新たな可能性の芽を与えようという方向性を指し示した。今回、iOSが毎年、大幅に進化しているのにあわせてMac用OSも、前バージョン、「OS X Lion」からわずか1年の期間で、メジャーアップデートをすることとなり、「OS X Mountain Lion」が発表された。

OSそのもののリリースは夏頃の予定で、現時点ではそのアップグレード価格も未定だが、Mac App Store経由のみで提供が行われることと100の新機能を搭載することが発表され、そのうちの10の機能については、さらに詳細が明かされた。

いずれも昨年にリリースされたOS、OS X Lionと同じく、iOSの操作性や習慣をMacにも取り入れようとする方向性を継ぐものだ。

以下で、それらを紹介しよう。

■加速するiCloud連携

1つめは「iCloud対応」だ。OS X Mountain Lionは、アップル社のクラウドサービス、iCloudのサービス・イン後、初リリースのOSだ。それだけにiCloudを前提とした機能も、前バージョンのLionに比べて充実している。

新規セットアップ時、Apple IDのIDとパスワードを入れるだけで、Mail、メッセージ、リマインダー、書類とデータ、連絡先、FaceTime、Game Center、ブックマーク、カレンダー、ノート、Mac App Store──のすべてを、 iCloudを経由して自動的に設定(同期)される。

これは1回だけの話だが、何といっても大きいのはDocuments in the Cloudという機能だろう。現在、iPadの一部のアプリケーションはすでにこの機能に対応していて、作成した書類をiCloud上に保存できる。

同じ書類を同じくiPhoneなどで開いて編集をすると、すぐさまその変更がiPad側にも反映される。 このDocuments in the Cloud機能に、ついにMacも対応する。つまり、書類の文字打ちが大変な部分などはあらかじめMacで用意しておいて、移動中などにiPadできれいにレイアウトし直したり、iPhoneで文章のチェックをしたりといったことが、煩わしい「転送」操作を一切せずにできてしまうのだ。

新OS標準のアプリケーションでは後述するリマインダーとノートが、このDocuments in the Cloudを利用して、iOS機器と自動同期されるようになる。

ちなみに、この機能は開発者向けにも公開されているため、将来、他社製品でも、この機能を通してiPad、iPhone連携がしやすくなるかも知れない。

2つ目は「メッセージ」だ。Mac標準のチャット機能と言えばこれまでiChatだったが、これが、昨年iPhone、iPadに搭載されたiMessageに切り替わる。

なんと、iPhone/iPadで楽しんでいた友達との楽しいグループチャットに、Macから参加できるのだ。送受信したメッセージはiCloudを通してiPhone/iPadなど他の機器にも自動的に同期される(同時に届く)ので、出がけにMacでしていた友達との打ち合わせの続きを、移動中の電車でiPhoneから行うこともできれば、昔、iPhone上のメッセージで決めた待ち合わせ場所をMacのスポットライトを使って検索したり、といったことも簡単にできる。

iMessageは、フルHD動画を含む添付書類も100MBまで対応し、電子メールや電話番号さえわかればやりとりができる。

3つ目は「リマインダー」そして4つ目は「ノート」だ。どちらもiPhone/iPadではすでにお馴染みの機能だが、これらもMacに搭載され、しかもiCloudを通して情報がiOS機器と自動同期される。

■Macでも通知センター

「通知センター」。さまざまな更新情報や通知を
一本化して表示してくれる

5つ目は「通知センター」。iPhoneだけでなく、Macでもカレンダーのアラームや、メールの受信、iMessageの受信など通知されるべき項目はたくさんある。

これまでは、こうした通知がアプリケーションごとにバラバラに行われていたが、これからはiOS同様に「通知センター」を通して行われる。画面の右上に表示される「通知」ウィンドウを誤って閉じてしまっても、トラックパッドの上に指を2本置いて左方向にスワイプすると画面が右にずれ、過去の通知の一覧が表示される。

ちなみにMailを一通受信するごとに通知を受けていたら大変だと思うかも知れないが、OS X Mountain LionのMailでは、家族や取引先など、特に重要な相手だけを登録しておくVIPリストが作成可能で、このVIPからメールが届いた時だけ通知が行われるようになっている。

■共有機能も充実

MacでもTwitterが統合される

6つ目は「共有」シート。OS X Mountain Lion対応アプリケーションには、iPhone/iPadでもお馴染みの「共有」ボタンが追加される。Safari、プレビュー、Photo Booth、ノート、QuickTime、iPhotoはもちろんだが、書類一覧の表示やQuickLook(書類の中身を、スペースバーを押して覗き見する機能)のウィンドウにも、右上に「共有」ボタンが用意されるので、これをタップしてメール、メッセージ、Twitter、AirDrop、Flickr、Vimeo(動画共有サイト)──といったサービスを使って他の人と共有できる。

7つ目は「Twitter統合」だ。すでにiPhone、iPadでは進んでいたTwitter統合だが、ついにMacでも、先ほどの「共有」ボタンなどを使って人に見せたい写真や動画などを共有できる。さらに、なんとお勧めのMac用アプリケーションもMac App StoreからTweetできる。

ただつぶやくだけでなく、無線LANを使って特定した位置情報を埋め込んでTweetしたり、MentionやDirect Messageを受信した時に通知が表示されたりもする。また、あなたのTwitterのプロフィールアイコンが自動的に取り込まれて連絡先などにも表示される。

■Mac対iPhone対iPad、直接対決も!

8つ目は「Game Center」だ。iPhone/iPad上で人気のゲーム基盤、Game CenterがついにMacでも利用可能になり、画面上で友達のスコアやゲームの進捗を確認したり、友達をゲーム対戦に招待することが可能になる。RealRacing 2などのようにMac版とiOS版の両方があるゲームであれば、Mac、iPhone、iPadのような機種の壁を越えて対戦をすることも可能だ。

9つ目は「AirPlay Mirroring」──iPhone 4SやiPad 2で大人気のケーブルを使わずに画面を共有する技術だ。

テレビにApple TVをつないでおけば、無線LAN経由で、見たままのMacの画面がケーブルレスでTVに転送される。iTunesで購入した映画などを大画面で楽しみたい場合にも便利だし、講演会場で複数のプレゼンターがスイッチャーを使わずに複数のスピーカーのMac画面を切り替えて表示するのにもとても便利そうだ。

■安全なMacを、さらに安全に

10個目の新機能は「Gatekeeper」──これはiOSにはない。Macだけの新機能だ。

Macは、元々ウィルスなどのマルウェアが少なく安全なパソコン用OSとよく言われるが、アップルはその上で、さらにしっかりとガードを固め、今後もMacが安心して使い続けられるようにこの機能を追加した。

iOSでは、しっかりとした承認プロセスのあるAppStore経由でしかアプリケーションが入手できないので問題ないが、パソコンはそれ以外にもパッケージ販売やインターネットダウンロードで入手できるアプリケーションがたくさんある。これはパソコンの魅力でもあるが、誤ってマルウェアを手にする落とし穴でもある。

そこでGatekeeperでは、3段階の制限でアプリケーションの実行を制限することで、初心者が誤ってマルウェアを実行してしまうのを避けようとしている。

もっとも厳しいモードでは、安全なMac App Storeから入手したアプリケーションしか実行できない。

2つ目のモードは、アップル公式の開発者登録制度のIDを持っている開発者のアプリケーションまでは実行できる。

3つ目は、ユーザーの自己責任でどうやって入手したアプリケーションでも動作させられるようにするモードの3つのモードが用意されている。

■Mac人口を爆発させる中国市場への取り組み

このようにアップル社はMacのOSに、iOS並みの操作のしやすさや利便性を取り込むだけでなく、安心さも取り込もうとしているようだ。

だが、アップルの発表にはいつも「One more thing...」がある。今回の新OS発表でも、意外な新事実が隠されていた。

なんと、アップル社が急成長を続ける中国市場を意識して、中国語向けの機能の大幅改善を行うというのだ。

まずは文字入力の改善で変換候補の精度があがったり、英語と中国語のキーボードを切り替えずに両方とも入力できるようにしたり、文字認識や自動修正の精度も向上させたという発表もあるが、それに加えていくつかインターネット連携機能も中国向けに変更が加えられている。

新OSを中国語モードで使うと、なんと検索エンジンは中国でもっとも人気があるBaiduが標準で使われるようになり、TwitterのかわりにSina weiboという同類サービスが、さらにYouTubeのかわりにYoukuとtodouという同類サービスとの連携が標準でサポートされ、Mail、連絡先、カレンダーといった機能が、人気サービスのQQ、126、163のアカウントを使って簡単に設定できる、という。

アップル社は、iPhoneの発売後、中国市場に本腰を入れており、直営店のApple Storeも巨大なものをいくつか作り始めている。

中国人も、富裕層が拡大するにつれて、これまで触れる機会の少なかったアップル社の製品を歓迎する人が急増しているようで、Macを使う人口は、今後一気に拡大しそうな気配だ。

今や時価総額で堂々の世界一になったアップル社だが、同社の躍進は今年も勢いよく続きそうだ。