

ミュージシャン、コラム執筆や各種コンテンツの企画構成、プロデュースも手がける小宮山雄飛さん。そのクリエイティブ活動を支え、その才能の開花をサポートしてきた Mac のことを小宮山さんはどうみている?

「自分で初めて買ったパソコンが Macintosh LC630。大学2年生の頃です」と当時を振り返る小宮山雄飛さん。1994年のことだ。「このモデルを選んだのは、単純に安かったからですよ。モニタとセットだったし、入門編としてはちょうどよかった。いろいろバンドルされているソフトもありましたしね」。Mac を選んだ理由は? 「あの頃は『クリエイターは Mac を使っていなければダメ』という空気だったんですよ。少なくとも自分の知る限りの範囲では。Mac を購入することが、これからアーティストとしてちゃんと活動する証というか、やるぞ!っていう決意表明をする、みたいなものだったわけで。逆に言えば『 Mac 買ったんか! じゃあ仲間だ!』って見知らぬ人ともいきなり友達になったりしましたからね、酒場とかで(笑)。だから Mac 以外の選択肢は最初からまったくありませんでした。もっとも、世の中は Windows のほうが圧倒的に多いってこと自体、知らなかったですけどね。自分の周囲は Mac ユーザーばっかりでしたし、就職したこともないので、Windows パソコンが大量に並んでいる場所に足を踏み入れたこともないですから」。
Mac を手に入れて、主にどんなことに使っていた? 「その頃はもう音楽活動をしていましたので、デモテープのジャケットや自分が着るTシャツをデザインなどに使っていましたね。1996年にメジャーデビューするときには Power Macintosh 8100 がメインマシンになっていましたけど、CD のジャケットデザインを、デザイナーさんからデータで受け取って、Illustrator や Photoshop で修正・変更を加え、またデータで戻して『ここはもうちょっとこうしてください』と依頼する、というように、仕事レベルでも使うようになっていました」。
「あとはネットですね。ネットと言っても、まだインターネットではなくパソコン通信時代の『 nifty-Serve 』(現:nifty)や、BBS の『 First-class 』などによくアクセスしていましたね。あの頃、どちらかというとサブカル的というか、アングラな、ふだん一般の目には触れない人たちの集まる場所としてネットが活用されだしていて、さまざまな『○○好きな人たち』の価値観やモノの見方を垣間見るには絶好のスペースだったんですよ」。

音楽制作を最初に行った iMac は、今でも思い入れのある1品気になる音楽活動での Mac の活用についてはどうなのだろう。「音楽に Mac を使い出したのは、Mac の購入よりはるかに後ですよ。音楽に関しては保守的だったのかもしれませんが、パソコンで音楽をつくるっていう発想自体がなかったですね。シンセサイザー、ドラムマシンといった機材を MIDI でコントロールしシーケンサーに記録して……ということを中学生ぐらいからずっとやってきたので。シーケンサーで MIDI データを記録するってことも、あくまでそれはリアルに弾いたものを重ね録りしていくって感覚で。録音機材も 4TR カセットでしたし。Mac & Digital Performer で音楽に使い出したのは2000年ぐらいですね。2002年に iMac( Flat Panel )が出たときには『こんな iMac でも十分音楽はつくれるんだぜ!』っていうことを表現したくて、アルバム1枚すべて iMac で仕上げたこともあります。MIDI シーケンスも生音もミックスも全部 iMac で、自分でやって。ただ、8割がた完成していたアルバムのデータがそっくり消えちゃったことがあって……結局、HDD データの復旧はできず、全部録り直したんですが、あれはちょっと辛かったです」。今では、ご存じのとおり Mac を音楽にもガンガン使うようになった。
音楽にはまだ慎重だった小宮山さんが、その頃夢中になったものは? 「1997年に、自分でホームページを開設したんですよ。100%自分だけで。それがすごい楽しくて。今でこそ誰でもブログや Twitter などで手軽にメッセージを発信できるようになりましたけど、あの頃はまだ個人がホームページを持つことは珍しかったし、レコード会社のオフィシャルページでも、とりあえず契約アーティストのプロフィールやディスコグラフィ程度をのせて『とりあえず作りました』というレベル。しかも、アーティストが所属事務所やレコード会社を介さず、直接オープンな発言をするということもある意味“常識破り”だったわけです。僕としては、自分が思ったこと、感じたことをそのまま自主的に世の中に発表する、というのがすごく楽しかったし、反響もかなり大きくて。コラムなどの仕事をいただくようになったのも、きっかけはホームページですね」。


