Executive E-mail Archive

2009 年 9 月 29 日

新たな効率性

経済を語るあらゆる場面で、最近ますます頻繁に話題に上るのが「新たな基準(the new normal)」と呼ばれている現象です。私はこの表現が好きですが、その理由は、この12か月の間に、経済の実相にある基本的な変化が現れてきたという事実を、この言い回しがうまく語っているからです。

それでは、その変化とはどのようなものでしょうか? 世界経済は、非現実的な消費の伸びや返済不能な次元の個人負債に刺激された形で、数年間にわたってその規模を拡大してきた後、今では支えとなる経済の基本活動が、さらに低調なレベルに落ち込もうとしています。今や人々は借り入れを控え、貯蓄を増やし、かつ消費活動においても極めて慎重な姿勢を見せようとしています。

こうした現象こそが新たな基準であり、今後ある時期までは、私たちはそうした状況の中に置かれることになるでしょう。そして、この状況にいかに対処していくかが、現在の課題となります。

この新たな基準は、コスト削減の促進、生産性の向上、そして迅速な改革の推進などを同時に実現できる、革新的なテクノロジを基礎にした新たな種類の効率を要求します。

私は、このような新たな効率の追求による新たな基準への対応が迫られる中で、効率や生産性の向上に加えて戦略的な企業経営の推進を可能にするのは情報技術にほかならないと考えています。今回は、こうした問題についての私の考えを、マイクロソフトのエグゼクティブ メールをお読み下さっている皆様にお伝えしたいと思います。

“新たな効率性” –「With Less, Do More(より少ない資源でより大きな価値を実現)」

新たな基準の中で明らかなことが一つあります。それはコスト削減が極めて重要だということです。といってもコスト削減だけでは長期的な必勝戦略を作り出すことはできません。持続性のある競争力を生み出すには、結局のところ企業は、生産性の向上という課題と、新たな価値をお客様に提供するための道を模索するというもう一つの課題を、同時に追求する必要があります。

経営コストの削減や生産性の向上と、新たな価値提供に繋がる改革余地の拡大といったことを同時に進めるといっても、いったいどうすれば良いのでしょうか?

当社は長年にわたり、「With Less, Do More」の実現におけるIT(情報技術)の役割について論じてきましたが、ITは、昨今のように経済が低迷するなかで『私の会社でも「With Less, Do More」は可能なのだろうか』という、幾分異なった疑問への回答を企業経営者に提供しなければなりません。

この疑問への回答がさらに緊急を要するものであることを裏付ける傾向が他にもあります。それは労働力の分散と従業員のモバイルワークの拡大がこれまでになく進行しているという点や、政府機関による規制強化や順守要件の増大、そしてセキュリティの重要性拡大と維持の困難化といった時代の流れです。

同時に企業は、互換性や接続性が欠落したアプリケーション群によって構築されている旧来型テクノロジのシステム、すなわち情報の有効活用とコラボレーションの推進を阻害する要因との戦いに日夜奮闘を続けています。旧来型システムの複雑さは、あまりにも多くの時間や過度な資源を、基礎的なサービスやセキュリティ保護といった作業に集中させるという負担をIT部門に強いています。

一方現在では、新たな世代のビジネス ソリューションが、顧客サービスの弱体化、従業員の創造性や効率の抑圧といったマイナス要素をもたらさずに、コスト削減を実現する戦略的ツールとしてITを変化させようとしています。新世代のビジネス ソリューションは、システムとアプリケーション間の障壁を打破し、定型的な作業を自動化し、戦略的な優先事項とも整合する高価値の仕事に専念できる環境をIT部門の技術者達に提供することができます。こうしたテクノロジが、リスクの軽減、セキュリティの確保、サポート コストの削減といった側面から企業を支援しようとしています。すなわち、このようなITこそが、より少ない資源で新たな効率性を獲得するための道を企業に提供できるのです。

これらのテクノロジは同時に、情報の保存場所に影響されない一貫性のあるアクセスの仕組みや、居場所にとらわれず安心して共同作業が行えるような環境を人々に提供します。この新たな世代のビジネス ソリューションは、支店、家庭、出先といった場所で作業をする人達にも本社で働く人達と同等の生産性を提供することができる、さらに改善されたモバイルコンピューティングの機能を人々に提供します。

最も重要なことは、ITの新たな波が、その高度なツールにより、未踏の市場機会や、いまだ満たされていないお客様のニーズに対応するための新機軸を見つけ出せる洞察力を、企業の従業員にもたらすという点です。

生産性の大幅な向上と新機軸の実現に向けた可能性の拡大という、この強力な組み合わせこそが、より大きな価値を生み出せる力を企業にもたらす、情報技術の力にほかなりません。

“新たな効率性”の実現を可能にするソフトウェア ソリューション

本年マイクロソフトは、最も切迫した課題への対応や、市場に新機軸をもたらせるような市場革新力の強化といった企業向けの機能に焦点を当てた、一連の新しいソフトウェアの提供を進めています。

一連のソフトウェアの先陣を切るのは、当社旗艦製品の一翼を担うPC オペレーティング システムの最新バージョンであるWindows(R) 7です。Windows 7は、作業を簡素化し、より短い時間、より少ない操作でより多くの成果を出せるようにすることを主眼にした製品です。企業データの保護やセキュリティの確保、コンプライアンス強化やリスク軽減のための制御性の拡大といったWindows 7の強化機能は、すでにお客様の環境に展開していただける状態にあります。また、MDOP(Microsoft(R) Desktop Optimization Pack)などを含む当社のWindows Optimized Desktopソリューションの一環として提供されるWindows 7は、PC環境の管理の効率化によるコスト削減やパフォーマンスの向上ばかりでなく、エンドユーザーが場所を選ばずに作業できる環境の実現をも可能にします。

以上の点を含むWindows 7の強化機能は、テストプログラムに参加し、自分達が望む機能や改善点についての提言を寄せてくださった何百万人ものお客様や何千人ものIT技術者の方々との密接なコラボレーションの結果として実現されたものです。Windows 7は、こうした方々からの支援のおかげもあり、当社がこれまでに開発したPC オペレーティング システムの中で最も優れた製品となっています。

当社はまた、サーバー オペレーティング システムの新バージョンであるWindows Server(R) 2008 R2を、このほどリリースしました。サーバー インフラストラクチャの信頼性と柔軟性の向上を主眼に置いて設計されたWindows Server 2008 R2は、コストパフォーマンスの高い仮想化技術、事業継続性、電力消費の大幅削減、優れたエンドユーザーエクスペリエンスの提供などを可能にします。

今年末にはまた、Exchange Server 2010の発売を予定しています。マイクロソフトのユニファイド コミュニケーション テクノロジの基礎であるExchange Server 2010は、PCから電話やブラウザーに至るコミュニケーション環境に極めて優れたEメールや受信ボックスのエクスペリエンスを提供するほか、企業情報の保護にも大きな力を発揮します。このほか、組み込みのボイス メール ソリューションの利用によるコスト削減、ローコスト ストレージへの対応といったメリットも提供します。

“新たな効率性”の恩恵 – 現在すでに主要な企業がその効果を実証

すでに世界各地の企業が、これらのソリューションを実際に展開し、その恩恵を享受しています。

例えばIntelでは、Windows 7が、パフォーマンスの改善やアプリケーションの反応スピードの改善を可能にし、かつモバイル ワーカーのための優れた作業環境を提供しています。Fordは、Exchange 2010とWindows 7を活用することで、コミュニケーションの効率化、意思決定手法の改善、生産性の向上などを実現しています。Continental Airlinesは、Windows Server 2008 R2のHyper-Vテクノロジをベースにしたサーバー仮想化の機能により、ハードウェアやソフトウェアのコストならびにそれらを運用するためのコストを、年間150万ドル以上を節減できるものと予測しています。

カリフォルニア州に本拠を置くITコンサルティング企業であるConvergent Computingでは、Windows Server 2008 R2と Windows 7を導入したことにより、同社の55人の従業員が使用する仮想プライベート ネットワーク(VPN:virtual private network)の維持費用を年間4万ドル節減できる見通しです。また同社の企業ネットワークは瞬時にアクセスできるようになり、ファイルのダウンロード時間も以前より30ないし40パーセント短縮されました。

2,000人以上の従業員を擁し、世界110か国にパートナー ネットワークを展開するロンドンの金融サービス企業であるBaker Tillyも、すでにWindows 7を展開しています。Windows 7の全社展開をいち早く実施した企業の一つであるBaker Tillyは、展開、管理ならびにエネルギー関連のコスト削減により、1台のPC当たりおよそ160ドルの節減がはかれるものと期待しています。加えて、Windows 7がもたらす生産性向上により、モバイルワーカーが勤務時間内にアウトプットできる労働価値を1台のPCあたり約600ドル向上させられる可能性があるものと見ています。このことは、同社の現在の最終年間総売上高の0.5パーセントに相当する価値が還元されることを意味します。

こうした新たな基準への対応に際しては、企業だけが奮闘を強いられるわけではありません。政府機関においても、収入の落ち込みによる厳しい制約のもとで決められた予算のなかで、より多くのサービスを提供していくための道を見いだす必要があります。こうした対応策の一環としてWindows 7の展開を実施したマイアミ市では、セキュリティや管理、そしてエネルギー関連のコスト削減が可能となり、結果として年間およそ40万ドルの費用を削減できる見通しとなっています。

革新と成長の時代を約束する理想的な条件

世界経済の低迷によって数々の挑戦を強いられているといっても、長期的な観点に立った将来のビジネスチャンスについては、私は楽観的な見方をしています。

楽観的である理由は、来年にかけて、世界の多くの地域で成長が再開するであろうと思える明るい兆しが見えているからです。

実はそのこと以上に私が楽観的である理由があります。それは私たちが、生産性の大幅な向上と新たな技術革新の開花が可能な時代、すなわちテクノロジの主導による変革の時代に突入しようとしているという私なりの見方によるものです。

新たな効率性は、現在の経済的実相に対応できる力を企業にもたらすだけでなく、人々と情報やアプリケーション、そして他の人々とを繋ぐための新たな方法を提供するシステムやソリューションの基盤をもたらします。その結果、企業においては、従来から残された問題の解決が可能となる一方、新たな事業分野や業種を生み出すきっかけとなるような突破口が開かれ、経済の成長を一気に刺激する革新的な製品群やサービス群の誕生へと繋がるでしょう。

こうした動きもまた新たな基準となります。すなわち、経済の成長が負債や消費によって支えられるのではなく、生産性の向上や、人々の生活全般に真の価値をもたらすような新たな発想によって実現されていくという過程です。そのなかで情報技術は重要な役割を果たします。私は、こうした状況の進展を目の当たりにすることを待ち望んでいます。

スティーブ バルマー


© 2009 Microsoft Corporation. All rights reserved.