
 渡辺和也
渡辺矯正歯科・院長/東京歯科大学非常勤講師
http://www.watanabe-ortho.com/ 1986年 東京歯科大学卒業。矯正装置に関する米国特許も保有する矯正歯科のスペシャリスト。渡辺矯正歯科には、東北や東海など遠方からも数多くの患者が訪れ、口コミサイトでも同歯科の評判は非常に高い。 

入ってすぐの受付も矯正歯科とは思えないほど、ポップな感じだ。受付には常時2人いるので、患者さんの細かなケアができる
歯医者のイメージを覆す
「らしくない」矯正歯科 「ビルの正面に掲げている看板が、凹んだ形なのに気づきましたか? そのほうが、出っ張った看板よりも迎え入れるという柔らかな雰囲気になるんです。その他にも、BGM を流したり、アロマをたいたりと工夫しています。患者さん自身や、お子さんを受診させるお母さんが安心できるようにと思って」 渡辺矯正歯科の院長、渡辺和也先生。患者さんが安心できる環境づくりに対する彼のこだわりは、並々ならぬものがある。初診の人が来たときには待合室の BGM を通常のものとは変え、より安心できるように工夫されている。フロア内の椅子も、常に乱れなく置かれている。渡辺先生の言葉を借りれば「椅子すらきれいに並べられないのに、歯並びをきれいに直せるわけがない」ということだ。 
 そもそも矯正歯科とは 矯正歯科と聞いて、皆さんは何を想像するだろうか。多くの人は「歯並びをきれいにすることを専門とした歯医者さん」だと理解しているはずだし「審美歯科」という言葉を聞いたことがある人も多いはずだ。しかし渡辺先生の考えは単に「歯並びを治す」ということだけに留まらない。 「矯正歯科は、患者さんの魅力を引き出すのが役割だと思っています。治療は、山登りをするようなものです。山に登るのは患者さん本人で、医師はそのお手伝いをするんです。医師と患者さん、そして患者さんの親が一緒に頑張って、ゴキゲンに治っていただきたいと常に思っています」 渡辺先生は「魅力」という点について、さらに話を続ける。 「人にはそれぞれ、魅力があるはずなんです。矯正歯科は、目の前の患者さんの魅力を捉えて、それを引き延ばすことができる仕事です。それを実現するためには、こちら側からも発信してコミュニケーションをとる必要があります。キャッチボールというよりも、もっと柔らかいものですけどね」 渡辺先生の話は、私たちが考える「矯正」に対するイメージを、すでに大きく超えている。そして、聞くほどに引き込まれてしまう。 「歯科魅力学、という言い方をしてもいいと思うんです。矯正歯科には必ず審美、見た目の良さが求められますが、同時に機能も満たさなくてはいけない。例えば、とてもお気に入りのジャケットが汚れてしまったら、気が沈みますよね。ジャケットはクリーニングに出せば済むかもしれないけれど、気分はどうしたって優れない。そういう気分に対して、機械的に対処することはできないですよね。矯正歯科もそれと同じです。だから医師と患者が通じ合う必要があるんです」 もともとは大学病院に勤務していた渡辺先生。しかし、患者さんの魅力を引き出しながら治療して、お互いが満足できる−−そんな矯正歯科医を目指す渡辺先生にとって、制約の多い大学病院は理想の環境とは言い難かった。だから渡辺先生は、開業医を目指したのだと語る。 


院内には子どもが好きそうなキャラクターがさりげなく置かれている。ニッコリ笑う太陽の時計は、よく見ると矯正器具をつけている。渡辺先生が米国の学会で見つけたものを取りよせた
「歯医者の息子」ではないからこその
患者さんの立場に立った発想 小さい頃は歯医者が嫌いだったという渡辺先生。子どもの頃に親に連れられ歯医者に行き、1人で診療室に入った。親は待合室で待っていることになった。とにかく我慢することを強いられて、治療が終わった後で親の顔を見たとき、思わず泣いてしまったのだという。 「きっと我慢していたんだと思うんです。子どもなりに緊張しながら、じっとこらえていたものが、親の顔を見た途端に安堵感から泣き出してしまったんでしょうね」と、渡辺先生は語る。 「高校時代は、パイロットか DJ か、医者・歯医者になりたかったんですよ。でも当時は痩せ過ぎていたから、人気商売のパイロットは難しいと思ったし、ちょうど羽田沖での事故もあって、大変な仕事だと感じました。そんなとき高校の担任の先生に、手先が器用だから歯医者がいいんじゃないかと言われて、素直にそうかなぁと思ったんです」 そうして歯科大学に進んだ渡辺先生だが、入学早々にある決意をする。 「オリエンテーションで校内を回っているときに、歯医者のあの「キーン」という歯を削るときの音がしたんです。私は自然に“この音、嫌な音だよね”って同級生に言ったら、周りは“え? 家でよく聞く音じゃん”と。みんな歯医者の息子だから、あの「キーン」という音は当たり前だったんです。これは大変なところに来てしまったなという気持ちでした。でもそのときから、自分は普通の歯医者にはならないと決めたんです」  上)まるで美容院かネイルサロンのような趣の治療スペース。間接照明が暖かい雰囲気をつくり、安心して治療が受けられると患者さんにも好評。下・左)待合室に置かれているアロマポット。下・中)治療器具が収納されているキャビネット。治療器具を置く専用トレイには、ガチャガチャと金属音が立たないよう特殊加工されたものをあえて使用している


患者さんごとに取った歯型の模型を動かしながら、わかりやすく丁寧に治療について説明をしてくれる
G5 とOffice でアイディアを
すぐカタチに そんな渡辺先生は、医院の中で Power Mac G5 を利用している。専門のアプリケーションを使って、矯正治療によって顔の形がどのように変化するのかをシミュレーションして見せるなど、患者さんへの説明として使用している。また、Office for Mac も必須のアプリケーションになっている。例えば、学会などでのプレゼンテーションは PowerPoint が重要な役割を占めている。 「外国の人が見たきれいな顔と、日本人が見たきれいな顔って違うんです。それはバービー人形を見てもわかることです。そこで、どういう顔がきれいに見えるのかといったことを、PowerPoint でプレゼンテーションしました。また、大学の非常勤講師をしているので、講義内容を PowerPoint でつくったりもします」 渡辺先生によると、学会などでプレゼンテーションをする場合でも、データを提出して会場のコンピュータを使って発表をしなくてはいけないことがほとんどだという。だから「Mac でも Windows でも、どちらでも大丈夫」なPowerPoint を使用している。 「Mac で作業していると、プレゼンテーションが格好良くなるんですよ。ただ、機能によっては Windows で再現できないので、そこは互換性チェックの機能で拾っていくわけです」 また、論文作成などのドキュメントのやり取りには Word を愛用している。「Windows ユーザーの先生から送られてきた Word 文書でも問題なく開ける」(渡辺先生)ので、重宝しているようだ。共同執筆者がいる場合や、自分が書いた論文を誰かにチェックしてもらいたい場合でも、共通のフォーマットとして Word が使われているという。 現在のメインマシンとして、Power Mac G5 を採用した理由を聞いてみた。 
PowerPoint を実際に動かしながら、普段のプレゼンテーションを実演する渡辺先生
「Word で論文を書いたり、PowerPoint でプレゼンテーション資料を作成したり、医院の広告を考えたりといった作業をしているときに、頭の中で“あ、いいな”と思うアイディアが浮かんだとしても、それを入力しているときにもたついてしまうようだと、ストレスになりますよね」 頭に浮かんだアイディアをストレス無く、すぐに形にしたいというのが渡辺先生の考えだ。また、患者さんを前にしてコンピュータを触りながらイライラしているところを見せたくないという、渡辺先生の美学でもあるように感じられた。診療室の Power Mac G5 にしても、すごいモノが置いてあると思わせないために、ディスプレイに隠れるように置くという、ここでも「もてなしの心」が生きている。 
 ゴキゲンに噛める歯並びを
つくっていきたい とにかく渡辺先生は、患者さんとのコミュニケーションを重視し、そして最大限の気配りを見せる。ウッドを多用したインテリア、整理整頓された院内はもちろん、BGM、アロマ、そして治療をわかりやすく説明するために Mac を使ったり、患者さんに対しての言葉遣いに気をつけたり−−それらすべてが「患者さんのために」行われていることなのだ。 矯正歯科医としての抱負を聞かれて「ゴキゲンに噛める歯並びをつくっていきたい」と語る。「歯並びに悩んでいる人は、諦めないでほしいですね。60代の人でも来ていただいています。ただし、ご本人のやる気は必要です。患者さんと医師とが一緒に取り組んでいくという姿勢が大事なんです」という渡辺先生の話を聞くと、ついつい自分の歯並びもチェックしてもらいたくなる。 |