
第 1 回 ユーザーエクスペリエンスの定義とピラミッド モデル
■ ユーザーエクスペリエンスの定義
「ユーザーエクスペリエンス」という言葉自体は様々な場所で使われるようになってきましたが、使われる文脈や人によってその意味が大きく異なるようです。かっこいいデザインのことを指していたり、エルゴノミクスやユーザビリティ
テストのことを指していたり、「おもてなし」のようなキーワードで説明されていたり、状況によってさまざまな意味で使われています。
それも仕方がないかもしれません、ユーザーエクスペリエンスの共有可能な定義は実はまだ決まっていないようです。2008 年 5 月に開催された ACM
主催のコンピュータ ヒューマン インタラクションの学会・カンファレンス
CHI2008 で、「Towards a Shared Definition of User
Experience」というセッションが開催されていました。こういった議論がされるということは、まだ共有可能な定義がないことと、それが必要とされていることを意味します。そこでは
5 つの定義を UX の研究者と実践者にアンケートとして問い合わせた結果が発表されていました。その時使われた資料 (英語) はこちらにありますので参照してみてください。5
つの定義は以下のとおりです。
アンケートの結果は次のとおりです。研究者の多くは定義3を選び、研究者以外では定義1を選んでいます。皆さんならどの定義を選びますか? もちろんこれしかないわけではないので、もっと自分にぴったりした定義を持っているという方もいるかもしれませんが、ここでは「共有可能」な定義を質問しているため、5
つに限定されています。
| 研究者 | 研修者以外 |
| 定義 1 |
18% | 41% |
| 定義 2 |
25% | 18% |
| 定義 3 |
32% | 14% |
| 定義 4 |
7% | 9% |
| 定義 5 |
18% | 18% |
■ ユーザーエクスペリエンスのピラミッドモデル
「Towards a Shared Definition of User Experience」で議論されていた内容の 1 つに「ピラミッドモデル」の議論がありました。これは、「ユーザーエクスペリエンスは、『ユーザー中心設計 (UCD) 』を基にして、『機能、ユーザビリティ、楽しさ』の
3 つの要素から構成されているという」概念モデルです。このピラミッドモデルは「ユーザーエクスペリエンス」の基本手法と構成要素を明示しており、どの定義を選ぶにしろ、共有可能で合理的なモデルでしょう。現在のソフトウェアでは、機能だけでは不十分であり、ユーザビリティを考慮しなければならないというのは当然のことでしょうし、Webのようなコンシューマ向けのサービスを考えた場合、「楽しさ」という要素が無視できないことも確かなことです。これらの構成要素を実装するための基本手法としてユーザー中心設計 (UCD) を位置付けています。確かに「ユーザー」を中心に据えなければ、これらの構成要素を正しく評価することができませんし、「ユーザー」によってそれぞれの構成要素の重みづけも変化します。

次回は、ユーザーエクスペリエンスによってどのようなメリット・利益が得られるのかということについて紹介します。