
 アーカスプロジェクトhttp://www.arcus-project.com/ アーカスプロジェクトとは、茨城県主催によるアーティスト・イン・レジデンスプログラムの活動名称。1991年から試験的に活動を行い、1995年より正式にスタート、2004年で10周年を迎えた。2003年までの間、19カ国・地域から52名のアーティストを招聘。2004年も、アメリカ、台湾、セルビア・モンテネグロ、デンマーク、そして日本のアーティスト計5名が参加した。※写真はアーカスプロジェクト事務局の皆さん。左から鈴木さん、帆足さん、行木さん。 


世界各国の若手アーティストを
招聘して支援・育成 茨城県守谷市にある、統廃合で廃校となった小学校の校舎。この中に、今回紹介するアーカスプロジェクトのオフィスがある。アーカスプロジェクトのメインの活動は、海外の若手アーティストを招聘して支援・育成する「アーティスト・イン・レジデンス」だ。ディレクターの帆足亜紀さんは、その主旨を次のように説明する。 「若手のアーティストは、安心して創作に取り組める場所や環境を常に求めています。そのような若手アーティストを世界各国から招聘して、創作活動のための場所を提供するのがアーカスプロジェクトです。廃校となった小学校の教室を丸まる1室アーティストに提供するほか、近隣に住まいも用意します。アーティストは、生活の心配をすることなく創作活動ができるのです」 このアーティスト・イン・レジデンス以外にも、アーティストを招いたセミナーや、日比野克彦氏(東京藝術大学助教授)を招いてのワークショップやキャンプの開催など、多彩な活動を行うアーカスプロジェクト。しかし、なぜ「茨城県守谷市」という場所なのだろうか。 
 自治体による文化政策の
新しい「カタチ」 実はこのアーカスプロジェクト、茨城県が主宰する「官」のプロジェクトなのだ。なぜ茨城県が現代美術アーティストの育成を行うのだろうか。 「1991年の10月に、東京藝術大学のキャンパスが茨城県取手市に開設されました。これを機に茨城県としても、急速に発展していた茨城県南部に対して新しい文化芸術政策をとろうということで、1995年にプロジェクトがスタートしました。当時、従来の『箱もの』に頼った文化芸術政策が全国各地で行き詰まりを見せていました。また、成田空港からのアクセスも良く、東京と直結されるつくばエクスプレスの開業を控えているということもあり、国際的な活動ができるのではないかという思いもありました。そこで行き着いたのが、若手のアーティストを招聘して支援するというものだったのです」(帆足氏) 
アーティストの創作活動を支えるボランティアスタッフ
若手アーティストを取り巻く環境は厳しく、中には有望でありながらも生活に窮しながら創作活動をしている人も多い。また、世間の煩わしさから解放されて、創作に集中したいというニーズも多いようだ。そのようなアーティストにとってアーティスト・イン・レジデンスは歓迎を持って迎えられ、5年間の試験活動の後、2000年から「アーカスプロジェクト」として始動した。2004年度は、アメリカ、台湾、セルビア・モンテネグロ、デンマーク、そして日本と5カ国、5名のアーティストが参加し創作に励んだ。 アーティストが地域で暮らし地元の人たちと交流を図ることで、地域への貢献も果たしている。アーティスト・イン・レジデンスに参加したアーティストは、最後にスタジオを開放して作品を公開する。そこに地元の小学生が訪れて作品について語り合うことで、彼らも「アーティスト」という存在を少しずつ理解していく。 
地域の子供たちと一緒に行うワークションプ。芸術を身近に感じられる一瞬
また、日比野克彦氏のワークショップやキャンプも、老若男女を問わず参加してモノづくりの楽しさを知ることができると好評だ。茨城県の税金でまかなわれている事業である以上、地域住民への還元も忘れてはいけないのだ。 「アーティストたちも、地域との交流を楽しんでいると思いますよ。毎年新しいアーティストがやってくると歓迎会が行われますし、アーティストのほうも気さくに地元のお店に足を運んだりしている。そうやって、地元の人たちにも認知されてきているんです」と話す帆足さん。多くのアーティストたちは、守谷市という土地を気に入るようだ。  左)ペンで色を塗ることに夢中になる子供たち。こんな光景が見られるのもワークショップならでは。中・上)アーティストが直接、子供たちに物づくりの楽しさを教える。中・下・右)屋外で行うワークショップやキャンプも地域の人に大好評

 県やアーティストとのコミュニケーションに
Mac と Office は欠かせない存在 アーカスプロジェクトのオフィスでは、Windows PC や iMac、Power Mac など新旧のマシンが混在した環境になっている。そんな中で欠かすことができないのが、Mac と Windows で同じデータをやり取りできる Office アプリケーションだ。 「アーカスプロジェクトは茨城県の事業なので、県庁とのさまざまなやり取りが発生します。文書は基本的に Word でやり取りされますし、表計算に Excel は必須です。また、アーティスト・イン・レジデンスに関わる申請書類なども、Word を使って作成しています。Word も Excel も、オフィスワークには必須ですね」と、帆足さんは語る。  いわゆるオフィスワーク中心ならば、全部を Windows PC にしてしまっても良いような気もする。ところが、海外からアーティスト・イン・レジデンスに参加するアーティストのほとんどは、Mac を持参してくるのだという。スタッフの鈴木慶子さんは、こう話す。 「海外からやってくるアーティストにとって、母国の家族や友人などとのコミュニケーションにコンピュータは必須なんです。とくに欧米のアーティストは、ほとんどと言っていいほど Mac を持参します。アジアのアーティストは、Windows PC を持ってくることが多いですね。ここ(アーカスプロジェクトが置かれている元小学校校舎)にはブロードバンド環境が揃っているので、インターネットの利用には不自由しません」  アーカスプロジェクトでは、アーティスト・イン・レジデンスに参加したいというアーティストからの申請なども、すべてインターネットで受け付けている。インターネットが今ほど普及していなかった当初は、資料を各国の大使館に送ったりしていたが、今ではインターネットを通じた自由でインタラクティブなコミュニケーションが可能になった。 スタッフの行木陽子さんが、最近の「流行」を教えてくれた。
「故郷に赤ちゃんがいるアーティストは、ベビーベッドにライブカメラを取り付けてもらって“パパですよ〜”なんてやってるんですよ(笑) それから、2004年に流行ったのがIP電話です。母国との連絡に大活躍していました。ブロードバンドのおかげで、海外とのコミュニケーションがずいぶんととりやすくなっています」 
 今後の課題は
より新しいシステムの導入 このように、Macや、Windows PC などのコンピュータ、そして Office を上手に活用しているアーカスプロジェクトだが、今後はより新しいコンピュータやアプリケーションを活用することで、業務やコミュニケーションの効率をアップさせたいという。 「県の予算で活動している関係上、いつでも最新のコンピュータ環境を導入できるというわけではありません。それが悩みと言えば悩みですね。コンピュータの性能は、どんどんと上がっていってしまうので。例えば、今まで外注していたチラシを自分たちでつくれるようになったり、アーティストの活動風景を写真におさめてプレゼンテーション資料をつくったりと、コンピュータの重要度は増しています。リースアップを迎えるものから、Power Mac G5 などのパワフルで新しいマシンに入れ替えて、オフィスワークをより一層効率化したいというのが希望です」(帆足さん) 間もなく、2005年度の参加アーティストも決定するアーカスプロジェクト。このプロジェクトから巣立ったアーティストの作品に出会える日を、楽しみにしていきたい。 |