REMIX07 ブレイクアウト セッション 「IP-TV 時代の GyaO & GyaO NEXT」
2005 年の春、Windows PC 向けに開始した無料広告モデル GyaO のサービス規模や視聴傾向をはじめとした現状や、今夏より開始された家庭用テレビ接続型課金タイプ 「GyaO NEXT」 の展望など、今後の映像配信について説明します。
【メインスピーカー】
堤 天心氏
株式会社 USEN パーソナル事業本部 GyaO NEXT 戦略室 室長
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ブレイクアウト セッション BD004 概要 |
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株式会社 USEN パーソナル事業本部 GyaO NEXT 戦略室 室長の堤 天心氏 |
「REMIX07」 のキーノートやジェネラル セッションで紹介したマイクロソフトのテクノロジー以外にも、Web 業界の有識者の方々から Web デザイナー、Web デベロッパー、意志決定者向けにさまざまな情報をお届けするブレイクアウト セッション。ここでは株式会社 USEN パーソナル事業本部 GyaO NEXT 戦略室 室長の堤 天心氏が、GyaO の現状、テレビ モニターをターゲットとした市場の変化予測、それに対する GyaO の新展開と戦略について説明します。
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| GyaO NEXTのメニュー画面 |
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テレビ モニターを中心とした GyaO の 展開と戦略について説明 |
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GyaO の現状と課題 |
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GyaO は、約 2 年半前の 2005 年 4 月にスタートしました。無料の VOD 配信という、当時としては画期的なサービスでしたが、その背景には 「USEN の経営資源としてのノウハウ」 と 「世の中の環境変化」 がありました。
USEN の経営資源としては、ShowTime/GAGA/有線放送事業で培ったエンターテイメント業界とのパイプや権利処理ノウハウ、そして BB 事業で培った配信インフラ、リッチコンテンツの配信ノウハウ、ネットワーク構築ノウハウがありました。とくに 2000 年に世界初の商用 FTTH を立ち上げていた点で、他社にはないユニークなアセットが USEN にあったかと思います。
一方、国内でもちょうど 2 年ほど前に、ADSL の純増と FTTH の純増とが逆転するなど、FTTH の普及拡大が進んでいました。その頃から、新しいメディアとして BB メディアが成長するのではないかというような議論が始まり、そういった時代背景を捉えて GyaO がスタートしたわけです。
GyaO の特徴としては 「完全無料」 「VOD 放送」 「簡単な登録制」 「デイリー更新」 が挙げられます。広告メディアを指向していますので、毎日なにかしら新しいものが掲載される、という媒体特性を目指しています。
一方広告主に対しては、VOD ならでは・ネットならではの 「能動(選択)視聴」 「ターゲティング広告」 「自由度の高いクリエイティブ展開」 など、3 つの価値を打ち出しながら、ビジネスあるいはサービスとして世の中に出していくものと捉えて提示しています。
直近の登録者数は 1 千 5 百万人という状況で推移しています。ほぼ毎週、10 万人弱のユーザーが新規で登録いただいています。アクティブ率については、月次で 700 万人強のユーザーに定期的に訪問いただいてます。
現在の GyaO の課題としては 「ユーザーリーチの向上」 と 「広告市場としての立ち位置の明確化」 という 2 点が挙げられます。
ユーザーベースで 1 千 5 百万人の視聴者を抱えているわけですが、より広告媒体としての価値を出すためには、その全員が毎週必ず見るといったスタイルを気づかないと難しいと考えています。優良コンテンツを集めることでアクティブ率を向上させるという取り組みも重要ですが、リラックスして動画を楽しむというスタイルと現在の GyaO の PC +マウスという UI スタイルとの間にハードルがあるのではないかという仮説を立てたわけです。ようは新しい操作性といったものを追求することが、より気軽に視聴してもらえるという立ち位置を強化するのではないでしょうか。
さらにノン PC 層がまだまだ多数存在することも無視できません。マンションなどで最初から FTTH などが用意されていても PC を実際に導入するお客様は 6 割ほどで、残り 4 割は設備があっても PC あるいは IT サービスを導入していないお客様となります。モバイルで完結している若年層も見逃せない存在です。
対クライアントの観点では、媒体特性に関係なく GyaO はネット広告市場として捉えられているため、 CPC/CPA 効果測定などでは苦しい結果となってしまいます。また媒体価値に応じての予算配分という考えでなく、ネット広告からの予算配分となるケースが多いというのもジレンマですが、しかし TV 広告予算あるいは販促から出すというのもまだまだ苦しく、まだまだ GyaO でも摸索しなければならない部分かと思っています。
そういうわけで、新しい媒体ということを打ち出すためにも、リモコン UI による家電ライクな視聴環境が必要となります。ただし、従来の視聴環境でない、従来のデバイスでもない、新しいリモコン UI での環境ということになります。これを積極的に研究開発し、市場に投入することが我々の課題であるという認識です。
トライアルという意味合いの位置づけは強いのですが、自社オリジナルの STB (Set Top Box) を開発して、実験的にリリースしました。それがテレビ向け端末の 「ギャオプラス」 です。中身は完全に PC アーキテクチャの箱になっておりますが、テレビに接続してリモコンで操作するという端末です。
こちらは参考データとなりますが、そういった視聴形態の変化が、視聴傾向にどのくらいどういった変化をもたらすのか、ギャオプラスのユーザーに対して調査を行いました。これによると、“マウスの GyaO” に比べて “リモコンのギャオプラス” は視聴時間が 30 〜 40 %、視聴回数が 2 倍弱で 70 〜 100 % 増加しました。GyaO についてはユーザー数×視聴時間の 「総視聴時間」 を広告媒体として重要視していますが、リビングの TV でサクサクとザッピングしてリモコン操作で視聴するというスタイル、“新しいエクスペリエンス”により視聴時間・視聴回数が伸びる可能性が高いと考えています。
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IP-TV 市場の見立て |
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TV に限らず、リモコンあるいはリモコン ライクな UI を中心とした新しいユーザビリティでのネット動画配信サービス、というものを、広義に 「IP-TV」 と私どもは捉えており、今後拡大していく、拡大させていくべきと考えています。
まだまだ不確実な部分もありますが、Windows Media テクノロジーを中心としたプラットフォームでは、今年年末あるいは来年以降に本格化するのではないかと思います。 H.264 と Marline (マーリン) については家電寄り・通信キャリア寄りではありますが、これらもちょうどこの年末から一つの潮流になってくるのではないかと考えています。そして来年 1 月には DRM に対応した Silverlight 1.1 が出てきますので、従来とは違った新しいエクスペリエンスをユーザーに提供することでの活性化、さらには Macintosh での GyaO 提供による新規ユーザー層拡大などが起きるのではないかと思います。
いずれにしても我々は、2007 年末までに規格基盤作りを行い、IP 動画配信サービスにおいて、ある程度の実績を構築する必要があります。
そして IP-TV の 「ネットワーク」 「配信プラットフォーム」 「ユーザー端末」 「販売チャンネル」 のバリューチェーンが、それぞれどう展開するかによって、非常に大きく投資の判断が変わってきますので、いずれも重要なファクターだと認識しています。
とくに我々が一番注目しているのは、やはり 「WMV & WM-DRM」 と 「H.264 & Marline」 のいずれがデファクト スタンダードになるのかという点です。ユーザー端末において両方のコーデックに対応する端末が出てくる可能性もありますが、IPv4 あるいは IPv6 への対応度合いも含めて、なにかと読めない要素が多いのは事実でしょう。そういうわけで、とりあえず明示はできませんが、複数シナリオへの対応を想定して動いております。
「ギャオプラス」 については、Windows CE 5.0 に Windows Media Player を搭載しておりますが、将来的に H.264 デコード、HD、IPv6 に対応できる拡張性を残したアーキテクチャになっています。メモリなども STB としてはかなりの容量を搭載しています。
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GyaO NEXT と今後の展開 |
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新サービスの 「GyaO NEXT」 は 6 月 1 日にスタートしました。狙いとしては、早いタイミングでの IP-TV 向けの実績作りであり、そのために有料の SVOD (Subscription VOD、定額で無制限に視聴可能なVOD) サービスとなっています。コンテンツについてはアーカイブ型で原則 1 か月、長ければ 1 年という単位での入れ替えとなり、ある種レンタルビデオ的なサービス形態をとっています。毎日見るというより、週末などで定期的に見て楽しんでいただくイメージでしょうか。回線についても ISP /キャリアフリーなオープン インターネットな配信となっております。
販売プランについては、GyaO ブランドの強みで、回線系とのセット販売を中心に考えられております。 BB 回線の申し込みがだいたい月 30 万件ありますが、USEN は実は Flet's の販社としては No.2 の実績があります (1 位はヤマダ電機)。その機動力も活かし、Flet's とのセット販売、あるいは回線とのセット販売での、短期の実績構築が狙いです。
テレビ売り場での展開も考えておりますが、ちなみに SONY が 11 月に発売する STB 「ブラビアユニット・ネットワーク TV ボックス」 でも GyaO および GyaO NEXT の視聴が可能となっております。これも TV をネットにつなげるきっかけ、GyaO および GyaO NEXT 視聴のきっかけに結び付くのではないでしょうか。こういった製品が今年の年末に多数揃うことで、さらに追い風になるのではないかと期待しています。
GyaO NEXT のコンテンツは大きく 10 ジャンルを用意しておりますが、レンタルビデオの代替ニーズとなる 「映画」 「ドラマ」 「アニメ」 などはもちろん、「ファミリー」 「ドキュメンタリー(教養)」 「カラオケ」 をとくに強化しました。
- 映画
- 音楽
- アニメ
- ドラマ
- ファミリー
- ドキュメンタリー
- カラオケ
- バラエティ
- アイドル・グラビア
- アダルト
これは、「GyaO と GyaO NEXT の違い」ということにもなるのですが、GyaO は 8 〜 9 割のユーザーが一人で見ている、という実態があるからです。それに対して GyaO NEXT については、親子または夫婦での視聴が特徴となると考えています。GyaO NEXT ユーザーについては、全体の 6 割が “一人暮らしではない” というユーザー プロフィールもありますし、要望としても 「子ども向け番組」 「地上波でやってない教養系番組」 といった声がカスタマーセンターに届いております。
単にレンタルビデオの代替では勝てませんから、新しいものを拡充強化していこうと考えておりまして、ジャンル区切りのチャンネルだけでなく、「ナショナル ジオグラフィック」 のように、すでにブランドを持っているチャンネルの展開なども話を進めている状況です。
さて、こちらが GyaO NEXT の画面です。画面上のインターフェースについてはまだ研究開発の余地があるので、毎月変更の手を加えている部分もあります。リモコンでのカーソル操作で、検索まで含めた制御ができるようになっています。参考ですが、エンコードのビットレートについては 1.2 メガの VC-1 ですが、DVD 並みの画質にかなり近いのではないでしょうか。 MPEG2 では 4 メガないし 6 メガといったレートが採用されていますが、エンコード技術もかなり進化しており、1.2 メガの VC-1 でもかなりのレベルに至っていると思います。
カラオケの映像も、ランキング情報などを参照して呼び出しでき、カラオケボックスそのままのものが配信されています。都心部だと気づきにくいのですが、郊外の量販店などではこういったデモンストレーションが強い訴求力を持っているのです。こういった流れでは、年末に向けたオプションという形で、マイク付き端末を出す考えもあります。
なお、GyaO の映像もそのまま視聴できますが、この場合は PC と同様で、CM の早送りなどはできない仕様になっています。
このように現在のインターフェースは、HTML ベースのかなりプリミティブなものになっておりますが、新しいリモコンならでは UI の研究開発を進めております。あくまで開発イメージですが、TV と同じように、電源を入れたらなにかしら動画が表示され、その上に、メニューバーがオーバーレイで表示されます。さらに PinP でダイジェスト再生も行えるようなものを検討しています。
このようなマルチタスクの GUI エンジンは、ハードウェア レベルで対応していないと、かなり難しいのではないかとも思いますが、逆にそういうものを我々が率先して開発して、各ベンダーに採用いただくという流れもイメージしています。
またユーザビリティ機能についても、さまざまな機能の開発を検討しています。従来の画面のように、作品をただ並べて “棚に置く” だけのインターフェースでは、VOD という価値以外、ユーザーが魅力を感じないでしょう。ユーザーにとっては IP-TV かケーブル網かなどは、実際にはなんの関係もないわけですから、「IP-TV、VOD ならではの操作性」 であることのエクスペリエンスを追求していかないことには優位性は生まれません。そういうわけで、GUI によるメニュー構成の斬新性に加え、プレイリストを活用した 「まとめて再生」 「リコメンド」 「マイリスト・予約」、そして 「レジューム」 といった機能を付け加えいていくことが最大の命題ではないかと思います。さらには番組のメタデータをさらに充実させることで、新しいナビゲーションが、リモコン UI のなかで生まれる余地もあると考えています。
また、動画配信という枠には収まりませんが、IP ネットワークを利用する機能としては、「電子決済」 なども視野に入ってくるでしょう。個人情報登録などを行わず、プリペイド型カードの電子マネーを利用することも技術的には可能です。
それぞれに課題はありますしアイデア レベルの話ですが、こういった検討を重ねることが重要ではないかと考えております。
今後の展開については、年内に、販売チャンネルの構築、HD 対応、端末オプションの充実をまず進めていきます。フェーズ 2 にあたる 2008 年前期については、まだ不透明な部分が多々ありますが、IP-TV ならではのエクスペリエンスの完成ということを大きな命題に置いています。家電メーカーさんなどの比べて、私たち GyaO には PC ベースでのノウハウや実績がありますから、そこをテコにして、新しいユーザー エクスペリエンスといったものを提供できればと考えています。年末〜年明けにおいては、H.264 に代表されるマルチコーデック/マルチフォーマット対応ということがありますが、これは具体的に実現可能な事項として進めていくことになるでしょう。
それ以降のフェーズ 3 についても不透明ではありますが、GyaO そして GyaO NEXT それぞれのシナリオをパラレルに走らせていくことになるでしょう。それぞれにネット家電への組み込み展開、STB 型モデルの拡大を目指すことになります。 NGN 商用サービスのスタート時期でもあり、対応する映像配信サービスは確実に出てきますから、それをきっかけとした STB 型モデルの本格拡大はあると思います。
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