
 水鳥雅文氏
アートディレクター
http://www.elephant-com.co.jp/ (株)エレファントコミュニケーションズのアートディレクター。広告代理店の制作部門での勤務やフリーランスのデザイナーを経て、1999年に仲間と同社を立ち上げる。同社の主な業務内容は、コンサルティングと Web ページ制作、グラフィックデザイン。代表的な Web ページ制作実績は、格闘家・須藤元気氏、パフォーマー集団「STOMP」、株式会社三笠書房など。 

犬好きのスタッフが愛犬を会社に連れてくる。愛くるしいその姿に、仕事の疲れも癒されるとか
デザイン現場でのキーワードは
「ブランディング」 エレファントコミュニケーションズのオフィスに入ると、人よりも先に取材陣を迎えてくれたのは、同社スタッフの愛犬だった。3匹の可愛い犬たちが客人を迎えるのが、このオフィスではごく日常的なことだと言う。その瞬間「このデザイン事務所、何か違う」と感じたのだが、それは間違いではなかった。
エレファントコミュニケーションズの柱となる仕事は「デザイン制作」だが、その強みは単なるデザイン力に留まらない。同社にとって「デザイン事務所」という表現は、明らかに当てはまらないだろう。アートディレクターの水鳥雅文氏が挙げたキーワードは「ブランディング」だ。水鳥氏はまず、「ボーイスカウトの再ブランディング」の例を紹介してくれた。 「以前のボーイスカウトというと、子どもたちの憧れという面があったと思うのですが、今の親には“堅苦しい”と受け取られるようで、子どものボーイスカウト離れが起きています。そこで、ボーイスカウトにも再ブランディングの必要性が出てきたのです。ボーイスカウトの情報誌も、前はかなり内向きなものでしたが、内容面でもビジュアル面でも、もっと外に向けてアピールするものに変えていくことになりました」 
ボーイスカウトの情報誌『SCOUTING』。ボーイスカウト自体のイメージが変わるほど斬新な誌面
エレファントコミュニケーションズは「SCOUTING」というボーイスカウトの情報誌の制作に、企画や取材といった段階から関わっている。例えば、ある号では「ユニホーム」について取り上げ、世の中にはどのようなところでユニホームが使われているのか、どうしてユニホームが必要なのか、そしてこれからのボーイスカウトのユニホームはどうなるのかを考えた。やや堅いと思われるテーマでも、わかりやすいビジュアルで「オシャレで読んで面白い」と思えるページになっている。まるでカフェに置いてあるフリーペーパーのようだ。 
 舞台美術専攻から
アートディレクターという道へ ブランドの再構築という視野に立ってデザインに取り組む水鳥氏だが、その経歴はなかなか面白い。 「武蔵野美術大学で空間デザインを勉強していました。専攻は、舞台美術だったんです。ところが、授業でプレゼンテーションを行うと、その内容よりもグラフィックを褒められることのほうが多かったんです。そこで、グラフィックのほうが向いているのかなぁと(笑)」 それでも、大学卒業後すぐにグラフィックデザインの道に進んだわけではなかった。水鳥氏は、バックパッカーの集うバンコクで情報収集を経て、インドへと旅立つ。 「日本の能や歌舞伎とも通ずるインドの古典芸能が好きだったんですよ。そこでインドの大学院を直接訪ねたところ、インド南端の街にある劇団を紹介してくれました。結局その劇団に入って、1年間、舞台美術を手がけることになったのです」 しかし水鳥氏は、その生活に1年で区切りをつけてしまう。  「区切りをつけるきっかけになったのは、夜中に山中で行われた舞台です。山深いところに突然開けた土地があって、そこで舞台を見ました。舞台装置らしい舞台装置はなかったのですが、終盤になってだんだん空が白んできて、山の稜線から太陽が昇ってきます。すると役者がその太陽を指差して『ほら、太陽も昇ってきた〜』と言って、ハッピーエンドで終わるんです。これが究極の舞台装置なんだと感動しましたね。だって、自然に勝る人工的な舞台装置なんてないじゃないですか。だから、自分の中で完結してしまいましたね。それで日本に帰国して、広告代理店の制作スタッフとして就職したというわけです」  左上)社名にも使われている「像」のモチーフ。いたるところに像のアイテムが置かれている。左下)社内でお昼寝をする犬の姿が見られるのも、なかなか他の会社ではない光景。右)オフィスは木目が優しいフローリング。犬も人もここで共に過ごす

 Web の確認作業に Virtul PC を
使ってみて「感動」 現在のエレファントコミュニケーションズでは、アートディレクターやコーダー、営業スタッフなど様々な人が働いている。だから当然、社内には Mac と Windows PC が 混在している。また、多くのクライアントが Windows PC を使っているため、ドキュメントのやり取りに Office for Mac は欠かせない存在だと水鳥氏は言う。 「クライアントから来るテキスト素材は、ほとんど Word か Excel なんです。PowerPoint のプレゼンテーション資料をやり取りすることもあります。ちょっとした文章なども、そのようなファイルからコピーして使うケースがよくあります。例えばモノの値段などは、紙に打ち出されたものを見ながら手で入力するよりも、Word や Excel の元のデータから、Adobe Illustrator などにコピー&ペーストするほうが、情報に間違いが生じないので確実なんです」  そして今、エレファントコミュニケーションズのスタッフの間で大きな話題となっているソフトウェアが、Virtual PC だ。 「最近 Virtual PC をインストールしたのですが、みんな感動しています(笑) 使いにくそうというイメージがあったのですが、実際にはそんな心配は不要でした。Mac で 制作した Web サイトを Windows 環境で動作確認するときも、1台の Mac の中で完結してしまうのはいいですね。それまでは、確認のためにわざわざ Windows PC のところまで移動していましたから。Virtual PC がこんなにも便利だとは思わなかったです」 Mac の中で Windows が動くことで、Mac ユーザーにとっては安心できる面もあると水鳥氏は言う。 「Mac をずっと使い続けているデザイナーにとっては、Windows の使い方はなかなかわからなくて不安な面もあるんです。でも、使い慣れた1台の Mac の中に Windows 環境があると、万が一トラブルがあった場合でも Windows PC 本体を使うのとは違って(ハードウェアとしては Mac なので)安心して作業ができるんです」 

マシンパワーが要求される雑誌やパンフレットの制作。高速処理ができる Power Mac G5 が必須だと語る
Virtual PC を快適に動かす
G5 のパワーがこれほどとは…… メインの作業用マシンに、Power Mac G5 を使用している水鳥氏。64bit の高速な CPU や最適化されたアーキテクチャ等のおかげで「Virtual PC がサクサクと動いている」という。以前は G4 マシンを使っていた水鳥氏に、Power Mac G5 導入のいきさつを聞いてみた。 「以前は PowerBook G4 に外付けのディスプレイを接続して、Mac OS 9 で使用していました。Web デザインの場合だと、とてもサクサク作業ができるのですが、グラフィックの仕事がかなり立て込んでいるときに、G4 だとちょっと厳しいなという状況になったんです。かなり重たいデータをつくっていて、修正するために開くだけでもかなり時間がかかる。とにかく忙しかったので、少しでも速くなってくれればという気持ちで Power Mac G5 を導入したら、とんでもなく速くなってしまいました(笑)」 Power Mac G5 を買いに行く時間すら惜しかったという水鳥氏だが、周囲の勧めもあって買い換えを決断。「OS もフォントも、アプリケーションのバージョンも変わるので、今まで出来上がっていたデータを一部つくり直す必要はありました。でも、そういった時間を含めてもなお、G4+OS 9 のときよりも劇的に速いのには驚きでした」と語る。 

ペットのためのアトリエショップ「BlueElephant 」(直営店は下北沢)。オンライン通販はもちろんのこと、日本全国に取扱店がある
今後は Entourage で プロジェクト管理をしたい エレファントコミュニケーションズは様々なプロジェクトに関わっているため、日々のプロジェクト管理がとても重要になっていると水鳥氏は言う。スタッフたちの犬好きが高じて、ペット用の服やアクセサリーを販売する自社ブランドを立ち上げたこともあり、多忙さがさらに増しているのだ。そんな中で、水鳥氏が興味を持っているツールが Entourage だ。 「社内の連絡やプロジェクト管理に Web ブラウザで利用できるグループウェアを導入しているのですが、使い勝手が決して便利とは言えません。Entourage のスケジュール機能やプロジェクトセンターにはとても興味があります。Windows ユーザーとの連携が考えられているのもいいですね」 水鳥氏の話を伺っていると、アートディレクターの考えていることが、目先のデザインだけではないことがよくわかる。広い視野に立ち、「ブランディング」から「プロジェクト管理」に至るまで、様々なアイディアが頭の中で展開されているのだろう。もし自分がクライアントだったら、こんなアートディレクターに仕事を発注してみたい−−そんなふうに思えてくる。 |